リリカルなのはINNOCENT~CHASER~   作:つねまる

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 あけましておめでとうございます。本当なら年内に一話投稿できればよかったのですが、諸事情により年を越してから投稿する結果になってしまいました。申し訳ありません。
 今回も二話分投稿します。


第六話

 

 授業が終わり放課後の時間帯。きょうやはすぐに帰ろうとせず、日直の仕事である授業で配られたプリントを回収し職員室へ運ぶ作業をしていた。

 特に面倒くさいという考えは持っておらず(もう慣れてしまっているという解釈が正しい)、手慣れた作業でプリントを整理していく。

 整理を終え、クラスの人数分のプリントが積み重なっているものを両手に持ち職員室へ向かった。特に苦になるようなことでもないため、せっせと運んでいく。

 その道中、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 

「おや? きょうやくんか。珍しいね、こんな時間帯まで残っているなんて」

 

 声を掛けてきたのはクラスメイトであり、友達でもある椎名朱乃であった。

 朱乃はいつもこの時間帯まで学校に残っていることが多いので、ここで出会うことは珍しいことではなかった。

 

「あ、朱乃さん。今日僕日直なので、このプリントを運ばないといけなくて」

「そうだったのか。そうだ! 私もこれから帰るところなんだけど、途中までどうかしら?」

「え、いいんですか?」

「ええ、ちょっと聞いてほしいこともあるから」

「うん。分かった」

「ありがとう。じゃあ私は先に荷物を取って昇降口にいるよ」

 

 そう言って朱乃は踵を返して歩いて行ってしまう。

 

(でも、僕に話って何だろう?)

 

 疑問に思いながらも早く両手に持っているプリントの束を運ぶべく、職員室へ駆け足で向かった。

 

――――――――

 

 プリントを運び終えたきょうやは一旦教室へ戻り、荷物をまとめて昇降口へと向かった。いつも降りている階段を下りていき、昇降口に着くが朱乃の姿はなかった。

キョロキョロと見回すが見つからなかったため、靴を履き替えて外に出てみた。しかし外に出ても姿が見当たらず、きょうやは困惑してしまっていた。

 

(あれ? 確かにここにいるって言ってたんだけど一体どこに……)

 

 もう一度探してみようと校内へ戻ろうとすると、突然きょうやの近くの地面に何かが着弾し爆発した。

 

「うわっ!」

 

 突然のことに対応することができず、両手を顔の前で覆いながら後ろに後退してしまう。

 

「こ、これは」

 

 煙が徐々に晴れていき、覆っていた両手を降ろす。辺りを見回すが特に変わった様子もない上、誰もいなかった。しかし地面には銃弾のようなものが着弾した跡がくっきりと残っていた。

 きょうやは不審に思い、もう一度辺りを見回す。すると上空の方から不気味な笑い声が聞こえてきた。

 その笑い声に反応しきょうやは上を見上げると、蝙蝠を彷彿とさせる翼を生やして飛行している蝙蝠型のロイミュードがいた。

 

「ロイミュード! どうしてここに!?」

 

 学校に突然現れたことに驚きを隠せなかった。今まで特に目立った行動をせず生活していており、ロイミュードに嗅ぎ付かれることはないときょうやは考えていた。それ故に目の前のロイミュードの存在はきょうやにとっては不思議でならなかった。

 

『どうして? それはもちろん』

 

 そう言うとロイミュードの身体はをデータ状のもので身体が覆われる。データ状のものが消えたロイミュードの姿は人間のものへと変わる。その人間の姿を見たきょうやの表情は驚愕のものへと変わる。

 

「そ、その姿は!?」

「ふふ。ごめんねきょうやくん。いきなりの呼び出しで期待でもさせてしまったかしら?」

 

 上空に浮かんでいたロイミュードが変えた姿は、きょうやとアミタのクラスメイトである"椎名朱乃"であった。

 

「どういうことだ。いつから朱乃さんに化けていた!?」

「いつからって、今日学校に登校してからずっと貴方達のそばにいたわよ。昼食の時も授業の時間も……」

「ま、まさか。今日僕やアミタさんが話していた朱乃さんは、貴方が化けていた姿だったのか。なら本物の朱乃さんは今どこにいる!?」

「さあ? どこにいるかな? 知っていても教える気はないわ。あのオリジナルはもう必要ないから殺してもよかったんだけど、面白そうだから監禁しておいたわ。今頃恐怖に怯えているでしょうね」

 

 ロイミュードは朱乃の姿で不気味な笑みを浮かべていた。今の状況を楽しんでいるかのように見えたきょうやは無意識に拳を握りしめていた。

 

「お前……」

 

 普段ロイミュードに対しても丁寧な口調であるきょうやでも今回ばかりはそういかなかった。

 ましてや友達の姿をコピーした挙句、面白そうだからという理由で監禁していると言われては黙ってなどいられなかったである。

 

「まあ今はそんなことどうでもいいわ。私の目的は貴方だからね、"仮面ライダー"」

 

 そう言うとロイミュードは再び本来の姿へ戻り、きょうや目掛けて指先から光弾を発射する。当たる直前にきょうやは横へ転がることで光弾を躱す。

 片膝をついた状態のきょうやは顔を上げ、ロイミュードがいた方へ視線を向ける。しかし既にロイミュードは場所を移そうと翼を広げ移動しようとしていた。

 

「逃がさない!」

 

 きょうやはカバンに入れてあったドライバーとブレイクガンナーを取り出す。

 カバンを乱暴に投げ飛ばし、ドライバーを腰に装着する。飛び去るロイミュードを追いかけていく中でシグナルチェイサーを取り出し装填した。

 

「変身!」

『シグナルバイク! ライダー! チェイサー!』

 

 駆け出しながらチェイサーへと変身を完了させる。

 

(このままでは追いつけない。なら……!)

 

 チェイサーはベルトに装填されていたシグナルチェイサーを取り出し、シフトプロトスピードを装填した。

 

『シフトカー! タイヤコウカン! ハヤーイ!』

 

 装填されたと同時に背中のタイヤが高速回転する。チェイサーは走りながらベルトにあるボタンを四回叩くように押した。

 

『トテモ! ハヤーイ!』

 

 次の瞬間。チェイサーの走行速度は、先ほどとは桁違いの速度へ変わった。現在のチェイサーの状態はシフトプロトスピードの能力である高速移動の力を使用し、さらにそれを限界まで稼働している状態である。

 その結果プロトスピードの特徴である高速移動の恩恵がつき、先ほどよりも段違いにスピードが増していた。

 道路を走行中の車やバイクを軽々と追い抜き続けながら、逃走しているロイミュードを追いかける。

 

『邪魔だな』

 

 高速移動して近づいてくるチェイサーに気付いたロイミュードは指先から光弾を発射する。

 発射された光弾をチェイサーはそれを難なくかわしていく。しかしこれはロイミュードにとっては想定内のことであり、チェイサーに当たらず地面に着弾した部分から出た煙を利用して煙幕代わりとして使って逃走しようとしていたのである。

 煙に巻かれながらも、ロイミュードを逃がさまいとチェイサーは必死に食らいついていく。

 

『くっ! しぶといわね』

 

 ロイミュードはさらに光弾を増やし、チェイサーが今以上に近づけられないようにする。

 

(このまま近づけてもあの光弾を受けてしまえば意味がない。どうすれば……)

 

 そう考えている内に、ロイミュードとチェイサーはトンネルの中へと入った。狭い空間であるトンネルなら当たる確率は上がると考えたロイミュードは空中で静止し、チェイサーの方を振り向く。そして両手の指先からありったけの光弾を発射した。

 発射された光弾によってトンネル内の地面一帯が爆炎に包まれてしまい、チェイサーの姿は爆炎で見えなくなっていた。しばらくして炎が収まるが、チェイサーの姿はどこにも見当たらなかった。

 ロイミュードはそれを確認すると再び飛行しようと翼を広げた。

 

『ブレイク』

 

 ロイミュードは翼を広げ逃走しようとしたが、突然聞こえた音声に驚き音の方向へ視線を向ける。

 視線を向けた先では、既にチェイサーが右手に持っていたブレイクガンナーをロイミュード目掛けて振り下ろそうとしている瞬間であった。

 

『はああ!』

 

 かけ声とともにブレイクスルーが振り下ろされ、ロイミュードは勢いよく地面に叩きつけられる。

 

『ぐはっ!』

 

 ロイミュードは地面に叩きつけられながらも立ち上がり逃走しようとする。しかし立ち上がった頃には既にチェイサーが接近しており、ブレイクガンナーのメリケン状の部分を胸部に叩きつけられてしまう。

 叩きつけられた部分から火花が飛び、ロイミュードの身体は後方へ吹っ飛ばされた。

 

『く、くそっ!』

 

 何とか逃げ出そうと駆け出すが、プロトスピードの力で加速状態にあるチェイサーの前では無意味な行為であり、一瞬にして追い付かれてしまう。

 

「ふんっ!」

 

 ロイミュードに追いついたチェイサーは、持っていたブレイクガンナーですれ違いざまに横薙ぎで切り付ける。

 それによって引き裂かれたロイミュードの身体がショートし、火花を上げた。

 

『ぎゃああああ!!』

 

 ロイミュードの断末魔とともに身体は爆発。粉々に砕けたが、爆炎の中から数字の形をしたものが飛び出しどこかへ飛んで行ってしまった。

 

『やっぱりブレイクガンナーではコアを破壊することまでは出来ないか……』

 

 チェイサーこときょうやはそうつぶやいた。ロイミュードの本体は数字の形をしたものであり、彼らにとってボディーはコアを守るための入れ物で活動するためのものに過ぎない。

 つまり本体である数字上の形をしたコアを破壊しない限り何度でも蘇ってしまうのである。

 チェイサーにはボディーだけでなくそのコアも破壊する力が備わっているのだが、今回チェイサーはあえてコアを破壊しなかったのである。

 

『オツカーレ』

 

 きょうやはドライバーからシグナルチェイサーを取り出し、変身を解除する。その後ロイミュードがいた場所に近づき辺りを見回す。

 

「……あった」

 

 きょうやは目的のものを見つけ、それを拾い上げた。拾い上げたものはきょうやが持っているプロトスピードと同じシフトカーであった。しかしそれよりも禍々しいものであり、蝙蝠の意匠が入っているものであった。

 きょうやの持っている物はバイラルコアと呼ばれるものであり、ロイミュード達の肉体を構成するために欠かせないものである。これを使うことでロイミュード達は活動するための肉体を得ており、コアが無事であれば何度でも肉体を構築できる理由の一つであった。

 これはシフトカーと似た構造をしているため、バイラルコアの中にはボディーを使用していたロイミュードの記憶が内蔵されており記録として残されているのである。

 

(損傷は少ないから、復元すれば使える)

 

 きょうやがあえて今回のロイミュードを倒さなかった理由は、このバイラルコアを入手するためであった。

 先ほどのロイミュードが朱乃の姿をコピーし、なおかつ監禁しているという証言が本当であれば、これに一連の出来事と朱乃がどこに監禁されているかを知ることができるからである。

 早速きょうやはブレイクガンナーにバイラルコアを装填し、ノズルを押した。

 

『チューン! バイラル! バット!』

 

 ブレイクガンナーを突き出し、プロトスピードの時と同じような画像が出現する。

 そこに映し出されていたのは、両目と口を塞がれ両手までも縛られている朱乃の姿と、現在朱乃が監禁されている場所であった。

 

「ここか」

 

 それを確認したきょうやはトンネルを抜けると、目的の場所へと向かった。

 目的の場所はさほど遠くはなく、海岸沿いにあるあまり使われていない倉庫であった。きょうやは海鳴の人達に聞き込みを続け、ようやくそれらしい場所を見つけることが出来たのである。

 

「確か映像ではこの中のどれかにいたはず……」

 

 きょうやは映像と最も近い倉庫を見つけ、中を探索し続けた。そして遂に最後の一つを調べている中ドアのむこうで小さな物音が聞き取った。

 かすかに聞こえた場所へ向かうと扉があり、開けようとするがびくともしなかった。

 仕方なくきょうやはドアに向かってブレイクガンナーを使用し、光弾を発射してドアを半壊させ蹴り飛ばした。

 

「朱乃さん!」

 

 きょうやが中へ突入すると、中では映像で見た時と同じような状態でいた朱乃を発見する。

 

「んー。んー!!」

「待ってて。今外すから!」

 

 きょうやはすぐに近寄り口と両目を塞いでいたガムテープをはがし、両手を縛っていたロープを解く。

 

「けほっ、けほっ!」

「大丈夫ですか? 怪我とかはないですか?」

「……あ、ああ。大丈夫だよ。ありがとうきょうやくん。助けに来てくれて」

 

 朱乃は口ではそう言っているが、手や身体が震えているが見て分かった。

 

「と、とにかくここを出よう。長居してたら危険だし」

「そ、そうね」

 

 朱乃は立ち上がると、きょうやに支えられる形で倉庫を後にした。

 

―――――――――

 

 その後きょうやは日が暮れる時間帯であったので、朱乃を家まで送ることにした。今の朱乃の状況を見てとてもではないが聞ける状態ではないため、何も聞かず家まで送ることにした。

 朱乃から何度も感謝されながらもきょうやは朱乃と別れ、アパートに向かっていた。

 向かう途中でプロトスピードが学校に投げ捨ててきたカバンを拾って届けて来てくれたので、きょうやはお礼を言いつつカバンを持つがその場で立ち止まり考え事をしてしまう。

 

(朱乃さんを助けることは出来たけど、あのロイミュードは結局倒せなかった。今度は別の形で仕掛けてくる可能性があるから、対策しておかないと……)

 

 そう考えながら帰路へとつくべく、歩き出した。

 

 

 

『おのれ……! 仮面、ライダー!』

 

 夜空の下。コアの状態になっていた先ほどのロイミュードの断末魔が響き渡った。

 

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