魔法科高校の逸般人   作:羽月

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 ハーメルンを使うのは初めてなのでお見苦しいところがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。


入学編Ⅰ

 魔法。

 それが御伽話や伝説の産物から、技術として体系化した世界。

 

 時は西暦2095年。これは、魔法を使うことのできる人が魔法を学ぶ学校、魔法技能師養成のための学校の一つ『国立魔法大学付属第一高校』に入学したイレギュラーな兄妹の巻き起こす物語。

 

 

 

 

 …ではなく、

 

「…入学できるとは思わなかった」

 

「なーに言ってるんすか!お嬢が受験に失敗するわけないでしょう?」

 

 自称・一般人の二人が巻き起こす、愛と成長の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 国立魔法大学付属第一高校の入学式。そこに彼らはいた。

 

「いやー、ぎりぎりになったっすけど、入学式に遅刻しなくてよかったっすね!お嬢!」

「…譲(ゆずる)が寝坊しなければよかっただけでしょう!だからあれだけ夜中までゲームするのはダメって言ってたのに!」

 譲と呼ばれたへらへらと笑う男子生徒は、肩より少し上で切りそろえられた鈍色の髪の毛と灰色の瞳を持った中世的な顔立ちをした美男子である。白みがかった肌は日本人離れしており、彼の蠱惑的な魅力を醸し出している。…黙っていればが頭につくが。

 お嬢と呼ばれた女子生徒の方は、ボブにした青紫がかった黒髪に紫の瞳を持った大人びた印象を持つ少女である。よく見ると美人かな、と思われるくらいの顔立ちで、隣の美男子と並ぶとやや見劣りしてしまう。

 

 どうやらこの二人は旧知の仲のようで、軽口をたたきあっているらしい。

 

「まあまあ。取り敢えず、会場に行こうじゃありませんか」

「もう、調子いいんだから…」

 そういいながら二人は入学式の会場に向かって行った。…男子生徒の制服にはエンブレムがあり、女子生徒の制服にはそれがない。そのことがトラブルの種になるだなんて、この時の二人は思ってもみなかったのだ。

 

 

 

 

 

「うわー、やっぱりほとんどの席が埋まっているわね…」

「あー…。あっ、お嬢!あそこ空いてるっすよ!」

 そう言って男子生徒が指差した先には、確かに二人分の席が空いていた。後ろの方だったが、この際気にしていられない。

「あ、本当。じゃあ、あそこにしましょうか」

 二人がその席に近づくと、その席の隣に先に座っている女子生徒に話しかけた。

 

「すんません。ここ、座ってもいいっすか?」

「え?…うん、いいけど」

「お邪魔しまーす」

「すみません」

 男子生徒が軽いノリで話しかけた女子生徒は、スレンダーなスタイルをしたかなりの美少女だったが、そんな事はお構いなしにさっさと席に着く。その後に続いた女子生徒が申し訳なさそうにその隣に座る。その時、二人は注視していなかったが、さらに奥のメガネをかけた女子生徒とクールな印象を抱かせる男子生徒が二人を驚いた様子で見ていた。

「ねぇ、貴方一科生でしょ?ここにいていいの?」

「?」

「え、ここに座ったらいけなかったってこと?でも、自由席よね?」

 美少女が訝し気に男子生徒に話しかけるが、当の本人はなぜそんなことを聞かれるか分からないという表情をし、女子生徒は困惑気味にその話を聞き返した。美少女は何かを言おうとしていたが、入学式開始の放送が流れたためその言葉は発せられることがなかった。

 

 

 

 入学式が終わった後、さっさと外に出た二人は諸々の手続きを終わらせていた。

「すごかったね。今年の首席さん。凄い美人だった!」

「えー…。あんま覚えてないっす。なんか美人ってみんな同じに見えないっすか?」

「…相変わらずね。聞いた私が馬鹿だった。…それよりクラスは?」

 歩きながら女子生徒が入学式の感想を言うが、男子生徒の方は全く興味を示していなかった。それに呆れつつ、女子生徒は次の話題に移った。ちなみに、そんな二人が一緒に行動するたびに周りからじろじろ見られているが、理由が分からないためスルーを決め込んだ。

「あー、俺はB組っすね」

「私はF組。相当離れちゃったね」

 そんな会話をしながら、二人は帰路についた。

 

 

 

 

 

 翌日。今日から始まる新生活に期待に胸を膨らませる…なんてことはなく、ごくごく普通に二人は登校し、昇降口が別ということでそこで分かれた。

(さて、ここね)

 F組と書かれたプレートのあるクラスに彼女は入っていく。自分の席に着こうとすると、周りからじろじろと不躾な視線を感じた。

 

(な、なんなの?)

 

 理由が分からず内心たじろいでいたが、そんな様子はおくびにも出さず着席する。ポーカーフェイスは彼女にとって呼吸をすることと同じことだ。

 机の端末に学生IDを挿入し、カリキュラムの確認をしようとすると一人の女子生徒に声をかけられた。

 

「おはようございます!」

「え…。お、おはよう?」

「私、船頭桜桃(せんとうゆすら)!ユスラでいーよ!あなたの名前は?」

「宵宮華夜(よいみやかよ)。好きに呼んでもらって構わないわ」

「じゃあ、かよりんね!」

(…名前より字数増えてるけど、いいのかしら?)

 困惑は表に出さず表面上の笑顔で答える『お嬢』もとい華夜は、船頭桜桃という少女を失礼にならない程度にじっと見た。

 顔は美少女というよりは愛らしいという感じ。やや童顔なのも相まって、可愛らしい笑顔が魅力的だ。身長も女子の平均よりやや高い自分と違い、逆にやや低い。スタイルもほどほどということもあり、それがますます彼女の愛らしさを引き立てている。胸元まで伸びているオレンジめいた茶髪とくりくりとした大きな珊瑚色の瞳が魅力的だ。

 

(ああ、小動物的な感じね)

 

 そんな風に一人納得していると、ユスラはじっと真剣な表情でこちらを見て、

 

「かよりんって、一科生の弱みでも握ってるの?」

 

「はぁ!?」

 

 思わず華夜から変な声がでた。

 

 

「へぇー。差別、ねぇ」

「…本当に知らなかったんだね。道理で一科生相手にあんな風に接していたわけだよ」

「いや、受かると思ってなくて。記念受験のつもりだったから。受かった後は後でバタバタしてたから、そんな非公式的な事、調べてなかったのよ」

 ユスラから話を聞いた華夜は正直呆れかえっていた。

 

 一科と二科。花冠(ブルーム)と雑草(ウィード)。

 

 一科は二科を見下し、二科は一科に萎縮する。そんな差別があると聞いて華夜は呆れを隠すことなく話を続けた。

「だって、成績上位から百人が一科生で百一番目から二科生ってことでしょ?そんなすごい身勝手な理屈だと、上から百番目と百一番目には越えられない壁があるってことになるよね?」

「まあー、確かに」

「百番目と百一番目って、恐らく、たった数点の違いじゃないの?それで鬼の首を取った気になってるなんて、有頂天にも程がある。まさにアホ丸出しって感じ」

「…でも、成績上位者と二科生じゃ、やっぱり差はあると思うよ?」

 華夜のざっくばらんな発言に戦々恐々とユスラは呟く。

「うーん。そうね。まあ、どんな分野でも成績優秀者って優秀な人も多いもんね。確かに、正面から馬鹿正直にぶつかったら勝てないよ。でもさ、」

 そこでいったん発言を止めてユスラをじっと見る。ユスラは華夜の様子を窺っているようだ。

 

「実戦で馬鹿正直に正面からぶつかるなんてアホ、いるの?」

 

「…え?」

 

 ユスラがぽかんと口を開け、聞き耳を立てていたクラスメイト達も唖然とした表情を浮かべていた。

 

「だって、実戦では情報を手に入れて、策をめぐらして、それから戦いに備えでしょ?不意打ちが来たとしても、周りの状況を見て地の利を生かして戦うなり逃げるなりするでしょ?その前提を忘れちゃダメだと思うの。もしもそれでどうしようもなくなったとしたら、それは運が悪かったってこと。そこに成績の良し悪しなんて存在しない。…違う?」

 

 それを聞いたユスラは、びっくりした顔から徐々に笑い出し、ついに大笑いをしだした。

「あはは!そうだよね!…入学式の時、一科の人から『補欠のくせに』『ウィードのくせに』…なんて言われていたから、一科の人と仲良くしているかよりんを見て驚いちゃってさ。皆もそんな感じだと思うよ」

 ユスラが皆のところでちらりとクラスメイト達を見やる。するとばつが悪そうに彼らは視線を逸らしていった。

「そんなのいちいち気にしちゃダメよ。社会人になったら上下関係なんてこんなもんじゃないんだし」

「うん。今、私もそう思った。二科生だからってびくびくしてちゃだめだよね!さっすがかよりん!」

「まあ、それを差し引いても譲についてはもともと家族みたいなものだし、遠慮なんてしたって始まらないわよ」

 

 そんな話をしていると、カリキュラムの履修登録の為の説明をしに教師が入ってきたため、取り敢えず話はここで打ち切りとなった。

 

 

 

 

 

「お嬢ー!一緒に昼飯食いましょー!」

 昼休み、少し早めに食堂に来た華夜とユスラは混雑することもなく席に着くことが出来た。そこに忠犬よろしく走りこんでくる美男子がいた。

「…譲。あんた、クラスに友達とかできなかったの?」

 あまりのことに呆気に取られているユスラと違い、こんな状況に慣れている華夜は冷静に対応していた。

「うーん、出来たには出来たんすけど、お嬢と昼飯を食いたかったんでおいてきちゃいました!」

「コラッ!」

 あまりにもフリーダムな発言に思わず華夜はチョップをかます。

「ひ、ひどいっすよお嬢…」

 

「ひどいのはどっちだよ、譲!昼休みになったと思ったら急に突っ走っていくなんてさ!」

 

 そういいながら現れたのは小柄な男子生徒だ。

「えっと…?」

「あ、僕は十三束鋼。譲のクラスメイトだ。…もしかしてあなたが噂の『お嬢』?」

 そう自己紹介すると、鋼は華夜の方を見て何とも言えない表情を浮かべた。

「はっ?噂?」

 困惑したように華夜が聞くと、鋼の方も歯切れ悪く答えてくれた。

「いや、昨日君と…『お嬢』と譲が仲良くしていたのを良く思わない人たちがいてね。特に女子に多かったんだけど、君のことを馬鹿にした瞬間、譲の奴、文字通り男女関係なく殺気を込めて睨みつけたんだよ。いやぁ、部屋の気温が五度くらい下がった気がしたよ…。それでうちのクラスでは『お嬢』には触れるなっていう暗黙の了解が出来たんだ」

 そう言って遠い目をする鋼と違い、「当たり前っすよ!」と言わんばかりに胸を張る譲。それで色々察した華夜は、関係ない人間まで巻き込んだことについて流石に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「…なんか、すみませんでした。それと『お嬢』は勘弁して。私は宵宮華夜よ。好きに呼んで」

「あっ、ついでに私は船頭桜桃。二人とも、ユスラって呼んで」

「わかったよ、宵宮さん、船頭さん」

 二人が自己紹介をすると鋼がそれに答え(ユスラは名前呼びでなかったため不満そうだった)、思い出したように、

「あ、ユスラは俺の名前知らないっすよね。俺は守谷譲(もりやゆずる)。譲でいいっすよ」

 と今更ながらに自己紹介をした。

 

 

 

 気を取り直し、華夜・譲・ユスラ・鋼の四人で食事をしていると食堂の一角が騒がしいことに気が付いた。

「なんすかね、あれ?」

「何かもめてるみたいだけど…」

「うーん、かよりん、見に行く?」

「やめときなよ。面倒ごとに自分から首を突っ込む必要なんてないんだから」

「それもそうっすよね」

 そういうと(鋼は少し気にしていたようだが)、四人は食事を続けることを選んだ。

 

 

 

 

 

 この時の彼らは知ることはなかったが、この食堂でもめる元凶となっていた『司波兄妹』が『宵宮華夜』と『守谷譲』の運命を大きく変えていくこととなる。

 




 次は原作の主人公が出ます!…たぶん。

 追記
 ヴィードをウィードに直しました。誤字の指摘ありがとうございました。
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