リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

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 遅くなってしまい申し訳ありません。思いのほか展開を考えるのに時間がかかってしまいました。またかなり字数が増えてしまいました。今後ももしかするとこれぐらいのものになってしまうかもしれません。今回は登場したオリジナルロイミュードについての解説も一緒にのせようと思っています。


第八話

「失踪事件?」

 

 アパートにいたきょうやは究と連絡をとっており、ロイミュードが関係していると思われる事件のことについて聞いていた。

 

「うん。ここ最近、連続して謎の失踪事件が頻回に起きていて、警察もその対応に追われているみたいなんだ。しかも被害者全員にある共通点が存在していたんだ」

「共通点?」

「被害にあったのは全員子供。しかも小学校中学年~高学年の小学生が標的になっているみたい。既に何人もの子供達が失踪してしまっているみたいなんだけど、手口と誰が標的になるかはまったく分かっていないのが現状だね」

 

 電話越しから聞こえる究の声から、悔しさが感じられた。それを聞いたきょうやは気になったことがあった。

 

「あの究さん。一つ聞いてもいいですか?」

「何だい?」

「その子供達が失踪する前に、何か気になる行動とかあったりしませんでしたか、例えば‟奇妙な音”が聞こえたとか……」

 

 きょうやはその失踪事件が、以前自分が相手したロイミュードではないかと推測していた。

 

「その事件に関係しているのが、きょうやくんが遭遇したロイミュードと同一の可能性があるってことかい?」

「まだ確証があるわけではありません。ですが、あのロイミュードが発する能力を駆使すれば、あり得るんじゃないかと思いまして……」

「……わかった。僕の方で少し調べてみるよ。今話した事件は追田警部も担当しているって話だから、‟奇妙な音”についての情報も聞いてみるよ」

「お願いします。それではまた」

 

 究との話を終え電話を切るとそのまま机に突っ伏してしまう。

 ここ最近ロイミュード達の行動が再び活発になってしまい、海鳴市でロイミュード関連の事件が頻発していた。

 警察も対応しているが、現在の警察組織には重加速への対抗手段や彼らを倒せるだけの武器を持ち合わせていなかった。理由としては、過去にロイミュードへの対抗手段として作られたテクノロジーは軍が所有する兵器以上のものもあり、様々な理由によりロイミュードが全滅したと同時に一斉に破棄されてしまったのである。現状復活したロイミュード達に対抗できるのは、チェイサーへの変身能力を持っているきょうややシフトカー達だけであり、きょうやは連日のように対応に追われてしまっていた。その影響もありきょうやの疲労はピークを迎えていた。

 

(不味い、すっごく眠い。でも明日は学校休みだし。このまま……)

 

 徐々に瞼が重くなっていき、目を閉じたと同時にきょうやは眠りについてしまった。

 翌日。きょうやは目を覚ますと同時に節々に痛みが走った。机から顔を上げるとカーテンの隙間から光が差し込んでいた。

 

「あれ? もう朝になってる……」

 

 身体を起こしゆっくりと立ち上がると、すぐにカーテンの方へ近づき開く。日差しが入り込み、思わずきょうやは眩しくて目をつぶってしまう。

 徐々に日差しに慣れ、次に時計の方へ視線を向けた。時刻は朝の8時を回っており、少し遅めの時間帯に起きたことに気付く。寝落ちしてしまったことにやるせない気持ちになっていると、スマホから着信音がなった。画面にはグランツ博士の名前があり、すぐに電話に出た。

 

「もしもし四ノ宮ですが、どうされました」

「おおきょうやくん。朝早くにすまないね急に連絡して」

「いえ。今起きたところなので大丈夫です。博士こそ今日は早く起きれたんですか?」

「いや、僕は今から寝るところだよ」

「……またブレイブデュエルのシステムチェックですか?」

「まあそれもあるけど、近々T&Hの子達がウチに来るってことになってね。それで何かいい企画を立てようと試行錯誤していたらこんな時間になってしまったよ(笑)」

「そ、そうですか……」

 

 徹夜したにも関わらずいつもの調子で話すグランツ博士に対し、きょうやは苦笑するしかできなかった。

 

「おっと。話が逸れてしまったね。今日連絡を入れたのは君の耳に入れてほしい案件があるんだ」

「何かあったのですか?」

 

 気になったきょうやが尋ねる。

 

「海聖小学校で今、特定の子供達が消息を絶ってしまっているらしい」

「……えっ!?」

 

 グランツ博士の話を聞いたきょうやは声を上げてしまった。

 

「間違いないんですか?」

「ああ。海聖小学校の子供、もっと詳しく言えば6年生を中心に消息が分からなくなっているらしくてね。気になって僕の方で個人的に調べてみたら、T&Hのデュエリストとして所属しているアリシアちゃんのクラスを中心にいなくなっているみたいなんだ」

「なっ!?」

 

 きょうやはその件にアリシアが巻き込まれてしまっていることを知りひどく動揺してしまう。しばらく声を出すことができないでいると、電話越しにグランツ博士が声を掛ける。

 

「大丈夫かい?」

「あ、は、はい。昨日りんなさんの知り合いから連絡があって。ロイミュードが引き起こしたと思われる事件と同じ手口だと思いまして」

「やはりロイミュードが絡んでいたか」

「その他に何か聞いていませんか?」

「……そう言えば、最近アリシアちゃんのクラスに新しい担任の先生が来たって話を聞いたね」

「担任の先生?」

「うん。話を聞く限り、物腰の柔らかそうな人だって聞いたな。でもアリシアちゃんはそうは思ってなかったみたいなんだ。何でも裏がありそうで気味が悪いって」

「その人の名前ってわかりますか?」

「フルネームでは聞いてないけど、確か飯塚って名字の先生だったはず」

「分かりました。少しその点を調べてみようと思います」

「前にも言ったでしょ? 僕もできる限り協力するって。それとりんなくんから貸してもらってるシフトカー達に海聖小学校周辺を警戒してもらっているよ。何かあれば君の方へ連絡がいくようお願いしてあるから」

「ありがとうございます」

 

 お礼を言うときょうやは電話を切り、出掛ける準備を始めた。

 

――――――――

 

 その日の夜。アリシアは寝付くことができなかった。

 ここ最近の不調を考慮し早めに床に就いたのだが、一向に眠りにつくことができないでいた。

 原因は自分だけに何故か聞こえてしまう音にあった。初めは気のせいかと思いそのままにしていたようだが音は日に日に強くなり、音色も徐々に不快感を与えるものに変わっていった。そして何よりその音を聞いていると、彼女にとってトラウマになった出来事が何度も思い出してしまうのである。

 病院で検査しても一向に原因が分からない上、音色が強くなる状況も相まってアリシアは精神的に参ってしまっていた。

 

(すっごく気持ち悪い音。この音聞いているとあの時の嫌なことが何度も思い出しちゃって嫌になる)

 

 必死に音色に対抗していくと同時に、徐々に意識が遠のいていくのに気づく。

 

(あれ……? 今まで…こんなこと……)

 

 ベッドで横になっていたアリシアは身体を起こすとゆっくりと目を開けた。しかしその目に生気は感じられなかった。

 

――――――――

 

 その夜。アパートにいたきょうやのスマホから着信音が流れた。相手は究からであり、すぐに通話ボタンを押し電話にでた。

 

「はい四ノ宮です」

「きょうやくん。すぐに海聖小学校に向かってほしい!」

「えっ?」

 

 突然のことに戸惑いながらも、きょうやは理由を尋ねた。

 

「何かあったんですか?」

「君がグランツ博士から聞いた飯塚って名字の教員について調べていたら、とんでもないことが分かったんだ!」

「? その先生に何かあったんですか?」

「うん。まずその点に関しては…って追田警部! 今僕がきょうやくんと話している最中何ですけどっ!」

 

 電話越しに究が誰かと揉めている声が聞こえる。そしてスマホとその人物に取られたのか、電話から別の人物の声が聞こえた。

 

「おうきょうや。元気か?」

「……現さん?」

 

 声の主はりんなの旦那で同じくきょうやの身元引き受け人になってくれた刑事・追田現八郎であった。

 

「久しぶりだな。どうだ、海鳴ではうまくやれてるか?」

「は、はい。何とかやれてます。現さんの方はどうですか?」

「ああ。俺の方は相変わらずだよ。それよりも今回の件だが、お前が言ってた飯塚って名字の音楽教員のことだが、今から約2ヶ月前に‟既に亡くなっている”」

 

 追田警部の言ったことに対し、きょうやは驚きを隠せなかった。

 

「ど、どういうことですか!? もう亡くなってるって!」

「シフトカーから送られてきた画像や海聖小学校の関係者から聞いた人物とそいつが同一であることが確定した。だがそいつは2ヶ月前、自宅で首を吊って自殺していた。原因は自分が受け持っていたクラスの学級崩壊らしい」

「じゃあ。最近海聖小に来たっていう音楽の先生って……」

「その自殺した教師とまったく同じ顔で同じ担当科目である音楽だったとのことだ。もしかすると最近起きている小学生を中心とした失踪事件の犯人は、そいつをコピーしたロイミュードの可能性が高い!」

「……!?」

 

 強引に電話を切ったきょうやはすぐに荷物を持ってアパートを飛び出し、ライドチェイサーに乗って海聖小学校へ向かった。

 海聖小近くまでライドチェイサーを走らせると、学校周辺は異様な空気に包まれていた。

 バイクを小学校の正門前に止め、ヘルメットを取ったきょうやはマッハドライバーを腰に付け学校内へ入っていった。学校内から聞き覚えのある音が鳴り響いた。

 

(この音…!)

 

 音の正体は以前取り逃がしたロイミュードであるメロディが発していたものと同じものであった。

 すぐに音の元へ向かうべく走り出し、音の発生源がとある6年生のクラスであることを突き止める。扉を開けると教卓の所で立っている人物と視線があった。

 

「おや? 小学校に君のような子が来るとは。懐かしい記憶に浸りたくてきた、というわけではなさそうだね」

 

 教卓に立っていた壮年の男性に、きょうやは尋ねた。

 

「貴方が飯塚先生ですか?」

「ほう。私の名前を知っていましたか? だとすると……」

 

 壮年の男性・飯塚はきょうやの腹部に付けているベルトをみて驚いた表情を見せた。

 

「なるほど。君が今の、死神がなっていた仮面ライダーを継いだ人間か。それにしても君のようなまだ成人していない子供を戦わせているところを見ると、余程人間側は戦力がないというわけか」

「何が目的でここにきた。どうして子供達をさらっている?」

「ふっ。そこまで調べていましたか。であれば、もう隠す必要もない」

 

 そう言うと飯塚の身体が黒いノイズ状のものに覆われ、人間の姿からメロディロイミュードの姿へと変わった。

 

『まだ私にはやることがある。邪魔はしないでもらおうか』

 

 メロディへと姿を変えたと同時に、きょうやもシグナルバイクを装填し、チェイサーへと変身した。

 

『ライダー! チェイサー!』

『悪いけど、僕もその要求を受ける気はない!』

 

 変身したと同時にメロディへと駆け出し、胴体目掛けて拳打を入れる。

 衝撃でメロディの身体は黒板に叩きつけられるも、チェイサーが続けて繰り出した拳打を壁伝いに横へ転がり回避する。

 チェイサーは僅かにできた隙を突かれメロディに組み付かれたと同時にハーモニカから音色を発した。

 

『ぐっ! またっ……!』

 

 何とかメロディの身体を突き飛ばし距離をとるが、チェイサーは両膝をつき苦しみ出してしまう。

 

『君の中には他の人間と同じように、誰にも言えない負の部分が存在する。それがある限り私には勝てない』

『……何?』

 

 メロディはチェイサーの身体を蹴り飛ばす。チェイサーの身体は吹き飛ばされ、教室のドアを突き破り廊下の床に叩きつけられた。

 すぐに身体を起こすも立ち上がることができず片膝を付いてしまう。

 

『私はこの人間をコピーしたことで、あることを学んだんですよ』

 

 完全に立てないでいるチェイサーを前に、メロディは話し始めた。

 

『私がコピーしたこの男は音楽を愛し、誰よりも優しかった。しかし子供達のほとんどは音楽を重要視していない上、優しく頼りないこの男の姿をみて意味のない存在と認識していた。故に信頼を得られず誰も彼の言葉に耳を貸さなかった。その結果、彼は一人誰にも気づかれず命を自ら絶ってしまった』

 

 メロディが話し出した内容は、コピー元の教員の生涯であった。

 

『私は彼をコピーしたとき考えたんです。どうしたらその子達の信頼を獲得できたか。でもそれは深く悩む必要のない簡単なものでした。‟相手の弱みを握りそれを使って脅し、身体的・精神的に追い詰めて支配する”。実に簡単なものでした』

『お、お前……』

 

 恐ろしく歪んだ結論を語ったメロディに対し、チェイサーは言葉を失ってしまう。

 

『私の能力は音色を通し、その人物が最も嫌悪している物事や出来事を無理矢理引きずり出すもの。面白いことにこの能力は未成年に特に効果を発揮しましてね。生前の彼がどれだけ恨んで、悔しんでいたかが分かりますよ。でなければこんな能力を私が持つことはなかったんですから…』

 

 ゆっくりとチェイサーへと近づくメロディであったが、廊下から足音が聞こえ、そちらへ視線を向ける。

 

『また一人。やってきましたね』

 

 同じ方向へ視線を向けたチェイサーの目に飛び込んできたものに対し、再び言葉を失ってしまう。

 

『な、何で…。あの子が……!?』

 

 視線の先にいたのは、チェイサーこときょうやにとって大切な存在の一人であるアリシアであった。寝巻のままの状態である彼女の目は生気を失い、完全に操られているような風貌であった。

 

『お前! あの子に何をした!?』

 

 冷静でいられなくなり、チェイサーは声を上げてしまう。

 

『私はこの小学校に赴任してからずっと彼女に警戒されていました。たまにいるんですよ。子供だからか妙に勘のいい子が。あの子もその一人だったのでね。面倒なことになる前に‟手を打った”だけですよ。どうやらあの子、父親が死んだことと兄の行方が分からないことがトラウマだったみたいでね』

『……!?』

『何心配しないでください。私が追い詰めるのは、私に立てつくガキ共だけです。あの子のような存在は事が収まるまでの間監禁して邪魔をさせないようにするだけ……』

 

 メロディが話している途中に、教室の窓ガラスを突き破ってシンゴウアックスが飛んできた。間一髪でそれに気付くも間に合わず、メロディの身体に直撃し火花を放つ。

 

『何!?』

 

 衝撃でバランスを崩し、メロディは倒れ込んでしまう。飛んできたシンゴウアックスをチェイサーは掴み取り、ゆっくりと立ち上がる。

 

『お前だけは……』

 

 

 

『お前だけは、絶対許さない!』

 

 

 

 立ち上がったチェイサーの身体からは、メロディに対しての明確なる殺気が湧き出ていた。シンゴウアックスを持ちメロディへ一気に接近し振り下ろす。

 メロディは両手で防ぐも、逆に防いだ両腕に傷がついてしまう。

 すぐに口元にあるハーモニカを使って音色を出そうとしたが、それを阻止するようにチェイサーは手で掴み無理矢理弾かせないようにする。

 

『――――っ! ―――っ!』

『もう音は出させない!』

 

 チェイサーはハーモニカを掴んだままメロディの腹部に膝蹴りを放ち無理矢理両膝を付かせる。

 持っていたシンゴウアックスから手を離し、しっかりとメロディの頭を抑える。そして次の瞬間。渾身の力を込めて口元のハーモニカを無理矢理引き千切った。

 

『ギャアアアアアア!!!!』

 

 引き千切られた箇所からは、血に似たオイルのようなものを吹き出した。

 断末魔の叫びを上げるメロディの口を塞ぐように、チェイサーはシンゴウアックスの刃を押し当てる。

 その後すぐさまベルトからシグナルチェイサーを取り出し、シンゴウアックスへ装填しボタンを押した。

 

『ヒッサツ! マッテローヨ!』

 

 カウントダウンにも似た待機音が流れるとメロディは徐々に落ち着きを失う。

 四肢を使ってチェイサーの身体を何度も叩いて抵抗するも、チェイサーが離れることはなかった。そして遂に、今のメロディにとって最も聞きたくない音声が響いた。

 

『イッテイーヨ!』

『――――! ―――――っ!』

『五月蠅い。もうしゃべるな……!』

 

 必殺技の発動が可能になり、チェイサーはシンゴウアックスの刃をメロディの口へ力一杯押し込んだ。

 それによりメロディは動かなくなり、周囲が爆炎に包まれた。

 

―――――――

 

 その後きょうやは、電話越しに追田警部に事情説明とロイミュードを撃破したことを伝えた。

 追田警部の方からは、メロディによって捕らえられていた子供達がコピー元の住んでいた屋敷で発見・保護されたとの報告を受けた。だがいい話ばかりではなかった。何人かの子供が遺体で発見されたからである。死因はメロディの能力を受け過ぎたことによる発狂死の可能性が考えられるが、これから原因を調査するとのことであった。

 戦いを終えたきょうやは変身を解かず、チェイサーのままバイクでテスタロッサ親子が住んでいるマンションへ向かっていた。

 当然後ろにはアリシアを連れており、寒くないよう上に羽織物を掛けていた。

 学校から目的の場所までは遠くなく、バイクで移動していることもあってかすぐに到着した。

 目的の場所と部屋の位置は事前に追田警部を通して情報は貰っていたため、プロトスピードを使用し外へ来てもらうよう誘導する。

 

(巻き込ませないって決めたのに。こんなことになるなんて……)

 

 抱きかかえたアリシアの寝顔を見ながら、チェイサーは後悔していた。

 あのままメロディを放置していたら、ヘタをすれば遺体として発見されていた可能性が考えられたからである。腕の中で静かに寝息を立てるアリシアの顔を、起こさないようそっと触れた。

 

『こんなに近くで接したのは何年ぶりかな……』

 

 懐かしさに浸っていたチェイサーだが、プロトスピードが戻ってきたことに気づき視線を向ける。少し待っているとアリシアの母であるプレシアが、息を切らせながら飛び出してきた。

 

「……!? アリシア!」

 

 チェイサーの腕に抱かれていたアリシアの姿を確認すると、プレシアの目から涙があふれていた。その後を追うように彼女のもう一人の娘であるフェイトもやってきた。

 

「えっ? 何で、仮面ライダーが?」

 

 フェイトは何故チェイサーが自分の姉と一緒にいるのか驚きと困惑した表情を浮かべていた。チェイサーは何も言わず、プレシアへとゆっくりと歩き出した。

 

『……もう大丈夫です。元凶は倒しました。この子に怪我はありません』

 

 静かにそう言うとアリシアの身体を優しく両手で持ちプレシアへと差し出した。

 プレシアはすぐに受け取り、無事を確認すると安堵の表情を浮かべながら泣いていた。

 その様子を見たチェイサーはそのまま立ち去ろうとするが、フェイトに呼び止められてしまう。

 

「あ、あの!」

『……』

 

 チェイサーは何も言わず振り返ると、視線をフェイトへ向けた。

 

「あ、ありがとうございました! 私の姉を助けてくれて!」

 

 姉であるアリシアが帰ってきた喜びもあってか、フェイトは笑顔でチェイサーにお礼を言った。その瞬間チェイサーの中で何かがこみ上げてきたが、必死にそれを抑えバイクへ戻り跨る。

 

『……元気でね』

 

 聞こえるか分からないくらいの声で呟くとバイクで走り去ってしまう。その背中は何処となく寂しさを感じられるものであった。

 




・メロディロイミュード
 全身に音楽楽器を貼り付け、ハーモニカを咥えた人間の顔を持った外見の上級ロイミュード。口元にあるハーモニカは外れることがないようにと外部から無理矢理縛り付けたようになっておりとても痛々しい。ハーモニカの音色には、対象となる人物の最もトラウマになっている物事や出来事を無理矢理引きずり出し苦しめる効果がある。これは特に未成年に効果があるようで、きょうやも例外なく効果の対象であった(これが成人に聞くかは不明)。コピー元は音楽教師の男性で、学級崩壊が原因で自殺を図ってしまっている。そこから学んでなのか、‟相手の弱みを握りそれを使って脅し、身体的・精神的に追い詰めて支配する”ことが信頼を得る方法であると歪んだ考えを持ってしまう。この能力でチェイサーへ変身したきょうやを追い詰めるも、自身の安全を確保するために行った行為がチェイサーの怒りを買ってしまい、ハーモニカを引き千切られ能力を失う。最後は口にシンゴウアックスの刃を押し付けられた状態で放たれたアクロスブレイカーによって倒された。
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