魔法科高校の逸般人   作:羽月

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 先に宣言します。このお話しから原作にない要素が入ってきます。この作品はあくまでも『オリ主』視点で進みます。ご了承下さい。


入学編Ⅳ

 翌日。

 

 昨夜もゲームのし過ぎで寝坊しそうになっていた譲を華夜が引きずるようにして登校。クラスにつくとユスラと挨拶とたわいのない話をする。ここまではどこにでもある普通の朝の光景である。

 

(えっと、反魔法国際政治団体がブランシュ、その下部組織がエガリテ…だっけ?)

 

 授業が始まると華夜は座学の課題を速攻で終わらせ、祖母から出された課題と向き合っていた(学生の中で俗に言われる内職という奴だ)。近頃の祖母の出す課題は、非常にデリケートな問題である魔法師の観点から見た国際情勢の変遷についてや反魔法師団体の組織名から概要についてなどといった、華夜のあまり得意ではない分野に当たる魔法社会関連のものが多い。

 『篠宮』は近頃、魔法による『兵器』としてではなく『経済』への働きを見据えた投資を始めている。そのこともあり華夜は、もし受かるのなら魔法について学べる魔法科高校に行けと祖母に勧められていた(ちなみに譲は魔法科高校に入るのは決定事項であった。ただし魔法科高校のことを調べよう等の魔法に対する前向きさややる気はない)。

 

(こんなことは言いたくないけど、二科生って担任という名の監督教師がいないから結構内職したい放題よね……)

 

 華夜はそんなことを思いながら祖母の課題と向き合っていた。…学校の名誉のために追記しておくが、学校の課題は普通の生徒ならば授業開始早々に速攻で終わるような内容のものではない。祖母の英才教育の賜物ととある『特技』により、華夜は筆記だけならこの学校(学年ではない)において五指に入る成績を誇っている(ただし悪目立ちしないように、筆記テストは大体学年10位から20位くらいをめどにしていこうと考えている)。

 

 そんな普通とは違う授業をしていた華夜も昼休みを迎えていた。

 

「少し、いいか?」

 華夜・譲・ユスラ・鋼の四人が食事を終えた後、そのまま食堂で雑談をしていると華夜に声をかけてくる男子生徒がいた。

 

「……こんにちは、森崎君」

 

 華夜が含みを持たせた笑みで彼――森崎に返事を返す。

「何のよう?言っとくけど私たちが先に座っているんだから、席を譲れとか馬鹿なことは言わないでよ?」

 ユスラは昨日の食堂での一件(命名・二科生は一科生に席譲れ事件)をエリカ達から聞いていた為、嫌悪感を隠すことなく森崎に噛みつく。鋼も怪訝な表情で友人も連れず一人でやってきた彼を見ていた。

「お話かしら?」

「……その、」

「いいわよ」

「かよりん!?何考えてるの!彼に何かされたら……!」

 煮え切らない態度の森崎に対して華夜は笑みを崩さず本題に切り込んだ。ユスラは華夜に何かされるのではないかと声を荒げるが、華夜は気にするそぶりを見せない。

「大丈夫、時間はかけないしすぐに戻るから。……行きましょうか」

 そういうと優雅に席を立ち、森崎についてくるように促がした。譲も席を立ち、華夜の半歩後ろを歩いてついていく。周りの人間を困惑させながらも三人が食堂を後にしたことにより、徐々に食堂にいつもの空気が戻っていった。

 

 

 

「譲はここで待っていて」

「お嬢!?ですが…!」

「今、彼はCADを持っていないわ。過剰になりすぎ。…言いたくはないけど、命令よ」

「……わかりました」

 屋上の扉の前で華夜は譲に待っていてもらうように命じ、そのまま森崎を伴い屋上へ入っていった。

 

「ごめんなさいね。譲やユスラは完全にあなたを危険人物扱いしているみたい。随分と針の筵みたいな気分を味合わせてしまって」

 華夜は屋上のフェンスの近くに立ち、森崎を振り返った。彼は食堂にいたころから…いや、さらに思いつめた顔になっている。顔色も悪い。

「……『篠宮』からの、有事の際に森崎から護衛人員を派遣するという提携話が、白紙に戻された」

「えっ。『篠宮』ってあのすっごいお金持ちのこと?…で、その話、私に関係ある?」

 華夜はあえてとぼけた発言をして森崎の反応を窺う。しばし沈黙していたが、森崎は意を決して華夜と真っ向から対峙する。

 

「貴女は『篠宮』の跡取りですよね?もう一度、森崎にチャンスを頂けませんか!?」

 

 あまりにもストレートすぎる森崎の発言に華夜は面食らい…大笑いし始めた。

「あはははは!嘘!思った以上にストレート!もっと、なんか、こう、なかったの?」

「な、人が真面目に…!」

 華夜の笑いっぷりに森崎は憤慨して顔を真っ赤にしている。少しすると華夜の笑いが収まり、真面目な顔をして森崎に向かい合う。森崎も憤慨した様子から真面目な空気へと変わった。

「…さて、まず質問させて。私が『篠宮』だということは表向きにはまだ発表されていない。どこで知ったの?」

「父親から、提携話を切られたという話を聞かされた。その時理由を聞いたら、篠宮曰く『森崎の人間の軽率な行動でうちの跡取りが危険にさらされたと聞いた。その話が本当ならば篠宮を危険な目に遭わせるわけにはいかない』とのことだ。それが理由だったと」

「…それで?」

「俺なりに考えた。篠宮の言う危険とは何かと。考えた結果、俺が感情に任せて魔法を使ったことを見られたことが原因じゃないか、と。そしてそのことに言及した人間がいたことを思い出した。…後は勘だ」

「…うーん、まあ、私が跡取りなのは正解だったわけだけど……危ないわね。もし違ったらどうする気だったの?」

「え、そ、それは…!」

 目に見えて慌てふためく森崎を笑いながら見ていた華夜だったが、再び表情を引き締める。

「まあいいわ。さて、結論から言うと基本的に私からは『篠宮』の当主の決定を覆すことはできません」

「…そんな!」

「森崎にとってこの提携が非常に大きかったことは知っているわ。基本的に篠宮は個人で使用人を雇ったりしないから、必要な時に必要な人材を外から雇い入れる。だからこそ有事の際の提携…言うならば専属契約を行うということは、森崎にとって定期的な収入になるということと『篠宮』の名前を箔押しに出来るというメリットになるのよね」

「その通りだ」

「でもね、だからこそ『篠宮』はしっかりと信頼できる人間に仕事を任せるの。自分たちでできないことを代わりにしてもらうのならば、それなりの水準をクリアしてもらわないといけないと考えているから」

「……」

 華夜の話に森崎は悔しそうに唇を噛んだ。自分の不用意な行動で、森崎一門のメリットを得られるどころか『篠宮』に見捨てられたという悪評が経ちかねない状況に陥ってしまったのだから。

「ねえ、二科生は補欠だなんていうけど、努力をすればちゃんと魔法師としての道を切り開けるの」

「…え?」

 急に華夜の言い出した話が理解できず、森崎は目を丸くした。

「勿論、生まれ持った才能が大きく幅を利かせるのも事実だけど。それでも、魔法事故で魔法を失った生徒の後釜というだけが二科生の価値ってわけじゃないわ。考えてみて。…一科生全員が卒業して魔法大学へ進学するわけじゃない。防衛大学に進学する生徒もいれば、一科生でも魔法に関係ない職業に就く人間もいる。…その上で卒業生の『65%』が魔法大学に進学しているのよ?…後は小学校レベルの算数のお話し。むしろ、ろくに教員に教わらずに魔法大学に進学しているってすごくない?」

「…あ」

 言われたら当たり前のことだが、そのことをうっかり失念している人間が多すぎる。華夜は第一高校について真面目に調べた結果、この事実に本気で頭を抱えそうになっていた。というか、リアルに抱えた。森崎もそのことに気が付かずアホみたいな顔をしていた。

「まあ、気持ちはわかるけどね。エリート高校に入れて一科生なんて言われて舞い上がっちゃうんだよね。そんで後々理想と現実とのギャップに苦しみ、結果二科生を貶めるくらいしか自分の自意識を保てなくなると」

「そ、そんなことはない!」

 森崎がムキになって否定するが、華夜は生ぬるい微笑みを浮かべたままだ。

「とにかく、そんな努力している二科生もまとめて平然と馬鹿にするような人間、ひいてはそんな人間を抱えている組織に仕事は任せられない…というのが『篠宮』の判断」

「…っ」

「なんだけど」

「へ?」

 不意に華夜の淡々としていた声色が少し高くなった。

「森崎との提携を白紙に戻したとたん、あなたたちの同業者のあちこちから声がかかってね。それでうっとおしくなった当主が今日、警護・護衛・警備系の企業に向けて発表する声明があるの。それが『一年をかけて、篠宮と提携できるほどの力があるか見極める』ってものなの。…もちろん、この声明は森崎にも行くわ。」

「!」

「この一年で、貴方の成長を見せてちょうだい?そうすれば、森崎に少し援護をしてあげられるかもしれないし」

「…上等だ!今に見ていろ!」

「あ、私のことは一応秘密にしていてね。まだ発表されてないから」

「わかっている!」

 そういうと森崎は勝気な笑顔で華夜を見て、そのまま踵を返し屋上から去っていった。

 

 

 

「お嬢、良かったんすか?」

「譲?」

 森崎が去っていったタイミングと入れ違いに譲は屋上にやってきた。その顔は非常に複雑なものである。

「俺が昨日の一件を報告した後、わざわざ森崎にチャンスを与えてやるように当主様に進言されたでしょう?」

「あ、知ってたの」

 譲の言葉に華夜は軽くおどけたように答える。

「わざわざチャンスなんて与えて…社会に出たらこんなもんじゃないっすよ?」

「だからこそよ」

「?」

 意味が分からないという表情を浮かべる譲に華夜は笑いながら続ける。

「譲はさ、一歩間違えたらこの世にはいないなんて生活を昔は送っていたって言ってたでしょ?」

「ええ、まあ、そうっすけど……」

「まあ、詳しいことは聞かないけどね。でもさ、ここはティーンエイジャーの最後の砦、高校よ。少なくともここにいる間は間違えてもいい、間違えたらやり直せる。…少なくとも私はそう思ている」

「……」

「今だけよ。間違えても許してもらえるのは。だからこそ、ここで学んで立派な人間にならなきゃ。失敗をして人は学び成長していくんだから」

「……生意気言ってすみませんっす」

「いいのよ!じゃ、私たちも戻ろうか。ユスラたちが待ってる」

「了解っす!」

 華夜と譲はお互いを見合った後、静かに屋上から立ち去った。

 

 その後ユスラと鋼に色々と聞かれて慌ててしまったのは、また別の話。

 




 別名、森崎救済話。いや、原作での扱いがあまりにもあれなんで…。
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