ROYAL Sweetness   作:皇緋那

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第二話です。お話はなかなか鈍足になると思います。


獣姫テイマー

【前回のあらすじ】

 

ユウキだよ。前回は様子のおかしいいるかを追っていたら、いつの間にか真っ白な世界で人形の敵に襲われてて、私は咄嗟に本から剣を抜いて撃退したっていう感じかな。居合わせたファインダーっていうらしい女の子に名前を聞かれて『ブレイヴァー』って答えたけれど……なんでそんな名前が浮かんだんだろう?

 

 

「まーったく、こんなレヴェルまみれだなんて聞いてませんってば」

 

ときおり現れる先程の敵を回避しつつ、ファインダーとブレイヴァーは白い風景の中を進んでいた。

 

「……レヴェル?」

 

襲ってくる奴等を指しているらしい。ファインダーいわく、『反逆者』という意味らしい。敵性生物だということくらいしかわからないが、制圧するには潰さなければならないと彼女は言う。

 

「しっかし意外と強いんですよね。こう、もっと一気に吹っ飛ばしていけるゲームみたいな感じならよかったんすけど、なんせ自分盗賊ですし」

 

ファインダーは自ら盗賊姫だとか言っていたはずだ。自分も理解まではしていないまま勇者姫と言ってしまったけれど、それもどういうことだろう?

 

「ほんっとになにも知らないでここに来たんすね……信じられませんわ」

 

信じられないといった顔で見てくる彼女。むしろ事前に知らされていたことの方が驚きだと、ユウキは目を細めた。

 

「……いいすか?まず、この世界は支配者というものがいないそうです」

「ちょっと待って。ここは私たちのいる世界じゃないってこと?」

「そうです。私たちは意識だけを実体にするとかいう方法でここにいますから」

 

知らないことが次から次へと吹き込まれていく。会長のように優秀な頭はしていなため、ユウキは一個一個ちゃんと噛み砕いてから飲み込む努力をしていた。

意識だけを実体にしている……ということは、自分の身体はあのままだということ。そして、この世界のどこかにいるかも入っていったということだ。

 

「んで。この世界の支配者を決めるために、17人のお姫様を集めようとしてるらしいです」

「こんな白い場所の?」

「自分色にしろってことでしょう。あと、もいっこ賞品があるとも聞きますね」

 

17人の姫たちを制した暁には、世界の支配ともうひとつの特典がつく。ユウキには興味のわかない話題であるが、仮に関係のない世界だからといって暴君が現れてはいけない、と思う。

 

「ってことは、この力は権力闘争に?」

「そうですね……求めるものの大きさを競えってことなんすかね」

 

まるで盗賊姫である自分を卑下するような言い方でファインダーはこの変身能力について話す。ファインダーだのブレイヴァーというのは、その闘争の参加者『プリンセス』としての能力を表したコードネームのようなもの、だそうだ。肝心のどうやって争うかは、戦場がここであること以外はまだ公表されていないようだが。

 

「ところで、質問ばっかのブレイヴァーさん。こっちからも質問いいですか」

「どうしたの?」

 

質問ばっかり、という煽りを完全にスルーして、相手の問いを聞く。それが面白くないのかちょっぴり不機嫌そうな顔になるが、問いから投げ掛けた。

 

「どうやってここに来たんです?」

「それは……友達の持ってた首輪の内側に、ここが見えた気がして」

「……なるほど。他人のペティグリィからとは……運営も焦ってるんですかね」

「……?」

「本来は他人のものから一般人がなんて……あぁもう、わからないならもういいです。さっさといきましょ」

 

どうやらファインダーは説明に飽きてきたらしい。歩調を速めて、案内している相手を置いていく勢いでずんずん進んでいく。だんだんとレヴェルの数も少なくなり、雰囲気が変わってきた。

 

「この世界は25のセクターに分けられてまして。ここはその南西のほうにある、19番セクターでした」

 

でした……と言ったのは、ここがセクターの端であり、すこし進めば別の場所へ進むからだとか。この先は、18番セクター。19番の2倍ほど大きく、ちょっとした都市ほどに感じるらしい。

 

「さすがにそんなひっろい場所の案内はできませんし……ここらでお別れですね」

「待って。どうすれば元の世界に帰れるの?」

「あぁ、一般人でしたね、ブレイヴァーさん。自分の持ってる変身アイテムを通して戻れますよ、何時にも増して大事にしてくださいね」

 

恩を売った相手だからか、無知なユウキを心配しているのか。どちらにせよ、ファインダーは背を向け19番セクターに戻っていく。彼女が見えなくなったのを確認して、ユウキは18番セクターに足を踏み入れる。

 

 

結局のところ、景色は何ら変わらない。また壁がいくつもあるだけで、ただの白紙だ。手がかりが何かあるわけもなく、都市ほどの広さをさ迷うこととなる。

 

ふと、足を止めてみる。鋭い気配がする。狩人のような気配が近づいてくる。敵意は敵意だが、外敵、侵略者を排除するための敵意。18番セクターには主でもいるのだろうか?

 

警戒心を全面に出して、ゆっくりとあたりを見渡す。一瞬、ある一点に背を向けたとき。その一点からは、疾風が一陣駆けていく。

 

「……ッ!?」

 

咄嗟に剣で防御を試みる。がきん、と堅いものがぶつかったらしい音がからっぽの都市に響く。白銀のごわごわした毛並みの狼が、黄金の剣に対して噛みついている。

 

「くっ……あなたは、レヴェルじゃないよね……!」

 

獣の気配はあの敵と同類ではない。生命の温度がちゃんと存在している。

 

「どうしよ……私は侵略しに来たんじゃないのに」

 

もしこのセクターに狼の守ろうとする者がいるのでも、ユウキの目的であるいるかの発見とこの狼とには関係がないはず。わざわざ無用な戦いをするような選択をユウキはせずに、狼をなんとか刃から振り払った。離れた勢いで距離をとった両者だが、狼は自らの間合いぎりぎりで臨戦態勢でいる。

いまだ彼はじっとユウキを見ていた。武器を持っているからいけないのだろうと判断し、地面に刺して黄金の剣から手を離す。もう一度獣の瞳をしっかりと見つめる。

 

爛々と輝くそれは、誰かを守ろうとする瞳だ。あの人形どものような気味が悪い目ではなく、凛々しく生命を輝かせる獣の瞳。

 

じっと見つめ合うこと数十秒ほど、気配はもうひとつやってくる。狼の襲ってきた理由だろうか。ふわふわの毛皮のドレス姿で焦りながらやってくる姿には、見覚えがある。

 

「ちょっと、ブラン!いきなり攻撃しちゃあ……ふぎゃ!?」

 

見覚えがあると思ったとたんに、それは確信に変わった。こんなときにドジを踏んですっ転び、狼に心配されている姿。それは紛れもなく、追いかけていた友人だった。

 

「大丈夫?」

 

獣の警戒体制は緩んでいないが剣を置いたままにして数歩近寄って、声をかける。

 

「その、声……まさか、ユウキちゃん……!?」

「いるか、だよね」

「どうしてこんなとこに!?」

 

差しのべられた銀色の籠手の指先を頼りにして、いるかはなんとか立ち上がる。隣で狼は心配そうにいるかに寄り添っている。

 

「いるかの持ってた首輪に吸い込まれた」

「え……」

 

それを聞きまたやらかしちゃったのかも、と不安げになる彼女。ユウキはファインダーの言葉を思い出して、いるかのせいじゃないと思うと告げた。

 

「だと、いいんだけど……その、私のせいでユウキちゃんを巻き込んだなんてことだったら……」

「私は構わないよ。いるかが気に病むことじゃないし」

 

危ない目に遭ったのは事実であっても、ユウキはこうして生きている。こうして友人と再会できたのだから問題はないのだ。

 

「ところで。このわんこはどうしたの?」

「あ、ブランのこと?えっとね、ブランは私のパートナーというか……」

 

改めているかがブランと呼ぶ狼のことを見る。凛々しい顔立ちと獲物を逃さぬだろう眼光、環境に適応し得る白銀の毛皮。雪原やこのセクターのような風景に潜めば見つけられぬだろう白は、警戒を怠っていたとはいえユウキにも気づかれることはなかった。

 

「ブラン、かぁ。よろしくね」

 

ユウキのあいさつを理解しているらしく、わふ、と答えるブラン。途端に可愛く思えてきたが触るのはさすがに初対面ではおこがましいかと思って手を出すのは躊躇った。

 

「ユウキちゃんも、プリンセスになったんだよね」

「ま、ついさっきね」

「……じゃあ、改めて自己紹介しなくちゃね」

 

毛皮のもこもこスカートをふわりと浮かせ、いつもより数倍のボリュームのツインテールを広げて、いるかはくるりと回ってみせる。背中やへそが出ていなかったら冬場に欲しい衣装、という印象だ。クリーム色を基調としているのも彼女らしくて似合っている、とユウキは思う。

 

「私は獣姫『テイマー』。ブランといっしょに、私は私の願いを叶えたい」

 

いつもは見せない真剣な顔で、テイマーはそう名乗った。

ユウキ――ブレイヴァーも彼女に応え、がしゃり鎧の音をたてながら頭を下げた。

 

 

お互いに変身を解いたふたりは、その後現実の自販機裏で再会した。変身を解くとブランは一度実体を持たなくなるようだが、会話はできるらしい。ユウキからすれば、元からできないと思うのだが。また、別世界からどうやって戻るのかはいるかに教わっていたが、それは成功したようだ。

溢れ出ていたアーサー王伝説をそっとカバンにしまって、自販機の裏から抜ける。端から見ればそんなところから現れる女子中学生二人組など、何やら怪しいことをしていたカップルのようだが、幸い通行人は居なかった。

 

「じゃあ、また明日ね!」

 

何事もなかった日のように、ふたりは手を振って別れのあいさつをする。いつもの帰り道をたどり始める。

 

これから始まる凄絶な争いの日々のことなど、ひとかけらも予想などしていない。

 

 

 

 

 

【次回予告】

無事帰り着いたユウキといるか。

翌朝、17人のプリンセスが揃ったとの通告が届く。

ついに始まる権力闘争。勝利のために、願いのために少女たちは争うのだ。

 

次回、『開式の日』

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