リアル生活でいろいろありすぎて全く小説を執筆できない状況にありましたが、これからは二か月に一度くらいは更新……したい……です。
本当に申し訳ありませんでした。
相変わらずのオリキャラ無双です。原作主人公は今回もほぼ出ません。というか、原作主人公とよく会話を交わすようになるのは九校戦以降になるので、少々お待ちください(待っていただければ)。
怒涛の部活勧誘期間が終り、魔法科高校は再び落ち着きを取り戻していた。……表面上は。
「なんか、最近空気がやや不穏だよね」
「ユスラもやっぱりそう思う?」
ある日の授業の休み時間中に華夜とユスラが世間話をしていた。内容は――司波達也とその周囲について。部活勧誘期間中に彼も怒涛の活躍をしていたらしいが、どうもそれが気に食わない連中がいるらしく、見るからにそういう空気が一部の一科生から出ているという話を鋼から聞いた。ユスラの心配しているところはそこらしいが、華夜は違った。
「一部の二科生がなんか水面下で動いてるみたいって話」
「え、二科生!?……どういうこと?」
ユスラの不思議そうな言葉に華夜は説明をする。
「差別を撤廃しようって運動があるみたい。どうやら一部の生徒を無理やり差別反対運動に参加させているみたい」
「そうなの?」
「うん。噂好きの蜜柑の情報だからほぼ百パー間違えないと思う」
早乙女蜜柑。早乙女琥珀の妹で実は華夜たちとクラスメイトだと判明した女子生徒である。姉でありショハンの先輩の琥珀から紹介されて、今では良い友人として付き合っている。ちなみに彼女は記者を志しており、彼女の情報収集能力はかなりのものである。休み時間も常に学校中を走り回り、情報獲得に動いている。姉とよく似た色彩と顔立ちの持ち主であるが、姉と違って髪の毛はベリーショートにしており、話し方もせかせかしている。閑話休題。
「まあ、最近の話だと剣道部の壬生先輩……だったかな?が司波君に接触したって話を聞いた。彼女、ううん、違うな。彼女の所属している剣道部が差別撤廃運動の中心っぽいって蜜柑が予測してた」
「……みかちーって、なんでそんなに情報チートなの?」
みかちーとは、ユスラのつけた蜜柑のあだ名だ。
「別に情報チートってわけじゃないよ!」
「「ぎゃあ!!」」
突然、話し込んでいた二人の死角から現れた早乙女蜜柑はあっけらかんとした様子で話を続けた。
「ただ、人のうわさ話を聞いて、それからテキトーに情報を取捨選択して組み立ててるだけだよ!」
「蜜柑、突然出てこないでよ……。あなたの『死角探知』って相当強力なんだから」
「しかも、みかちーの勘の良さもすごいじゃん。もう『異能』って言っていいレベルじゃない?」
「どーだろ?別に魔法を使っているわけじゃないから、勘の良さについては何とも言えないけど?」
華夜が言うように蜜柑には『死角探知』と呼ばれる、ありとあらゆるものの『死角』を見抜くという『異能』を持っている。しかし彼女曰く「だからと言って魔法が得意なわけじゃないから二科生なんだよ!」とのこと。そして人並み外れた勘の良さ――本人いわく『野生の勘?』――を持ち合わせており、その二つを組み合わせて手に入れることのできる彼女の情報は、非常に精度が高い。まさに情報チートである。本人は認めていないが。
「あ、そうそう、二人とも。多分、そろそろ事態が動きそう」
「え?」
「早ければ今日の放課後にでも何かやらかすんじゃないかな?」
蜜柑は華夜にそういいながらいたずらっ子のような顔で笑った。
「全校生徒のみなさん!!」
その日の放課後、蜜柑の予測は当たり『差別撤廃を求める有志同盟』なる生徒たちが放送室占領事件を起こし、その解決に風紀委員の司波達也が一枚噛んだということが、後に蜜柑から伝えられることとなる。
「ねえ、聞いた?差別撤廃同盟との討論会を七草会長が受けるんだって!」
「耳早すぎじゃない?」
放送室占領事件の翌日。朝一番にその情報をもたらした蜜柑を呆れと少しの賞賛を含んだ声色で華夜は正門にて迎えた。
「なーに、些細なことでも情報は新鮮さが命!だからね。さっそく新聞部の号外が飛び回るわー!はい!華夜ちゃんにさっそく号外第一号をプレゼントしちゃう!」
「新聞部って、確か先輩が卒業されて廃部になったって話じゃ……」
「今は私が復活させて部員二名で動いているよ!それじゃ、もう一人と号外配りに行ってくるね!」
「ちょっと!」
そういって華夜に号外を押し付けると、引き絞った弓から放たれた矢のように蜜柑はその場から走り去っていった。
「……なんで私の周りってこんなにキャラが濃すぎるのかしら?」
「ていうか、俺のことは完全無視っすか」
首を傾げる華夜の隣で完全スルーを決め込まれた譲が複雑そうな表情を浮かべていた。
「でも、これってどうなんすかね?」
「ん?」
「いや、この号外からすると、七草会長が一人で討論を受けるみたいっすけど」
「ただの茶番でしょ?」
号外を読んでから首を傾げた譲の疑問に華夜は冷たく切り捨てた。
「仮にも十師族のナンバーツーのお嬢様よ。烏合の衆に討論会ごときで負けるとは思えない。一人で受けることにしたのも調整だなんだに余計な労力を割かないため。明日という日付は相手に準備の時間を与えないため。完全に七草会長の演説会になる予感しかしないわ。」
「うわー。えぐいっすね」
「まあ、部活の予算案には私から言わせたら穴があるから、そこを突くことができれば多少は同盟にも勝ち目があるんじゃない?まあ、無理っぽいけど。でもこの学校の差別解消について学生ができることなんて限られてるし、落としどころとしては差別、ダメ、絶対!の精神論か、もしかしたら生徒会役員に二科生と所属できるように訴えるってとこでしょ?会長は達也を生徒会に入れたかったみたいだし」
「ああー……。ん?なんか予算案に変なところってあったっすか?」
「ああ、この学校では大会の結果と部員の数で予算を割り振ってるでしょ?確かに学校としても弱い部活にお金をかけられないのは分かる。けど、その大会結果が魔法クラブと非魔法クラブともに一律って所が穴と言えば穴かな?例えば剣術部が全国大会に出るのに必要となる試合の勝ち数が5だとすれば、剣道部が全国大会に勝ち上がるのに必要な試合は20。なのに同じくらいの全国大会での戦績と部員数がほぼ同じだからと言って同じ予算が配られるとなると、どうしても剣道部の予算の方は圧迫されて遠征費用が生徒の持ち出しになるって感じ。これを平等かと言われたらちょっと苦しいよね。まあこの学校の方針やかけられる部費の費用、考え方の違いがあるから何とも言えないんだけど」
「おおー。そういえば競技人口が魔法競技とそれ以外じゃ違いすぎるっすもんね!さすがお嬢っす!」
「大したことじゃないけど……。それよりも、私としては差別撤廃同盟がこんなに活発に動いているのにちょっと引っ掛かりを覚えるのよね」
「ん?どういうことっすか?」
「なんというか。学生だけでこんなことができるのかなって……。まっ、気にしてもしょうがないか。それじゃ、私、もう教室に行くね」
「はいっす!また昼に!」
そんな会話をして譲と別れた後、少しだけ感じた嫌な予感を華夜は胸の内に押し込めた。
読んでいただき、ありがとうございます。リハビリもかねていますので文章量は少なめです。