リリカルなのはINNOCENT~CHASER~ 作:つねまる
「……お騒がせしました」
リビングに降りてきたきょうやは気まずい表情を見せていた。
「ええよ、そんなこと気にせんでも。むしろ今までが私達から見れば異常だったんやし」
「いや、まあ、そうだと思うけど……」
はやてから慰められるも、どうも居心地が悪い様子を見せるきょうやにシグナムが釘を刺した。
「人は誰しも弱い部分を持っているものだ。そう自分を卑下する必要はない。事情がどうであれ、お前はよくやった。それでいいじゃないか」
「そうよきょうちゃん。そうだ! なら私に思いっきり甘えてみるのは……」
「面白い冗談を言うようになったね、シャマル?」
「じょ、冗談よ。そんな顔でこっちを見ないでアインス」
シグナムに続き、各々から激励の言葉が来る。
そんな中ヴィータがあることをきょうやに尋ねた。
「なぁきょうや」
「何?」
「これからどうすんだ? 海鳴市から離れるのか?」
ヴィータは不安の表情を見せていたが、それを払拭するようにきょうやは言った。
「大丈夫。少なくとも高校を卒業するまではここにいるよ。それに、ちゃんと向き合わないといけないこともできたし」
「何だそれ?」
もう隠す必要もないと判断してか、きょうやは大切にしていたあるものを見せた。
それは四つ折りに畳んだ後が残った一枚の写真であり、そこに写っていたのは意外な人物であった。
「へ?」
「きょ、きょうや? これは一体……」
写真をみたはやて達は驚きのあまり言葉を失ってしまう。
「オイ。ここに写ってるのって、‟フェイトとアリシア”じゃねぇか!」
「それにプレシアさんと隣に男の人が写ってる。この人って……」
「……その男の人が、僕の父さん」
「ええっ!!!!」
突然のカミングアウトに、はやて達は驚くことしかできなかった。
「まさか、お前が守りたいと言ってた妹達というのは、この二人のことなのか?」
ザフィーラが尋ねると、きょうやは自分の本当の名を話す。
「僕の名字である四ノ宮は、母さんの旧姓。僕の本当の名前は、‟キョウヤ・テスタロッサ”。その写真に写ってるフェイトとアリシアは僕の母親違いの妹なんだ」
「…………マジかよ」
「君がT&Hに近づこうとしなかったのは、これが理由なのかい?」
アインスの質問に、きょうやは頷く。
「二人はまだ物心がつく前の時にしか会ってなかったら、僕を見ても気づかれずに済んだけど、プレシアさんに関しては見抜かれちゃう可能性があったら、あそこに近づくわけにはいなかったんだ」
「なるほどね。確かにあの親バカ全開のプレシアさんなら、きょうや君の顔をみて気づかないわけがないか」
各々納得した後、シグナムがそのことについて再度尋ねた。
「それで、どうするつもりなんだ? 今回の件、プレシアさん達に話すのか?」
「フェイトとアリシアには、ある程度ぼかそうと思います。あの二人にまで、父さんが起こしたことを知らせるのは流石に酷だと思うので」
「そっか。会う日とか決めてるの?」
「……これから、決めようと思います」
言いにくいのか、きょうやの言葉は何処かぎこちなかった。
その理由をはやて達は知っていた。
「やっぱり、会うのは気まずいか?」
「……まあ、そうですね」
隠しきれないと、きょうやは正直に答えた。
「私は、きちんと話すべきやと思うよ」
「はやてちゃん」
「大丈夫や。今のきょうや君なら、フェイトちゃんとアリシアちゃん、プレシアさんともきちんと話せるよ」
「……わかった。そうしてみる」
――――――
数日後、きょうやは父親の墓の前に来ていた。
ここでプレシアと会うためである。
ここに来る前に、様々な場所からあの後の出来事を聞かされた。
まずグランツ研究所では、エンジェルの姿をしたアンドロイドから受けた損害も解消し、無事ブレイブデュエルシステムの再起動に成功していた。
グランツ博士やフローリアン姉妹は、しばらく運営の方で忙しくなるとのことだが、再起動できた喜びの方が大きい様子であった。
きょうやが持っていた仮面ライダー関連のツールは、グランツ博士を経由してりんなの元へ返却された。今のきょうやに仮面ライダーとしての力はない上、ロイミュード関連の事件は終息したため持っている意味がなかったためである。
あの後りんなと現八郎から、今回の件を引き起こした存在についての正体を知らされた。
あのエンジェルの姿をした存在は、きょうやの父親が長い年月をかけて作り上げた、ロイミュードとは異なるアンドロイドの試作機であった。
本来このアンドロイドは、人々の豊かな暮らしをサポートするロボットを作るといった目的で開発が進められていた。しかしある日突然計画は凍結。その理由は彼の妻である四ノ宮茜の死が要因であった。
妻である茜の死後、きょうやの父親は精神を病んでしまい計画を進めることが困難になったのである。そして病んだ末に、事前に用意していた茜の頭脳データを試作機に移植し蘇生を試みたことが今回の騒動の原因になってしまったらしい。
ちなみに何故チェイサーなのかも理由が判明した。
茜はかつてオリジナルのチェイサーに救われた人間であり、憧れを感じていた。仮面ライダーの一人である詩島剛とある出来事で知り合い、無理を言ってシグナルチェイサーを譲り受けたのである。
それを生涯お守りとして所持しており、死の間際にきょうやに託したのである。
きょうやがアンドロイドを倒した後、プレシアにすべてを話したことも聞かされた。
それを聞いたプレシアがどんな反応を示したかは、現八郎の真っ赤に腫れた頬をみてきょうやは察することができた。
二人から、プレシアの元へ行くかどうかを聞かれた。
これに対しては、きょうやはすぐに答えを出すことができず今日会ってから決めることにしたのである。
父親の墓の前で両手を合わせ、目を閉じる。
しばらくしてから静かに目を開けると、後ろに人の気配を感じた。
振り向いたきょうやの視線の先には、喪服を着たプレシアがそこに立っていた。
今日のことは事前に聞かされていたはずだが、プレシアの顔は信じられないものをみた表情をしていた。
堪えきれなかったのか、目に涙をためゆっくりときょうやに近づいてきた。
「キョウちゃん、よね?」
プレシアの問いかけに、きょうやはバツの悪い表情を作ることしかできなかった。
しばらくしてようやくきょうやの口が開く。
「す、すみませんでした」
「えっ?」
「半年前、僕は父さんを、救うことができませんでした。そのせいで、あの子達にも辛い思いをさせてしまいました」
そう言った後、父親が持っていた写真をプレシアに渡した。
「父さんは、間違ったことをしたかもしれません。でも二人を大切にしていたのは本当です。じゃなきゃ、これを僕には渡さなかったと思いますから」
写真を受け取ったプレシアはあることを話し始めた。
「二人の名前、考えてくれたのキョウちゃんだったよね?」
「…………。」
「あの人全然名前決めることできなくて、見かねた貴方が案を出したらそれをすぐに採用しちゃったのよ。それで最初に生まれた子にアリシア、次に生まれた子にはフェイトってつけたのよ」
「そう、でしたね。もっといい名前あったと思うのに」
「いいえ。貴方があの子達のために考えてくれた名よ。まだあの子達には言えてないけど」
思い出話が尽きない様子であったが、プレシアは早々に切り上げ本題に入った。
「貴方のことは聞いたわ。あの子達や私のために、辛い思いをしながらも戦ってくれたことは。それはとても嬉しかったけど、同時に怒りたくもなったわ」
「えっ?」
「‟親である私”に相談もせず、危険なことをしたことよ」
「!?」
プレシアの言葉に対し、きょうやは何も言えなくなってしまい顔を下に向けてしまう。
「いいキョウちゃん。私はあの人と一緒になるって決めたあの日から、貴方の母親になろうって決めたの。どれだけ貴方に否定されようが、私にとってはどうってことなかったわ。貴方の気持ちも理解できたから」
「けどね。半年間貴方が生きてるかもわからない状況が続いたのは、流石に堪えたわ」
プレシアは両手できょうやの頬に触れたと同時に、大量の涙が零れ落ちる。
「こうしてみると、本当におっきくなったね? ちゃんとご飯は食べてる? 学校は楽しい? 友達はできた?」
「…………うん。うん!」
それに釣られてか、きょうやの目からも涙が止めどなく流れた。
それからしばらく、二人が泣き止むことはなかった。
―――――
日が落ちた時間帯。プレシアの運転する車に乗り、彼女が住んでいるマンションへ到着した。
車から降りると、マンションの前にいたフェイトとアリシアが近づいてきた。
二人とは何度か会ってはいるが、兄として会うのはこれが初めてであった。
「あ、えっと、僕は、その……」
必死に言葉を選ぼうとしているきょうやに、二人は近づき手を取ると、こう言った。
「「お帰り! お兄ちゃん!」」
笑顔で迎えられ、きょうやは安堵の表情を浮かべた。
握られた手は暖かく、きょうやの疲れた心を癒すには十分であった。
そして二人から手を引かれ、プレシアと三人で住んでいるマンションへと入っていった。
やっと得ることのできた幸福を感じながら。
読んでいただきありがとうございました。
正直どう終わらせるか迷いましたが、何とか形にすることができました。初回更新したのがだいぶ前であり、その間も更新が安定せず申し訳ありませんでした。
中々小説を書くモチベーションが保てず、また内容もまとめることができずどうしようか迷ってしまいました。
考えた末、とりあえずどんなものであれ形にして完結させようと思い投稿を再開させていただきました。
感想の中で内容楽しみにしてますとの声をいただき、大変嬉しかったです。今後小説書いていくにしても短編ものか台本形式にしようかと考えています。
長い間お待たせしてしまい、本当に申し訳ありませんでしたが、今作はこれで一区切りにさせていただければと思います。
お付き合いいただき、本当にありがとうございました。