リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

22 / 29
 今回オリジナルのロイミュードを出しますが、詳細な内容は次回の投稿時に一緒に出します。今回はテスタロッサ親子に視点を向けて話を進めていこうと思っています。


第七話

 平日の放課後に当たる時間帯。私立海聖小学校の昇降口から出て帰路に着こうとしている小さな金髪の少女がいた。

 

「今日もなのは達お店に来ているのかな? だとしたら早く向かわないと!」

 

 金髪の少女、アリシア・テスタロッサは、自宅ではなく駅前にあるT&Hへ向かおうと歩き出した。

 校門から出ようとすると、近くに見覚えのある少女が目に入った。自分と同じ長い金髪で、身長がわずか(※アリシア目線)に高い妹であるフェイトがそこにいた。

 

「あれ? フェイトどうしたの? なのは達と一緒にお店の方に行ってるはずじゃなかったっけ?」

「うん。他の三人は一旦家に戻って荷物を置いてからくるって言ってた。それだったら久しぶりにアリシアを一緒にお店に向かおうって思って……」

「なぁ~んだ。それだったらこんなところで待ってなくても私のクラスにくればよかったのに」

「言ったけど、クラスの人達と話してたから邪魔しちゃ悪いかなって」

「そっか。気を遣わせちゃってごめんね! じゃあ暑いし早くお店の方に行こう!」

「うん!」

 

 フェイトの隣をアリシアが一緒に歩く形になり、T&Hまで一緒に下校することとなった。

 

――――――

 

 下校している海聖小の生徒達を遠目から見ている存在がいた。

 

『さて、今度の獲物はあそこの子供達か』

 

 生徒達を見ていたのは人間ではなく、ロイミュードであり、上級の個体へと進化した存在であった。

 外見は音楽楽器を身体に纏ったような姿をしており、ハーモニカを咥えた人間の顔を持った個体であった。口元にあるハーモニカはまるで外れることがないようにと、外部から糸のようなもので縫い合わせて無理矢理縛り付けたようになっており、とても痛々しいものであった。その他に胸部から肩部にかけ、ピアノの鍵盤を模した装甲を纏っており、腹部や両前腕・下腿部はリコーダーを模した装甲に覆われていた。

 上級個体のロイミュードは口元に固定されているハーモニカに手を添え吹こうとしたその時、銃撃音とともに数発の光弾がロイミュードの身体に直撃した。

 

『誰だ!?』

 

 大きく身体をのけ反りながらも、銃撃を仕掛けてきた存在の方へ視線を向けた。そこにいたのは、ブレイクガンナーの銃口を向けた仮面ライダーチェイサーであった。

 

『ずいぶんな挨拶ですね仮面ライダー。いや死神と呼んだ方がいいですか?』

『どっちで呼ばれても関係ない。これから倒す相手に一々説明するほどの優しさを僕は持っていない』

『おやおや。それは残念です。であれば、私も抵抗しないわけにはいきませんね!』

 

 そう言ったと同時に、チェイサー目掛け背部より鍵盤ハーモニカの管を連想させる触手を飛ばした。

 一瞬反応が遅れるも、ブレイクガンナーで触手を弾きながら回避行動をとる。側方へと転がった後、ブレイクガンナーの銃弾を撃ち込んだ。しかしロイミュードの方は口元のハーモニカを力強く吹き、それによって発生した音波で銃弾を打ち消してしまう。

 

『何?』

『私の名はメロディ。覚えなくて結構ですが、一応名乗るのが礼儀ですからね。貴方と違って』

 

 チェイサーに対しての挑発も兼ねてなのか、上級ロイミュード・メロディロイミュードは自己紹介をした。

 

『なるほど。名前から察するに音楽、いや音波を操ると言った方が正しいのか?』

『考察して頂けるのはありがたいことですが、その質問にお答えするとでもお思いで?』

『ならこちらもあえて言ってあげる。答える必要はない!』

 

 チェイサーはメロディ目掛け、銃弾を放ちながら駆け出す。

 メロディは先ほどと同じようにハーモニカを吹いて音波を発生させ銃弾を相殺するが、銃弾の数が多く完全には相殺しきれず体勢を崩してしまう。

 その隙をつき、チェイサーは左手で拳を作り腹部へ拳打を入れた。

 

『ぐっ!』

 

 ひるんだところに畳みかけるよう、顔面へ目掛けブレイクガンナーを持った手で打撃を加え、回し蹴りを叩き込む。

 メロディの身体は大きく後方へ吹き飛び地面へと叩きつけられたがすぐに立ち上がり、体勢を立て直す。

 チェイサーはお構いなしに上段蹴りを放つが、それをメロディは両手で防ぎ衝撃を緩和させた。チェイサーのブレイクガンナーの打撃を合わせた拳打による連続攻撃を、メロディは両手や足を使って防いでいく。しかし格闘戦の技術はチェイサーの方が上手であった。

 攻めに転じようとメロディは拳打を放つが、チェイサーはそれを簡単に絡め取り、膝を蹴り飛ばして強引にメロディの姿勢を崩した後、顎へ拳打を入れ顔面を蹴り飛ばした。

 

『なるほど。流石グローバルフリーズの際、たった一人で我々を相手にしただけの実力はある……』

 

 顎の一撃が響いてなのか、立ち上がる際にふらつきがみられるもその声色からは焦りはみられなかった。

 

『はっ!!』

 

 掛け声とともにチェイサーはブレイクガンナー持った方の手で、メロディの腹部へ渾身の打撃を叩き込んだ。メロディの方はチェイサーの手を両手で掴み取った。

 チェイサーの方は空いた方の手で拳を作り一撃を入れようとするが、その瞬間メロディは言葉をつぶやき始めた。

『君は、人には言えない負の一面を持っているね?』

『何?』

 

 その一言に反応してしまい、チェイサーの動きが一瞬止まってしまう。

 その隙をつき、メロディは口についているハーモニカを先ほどとは違う音色で吹き始めた。

 

『なっ!?』

 

 次の瞬間。チェイサーに異変が生じた。その音色を聞いた途端、彼の中にある‟忌まわしい記憶”が蘇った。それはメロディの音色を聞いたことで無理矢理思い出させられ、見せつけられたものであった。

 

(な、何これ。一体……)

 

 混乱しているチェイサーをよそに、メロディは掴んでいた腕を弾く。そしてハーモニカを力強く吹くことで発生した音波で、チェイサーの身体を吹き飛ばした。

 吹き飛ばされたチェイサーは何とか立ち上がろうとするが、先ほどの音色の効果が続いているのか、両手で頭を抑え込んでしまう。

 

『一体、これは……!』

『思った通りだ。君には他の人にはない強い負の一面を持っているようだ』

『なん、だって?』

『しばらくそこで悶えているといい。私は私でやることがあるので、ここで失礼させてもらいますね』

 

 そう言い残し、メロディは姿を消した。チェイサーは後を追おうとしたが、再び思い出したくない記憶が蘇り、その場で唸り声を上げながら頭を抑え込んでしまう。

 そして落ち着いた頃には既にメロディの姿はなく、一人その場に取り残されていた。

 

(何で急に過去の記憶が? これがあのロイミュードの能力だったらかなり厄介になる)

 

 変身を解除し、人の姿に戻ったきょうやは荒れた息を整えながら、今回の敵の能力を脅威に感じ取っていた。

 

――――――

 

 翌日。アリシアのクラスに、新しい担任が来るとの話が舞い込んだ。

 元々前からその話はあったらしいが、詳しい内容は昨日まで伏せられていた。朝のチャイムがなったと同時に、例の新任教師がアリシアのクラスに入ってきた。

 

「みなさん。席についてますね? 初めまして。今日からこのクラスの新しい担任をやらせてもらうことになりました飯塚(いいづか)といいます。担当は音楽をやらせていただいています。まだ慣れないところはあると思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 新任教師は軽く生徒達にお辞儀しながら自己紹介をした。新しく担任になったのは壮年の男性であり、顔立ちは悪くはないが特別良くもない年相応の見た目をした人物であった。

 丁寧な口調のほか物腰も柔らかい人と感じられる教師であり、クラスの生徒達の印象は悪くはない様子であった。しかしアリシアだけは違っていた。確かにこの教師は雰囲気こそ良い印象はあるが、何処か裏があるように感じ取っていたからである。どうしてそう感じるのかがうまく分からず、アリシアにとってそれが気味悪く感じたのである。

 

(何だろうあの人? よく分からないけど何か嫌な感じがする……)

 

 そう感じていると、新任教師と目が合ってしまう。飯塚と名乗った教師は目が合ったアリシアに笑顔を向けた瞬間、アリシアの身体に悪寒が走った。何故このようになってしまうのかアリシア自身も理解できなかったが、本能的にこの人は不味いと感じ取り、視線を外してしまう。

 視線を外したアリシアの対し、飯塚は笑顔を向けながらも、不敵な笑みを浮かべていた。

 

―――――

 

 その日の夜。テスタロッサ親子が住む自宅では、夕食後の後片付けをしていた。この家は少し特殊であり、テスタロッサ親子(フェイト、アリシア、プレシア)だけでなくハラオウン親子(クロノ、リンディ)と一緒に共同生活をしていた。その他に飼い猫であるリニス2世と飼い犬であるアルフがいた。

 現在後片付けしているのは、プレシアとアリシアの二人であった。プレシアが主に食器類を洗い、アリシアは洗い終えた食器を拭く作業を行っていた。

 他の人達はそれぞれ自分の時間を過ごしているところであり、アリシアの妹であるフェイトは部屋で宿題をしているところであった。

 

「どうアリシア? 新しい学校には慣れた?」

「うん! 友達もできたし、勉強の方も何とか遅れずにできているよ。フェイトの方も同級生の友達が沢山できて、お店で一緒にブレイブデュエル楽しんでるよ! 私もその中に入れてもらってるし!」

「そう。それは良かったわ。アリシアの方は大丈夫? フェイトにも言ったけど、何かあったらすぐにお母さんに言うのよ。特にいじめられたりとかだったら絶対言いなさい。いじめた奴に生きてることを後悔させるだけの仕返しをしてあげるから」

「お、お母さん。そんな物騒なことしないで。それされたら、逆にあの学校に居づらくなるから」

 

 黒い表情を浮かべながら物騒なことを話すプレシアに、額に冷や汗を掻きながらアリシアが話した。その後二人は笑い合ったが、すぐにアリシアの表情が曇ってしまう。

 

「どうしたの? 何かあった?」

「……何でか分かんないけど」

 

 

 

 

 

 

 

「最近になってお父さんと‟お兄ちゃん”のこと思い出しちゃったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

 

 アリシアの言葉を聞いたプレシアは、その表情は一気に強張らせた。食器を洗っていた手が完全に止まり、しばらく動かなくなってしまうほど動揺しているように感じられた。それに気づいたアリシアは、すぐに取り繕うように声を掛ける。

 

「い、いや違うよお母さん。私寂しいとかそう言うんじゃなくて、そ、その……」

「ごめんねアリシア。辛い思いさせて」

「えっ?」

「フェイトも言わないだけで、今のアリシアと同じように不安になってるわよねきっと。お父さんの件は私もまだ受け止めきれてないところはあるわ。だけどあの子のことは、まだ諦めてないわ」

「お兄ちゃんのこと?」

「ええ。今もどこかで元気に過ごしてるって信じてる。私がお腹を痛めて産んだ子ではないけど、お父さんと結婚するって決めた時から、お母さんにとってアリシアやフェイトと変わらない大切な、お母さんの子供であることに変わりはないって今でも思ってるわ」

 

 プレシアはそう言うと目線をアリシアと合わせるようにしゃがむ姿勢になった。

 

「で、でも。警察の人は……」

「その可能性もないとは言い切れないけど、まだ確定したわけじゃない。決定的な証拠が見つかってないって言って、今も捜査を継続してる刑事さんが言ってくれたでしょ?」

「う、うん」

「今は待ってあげて。警察にはここの住所を教えてあるし、見つかってここが分かれば会いに来てくれるはずよ。もしかしたら、恥ずかしがって会いに行きづらいだけの可能性だってあるから」

 

 プレシアはなるべくアリシアの不安を助長させないよう、優しい言葉で話しかけた。

 

「わ、分かった。ごめんお母さん。私、もうちょっと待てるよ。何年経ってもお母さんとフェイトの三人で待ち続けるよ!」

 

 そう言ったと同時に、アリシアはいつもの明るい表情をプレシアに見せた。それにつられ、プレシアの表情も穏やかなものへと変わった。

 

―――――――

 

 子供達が眠りについた深夜帯。プレシアはリビングで一人椅子に座っていた。両手には一枚の写真が握られており、複雑な表情を浮かべていた。

 

「こんな時間まで起きていると明日に響くわよ?」

「リンディ」

 

 プレシアが気付いた時には、一緒にこの家に同居しているリンディ・ハラオウンが近くに来ていた。

 

「いつからそこにいたの?」

「ついさっき。ドア開けて入っても全然気づかないからどうしたのかと思ったら……」

 

 リンディはプレシアの手にある写真に視線に入ったと同時に、彼女が今何を考えているのか予想ができてしまった。

 

「……まだ割り切れないの?」

「私は大丈夫よ。フェイトとアリシアがいる以上、いつまでの落ち込んでなんかいられないから、自分の中で折り合いをつけたわ」

「本当に?」

「ええ。主人の件は受け入れたわよ。ちゃんと」

「……その口ぶりだと、連れ子さんのことは受け入れてないのね」

「まだ確定したわけじゃないわ。貴方だって以前話を聞いた時そう言ってたじゃない」

「確かにその時は私も思ったわ。だけど行方が分からなくなってからもう半年も経過していて、捜索も進展がないって聞くじゃない」

「それは……」

 

 何も言い返すことができず、プレシアは黙り込んでしまう。

 

「ごめんなさいプレシア。私には貴方に割り切ろと言える権利なんかないわ。連れ子とは言え、貴方にとって大切な息子であったのは分かるから。だけど、あまりにもこの状況が長引くのは辛いわよ? フェイトちゃんやアリシアちゃんだけでなく、貴方にとっても……」

 

 リンディの言葉はプレシアにとって胸が痛むものであった。

 半年前、プレシアの夫は研究所の事故によりこの世を去った。それは二人の娘だけでなく、プレシアにとっても辛い出来事であった。だがプレシアにとって耐えられなかったことがもう一つあった。事故前、やっと自分を母と認めてくれた夫の連れ子が、その事故に巻き込まれ命を落とした可能性があると言われたことであった。確定材料がなく、半年経った今でも捜査は続けられていた。しかし半年が経とうとしている現在まで進展はなく、生存の確立は絶望的な状況であった。

 

「……お願いリンディ。もう少しだけ時間を頂戴」

「プレシア」

「まだ両親がいるのが当たり前だと思っている年頃の娘達に、片親である状況を受け入れさせただけでも残酷なことなのに、それに加えてあの子の、‟キョウヤの死”を受け入れさせるなんて惨いことを、今の私にはできないのよ……!」

 

 身体を震わせ、目に涙を溜めていたプレシアを見て、リンディは何も言えなくなってしまった。

 

(お願い。早くフェイトやアリシアに会いに、お義母さんに元気な姿を見せに来て。キョウちゃん)

 

 プレシアの手に握られていた写真には、彼女に抱えられ、複雑な表情を浮かべた幼い少年が写っていた。

 




第一期に関しては今のところあと数体のロイミュードを出したら、一期のラスボス(中ボス)的なものを登場させようかと考えています。今後も不定期になってしまう状況ではありますが、可能な範囲で投稿できればと思っています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。