リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

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第三話(後編)

「や、やめろ!」

 

 アインスの悲痛な声が響く。ロイミュードは二人が上手く動けないことをいいことに、必死に抗うはやてを痛ぶっていた。

 

「く、くそぅ」

『おやおや。ずいぶんと強情な小娘だな。これだけ痛めつけられてもまだそんな態度でいられるとは』

「う、うるさい。アインスにひどいことした奴らなんかに、負けるもんか!」

 

 痛めつけられてもなおはやては屈することはなかった。そんなはやてをあざ笑うように、はやての綺麗な顔を足で踏みつけた。

 

『まったく。目障りですね』

 

 グリグリと顔を踏みつけた後、足を離したと同時にはやての腹部へ蹴りを入れた。

 

「がはっ!」

「主!」

 

 ロイミュードの発した現象の影響で蹴り飛ばしたはやての身体はゆっくりと転がっていく。

 

「もうやめろ! お前の目的は私だろ! これ以上主にひどいことをするな!」

 

 アインスの目には涙が今にもこぼれようとしていた。自分の主を守るどころか、逆に守られていることに悔しさを滲ませていたのである。

 

『確かにそうですね。元々私の目的はあなたですしね』

 

 そう言ってロイミュードはアインスへと視線を向ける。

 

「よ、よすんや、アインス。逃げ、るんや!」

 薄れゆく意識の中、必死になってはやてはアインスを逃がそうとありったけの声を上げるが、アインスは動こうとはしなかった。

 

『さて。どんな絵になってくれるんでしょうかね』

 

 ロイミュードの手がアインスへ触れようとしたその時、銃声が響いた。

 

『ぐあっ!』

 

 銃声とともに紫色の光弾が数発、ロイミュードに直撃した。突如放たれた光弾に一瞬怯んだロイミュード目掛け、何者かが突っ込んでいった。

 強烈な体当たりを受けたロイミュードは吹き飛ばされ、そのまま仰向けに倒れてしまう。その結果はやてとアインスの動きを制限していた現象が無くなり、普通に動けるようになっていた。

 

「主!」

 

 動けるようになったと同時にアインスははやてのもとへ駆け寄る。

 

「しっかりしてください主! 主!」

 

 アインスは必死に何度もはやてに声をかけた。

 

「う、うーん。アインス?」

 

 はやてはアインスに抱きかかえられながら目を覚ました。

 

「主! よかった。本当によかった!」

 

 アインスは目に涙を溜めながらはやてを抱きしめる。

 

「アインス。苦しい」

「ハッ! も、申し訳ありません主」

 

 そう言ってアインスははやてから少し離れる。そんな二人に、割って入ったきょうやが声をかけた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 突然声をかけられたことに二人は驚きながらも、きょうやのほうに視線を向けた。

 

「あ、ああ。ありがとう」

「ほんまありがとうな。ところであなたは?」

「あ、えっと、僕はたまたま通りかかったものでして……」

 

 そう話している隙に、既にロイミュードが起き上がっていた。

 

『くそっ! お前に用はない!』

 

 そう言って再びロイミュードは片手を上げ、先ほどと同じ現象を引き起こす。その後きょうやへ攻撃しようと拳をぶつけようとするが、きょうやはそれを問題なく避ける。

 

「はっ!」

 

 避けたと同時にロイミュードの背中に回し蹴りを浴びせた。

 

『な、なに!?』

 

 ロイミュードは回し蹴りを受けた影響で態勢を崩してしまう。驚きを隠せていないロイミュードに、きょうやは続けさまに持っていたブレイクガンナーのメリケン状の部分を胸部に叩きつけた。

 

『ぐっ!』

 

 二度の攻撃を受けてしまい、さすがのロイミュードにも焦りが出ていた。

 

『な、なぜだ。貴様はなぜ重加速の中で動ける!?』

「悪いけど、その質問に答える義理はない!」

 

 再びブレイクガンナーを振り下ろし、ダメージを与えるがその腕を掴まれてしまう。

 

「くっ!」

『だ、だが! いくら重加速内で動けるとはいえ、所詮は人間。ロイミュードの敵じゃない!』

 

 ロイミュードは掴んだ手を離さず、きょうやの腹部に膝蹴りを入れ、投げ飛ばしてしまう。 それによりきょうやは身体を地面に打ち付けられてしまう。

 瞬時に立ち上がろうとするが、ロイミュードに急接近され、蹴りを入れられてしまう。間一髪のところできょうやは両手を十字に組んで受けとめるが、衝撃に耐えられず吹き飛ばされてしまった。

 

「な、なぜあの人達を狙う。何もしてないじゃないか!?」

 

 衝撃で仰向けに倒れてしまうが、両手を使って上半身を上げながらロイミュードに問いただす。

 

『いーえ。彼女達は素晴らしい被写体なんですよ。だからこそ先生も彼女を狙ったんですよ。そうに違いない。なにせ私も一目見た瞬間、あの美しさに惹かれてしまいました。私が画家として素晴らしい作品を出すためには彼女が必要だと!』

「だったら、別に絵の中に閉じ込める必要はないはず……」

『ええいうるさい! とっとと死になさい!』

 

 両手を前に出し、指先から光弾を発射する。

 

『ガン』

 

 きょうやはブレイクガンナーのノズルを押し、同じく光弾を出して応戦する。しかし相手は固い装甲を持っている相手に対し、きょうやはまだ変身していない生身の状態であったためロイミュードの方は耐えることができるがきょうやの方は耐えることができず、吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐあっ!」

 

 きょうやは公園の草原へと大きく吹き飛ばされてしまう。ロイミュードはきょうやの後を追うように草原へと足を踏み入れた。

 その二人を見ていたはやてとアインスは、助けに来てくれたきょうやのことが気になり後をつけ、草陰に隠れながら見守っている状態であった。

 

「ど、どないしようアインス! あの人たすけへんと!」

「で、ですが主。そのお身体では……」

「何言うとんねん! あの人見ず知らずの私ら助けてくれたんやで! このまま見過ごすなんて」

 

 はやてはそう言うが、先ほど痛め付けられたこともあってか身体に傷があり、今行っても足手まといになることは明白であった。

 そんな会話をしている中、ロイミュードはゆっくりときょうやへ近づいていく。

 

『重加速内で動けることには驚きましたが、ここまでです』

 

 そう言って片手を上げ、いつでも光弾を放てるように指先にエネルギーを溜める。

 

『ブレイク』

 

 きょうやは再びノズルを押し、音声がなったと同時にロイミュードに急接近し、すれ違いざまにブレイクガンナーのメリケン上の部位でロイミュードの身体に切り付けた。これによりロイミュードの身体に火花が散った。

 

『がはっ!』

 

 これは効果があったようで、ロイミュードは切り裂かれた部位を抑えて片膝をついてしまう。

 

『おのれ!』

 

 ロイミュードは指先を向け、光弾を発射する。きょうやはそれを横に回転し、光弾をすべて躱すことに成功した。

 

『往生際が悪いぞ!』

 

 ロイミュードはかなり苛立っていた。しかしそんなことなどお構いなしであるきょうやは、まわりを確認するとカバンを漁り始めた。

 

『何をする気か知らんが。とっとと死ね!』

 

 ロイミュードはもう一度光弾を放ち、きょうやの近くに着弾する。それによりきょうやの身体は後方へと吹き飛ばされた。またも地面に身体を打ち付けてしまうが、吹き飛ばされる前にきょうやはカバンからあるものを取り出していた。

 近づいてくるロイミュードを前に、きょうやはゆっくりと立ち上がった。その際きょうやの右手に持っているものを見たロイミュードは驚きの声を上げた。

 

『そ、それは!』

 

 驚くロイミュードの前で、きょうやは持っていたバイクのマフラーを模したベルト――マッハドライバー炎を腰に当てる。それによりドライバーから銀色のベルトが出現し、きょうやの腰に巻きつく。

ドライバーにあるパネルを上に上げ、左のポケットにあらかじめ入れておいたシグナルチェイサーを取り出し装填する。

 

『シグナルバイク!』

 

 音声とともに待機音が流れ出す。きょうやは右手で拳を作り、シグナルチェイサーが装填されているパネルを拳を握った手で下へと下げた。

 

「変身!」

『ライダー! チェイサー!!』

 

 掛け声とともにきょうやの身体は青白い装甲が覆われ、仮面ライダーチェイサーへと姿を変えた。

 

『き、貴様! 仮面ライダーだったのか!? ということは先生をやったのは!?』

 

 ロイミュードは想定外のことに驚きを隠せずにいた。だが同時に先生が先日から帰ってこなくなったのは仮面ライダーに倒されてしまったからという確信が生まれた。

 チェイサーはロイミュードの考えなど気にせず接近し、胸部へ拳を入れる。ロイミュードはそれを両手で受けとめるが、チェイサーは自分の拳を抑えている両手の左側を掴み引き寄せる。

その瞬間身体を左側へずらし、腹部へ膝蹴りを入れる。加えて背中へ肘打ちを入れ、さらに前傾姿勢にさせた状態で今度は顔面に膝蹴りを繰り出した。

 

『がはっ!』

 

 チェイサーはロイミュードの上半身を大きく逸らさせ、腹部に拳打を入れた。

 

『はっ!』

 

 怯んだロイミュードの隙をつき、回し蹴りを浴びせる。それによりロイミュードの身体が回転し、頭から地面に叩きつけられた。

 

『く、くそ!』

 

 ロイミュードはすぐさま立ち上がり、反撃を試みるべく拳をふるう。

チェイサーは繰り出された拳打を簡単に片手で受け止め、もう片方の腕で下に叩き落とし、受けとめていた腕で顔面を拳で殴りつける。そして続けざまに同じ腕で今度は裏拳を入れ、上段蹴りをロイミュード頭部目掛け繰り出した。

 

『ぎゃあ!』

 

 ロイミュードはまたも草原に顔を突っ込む形で倒れてしまう。チェイサーとこのロイミュードの実力の差は歴然であり、勝負の行方は決まっているようなものであった。現に先ほどからロイミュードの方は一方的に攻撃を受けている状態であり、すでに冷静さを失っている状態であった。

 

『な、なぜだ! どうして私の邪魔をするんだ!!』

 

 ロイミュードの言葉を聞いたチェイサーの脳裏には、昨日出会った女性の泣き顔が浮かび上がった。

 

『答える義理はない。これから倒される相手に!』

 

 チェイサーは右手でベルトのパネルを上げ、傍にある白いボタンを押した。

 

『ヒッサツ!』

 

 音声が流れたと同時に同じ手でパネルを下に下げた。

 

『フルスロットル! チェイサー!』

 

 パネルを下げた右手を横に開くと同時に、右足にエネルギーが収束されていく。

 

(これ以上、あの人のような犠牲者を出させはしない!)

 

 チェイサーは両足をそろえ、上空へと飛び上がる。空中にて飛び蹴りの姿勢を作り、必殺技・チェイサーエンドを繰り出した。

 

『ぎゃああああ!!』

 

 ロイミュードへと直撃し、その場で大きな爆発が起こった。爆発が収まるとそこにはロイミュードの姿はなく、チェイサーしかいなかった。

役目を終え、すぐさまその場を去ろうとチェイサーは歩き出した。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 チェイサーは自分を呼び止める声が聞こえ、声のした方へ振り向く。

 

「……!」

 

 視線の先には、先日助けた銀髪の女性・リインフォースアインスがいた。

 チェイサーはそれに驚いてしまい、無意識に一歩後ろへ後ずさってしまう。

 

(うかつだった。変身する前、もっとまわりを確認しておくべきだった!)

 

 自分の正体を知られるのは極力避けたいと思っているきょうやにとって、これはかなり不味いことであった。今回の戦いで間違いなく正体がこの二人にばれてしまっていることを考え、仮面の下で大量の冷や汗を流していた。

 

「あ、あの、その……」

 

 アインスは昨日のお礼を言おうとするが、中々声に出せずにいた。しばらく沈黙が続いたが、アインスが意を決して声を出した。

 

「き、昨日は、あ、ありが『ごめんなさい!』…えっ?」

 

 チェイサー改めきょうやは両手を合わせて謝罪する。突然のことに、アインスは戸惑ってしまう。

 

『じ、実はこの後まだやることがあるので。し、失礼します!』

 

 チェイサーこときょうやはこの時考えをまとめる暇がなく、その場を強引に納めて逃亡するという考えしか思い浮かばなかったのである。そばにあったカバンを拾い上げ、アインスに背を向けて走りだした。

 

「え、いや、ちょっと! 待ってくれ!」

 

 突然の行動に驚きながらもアインスは後を追いかけようとするが、追いつけるはずもなく逃げられてしまった。

 

「アインス! 何で逃がしてしまうんや!?」

「す、すみません主。せっかく機会をいただいたというのに……」

「まあ、しょうがないか。相手さんかなり焦ってる感じやったしな。それにしてもカッコよかったな♪ あの人! それにあの姿、まさにテレビとかであるヒーローみたいな容姿やったな!」

 

 はやてはチェイサーを見て完全にテンションが舞い上がっている状態であった。

 アインスはその姿を見て微笑ましく思うのと同時に、少し寂しい表情をしていた。

 

「どないしたん? アインス?」

 

 そんな姿を察してか、はやてがアインスに尋ねた。

 

「い、いえ。実はあの人。昨日私を助けてくれた人なんです」

「えっ! そうなん!」

「はい。でも私は気が動転してて、彼に対して少しキツイことを言ってしまいました。そのことと、昨日のお礼を言おうと思ったのですが……」

「そうだったんだ」

 

 アインスの話を聞いたはやては何とかしてあげたいと考えていたが、肝心の人物に逃亡されてしまい、成す術がない状態であった。そんな中アインスはあるものが目に映った。

 

「……? あれは?」

 

 何かを見つけたアインスはその場所に近づき、それを拾い上げた。

 

「エイトリアン学院の生徒手帳? 一体だれの……」

 

 気になって開くと持ち主の名前が書いてあった。

 

「主。これを見て下さい」

 

 はやてに生徒手帳を渡す。それに目を通したはやての表情が徐々にニヤつき始めていた。

 

「ほほう。あの子元女子高の生徒やったのか。何々、エイトリアン学園二年、四ノ宮きょうやって言うんかあの人。あれ? この学校って確か博士の娘さんが通っていたような……」

 

 はやてのニヤつきは一向に止まる気配はなかった。

 

「あ、あの主。一体何を考えておられるのですか?」

「ん? なもんこの子にもう一回会うための方法やけど」

(ああ、やっぱり)

 

 予想通りの返答に、アインスは主であるはやての意向にただ流されるしかなかった。

 




 漫画版INNOCENTの流れを取り入れようと思っています。もうしばらくはオリジナル(漫画版INNOCENTの前日談的なもの)を進めていきます。
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