リリカルなのはINNOCENT~CHASER~ 作:つねまる
チェイサーへと変身したきょうやは、その勢いのままロイミュードの顔面目掛け拳をいれる。
ロイミュードはその拳を当たる直前に受け止めるが、拳を握っているロイミュードの手を片方の手で引き寄せ、腹部に膝蹴りを入れる。それによってバランスを崩しロイミュード共々地上に落下した。
その際チェイサーは、空中でロイミュードを下にして地面に叩きつけると馬乗りになり、抵抗するロイミュード動きを抑え拳で顔面を殴りつける。
胸部にも同様に何度も殴りつけ、ダメージを与えていく。だがロイミュードもやられてばかりではなく、チェイサーの背部に膝蹴りを入れ怯ませる。
怯んだ隙をつき、チェイサーの腹部に拳を入れ前腕を使って左側に吹き飛ばした。
『くっ!』
吹き飛ばれてもすぐに態勢を整え、ロイミュードと対峙する。
『やはりこの前のロイミュードか』
『ええそうよ。貴方にボディーを壊されてからずっと。貴方を倒すことだけを考えていたのよ!』
そう言い放つとロイミュードが急接近し拳をふるう。チェイサーはそれを受け止め、腹部と顔面を殴りつける。受け止めた手を払いロイミュードの肩部目掛けて上段蹴りを入れた。
それによりロイミュードの体制を崩し、続けざまに腹部に蹴りを叩き込む。
『ちっ!』
吹き飛ばされたロイミュードは唸り声を上げ、ふらふらと立ち上がる。チェイサーの攻撃を受けて弱っているはずなのだが、不気味な笑い声を上げていた。
『何がおかしい?』
『いいえ。貴方を倒せると思うと嬉しくて……』
『……一体どうやってバイラルコアを手に入れた? お前のバイラルコアはあの時僕が回収した! なのに何故!?』
『確かに貴方の疑問は最もね。でも私や他のロイミュード達がここにやってきたのは、あの人の存在のおかげなの。ボディーを失った私はその人からバイラルコア貰い、再び肉体を得ることが出来たのよ』
『何!?』
驚くチェイサーであったが、気になることが一つあった。
『では誰なんだ。お前にバイラルコアを与えた存在は!?』
コアだけとなったはずのロイミュードに肉体を与えた存在。その存在が今回の黒幕ではないかと考えたためである。
『それを話す義理はないわ。だって……』
『貴方はここで私に倒されるんだからね!』
そう言い放つと、ロイミュードの身体が再びデータ状のもので覆われていく。それはコピーした人間の姿に変わる時と似たものであるが、その時よりも覇気があるものであった。
(まさか!?)
ロイミュードを覆っていたものがなくなり、その姿が露見する。
そこにいたのは、先ほどの蝙蝠型のロイミュードとしての姿ではなく、全くの別の姿であった。
チェイサーの目の前にいたのは、"上級"へと覚醒したロイミュードであった。姿は全体的に鳥の意匠が目立つ容姿をしており、両手と両足には鳥の鋭いかぎ爪を彷彿させる鋭い爪が生えていた。背中には大きな白い翼があり、頭部はハヤブサを彷彿とさせる形をしていた。またコピー元が女性ということもあってか、ボディーは女性型のシルエットになっていた。
『そう言えば、私のコピー元は鳥を飼っていたわね。この姿はそれをイメージしてのものかしら?』
上級ロイミュード――バード・ロイミュードの発言に、チェイサーはあることを思い出した。
(そう言えば、朱乃さんは鳥が好きで、高校入学を機に両親からプレゼントしてもらった鳥がいるって聞いたことがあったけど、まさかそれが……)
チェイサーが考えている中、バードは一気にチェイサーの至近距離まで接近してきた。
『しまっ!』
反応が遅れたチェイサーは、バードの爪によって胸部を切り裂かれてしまう。
『くそっ!』
切り裂かれた部分から火花を散らしながら、大きくのけ反ってしまう。
すぐさま態勢を立て直してバードと対峙するが、バードはこの前の鬱憤を晴らすかのように両手の爪を使って攻撃を仕掛ける。チェイサーはそれを何とか防ぎつつ、バードに拳打や蹴りを入れていく。しかしほとんどが防がれたほか、躱されてしまい、思うようにダメージを与えられないでいた。
バードから受けたダメージが徐々に蓄積していき、激しい攻防戦の中、隙を見せたチェイサー目掛け、バードは渾身の両足ドロップキックを放つ。チェイサーは躱すことができず胸部に直撃してしまい、大きく吹き飛ばされてしまう。
『ぐはっ!』
蹴り飛ばされた衝撃とともに、身体は地面に叩きつけられてしまう。
バードは先ほどの攻撃の勢いを使い、背部の翼を広げて飛行していた。
『あはははは! すごいわ。進化したこの力は! これなら貴方を倒せる!』
バードは一旦上昇しその勢いを使って急降下すると、倒れているチェイサー目掛け飛行し急接近する。
『死になさい! 仮面ライダー!』
『!?』
すぐに立ち上がり対処しようとするが、バードの強烈な頭突きがチェイサーの胸部を捉え直撃してしまう。
『がはっ!』
その衝撃で大きくのけ反り、再び地面に身体を叩きつけられてしまう。
『がはっ、ぐっ……』
仰向けに倒れたチェイサーは、胸部を抑えながら悶えてしまっていた。先ほどの攻撃は変身者であるきょうやの肉体にも影響があったようで、装甲越しでも生身で受けたような感覚に襲われていた。
痛みで悶えているチェイサーをよそに、バードはゆっくりと地上に降りる。
『ふふ。どうかしら? 一度は倒した相手にこうも圧倒される気分は?』
そう言いながらバードはゆっくりとチェイサーに近づく。そして起き上がろうとしたチェイサーの腹部を踏みつけ、立てないように地面に押さえつけた。
その後足をグリグリと踏みつけた後、足を離しチェイサーの身体を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたチェイサーはそのままうつ伏せに倒れてしまうが、両手を使って立ち上がろうとする。
『ぐっ……』
ゆっくりと立ち上がったチェイサーは再度バードに対峙する。しかし先ほど連続して受けた胸部へのダメージがまだ残っている影響か、胸部を手で押さえながら肩で息をしていた。
『もう虫の息ね。これで終わりにしてあげる!』
バードは背部の翼を広げチェイサー目掛け羽ばたかせると、羽の形をした刃が飛んでくる。
『くっ!』
両手を交差させてそれを防ぐが、チェイサーのまわりに着弾し一帯に煙が起こった。その隙にバードは再び飛び上がり、とどめの頭突きを繰り出そうと急降下してきた。
チェイサーはそれを躱そうとしたが、身体が思うように動けずにいた。
(今の状態じゃあれを躱せない。どうすれば……)
肉体は既に限界を迎えており、とてもではないがバードの一撃を躱すことが困難な状態であった。
『……約束だよ』
肉体的に限界を迎えていたチェイサーの脳裏には、先ほどの少女との約束が思い出される。
(ここで負けるわけには、いかない!)
頭突きを決めようと接近してきたバードを、真正面から受け止める態勢を取る。バードの頭突きが直撃する寸前に、チェイサーは両手でバードの両肩を掴み頭突きを受けとめることに成功する。
『何!?』
『悪いけど、もう空は飛ばせない!』
片方の腕を使ってバードの頭部をヘッドロックし、もう片方の手でバードの翼を掴み取る。
『ふんっ!』
かけ声とともに掴んでいた翼を勢いよく引き千切った。
『ぎゃああああ!!』
引き千切った箇所から、人間の血に似たオイルのような液体が勢いよく吹き出た。バードが断末魔を挙げるがチェイサーはヘッドロックを解かず、そのまま思いっきり後方に投げ飛ばした。
『はぁ、はぁ、はぁ』
肩で息をしながらも、バードから目を離さなかった。目の前ではバードが引き千切られた箇所を抑えつつ、唸り声を上げていた。
これを好機と見たチェイサーはベルトのパネルを上げパネルの近くにあるボタンを押したと同時に、パネルを下に下げる。
『ヒッサツ! フルスロットル! チェイサー!』
最後の力を振り絞り、チェイサーは上空へと跳躍する。 空中で一瞬静止した後、飛び蹴りの姿勢を作りバード目掛けて放たれる。
『はぁあああああ!!』
『く、くそぅおおおお!!』
繰り出された必殺技・チェイサーエンドはバードに直撃した。それによってバードのまわりが爆発し、ボディーとコアが同時に破壊された。
爆発が止むと、ふらふらの状態になりながらも立ち上がったチェイサーが姿を現す。しかしすぐに膝から崩れ落ちてしまった。
『まさか上級に覚醒されるなんて……思いもしなかった』
パネルを上げ、ベルトに装填されていたシグナルチェイサーを取り出す。
『オツカーレ』
チェイサーの姿から元のきょうやの姿に戻るとすぐに立ち上がり、少女の元へと向かった。
--------
先ほどの場所まで戻ると、少女が膝を抱えて座っていた。きょうやの存在を確認すると、勢いよく立ち上がってきょうやに駆け寄ってきた。
「ひ、ひどい怪我! だ、大丈夫ですか?」
戻ってきたきょうやの姿はあまりいいとは言えなかった。服が所々汚れているほか唇が切れており、表情から明らかに疲労困憊な状態であった。
「だ、大丈夫だよ。それより君は大丈夫? 怪我はない?」
「は、はい。私は大丈夫ですけど、貴方が……」
「ああ、平気平気。ちょっと転んじゃっただけだから」
「で、でも……」
ボロボロのきょうやの姿を見た少女は完全に涙目になっており、今にも泣きだしそうであった。
「ああ泣かないで。ほ、本当に大丈夫だから。そ、それよりも時間がいい頃だし、早く帰ってあげたら? きっとご家族が心配していると思うよ?」
きょうやは泣き出さないように取り繕いながらも、少女に早く帰宅するよう提案する。
「フェイトー! どこ! いたら返事して!」
「フェイトー! どこー?」
そんな話をしている中、子供とその母親の声と思しき声が聞こえる。
「あ、母さんとアリシアの声だ」
「えっ? 近くにいるの?」
「うん! 声からして近くにいる。あ、そうだ! 母さんに頼めばお兄さんの怪我を……」
そう言ってきょうやの方に視線を向けるが、既にきょうやの姿はなかった。
「あ、あれ? お兄さん?」
少女は辺りを見回してみるが、きょうやの姿は何処にもいなかった。
―――――――
「あ、危なかった」
少女の元から去ったきょうやは、少し離れた物陰に隠れていた。現在の状態では遠くに離れることが出来なかったため、少し離れた場所に隠れていたのである。
物陰に隠れていたきょうやは、勝手に離れたことを申し訳なく思いながらも、少女のいた場所に視線を向ける。きょうやが離れた後、すでに母親と双子?の姉(もしくは妹)が少女と一緒にいた。
母親が目に涙をためながら強く抱きしめており、喜んでいるのが遠目から見てもわかった。
「…………」
きょうやはそれを見届けると、ゆっくりと立ち上がり、その場を後にした。
―――――――
その後アパートに向かおうと歩を進めるも、先ほどのダメージ(特に胸部の)が原因で上手く歩くことが出来ずにいた。
「思ったよりひどいな。やっぱり上級との戦いはまだ慣れないな」
独り言をつぶやきながらも一歩ずつ歩を進めていたが、遂に身体は悲鳴を上げ膝から崩れ落ちる。
「くっ!」
両手に力を込めるが、うまくいかなかった。
(どうしよう。こんな道端で休んでいるわけにもいかないし……)
そう考えていると、隣に見覚えのある青い毛の狼がいることに気付いた。
「あ、あれ? ザフィーラ? いつの間にそこに」
「アインスを送った帰り、ふらふらと歩くお前の姿を見て何事かと思ってな」
このオオカミ(たまに犬とも間違われるが)の名前はザフィーラと言い、八神家にて飼われている愛犬である。ザフィーラは現在のきょうやを見て異常であると判断し、きょうやを強引に自身の背中に乗せた。
「え、ちょっ、いいよザフィーラ。一人で帰れるから」
「立つことすらままならない姿では説得力に欠けるぞ」
「そ、それは……」
「それに帰ってもお前のことだ。ろくに治療もしないですぐにたおれてしまうだろう?」
「……返す言葉もございません」
その後きょうやはザフィーラの背中に背負われながら八神家へと連れていかれた。
思いのほかザフィーラの背中が心地よかったのか、一瞬の内に眠りについてしまった。
――――――
目を覚ますと、白い天井が目に入った。辺りを見回した後上体を起こすが、身体に痛みが走る。
「まだダメージが抜けないか……」
掛け布団をはごうとすると同時に部屋のドアが開いた。部屋に入ってきたのは、料理を持ってきたシャマルであった。
「あ! きょうちゃん! よかったぁ~。気がついたのね」
気がついたきょうやを見たシャマルは、今にも泣きだしそうな勢いであった。
「あ、えっと、ありがとうございます。何だがお世話になっちゃったみたいで……」
「いいのよそんなこと。あ、ちょっと待っててね。今はやてちゃん達呼んでくるから」
「そ、そんな。いいですよ。そんな大したことないですし」
「大したことあります! あんなボロボロになって帰ってきて! ザフィーラが連れてきたときの貴方を見た時、みんなすごく心配したんだからね!」
「す、すいませんでした……」
シャマルの気迫に押され、きょうやは謝ることしかできなかった。その後シャマルはやて達を呼んでくると言って部屋を出た。
数秒後。物凄い勢いで階段を駆け上がる音が聞こえ、その後思いっきりドアを蹴破るように開けて入ってきた。
「「きょうや(くん)!!」」
「ひいっ!」
勢いよく入ってきた正体ははやてとヴィータであり、入ってきたと同時にきょうやが寝ているベッドにダイブしてきた。いきなりのことに思わずきょうやは小さく悲鳴を上げてしまった。
「あ、主。まだきょうやは本調子でないのですから、驚かせるようなことはしないで下さい。ヴィータ、お前もだぞ」
「「はーい」」
後から入ってきたシグナムに咎められた二人であったが、きょうやから離れようとしなかった。
「すまないきょうや。だが主もヴィータもお前をかなり心配していたんだ。大目に見てくれないか?」
「え、ええ。分かっています」
シグナムはこう言っているが、その表情は二人と同じような心配している表情だった。現在夜間学校にいっているアインスを除き、八神家には家族全員がいる状態であった。
「きょうやくん。ホンマに大丈夫なんか?」
「う、うん。まだ本調子じゃないけど、大丈夫だよ」
「ったく、心配かけさせやがって」
ヴィータはこう言っているが内心ではかなり心配していたようで、きょうやを掴んでいる手が震えていた。しかしきょうやは二人から離れ、ベッドから起き上がろうとした。
「どこへ行こうとしているの? きょうちゃん?」
ベッドから起きあがろうとするきょうやの肩をシャマルが強い力で掴む。
「い、いや、その、流石にこのままいるわけにもいきませんから、そろそろ帰ろうかと……」
「へぇ~。そんな身体で帰れるとでもおもっているのかしら?」
「いや、あの……」
シャマルの笑顔の後ろには黒いオーラのようなものが見え、きょうやはそれ以上何も言えなくなってしまった。というより言わせてもらえなかった。
もちろん他の人達もシャマルの表情を見て何も言えなくなっていたのは言うまでもなかった。
―――――――
怪我のことがあり、はやての計らいできょうやは八神家にお世話になることになった。その日の夜中。先ほどまでずっと寝ていたこともあってか、中々眠れずにいた。
そんな中きょうやは、日中助けた少女のことを思い出していた。
(最初は気のせいだと思ってたけど、見間違いじゃなかった。まさかこの街に来ていたなんて……)
きょうやは少女と一緒にいた女性見た時、一つの確信を持った。
それはきょうやにとって、今一番会いたい人であり、会いたくない人達であった。そして、何があっても守ると決めた存在。
「こんな時に、会いたくはなかったよ」
「プレシア、"義母さん"」
一応解説しておきます。
・バード・ロイミュード
本作にてきょうやが海鳴で初めて交戦した上級ロイミュード。元々コウモリ型の下級ロイミュードであり、一度はチェイサー(きょうや)の手によって撃退されたが、新たなバイラルコアを与えられたことで活動を再開。自身を倒したチェイサー(きょうや)を倒すべく姿を現す。コピー元である椎名朱乃が、飼っている小鳥を溺愛していることが影響してこの姿になったとされている。
戦闘の際は自身の翼から起爆式の羽を飛ばす他、両手足の鋭い爪を使った格闘戦が主体。また握力が非常に強く、対象を握りつぶしたり、両足で掴んで持ち上げることも可能。また上空からの奇襲戦法も得意としており、中でも急降下から繰り出される頭突きはチェイサーの装甲を持ってしても防ぎ切ることが出来なかったほど強力。