リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

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 前回の投稿より遅くなってしまい、本当に申し訳ないです。中々モチベーションが上がらない+内容が思いつかないと全然進めることができませんでした。
 今回ようやく形にすることができました。今回の前後編ともう一話で本作を終了したいと思います。何とか形にできた内容であり、粗削りになってしまって申し訳ないと思っていますが、ご容赦いただければと思います。


第十話(前編)

 

 黒いロイミュードに勝利してから数週間が経過した。

 先の戦いで受けた傷が癒えたきょうやは病院を退院し、八神家で過ごしていた。

 本来であればアパートで過ごしているのだが、入院中の無理が全員に知れ渡ってしまい、一人での生活を許してもらえなかったのである。

 退院してすぐに八神家に連行されるように連れていかれてしまい、正座させられた状態で長時間の説教を受けたことはトラウマになったのは言うまでもない。

 あれ以来ロイミュード関連の事件は起きておらず、束の間ではあるが休息を得ることができていた。

 またドライバーやその他のツールは現在りんなの元へ預けられている。強化されたチェイサーへの変身はきょうやの身体だけでなく、急場しのぎで修理したドライバーにも影響が出てしまい、壊れた武器と一緒に一度大幅なメンテナンスが必要になったためである。

 

「きょうや君。朝ごはんできたよ!」

 

 1階からはやての声が聞こえ、学校へ行くために必要な道具を持って下へと向かうとリビングへ入るときょうや以外揃っていた。

 

「ごめん。準備するの手伝えなくて……」

「ええよ気にしなくて。いろいろ準備に手間取ったんやろ?」

「あー、うん。そんなところ、かな」

「何だハッキリしねぇな。もしかして久々の学校に行くのが嫌になったのか?」

 

 歯切れの悪い返答をするきょうやの姿が気になったのか、ヴィータが尋ねる。

 

「そう言うなヴィータ。お前だって休み明けの学校はだるいとかなんとか言っているだろ? 誰だってそうなってもおかしくはない」

「……学校嫌になっちまったのか?」

「ううん。そんなことないよ。学校っていうより、友達になんて説明しようかなって考えちゃって」

 

 きょうやの話を聞いた全員があーっと声を上げてしまう。

 前回の黒いロイミュードの件で学校の仲のいい同級生と後輩に正体がばれてしまったのである。

 しかも入院の件もあったため、それ以来学校に行けてなくきちんとした話ができていなかった。

 

「大丈夫じゃね? ばれたっつってもフローリアン姉妹なんだろ?」

「せや。心配したって何にもならへん。向こうだってきょうや君に大して冷たくなることはないと思うよ」

「我が主の言う通りだ。彼女達に知られた以上、話せば分かってくれるはずだよ」

 

 ヴィータに続き、はやてとアインスから励まされたきょうやの表情は幾分か柔らかくなっていた。

 

「そうだよきょうちゃん。気にしたってしょうがないわ。それよりも、私朝早起きして頑張って作った……」

「それは私とザフィーラがもらうからきょうやに食わせるな。また病院送りになったらたまったものではない」

「ひどいシグナム! 前よりもちゃんと練習したから大丈夫よ!」

(さりげなく俺を巻き込むなシグナム)

 

―――――

 

 八神家を出てしばらく歩くと、見覚えのある人影が二人立ち止まっていた。

 

「あ、先輩♪ おはようございまーす!」

「キリエちゃん。それにアミタさんも」

「おはようございます、きょうやくん。久しぶりですね」

「う、うん。いろいろ心配かけてごめんね」

「本当ですよ。あれから全然連絡くれないし、学校長い間休むから詳しいことも聞けないからずっとモヤモヤした気分になってましたよ」

 

 アミタとキリエに出迎えられたきょうやは、そのまま二人と一緒に登校することになった。

 

「あ、あの、この間の件って」

「安心して下さい。このことは誰にも話していません」

「そうそう。それに言ったところで誰も信じてくれないですもん」

 

 それを聞いたきょうやはホッとしたのか、表情がわずかに緩む。

 

「ですが、後できちんと説明してくれませんか? 一応私達も知る必要があると思いますので」

「あー、それに関しては私もお姉ちゃんの意見に賛成。自分の父親が‟あれ”のことを知ってたのは気になるし」

「う、うん。ちゃんと話すよ。もう隠し事はできそうにないし」

「じゃあ学校終わったら私たちの研究所に来てよ。そこの方が話せるでしょ?」

 

 キリエの提案に頷くと話を切り上げ、三人で学校まで一緒に登校した。

 校門前まで着くと、朱乃と飛鳥が待っていた。

 二人もきょうやがくるのを待っていたようで、その姿を確認すると安堵の表情を浮かべていた。

 二人も以前と同じようにきょうやと接することにしたようで、態度を変えている様子は見られなかった。

 きょうやが仮面ライダーになっていることもフローリアン姉妹同様、誰にも口外していなかった。

 朱乃にいたっては、きょうやが自分の恩人であることを知ることができてよかったと捉えている様子であった。

 

―――――

 

 授業を終え、放課後になるとアミタとキリエと一緒にグランツ研究所へと向かうことになった。

 朱乃と飛鳥は、自ら踏み込むべき内容ではないと判断し、申し出を断ったため、フローリアン姉妹のみに話すこととなった。

 研究所に着くと真っ先にアミタの部屋へと案内されるが、途中グランツ博士に出会い、軽く挨拶をした。事情は知っていたため、特に深く内容を聞こうとはしなかったが、すれ違う際に「気を付けるんだよ。ウチの娘たちはしつこいからね」と小声できょうやに伝えた。

 声色から相当質問攻めを受けたのか、ひどく疲れた表情をしており、これから同じようなことが起きるのかと思いきょうやは気が滅入ってしまっていた。

 部屋へ入り少し落ち着いてから、きょうやは二人に今までの経緯を話し始める。

 何故自分がこの海鳴市へ来たか、なぜ仮面ライダーになれるようになったか、海鳴市で起きたグローバルフリーズについて等正直にすべてを話した。

 

「あの夜の出来事が、大量の機械生命体が引き起こしてたなんて」

「うん。昔に二度同じようなことが起きたんだけど、当時仮面ライダーになってた人が止めてくれたんだ」

「ていうか、先輩。流石に命知らずにもほどがありません? たった一人で大量の機械生命体相手にするとか」

「僕一人で戦ってたわけじゃないよ。ちゃんとサポートしてくれる人たちはいてくれたし」

「それにしても流石におかしすぎます! 他に仮面ライダーになれる人がいるなら、その人達に任せればよかったじゃないですか。きょうやくん一人に戦わせるなんて何考えてるんですか!?」

 

 事情を聞いたアミタは怒りを露わにしてしまっていた。

 キリエもアミタほどではないが、険しい表情を浮かべていた。

 

「私ちょーっと思ったんですけど、昔に先輩以外になれる人いたんなら、その人達に協力頼めなかったんですか?」

 

 キリエの質問に、きょうやは首を横に振る。

 

「それに関しては僕が本格的に戦う前に考えられてて、りんなさんが対応しようとしたんだけど、使えていたツールや武器が軒並み使用できない状態になってたんだ」

「使えないって、原因は何なんですか?」

「それが分からないみたい。一部のシフトカーは問題ないみたいなんだけど、変身に使うシフトカーやシグナルバイク、それとベルト関係は全く使えなくなってて。唯一使えたのが、僕が持っているこれだけだったんだ」

 

 二人の前に、シグナルチェイサーを見せながら事情を話す。

 

「本当はこれを開発した人からも戦うことは強く反対されてたんだけど、無理言ってお願いしたんだ。どうしてもやらなきゃいけないことがあって」

「やらなきゃいけないことって、きょうやくんがしなきゃいけないことなんですか? 」

「うん。どうしても守りたい人達がいるから」

 

 きょうやはその言葉に嘘はないことを示すように、一切二人から目を逸らさなかった。

 その姿にアミタとキリエは何も言えなくなってしまう。

 しばらくして二人は目を合わせ、深くため息をついた後口を開いた。

 

「そこまで言うなら、私たちはこれ以上追及しません。ですが、もう命にかかわる無茶はしないと約束してくれますか?」

「あ、うん。それに関しては他の人達からも言われてて気を付けようって考えてるから安心して」

 

 アミタの言葉にきょうやは顔を青ざめながら答える。

 その様子からキリエは「ああ、もしかして八神家の人達に何かされました」と質問する。

 当然ではあるが、それに関してはきょうやが答えることはなかった。

 

――――――

 

 一通り話を終え、研究所を出ようとしたきょうやにグランツ博士が声をかけてきた。

 いわれるがまま博士についていくと、正面の入口とは別の出口へ案内された。

 案内された出口から外に出ると、りんなに預けていたライドチェイサーとベルトの入ったケースがそこにあった。

 

「これ、どうして……」

「りんなくんから連絡をもらってね。アパートだと他の人達の目に入っちゃって騒ぎになってもってことで、僕の研究所に送ってきたんだよ。事情を知ってる職員がいないから隠すのちょっと苦労したけど」

「すみません。すぐに持って帰ります」

「大丈夫だよ。これくらい……」

 

 軽く頭を下げてからバイクへ跨ろうとした際、研究所の方から悲鳴が聞こえた。

 きょうやとグランツ博士はその声を聞くとすぐに声のした方へと駆け出した。

 研究所へ戻り、正面の入口へ向かうと一人の研究職員が目にみえない力で宙に浮いていた。

 職員の前には手をかざした一人の女性がおり、明らかに人ではない力を行使していた。

 

「どうした!」

「は、博士! あ、あの女の人が急にきてブレイブデュエルのシステムをよこせって」

「何!?」

 

 グランツ博士ときょうやは、その女の方へと視線を向ける。

 女の姿をみたきょうやは目を見開き、その場から動けなくなっていた。

 

「ど、どうして……」

「きょうやくん?」

 

 きょうやの名に反応してか、女は顔を声のした方へと向けた。そしてグランツ博士ときょうやの姿を確認すると、穏やかな表情を浮かべた。

 

「初めましてグランツ博士、それと……」

「久しぶり‟キョウヤ”。元気にしてた?」

「!?」

 

 女はなんときょうやのことを知っており、その場にいた誰もが驚きの表情を見せていた。

 当のきょうや本人も信じられないものをみた人間の表情をしており、動揺を隠せていなかった。

 

「どうしたの? そんな顔して。驚くことないじゃない。私は‟貴方の母親”なんだから」

「母親!?」

「あれ? でも確か先輩のお母さんって!」

 

 きょうやの母親を名乗ったことに対し、さらに動揺が広がる。

 

「誰だ?」

「ん?」

「お前は誰だ?」

 

 今まで聞いたことのない程の低い声できょうやは女性に問いただした。

 その姿に周りの人はかける言葉を失い、黙ってしまう。

 

「あらあら、怖い顔して。でもその姿、お父さんにそっくり。やはり真似事では無意味だったかしら」

「誰だと聞いてるんだ。どうやって母さんの姿をコピーした?」

 

 声色からきょうやが冷静さに欠けていることは、誰が見ても明らかであった。

 

「ダメだきょうやくん。ここで戦うのは得策じゃない。今は……」

 

 止めようとしたグランツ博士に対し、強い衝撃が加わり壁に叩きつけられた。

 

「パパ!」

「お父さん!」

 

 あわててアミタとキリエが駆け寄る。

 

「邪魔しないでもらえる? 久々に会話できてるんだから」

「お前!」

 

 咄嗟にドライバーと取り出し、腰へと装着する。なりふり構ってられないとシグナルチェイサーを装填し変身しようとしていた。

 

「待った先輩! ここは不味いって!」

「きょうやくん! 冷静になって下さい! 今はまずみんなの避難を優先させて下さい!」

「……っ!?」

「変なところで優しくなるのは変わらなかったか」

 

 母親を名乗る女が手をかざすと、きょうやの身体は見えない何かで縛られてしまう。

 そのまま宙へと浮かされ、きょうやの身体は空中で身動きをとれなくされてしまった。

 

「もっと非情な部分を持ってほしかったけど、想定内にとはいかないか」

 

 そう言うと女の身体はノイズのようなものに包まれ、人の姿に隠れた本体が露わになった。

 女性の姿を元に、頭部にある輪と背中から生えた羽、そして金色に輝くその姿はまさに天使を彷彿とさせるものであった。

 その姿をみた他の職員は逃げ出してしまい、研究所に残ったのはグランツ博士とフローリアン姉妹、きょうやだけになった。

 その姿はかつてきょうやが初めてチェイサーになった際に倒した機械生命体・エンジェルロイミュードに似ており、ゆっくりとグランツ博士の元へと歩み寄っていた。

 

『どうですか博士? 貴方のブレイブデュエルシステムを私に譲ってほしいんです。私とその子、そして主人との理想郷を作るために』

「理想郷? 一体どういうことだ?」

 

 グランツ博士の質問に対し、エンジェルの姿をした存在は話し始めた。

 

『私のオリジナルである四ノ宮茜はあることを願った。自分の息子に強く生きてほしいって。私はその願い継いだアンドロイド。オリジナルの残した願いをどう叶えることができるか模索しある結論に至ったの』

 

 

 

 

 

 

『自分の息子に仮面ライダーの力を移植して、複製したロイミュード達と戦わせれば、強くなってくれるって』

「!?」

 

 エンジェルはさらに衝撃の真実を明かし、きょうやを含めた全員が驚きを隠せていなかった。

 

『ライダー! チェイサー!』

 

 何とかチェイサーへ変身できたきょうやは拘束を無理やり外し、地面へと着地する。

 ゆっくりと立ち上がると、エンジェルへ視線を向ける。

 

『今の話は、どういうことだ?』

『四ノ宮茜は、幼い貴方を置いていくのを悔やんでいた。だからこそ死ぬ間際まで、貴方には強く生きてほしいと願い続けていた。それを貴方の父親は、‟亡くなる直前までの茜の記憶"を頭脳データを記録し、私に移植した』

『私はその記録から、茜が憧れた仮面ライダーであるチェイサーの力をキョウヤに移植し、長い時間をかけて複製したロイミュード達と戦わせれば強くなってくれる。そうして強くなった貴方をデータ化して電脳世界で永遠に一緒に過ごせる理想郷を作るのが私の役目』

『……………。』

『正直、あの黒いロイミュード・タイラントに関しては少しやりすぎたわ。性能を落とそうかとも考えたけど、協力者が優秀で助かったわ。貴方をさらに強くするものを準備してくれたんだから』

エンジェルの口から出た真実に、呆然とすることしかできなかった。

『そのために、他の人を巻き込んだのか? ロイミュード達がグローバルフリーズを起こすのも知ってて』

『そう指示したのは私よ』

『…………は?』

 

 さらに茜を名乗ったアンドロイドは衝撃の事実を口にした。

 

『最初は下級クラスから順に戦わせ、慣れてきたら上級へ覚醒を促しぶつける。でも必ず一対一で戦う状況ばかりでは、貴方の成長が止まる可能性がある。だからロイミュード達を焚き付けてグローバルフリーズを模したテロ行為を起こさせた。複製したロイミュード達はみんな私に従うようにプログラムしてあったから、造作もなかったわ。それに貴方の‟妹達”に危険が迫れば、嫌でも戦う決心をつけられると思ったし』

『そのために……、そんな理由であの子達まで巻き込んだのか!?』

『もちろん想定外のことは何度かあったけど、些細なことだし、概ね私が予想していた通りに動いてくれてよかったと思ってるわ』

 

 その話を聞いたチェイサーは両膝から床に崩れ、完全にうなだれてしまう。

 

『そんなに落ち込まなくていいじゃない? 結果的に貴方が助けたいと思った人達は無事なんだし』

『ふざけるな!』

 

 シンゴウアックスを呼び出し、エンジェルの姿をした存在へチェイサーは駆け出す。

 振り下ろされたシンゴウアックスはエンジェルの頭上を捉えていた。しかし直前で刃は見えない何かによって阻まれてしまう。

 それはチェイサーがどれだけ力を込めてもビクともせず、シンゴウアックスの刃が届く様子はなかった。

 

『何!?』

『言ったはずよ。その力は私が与えたものだって』

 

 そう言うと腹部へ掌打を放ち、チェイサーの身体を大きく吹き飛ばす。

 

「ダメだきょうやくん! 奴は既存のライダーシステムを把握してる可能性がある。今は撤退するしかない!」

 

 分が悪いと判断したグランツ博士は退くよう促すも、チェイサーにその様子はなかった。

 何度も果敢に挑み、シンゴウアックスを振り下ろすもすべて防がれてしまう。ならばと必殺技であるチェイサーエンドやアクロスブレイカーを繰り出すが、それらもすべて弾かれてしまう。

 

『ぐっ!』

『もう満足した? これ以上やっても無意味だと思うけど?』

『黙れ! お前だけは、お前だけは!』

『……これ以上私も手荒なことはしたくないけど、仕方ない』

 

 エンジェルが手をかざすと同時に、ベルトに装填されていたシグナルチェイサーが輝き出す。

 その瞬間。チェイサーの身体に強力な電流のようなものが走った。

 

『ぐあああああ!!!!』

 

 かなり強力なものであり、その場から動けなくなってしまう。

 しばらくその状態が続き、電流が収まると変身が解除され、きょうやの姿に戻ってしまった。

 再度変身しようとシグナルチェイサーを装填するも、パネルを閉じることができなかった。

 

「えっ? どうして!」

 

 何度も閉じようと動かすも、ベルトは一向に動く様子はなかった。

 

『チェイサーの力を抜き取ってあげたの。これ以上反抗されるのも厄介だし、もう必要ないでしょ?』

 

 エンジェルの手によってチェイサーへの変身能力を失ってしまった。

 他にも使用していた武器が使えなくなってしまい、打つ手がない状況に追い込まれてしまう。

 

「きょうやくん、今は逃げよう! これ以上やっても勝つことはできない!」

『悪いけど、博士とその娘さん二人は消えてもらうわ』

「!?」

『貴方たちはこのまま生かしてたら何をされるかわからないからね。それに他の協力者もみんな消させてもらうわ』

 

 その言葉を聞いたきょうやの脳裏に、半年前の出来事が蘇った。

 父親の静止を振り切って変身したはいいが、結局苦戦してしまい守ることができず死なせてしまったことを。

 あの時と同じ状況に陥っており、きょうやは悔しさを滲ませていた。

 だがチェイサーになることができなくなった自分に残された手段が一つだけ存在した。

 その一つに賭け、再びきょうやは立ち上がる。

 

『あら? もう貴方には私に抵抗する手段はないはずよ』

「確かに。もうあの姿になる力は僕にはないのは証明された。でもお前の口ぶりを見るに、既存のライダーシステムしか把握できないと捉えることもできる」

『何を言って……』

 

 疑問を感じたエンジェルに対し、きょうやはシフトバイラルコアを取り出した。

 

『無駄よ。貴方にライダーの力はない。それも私が与えたチェイサーの力が影響して使えていただけよ』

「ならここで、本当かどうか試すだけだ!」

 

 その言葉と同時にシフトバイラルコアをドライバーへと装填した。そして、エンジェルの予想は大きく裏切られることとなった。

 

『シフトバイラルコア!』

「変身!」

『ライダー! 超! デットヒート!』

 

 シグナルチェイサーの時には機能しなかったドライバーが反応を示した。

 ベルトを中心に青紫の電流が流れ、きょうやの周りに電流を帯びた四つのタイヤが出現。

 すべてのタイヤが同時にきょうやの身体に重なり、深紅の複眼をもつ超デットヒートチェイサーへと姿を変えた。

 

『バカな!?』

『自分でもびっくりだよ。どうやら僕にもライダーになる適性があったってことが証明できた』

 

 意表を突くことには成功したが、状況はいいとは言えなかった。

 超デットヒートチェイサーは身体への負担が通常のチェイサー以上に大きい姿であり、それは前回の初変身で経験していたからである。

 幸い事前にりんなからメンテナンスを受けているとは言え、身体への負担軽減まで手を回せたかは定かではなかった。

 

(長くは戦えない。ここで決められるか、それとも……)

 

 考えた末、チェイサーは行動に出た。

 

『バースト! キュウニ! チョウ! デットヒート!』

 

 ベルトのボタンを押し、限界稼働状態へ移行させる。

 全身から蒸気が発生し、一瞬の動きでエンジェルの姿をした存在へ接近する。

 それと同時に高熱を帯びた拳打を繰り出し、対象の存在の顔面を捉えた。

 その一撃は通常のチェイサーの攻撃ではビクともしなかった、見えない障壁を貫通した。

 高熱の拳がエンジェルの姿をしたアンドロイドの顔面に直撃し、その衝撃で身体を大きく吹き飛ばした。

 すぐに体制を整え、チェイサーの方へ視線を向けるも既に姿を消していた。

 一緒にいたグランツ博士とその娘たちもいなくなっており、その場にはエンジェルの姿をしたアンドロイドだけが残された。

 

 

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