リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

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 お待たせしました。今回の話でようやくチェイサーのオリジナルの強化フォームが登場します。


第九話(後編)

 

 東京のとある研究所。

 そこではりんなと究、通信越しにグランツ博士が急ピッチで作業を行っていた。

 

「あと、あともう少しよ。西城君、グランツ君頑張って」

「もちろん頑張りたいのは山々なんですけど……」

「この歳で三徹はしんどいよ」

 

 事前に準備していた設計図をもとに、三人はきょうやが使用することを前提とした新たなチェイサーの開発を行っていた。

 しかし作業の過程で様々な問題点が見つかり、それの修正や調整を重ねていく内に既に三日が経っていたのである。

 

「あとはこれをこうして……」

 

 最後の力を振り絞り、パソコンのエンターキーを押したことで完了を示す音が響く。

 

「できたっ!!」

 

 専用台座に載せていたシフトバイラルコアを手に取り、仮面ライダーを示すRの文字が書かれた黒いケースに入れた。

 

「現八を呼んで、これを届けてもら……」

 

 駆け足で移動しようとした矢先、デスク内にあるキャビネットに膝をぶつけてしまいその場に倒れた。

 

「えっ? ちょっ、りんなさん!?」

「大丈夫かい? りんなくん」

「え、えぇ。流石にもう徹夜は難しくなってきたかしら……」

「そういえばりんなさん。今年で確か…「西城君」…何でもありません。気のせいでした」

 

 二人がやり取りをしている最中、グランツ博士の携帯が鳴り出す。

 画面にはアミティエと娘の名前が書かれており、すぐに通話ボタンを押して電話へ出た。

 

「もしもし。どうしたんだいアミタ?」

「……お父さん? 今大丈夫、ですか?」

 

 電話に出ると娘の弱々しい声が聞こえた。

 声の調子から只事でないことを感じ取り、何があったか尋ねた。

 

「何かあったのかい?」

「お父さん。きょうやくんが、‟仮面ライダー”だったんですね」

「!?」

 

 今にも泣き出しそうな声で、アミタは父であるグランツ博士に尋ねた。

 

「ああ。その通りだ。彼が今まで仮面ライダーとして戦ってくれていた。僕も知ったのは最近だよ」

「最近って、いつですか? 知ってたのなら、何で教えてくれなかったんですか?」

「彼に頼まれたんだ。できることなら自身の正体を広めないでほしいと」

「…………。」

 

 アミタは耐えきれず電話越しで嗚咽を漏らしてしまう。しばらくして落ち着きを取り戻し、言葉を発した。

 

「……今病院にいます。キリエと、友達もいます」

「病院? どうして?」

「きょうやくん。私たちを守ろうとして、仮面ライダーになって戦ってくれました。でも、全然歯が立たなくて、ボロボロに……」

 

 その瞬間、グランツ博士は血の気が引く感覚に襲われた。

 

「どこの病院だ! 教えてくれアミタ!?」

 

 冷静になることができず、電話越しで大きな声を出してしまった。

 

「学校の近くの、総合病院にいます。きょうやくん。意識不明の重体だって……!」

「!?」

「お父さん。私、私どうしたら……」

「分かった。大きな声を出して悪かった。今そっちに行く!」

 

 電話を切ると、画面越しから発せられた究の声を振り切り、研究所を飛び出した。

 

―――――

 

 グランツ博士は車を走らせアミタから連絡を受けた病院へ着いた。

 車から降りて駆け足で病院内へと入りあたりを見回す。

 

「パパ!」

「キリエ!」

 

 受付にいたキリエに声をかけられ、すぐに傍へ駆け寄った。

 

「きょうやくんは?」

「先輩は病室で眠ってる。傷の治療は終わってるけど、まだ意識が戻ってなくて……」

「そうか。他のみんなは?」

「お姉ちゃんは落ち着いてきて、今病室内にいるよ。朱乃さんと飛鳥ちゃんは出直すって言って家に戻ったよ。学校があんなになっちゃったから、二人は親に事情を話してくるって」

 

 事情を聞いた後、キリエの案内できょうやの病室へ向かう。

 引き戸式になっているドアを数回ノックした後、病室へと入る。そこでグランツ博士の目に入ったのは、ベッドの上で眠っているきょうやと丸椅子に座っているアミタであった。

 寝ているきょうやは顔だけでなく体中に包帯が巻かれており、先の戦いの凄惨さを物語っていた。

 

「父さん。これ」

 

 アミタは半壊したマッハドライバー炎をグランツ博士に差し出した。

 

「ドライバーまで破壊されたのか……」

「ねぇパパ。あのロイミュード明らかに先輩のこと狙ってる様子だったんだけど、何か知ってない? もうこんな状況なんだし、隠してること全部話してほしいんだけど?」

「分かってる。でも先にこの件を片付けておく必要がある。今回の件であのロイミュードの狙いがきょうやくんだってことは確定した。おそらく彼が無事であることを知れば、また襲撃を仕掛けてくる可能性がある」

「でもどうするんですか? きょうやくんはこの状況だし……」

「彼のことだ。目を覚ましたらまた無理にでも戦いに出るのは明白だ。その時のためにこれを直しておく必要がある」

「この状態のきょうやくんに戦わせる気なの!!」

 

 壊れたマッハドライバーを修復しようとするグランツ博士に対し、きょうやを戦わせようとしていると感じたアミタは声を荒げた。

 

「僕だってこの状態の彼に戦わせようとは思ってないよ。だけど、とてもじゃないけど止めることもできないと思っているんだ。きょうやくんの意思は、僕らが思っているほど固いんだ」

「そこまでする必要があるってこと?」

「ああ。僕も詳しいことを聞いたわけじゃないから何とも言えないけど、彼はロイミュード達から何かを守り抜かなければならないという考えに囚われているように見える。しかも今彼が標的になっている以上、彼から武器を取り上げたら間違いなく何もできずやられてしまうのは明白だ。仮にどのような結果になったとしても、これを直す必要があるんだ」

 

 父であるグランツ博士の言ったことに対し、フローリアン姉妹は何も言えなくなってしまう。

 

「とりあえず二人は僕と一緒に研究所に戻ろう。後のことは僕の方から八神家の人にお願いするから」

「えっ? 何で八神堂なんですか?」

 

 この状況で八神堂の名前が出ていることに疑問を感じるアミタであったが、キリエはすぐにその理由に気づいた。

 

「あー、なるほど。八神堂の人達は最初からグルだったわけ?」

「まあ、そう捉えてもらっていいよ。本当に偶然きょうやくんの正体を知って以降、彼女達なりに彼のサポートをしていたんだよ。グローバルフリーズが始まる前からね」

「ちなみにパパはいつからなの?」

「僕はグローバルフリーズ以降、知人であるりんなくんから聞いたんだよ。少し知っておく必要があると思ってね。それだけで詳しいことは分かっていないんだ」

「まあ、それでも後で尋問することは変わりないから、覚悟してね♪」

「……お手柔らかに頼むよ」

 

 笑顔で物騒なことを話すキリエに対し、グランツ博士は苦笑いを浮かべることしかできなった。

 

―――――

 

『キョウヤ、話があるんだ。父さんこの人と再婚しようと思っているんだ』

『初めましてキョウヤくん。私は――』

『違う! この人は僕のお母さんじゃない―――!』

 

―――――

 

(今度はこれか……)

 

 病室のベッドで目を覚ましたきょうやは、ゆっくりと身体を起こした。

 包帯が身体中に巻かれていることを確認し、自分があの後どうなったのかを思い出していた。

 

「そっか。あのロイミュードに……」

 

 対策がまだ万全でない状態で黒いロイミュードと戦うことは無謀であることは分かっていた。しかしあのまま行かずにいたら、友達がどうなっていたか分からない状況であり、ほうっておくことができなかったのである。

 目覚めたきょうやは、ベッドの近くにある台に置いてあったスマホを取り、りんなへと電話をかけた。

 

「もしもしきょうやくん!? 気が付いたの!?」

 

 予想していた第一声を聞いたきょうやは思わず耳からスマホを離してしまう。

 

「あの、りんなさん。あれから何日経ったか教えてもらえませんか?」

「三日よ。あなたは三日間意識が戻らなかったのよ」

「すみません。無謀なのはわかっていたんですが、僕もちゃんと考えずに行動してしまいました」

「まあきょうちゃんの性格を考えればこうなることは分かっていたわよ。だけど今回の件であの黒いロイミュードがあなたを標的にしていることが確定した。もし相手にきょうちゃんが無事なことが知られたら、また襲撃を仕掛けてくる可能性があるわ」

「でも前回の戦いでドライバーが破壊されました。今やつに襲撃されたら僕にできることは囮になるしか……」

「今ドライバーに関してはグランツくんが修復しているわ。私が修理するには場所の関係でとてもじゃないけど間に合わないから」

「そう、ですか……」

 

 マッハドライバーの件は問題ないことを確認したきょうやだが、表情は暗いままであった。

 またチェイサーになることができたとしても、その力をもってしても歯が立たなかった相手である。

 前回の戦いを通しても弱点らしいものを見つけることができない上、今から特訓して対策を考えるにしても時間がない状況であり、きょうやは悩んでしまう。

 

「きょうちゃん。あのロイミュードへの対抗策なら一つ出来ているわ」

「本当ですか!?」

 

 きょうやの悩みに気づいてか、りんなが電話越しに対抗策があることを伝えた。

 

「今までのきょうちゃんの戦闘データと既存のものを使ってチェイサーの強化フォームを作ったの」

「あれ以上に強化が可能なんですか!?」

「こうなることを予想して私の方で設計図だけは作っていたの。それを西城君とグランツ君に協力してもらってようやく完成したの。でもこの新しいチェイサーにきょうちゃんが変身できるかはほとんど賭けに近いわ。でも現状これに頼るしかない」

「それは今どこにあるんですか?」

「変身に必要なアイテムはグランツ君の所に届いているけど、ドライバーの修復が終わっているかは分からないわ」

「分かりました。でしたらすぐに……」

 

 話している最中に病室のドアを誰かがノックした。

 

「後でまた」

 

 そう伝えるときょうやは通話ボタンを切ると、ドアに向かってどうぞと声をかける。

 すると勢いよくドアが開くとシグナムが勢いよく入ってきた。

 

「シグナムさん」

「ようやく目を覚ましたか。この馬鹿者が」

「……返す言葉もありません」

「まあいい。後で主や他の連中からこってり絞られるのは目に見えているからな」

 

 そう言いながら、シグナムは近くにある丸椅子へ座る。

 

「目を覚ましたのはいつだ?」

「ついさっきです。状況を知るために、りんなさんに電話してました」

「なるほど。であればあの後どうなったかの話は聞いているんだな?」

「はい。壊れたドライバーは今グランツ博士が修理を進めてくれているみたいです」

「……どう転んでもまた戦う気でいるんだな?」

 

 諦めとのとれる口調でシグナムがため息混じりに話す。

 それに対しきょうやは苦笑いを浮かべることしかできなった。

 

「聞くところによれば、今まで使っていた武器や技が通用しなかったそうじゃないか? そんなやつに勝てる方法なんかあるのか?」

「さっきりんなさんに電話したら、あのロイミュードへの対抗策として強化アイテムを作ってくれたようなんです。でもそれを僕が扱えるかはほとんど賭けに近いって言われました」

「運頼み、というわけか」

 

 黒いロイミュードの力は、交戦したきょうやだけでなく過去にロイミュード関連の事件を担当し解決へ貢献したりんな達でさえ手を焼くほどであった。

 スペックは完全に対ライダー兵器の位置づけであったようで、チェイサーのスペックを軽く凌駕していた。

 その上きょうやの戦闘スタイルの分析もされていたことを考えると、どう足掻いても既存のライダーシステムを用いた戦いでは勝ち目はないのは明白であった。

 

「シグナムさん」

「何だ?」

「あの黒いロイミュードの目的は完全に僕です。もし僕が無事なのが分かればまた襲撃してくるはずです。そうなったら僕に構わず……」

「それ以上余計なことを言うなら病人であろうと殴り飛ばすぞ」

「でも、今の僕には、どうすることも……」

「安心しろ。またあれが来るようならお前を抱えて逃げることぐらいできる。それにお前はまだ死ぬわけにはいかないのだろう? アインスから話は聞いている。母親違いの妹が二人いるんだってな?」

「それは……」

 

 そう話していると、あたりに重加速が発生した。

 それによりシグナムときょうやの身体は身動きが取れなくなるが、きょうやだけはすぐに動くことができた。

 

「まさか!?」

 

 ベッドから起き上がると窓の方へ向かう。外にはあの黒いロイミュードの姿があった。

 

―――――――

 

「走れるか!?」

「は、はい」

 

 病院前に出現した黒いロイミュードから逃げるため、シグナムときょうやは裏口から病院を出た。

 現状対抗手段もない上、敵の目的がきょうやだとすれば周りを巻き込まないようにする上でも最善と考えたためである。

 重加速が発生しているが、シグナムに持っていたシフトカーを渡したことでシグナムも動くことが可能になっており、二人で遠くへ逃げようとしていた。

 

「こんな時に。明らかに早すぎる!」

「今は余計なことを考えるな! 少しでもここから離れるぞ!」

 

 走って移動しようとするが、目覚めたばかりのきょうやには負担が強いようで、時折足取りがおぼつかない様子であった。

 シグナムはきょうやに合わせており、肩を貸したりしていたが、そんな二人の行く手を阻むように二体の下級ロイミュードが現れた。

 

「今度は仲間を連れてきたのか」

 

 愚痴をこぼしながら、二体を相手にしようと前へ出ようとしたきょうやをシグナムが止めた。

 

「私が相手をする」

「で、でも!」

「実戦は経験していないが、撃退程度はできるさ。まあ見てろ」

 

 シグナムが二体の下級ロイミュードの前に出ると、その内の一体が殴りかかってきた。

 それを難なく躱したシグナムは胴体に膝蹴りを放ち、顔面に裏拳を入れて吹き飛ばす。

 続く二体目も同様に殴りかかってきたため、今度は拳を受け流し、背中に後ろ回し蹴りを叩き込んで体勢を崩した。

 起き上がろうとした二体の下級ロイミュードに近づき、シグナムを掛け声とともに踵落とし、回し蹴りをそれぞれの顔面に放ち、撃退に成功する。

 

「今の内に離れるぞ!」

「え? あ、はい」

 

 下級ロイミュードとはいえ、武装している機械生命体を何の問題もなく対処したシグナムに驚いてしまう。

 そのシグナムに続く形で走り出したが、見計らったかのように二人の目の前に黒いロイミュードが現れた。

 引き返そうと元来た道の方へ視線を向けるが、先ほど撃退した下級ロイミュードが立ち塞がった。

 

「囲まれたか」

 

 窮地に追い込まれた二人を助けるように、一台の車が走ってきた。

 車は二人の前に止まると、中からグランツ博士が黒いケースを持って出てきた。

 

「博士!」

「きょうやくん。これを」

 

 差し出された黒いケースを受け取り、蓋を開けると修理が完了したマッハドライバー炎とシフトバイラルコアが入っていた。

 

「このシフトカーって例の?」

「ああ。目覚めたばかりの君に戦わせるのは正直嫌なんだけど、ダメだって言っても聞かないだろ?」

「……ありがとうございます」

「後ろの二体は任せろ。どうなっても結局病室のベッドに戻るのは変わりないんだからな。思いっきりやってこい」

 

 シグナムの言葉にきょうやは強く頷くと、黒いロイミュードの前に立つ。

 マッハドライバーを腰につけ、パネルを上げるとバイク音に似た待機音が流れる。

 手に持ったサイの意匠が入ったシフトカー・シフトバイラルコアをドライバーへ装填した。

 

『シフトバイラルコア!』

(入った!)

 

 認証できたのか、ベルトからチェイサーへ変身する際と同じ待機音が流れる。

 

「変身!」

 

 掛け声とともに拳でパネルを下げた。

 

『ライダー! 超! デットヒート!』

 

 ベルトを中心に青紫の電流が流れ、きょうやの周りに電流を帯びた四つのタイヤが出現する。

 すべてのタイヤが同時にきょうやの身体に重なり、新たなチェイサーへと変身した。

 

「よし! 成功だ!」

 

 頭部・胸部・肩のアーマーは今までのチェイサーと同じだが、前腕・腹部から下腿部(足部は除く)にかけ、黒を中心としたメカメカしいものへと変わっていた。

 カラーも白銀を中心としたものから黒と銀色が中心に変化しており、細部はメタリックパープルになっているほか、複眼は深紅のものに変わっていた。

 新たな戦士・超デットヒートチェイサーへ変身したきょうやは、ゆっくりと黒いロイミュードへ歩を進める。

 

「成功したのか。であれば気にせずこいつらに集中できる」

 

 変身に成功した場面を確認したシグナムは二体の下級ロイミュードと再度対峙し構えた。

 

―――――

 

 黒いロイミュードは咆哮を上げると、新たな姿へ変わったチェイサーへ突っ込んでいく。

 チェイサーは右手に青紫の炎を纏わせ、突っ込んできた黒いロイミュード目掛け渾身の拳打を叩き込んだ。

 その一撃は凄まじく、黒いロイミュードの身体を吹き飛ばす。続けざまに左手で腹部に拳打を打ち込み、力強い掛け声とともに右手で顔面を殴り飛ばした。

 今までどんな攻撃を受けても怯む程度であった黒いロイミュードの身体へダメージを与えることに成功する。

 黒いロイミュードも渾身の拳打をチェイサーの胸部へ打ち込むが、強化フォームになったチェイサーには大したダメージにはならなかった。

 もう一度放たれた一撃を、チェイサーは腕で弾きカウンターを放つ。

 怯んだところへ炎を纏った上段蹴りを叩き込み、続けざまに胸部目掛けて高蹴りを放ち、黒いロイミュードの身体を大きく吹き飛ばした。

 

(長くはもたない。決めるなら今しかない!)

 

 強化フォームによる身体への負担が予想以上であり、長くは続かないと判断したチェイサーはベルトのパネルを開きボタンを押した。

 

『ヒッサツ! バースト!』

 

 もう一度パネルを閉じ、必殺技を放つ体勢へと移行する。

 身体中から蒸気のように煙が噴き出し、右手を中心に青紫の炎のエネルギーが集まる。

 

『フルスロットル! 超! デットヒート!』

 

 エネルギーが溜まったのか、チェイサーはその場で大きく跳躍。

 立ち上がろうとした黒いロイミュードの抉られた胸部目掛け、必殺技であるライダーパンチを叩き込んだ。

 そのまま身体を地面に叩きつけたことで、黒いロイミュードは断末魔ともとれる咆哮を上げながら爆発した。

 やっとの思いで倒したチェイサーだが、すぐ近くで下級ロイミュードと交戦しているシグナムとグランツ博士を探す。

 二体相手に徐々に劣勢になっているシグナムを見つけると、ベルトのボタンを4回押した。

 

『バースト! キュウニ! チョウ! デットヒート!』

 

 全身から蒸気のように煙を吹き出した直後、一瞬にして下級ロイミュードのもとへと移動。

 高速移動を乗せた拳打を下級ロイミュードの胴体へ叩き込む。

 そこから拳打による連続攻撃を浴びせ、最後に顔面を殴りつけたことで身体は爆発。

 もう一体は頸部目掛け放った回し蹴りが直撃し爆散した。

 

『ぐっ! がはっ……』

 

 ロイミュードを殲滅したと同時に限界がきたのか、その場で片膝をついてしまう。

 

『オツカーレ!』

 

 ベルトに装填してあるシフトバイラルコアを取り出したことで、変身を解除する。

 

「きょうや!」

 

 地面に倒れそうになるきょうやの身体をシグナムが受け止める。

 

「すまない。助かった」

「ハァ、ハァ、ハァ……」

「まず早く病院へ戻ろう。話はそれからでもいいはずだよ」

「わ、分かりました」

 

 グランツ博士はきょうやの身体を抱え、シグナムとともに病院へ向かった。

 黒いロイミュードを倒すことに成功したが、それによりきょうやの身体は強化フォームの運用により再びボロボロになり、病院の医師の怒りを買ってしまったのは言うまでもなかった。

 




・超デットヒートチェイサー
 パンチ力/34.5t キック力/29.7t
 ジャンプ力/45m 走力/100mを2秒
 メインカラー/黒・青の強いバイオレット・銀

 四ノ宮きょうやがマッハドライバー炎にシフトバイラルコアを装填し変身した姿で、仮面ライダーチェイサーの強化フォーム。
 本編序章にて起きた第三のグローバルフリーズでの出来事を受け、りんながシフトバイラルコアとネクストシステムの拡張機能(スロットの戦闘データと、ベルト本体に蓄積された戦闘データを組み合わせて新たなライダーを試作する機能)を利用し、設計図のみ作られていた。しかし変身者であるきょうやへの負担やあくまで理論上の話だけであり、必ずしも変身できる保証がなかったため開発までには至らなかった模様。
 敵側勢力が対ライダー用に作られた黒いロイミュードへの対策としてりんなを中心に究、グランツ博士の三人で急遽開発が進められ、三度目の襲撃時にグランツ博士によってきょうやの手にわたり、ぶっつけ本番の運用となった。
 外見は頭部・胸部・肩のアーマーはライダーチェイサーのままだが、前腕・腹部から下腿部(足部は除く)にかけ、超魔進チェイサーの装甲になっているのが特徴(プロセスとしてはチェイサーマッハ、マッハチェイサーと似ている)であり、かつてチェイスがなった二つの姿を混ぜ合わせた姿をしている。複眼はオレンジから深紅に近い赤に変化している。
 火力やスピードだけでなく防御力も向上しているが、欠点としてこの形態ではタイヤコウカン、シグナルコウカンが不可能な点が挙げられる。また通常のチェイサー以上の負担を変身者に与えてしまうリスクを秘めているため、運用には細心の注意が必要。

・能力
ブーストイグナイターを連打し限界稼働状態にすることで、一定時間全身から蒸気を吹き出しながら高速移動が可能。また超高熱を帯びた高火力の打撃攻撃を繰り出す。
・ライダーパンチ
 超デットヒートチェイサーの必殺技。右手の拳に青紫色の炎を纏わせた強力な拳打を叩き込む。
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