リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

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第三話(前編)

 銃口を向けられていたきょうやは下手に動くことができず、膠着状態が続いていた。

 

(ロイミュード。このタイミングで来るなんて……)

 

 きょうやは持っていたカバンに手をかけようとするが、足元に再び銃弾が放たれる。

 

『Hey! 変身するのはNGだぜ!』

 

 ロイミュードは屋根上から飛び降り、地面へと着地する。暗くて見えなかった外見が、電柱についている街灯に照らされその姿を現した。

 

 (下級の姿じゃない。上級か!)

 

 ロイミュードの姿は下級のものではなく、進化した上級の姿をしていた。

 西部のガンマンを模した姿をしており、左手にはマグナム型の拳銃が握られ銃口をきょうやに向けていた。

 

『会えてうれしいぞ。仮面ライダー。いや"死神"って言った方がいいか?』

「死神? そんな名前を名乗った覚えはないんだけど」

『何言ってやがる。グローバルフリーズ以来お前は俺達の間でそう呼ばれてんだよ。仮面ライダーじゃなく、昔俺達に死神って呼ばれているやつに今のお前が似てるからな』

「……だとすると、僕を殺すためにわざわざつけていたんですか?」

『そうだな、それもあるが……』

『お前には借りがあるからなあ!!』

 

 上級ロイミュード・ガンマンロイミュードは、叫ぶと同時に手にした拳銃の引き金を引いた。

 

「ぐっ!」

 

 咄嗟のことにきょうやは対応できず、左側のわき腹辺りに銃弾が直撃してしまう。直撃した箇所を押さえその場に片膝をつく。

 

「……くそっ」

 

 押さえた箇所からは鮮血が流れていた。撃たれた箇所を中心に激痛が走り、その場から動けなくなってしまっていた。

 

『痛いか? けど簡単に死ぬなよ? まだこっちは鬱憤が晴れてねぇんだからな』

「何のこと? お前とは初対面のはずですが?」

『ああそうかい。俺らを殺しすぎて誰だか分からなくなっちまったわけか。いいだろう教えてやるよ。俺はな、グローバルフリーズの際にお前と会ってんだよ』

「……なるほど、その時の仕返しですか」

 

 ガンマンロイミュードの話を聞いて大体の内容を把握したきょうやだったが、まだ激痛が消えず動くことができなかった。

 

『ああそうさ。あの日お前が邪魔に入らなければ、俺の弟は殺されなかった。弟はあの日、お前に殺されたんだよ!』

 

 きょうやに向かい怒号を浴びせると、ガンマンロイミュードはゆっくりと近づく。

 

『だからよ。弟の仇、取らせてもらうぞ』

「悪いけど、簡単にやられるわけにはいかない!」

 

 きょうやはすぐにカバンに手を伸ばし、ドライバーと取り出そうとする。しかしガンマンロイミュードの早撃ちにより、今度は右腕に銃弾が撃ち込まれてしまう。

 

「ちっ!」

 

 なりふり構っていられなかったきょうやは、左手でカバンの中に手を突っ込み、強引にドライバーを取り出す。取り出したドライバーは腹部へと当てるとベルトが出現し装着が完了する。

 パネルを開くと、ポケットに入っていたシグナルチェイサーが飛び出し、きょうやはそれを左手でつかみ装填した。

 

『シグナルバイク!』

「変身!」

『ライダー! チェイサー!』

 

 ガンマンロイミュードは変身を妨害しようと次々と銃弾を放つが、それらは変身時に出現する鎧によって阻まれてしまう。

 傷を負いながらもチェイサーへと変身が完了すると、そのままガンマンロイミュードへ向かって駆け出す。

 

『くそっ!』

 

 ガンマンロイミュードは銃弾を再度放とうとするが、直前でチェイサーに利き手である左手を掴まれ、阻止されてしまう。チェイサーは掴んだ左手を上に挙げ、右手でがら空きになった腹部へ裏拳を放つ。

 

『ごふっ!』

 

 衝撃で前屈みになったガンマンロイミュードへ追い打ちをかけるように、利き手の左腕目掛けて強烈な肘打ちを浴びせる。

 

『ぎゃあああ!』

 

 ガンマンロイミュードの左腕から骨が折れる嫌な音が鳴り、その後に激痛が走ったのか、悲鳴を上げてしまう。

 

『これで、おあいこだよ』

 

 悲鳴を上げるガンマンロイミュードの腹部にチェイサーは膝蹴りを放ち、上体を無理矢理起こす。がら空きになった上半身目掛け二発拳を入れた後、顔面目掛け殴り飛ばした。強烈な一撃を受けたガンマンロイミュードは大きく吹き飛び、地面に身体を打ち付けてしまう。

 

『痛ってーな、ちくしょう!』

 

 文句を垂れながらも立ち上がるが、視線をチェイサーのいる方向に向けたときには既に顔面目掛け膝蹴りを浴びせようと跳躍していた。

 

『がはっ!』

 

 気づいた時には時すでに遅く、ガンマンロイミュードは躱すことができずチェイサーの膝蹴りが顔面に直撃してしまう。その勢いで再度地面へと頭部を中心に身体を強く叩きつけられてしまう。

 チェイサーはガンマンロイミュードから足を離し、手で首を掴んで強引に身体を起こす。

 

『答えろ。お前に僕の正体を教えたのは誰だ! 言え!』

『お、お前に、ある意味一番恨みを持っている奴だよ死神』

『何?』

『知ってるはずだぜ。お前が、”初めて殺したロイミュード”を覚えているならな!』

 

 そう言うとガンマンロイミュードはチェイサーの手を払い、瞬時に右側のホルスターに入っている拳銃に手をかけ銃口をチェイサーに向けて発砲する。

 

『くっ!』

 

 至近距離で発砲された銃弾はチェイサーの胸部の装甲に当たり、火花を散らした。

 再度接近しようとするが、ガンマンロイミュードは後退しながら銃弾を発砲し続けたため、近づくことができなかった。放たれた銃撃の内、数発がチェイサーの身体に直撃してしまう。

 

 (くそ、やられた)

 

 先ほど生身で受けてしまった腹部に再度銃弾が直撃しまい、その場で片膝をついてしまった。いくらチェイサーに変身し装甲で守られているとはいえ、負傷している箇所への衝撃だけでも激痛が走り動けなくなってしまう。

 激痛に耐えながらも視線をガンマンロイミュードに向けると、拳銃のトリガーを数回引いても弾丸が出ていなかった。

 

『ちっ! 弾切れか。命拾いしたな!』

 

 ガンマンロイミュードは大きく跳躍し、一軒家の屋根の上に着地する。

 

『次は絶対に殺してやるからな!』

 

 そう言い残し、ガンマンロイミュードは姿を消した。チェイサーは変身を解除してきょうやに戻り、立ち上がろうとする。

 

「あ、が…」

 

 撃たれた腹部を押さえながら、その場で悶えてしまう。

 しばらくして痛みがましになったことを確認し、ゆっくりと立ち上がる。足取りはおぼつかないものの、きょうやはカバンを拾い上げ、アパートへと歩き始めた。

 

―――――――

 

 部屋に戻ったきょうやは玄関にカバンを置き、洗面所へとすぐに向かった。

 洗面所に入るドアを乱暴に開けると、入ると同時に両手を洗面器につける。肩で息をしながら顔を上げ、鏡に映っている自分を見た。

 息を整え、両手を離し上体を起こす。額からは冷汗が大量に出ており、左側のわき腹付近は紅い血で染まっていた。その他に右腕の上腕部にも銃弾を受けてしまったため、わき腹同様血が出ていた。

 

(もうこのシャツは使えそうにないな)

 

 きょうやはYシャツを脱ぎ、インナーの白シャツも血で染まっていたため、同じように脱いだ後ビニール袋の中に入れ床に袋を置いた。

 洗面所に置いておいた救急箱を取り出し、包帯とガーゼを取り出す。怪我をすることは今に始まったことではないため、慣れた手つきで応急処置を実施した。血で汚れてしまった洗面器を洗った後、洗面所を出て部屋へと入る。

 きょうやの上半身は腹部と右腕の上腕部に包帯が巻かれていたが、腹部の傷が思いのほか深く既に血がにじみ出ていた。

 部屋に入ると真っ先にベッドに向かう。身体を投げ出し、ベッドに身体を預けた。ベッドに寝転がったきょうやは、ガンマンロイミュードが言った言葉が頭によぎる。

 

(僕が初めて殺したロイミュードで思いつくのは、あいつしかいない)

 

 それはきょうやが初めて変身した日、父親を殺され、怒りに身を任せて倒してしまったロイミュードしか思いつかなかった。

 

(やっぱりりんなさんから聞いた情報は、あながち間違いじゃなかった。でもそれならなおさら、放っておくわけにはいかなくなる。どうすれば……)

 

 そんなことを考えていたきょうやだったが、眠気に抗うことができず、深い眠りについた。

 

―――――――

 

 きょうやが目を覚ましたのは翌日の早朝であった。ベッドから起き上がり、昨日何があったかを思い出す。

 

(そうだ。昨日は上級と戦って、結局逃げられたんだった)

 

 まだ学校へ行く時間ではないが、昨日Yシャツを一つダメにしてしまったため、新しいのを出そうとベッドから立ち上がろうとする。

 

「……っ!」

 

 立ち上がろうとしたと同時に腹部に痛みが走り、再び座り込んでしまう。よく見てみると包帯越しに自分の血が滲み紅くなっているのが分かった。きょうやは痛みに気を付けながらゆっくりと立ち上がると洗面器の方へ向かい、新しい包帯で巻き直した。

 

―――――――

 

 時間が少し経ち、きょうやはアパートを出て登校していた。しかし足取りは重く、表情は険しかった。先日のロイミュードとの戦いで受けたダメージがまだ残っており、歩くだけで腹部へ痛みが走っていたのである。

 

(不味い。意外とこれは辛い……)

 

 足取りは重いが、下手に学校を休むわけにはいかなかった。2ヶ月前のグローバルフリーズの影響できょうやは学校を休み過ぎてしまっていたからである。いつもより足取りは重いものの何とか学校へ向かうべく歩き続けていた。

 

「あっ! きょうやくん。おはよう!」

 

 突然声を掛けられたきょうやは声のしたほうへ振り返ると、フローリアン姉妹がそこにいた。

 

「お、おはようアミタさん。キリエちゃんもおはよう」

「おはようございます先輩♪ なんかすっごい顔色悪いですけどなんかありました?」

 

 きょうやの表情を見て異変を感じたキリエが尋ねる。

 

「ああ、うん。ちょっと寝不足なだけだよ。昨日少し夜更かししちゃって」

「えぇ~本当ですか? なんかとても寝不足だけが原因って感じしないんですけど」

「いや、まあ久々だったからそれでね。あはは」

 

 そう言ってきょうやは二人に悟られないようごまかす。しかしアミタもキリエ同様きょうやの異変に気づき、尋ねた。

 

「本当に夜更かしだけですか?」

「え、うん。そうだよ」

「じゃあ、その包帯は何ですか?」

 

 アミタが指さしたのはきょうやの右上腕に巻かれている包帯であった。半袖の時期ということもあり、少しだけはみ出ていた包帯に気付いてしまったのである。

 

「あ、えっと。これはちょっと転んじゃって」

「……本当ですか?」

 

 アミタの表情は真剣なものであった。きょうやは真剣な彼女の気迫に押されてしまっていた。

 

「う、うん。本当にちょっと転んちゃっただけだから」

「……」

 

 そう言うが、アミタの表情を見るかぎり納得してはいなかった。

 

「まあ先輩がそう言うならいいんじゃないお姉ちゃん」

「で、ですがキリエ」

「こんなところで雰囲気重くなるような話しても意味ないじゃん。それに早くしないと遅刻しちゃうよ!」

 

 キリエはアミタの手を取り歩き出す。

 

「ちょっ、キリエ…!」

「先輩も急いだ方がいいですよ。私達先に行ってますから~」

 

 そう言うとキリエはアミタの気持ちなどお構いなく学校へ向け歩き出してしまう。

 

(た、助かった。でも迂闊だった。きちんと服で隠せるように調整したはずなんだけど)

 

 取り残されたきょうやは右腕に巻かれた包帯に手を当てる。

 

(と、取りあえず早く行こう。二人には後できちんと話そう)

 

 きょうやも学校へ遅刻しまいと歩き始めた。

 

――――――

 

「ちょっとキリエ! どうして!」

「まあまあお姉ちゃん落ち着いて」

 

 アミタは先ほどのキリエの行動に対し納得ができなかったのか、引かれた手を振り払い問い詰める。

 

「ほ、ほら先輩にだってプライベートがあるんだから何もあんな風に聞かなくてもいいんじゃないかなって思ってさ」

「そ、それは……」

 

 キリエの言葉にアミタは何も言えなくなる。

 

「まああれだね。お姉ちゃんがいつの間に先輩に対して続婚状態になったか置いといて……」

「……」

「……いやあのお姉ちゃん?」

 

 少し場を和まそうと冗談を言ったキリエだったが、アミタの表情を見て少し動揺してしまっていた。

 

「キリエは何とも思わないんですか?」

「えっ? 何って」

「”あんな姿”のきょうやくん見て何とも思わないんですか!」

「……!?」

 

 アミタの言葉にキリエは言葉を詰まらせてしまう。

 

「病院から退院してからあんな傷つくることなんてなかったんですよ。なのに……」

「お、落ち着いてお姉ちゃん。腕に包帯巻いてた程度で重傷だとは限らないんだし」

 

 感情的になっている姉を前にキリエはたじろいでしまうも、何とか抑えようとしていた。だがキリエもアミタがこうなってしまう気持ちは分かっていたため、あまり強く言うことができなかったのである。

 

「と、取りあえず、こんなところで話してても拉致あかないし。はやく学校行こうよ。風紀委員長が遅刻なんてしたら本末転倒だよ」

「わ、分かりました」

 

 キリエの発言に一理あると考えたのか、アミタは食い下がり、歩き出す。

 

(まあ私も正直あんなので納得してないんだけどね)

 

 そう思いながらもキリエはアミタの後ろをついていく形で歩き出す。

 そんな二人を遠くから眺めている男がいた。男の身体はデータ状のものに覆われ、異形の怪物へと姿を変えた。

 

 

『あれは使えるな。待ってろよ死神!』

 

 

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