アローラ、ただいま雨模様   作:歌鳥

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サンムーンクリア記念です。



雨女、母と話す

揺れる波、白く光る蛍光灯、適度に冷えた塩素たっぷりの水を素肌にまんべんなく受けながら、漂っている。

 

母なる海、なんて言葉があるが、気持ちがわからなくもない。水の中に身体を沈め、なすが儘に漂っているというのはひどく孤独で、そして安心ができる。

 

赤ん坊が胎内にいるときは、こうやって水に囲まれて育っていったことを考えれば、なるほど、水中というのは確かにより思考を放棄して本能の赴くままに自己に没頭することに向いている。

 

現に俺も、ただただ何も考えずにこのだだっ広いプールにいると小難しいことはどうでもよくなってくる。

 

そう、そうして考えることを放棄して、水に浮かび上がると同時に浮かび上がってくる本能を一言、表現するのだ・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・おっぱいもみてぇ」

「ただの煩悩じゃないの!!!」

 

 

 

 

スパコーンと頭をはたかれた。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

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「せっかく人がリラックスタイムを過ごしていたのにぶち壊しにくるのはどうなんですかねぇ母上?グレるよ?15の夜しちゃうよ?」

 

そういってジト目でプールの中から見上げた俺に対して、同じジト目で仁王立ちしてる母。

「『娘』が不穏当な言葉をつぶやいたらから教育する。至極まっとうな母親の仕事だと思うけど?」

 

 

「うちのこの広いプールの点検なんていう時間のかかる仕事をすすんでやってる親孝行娘のつぶやきくらい目をつぶらないと、教育ザマス系ママになっちゃうよ?」

 

「そうね、私も若いころは『おてんば人魚姫』なんて言われたし、多少のことくらい目をつぶるくらいわよ。」

 

「いや姫はついてなかったんじゃ「あ”?」なんでもないです」

 

どう見ても人魚より般若だろという形相にしり込みした俺を見て、母カスミはため息をついた。

「ジムの娘として、まぁ後片付けがてらジムのプールで自由に泳ぐのはいいとしましょう。ご飯も忘れて2時間も泳いで漂ってをしてるのも、まぁ水が好きなわけだし許すとしましょう。でもね・・・・・・」

 

「でも?」

 

 

 

 

「15歳にもなる女の子が!水着も着ずに!!素っ裸で!!!誰が来るともしれないプールで漂ってていい訳あるかーーーーー!!!!!」

 

 

 

 

「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」

「やかましいわ恥じろ!」

 

ざっぱーんとプールから上がった俺・シズクは、母親譲りの無い胸をはりドヤ顔をしてみたが再度頭をスパコーンと叩かれた。ドメスティックバイオレンスである。

 

 

 

 

 

 

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「確かにすでに夜になってて、ジムバトルに挑戦する人も来ないしジムの男性トレーナーもすでにいない。かといって、出入りを禁じてるわけじゃないから、だれが入ってくるのかわからないのよ?ジムのプールを使うならもっと公共の場の意識を持って・・・」

 

「あ~、はいはい。わかった。わかりましたよ。」

 

「いくらがさつで男っぽいところがあるとはいえ、身体的にはあなたは女の子なのよ?世の中どんな危険が潜んでるかわからないの。15を迎えたいい年した女の子が、少しは恥じらいをもって・・・・」

 

「も~、わかったってば。ちゃんと今度から鍵とかかけるから。」

 

「いや、そこはあなた水着を着なさいよ」

 

「やだ。あの肌に余計な感覚がなく水に触れているのがいいんだもん」

 

「わからなくはないけど・・・・・はぁ、なんでこんな風に育っちゃったかなぁ、昔は驚くほど大人びて聞き分けのいい子だったのに」

 

(そりゃあ転生して身体が大人の人間が入ってりゃ、大人びた子になるわ)

 

母、カスミのつぶやきに心でそっと突っ込みを入れる俺。

 

そう、カスミである。ここは彼女がジムリーダーを務めているハナダシティの水ポケモン専用ジム、ハナダジムである。

 

そして、俺ことシズクは、そんなジムリーダーを母に持つ、転生美少女トレーナーなのだ。

 

ゲームの、しかも超有名なポケットモンスターの世界に転生してきて、早15年。

 

まさかリアルで「ポケットモンスターの世界にようこそ!」されるとは思ってもみなかったが、なかなかに充実した日々を送っている。

 

このまま美少女キャラをキープして、このハナダジムを継いでいくのもいいかな、なんて考え、

 

 

「それじゃああんた、島巡りしてきなさいよ」「・・・・・・・は?」

そのすべてをひっくり返す、母の発言にポッポにタネマシンガンを食らわせた顔で聞き返した。

 

 

 

 

 

 

 

人生はゲームのようにいかない。

俺は転生して初めて、その言葉の意味を本当に知るようになるのであった。

 

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