【全知全能】になった俺がアイドルになって人生を謳歌していく   作:PL.2G

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お待たせしてしまい申し訳ございません。

やっとサイドストーリ後編が纏まり?ました。

蘭子式熊本弁は適当です。
この先コロコロイメージ変わると思います。
許してください。蘭子式熊本弁はロシア語より難しいです。


Sixth side story 2nd volume ~ 騒がしき堕天使と猫娘、そして眠り姫へ ~

Continuation――――――――――――――――――――――――――

 

 

「え?」

 

次の瞬間、美嘉ちゃんが膝から崩れ落ちてしまう。

ほぼ無意識だった。美嘉ちゃんの負担を軽減させようと身体が動き咄嗟に抱え込んでいた。

 

「お姉ちゃんっ!?」

 

「きっ救急車っ!!」

 

莉嘉ちゃんとかな子ちゃんがそれを見て騒ぎ立て、それに吊られるように辺りも騒がしくなっていく。

 

「落ち着いて。大丈夫・・・落ち着いて下さい」

 

美嘉ちゃんをそっと床に寝かせ脈を確認。その後、美嘉ちゃんを一瞥、大事無いものと胸を撫でおろす。

 

「過換気症候群・・・ですね」

 

騒ぎを大きくしない様に努めて冷静に言葉にしていく。

 

「この程度の症状なら暫く安静にしておけば大丈夫です。救急車を呼ぶまでも無いですよ。あと、美嘉ちゃんが目を覚ました時に、水分がすぐに取れるように準備だけしておいていただけますか?」

 

実際、大した事が無く内心非常にほっとしていた。

そして久し振りにトップアイドルと言う事、【全知全能の偶像】と呼ばれている事に感謝をした。周りの『騎士さんがそう言うなら問題無いだろう』と言う雰囲気が漂っており、そのまま通常通りになりつつあった。しかし、ほっとしたのも束の間、俺に新しい問題が浮上した。

 

「流石にこのまま床の上に寝かせて置くのは・・・取り合えずそこのソファに移動を・・・」

 

と、美嘉ちゃんを持ち上げようとして思い留まり、そのタイミングで視界に人影が入り込む。

 

「凄い手際の良さ♪まるでお医者様みたいですね。何でも出来ちゃう騎士君にお姉さんは非常に憧れちゃいます♪」

 

楓さんが横で楽しそうにそんな事を言う。しかし、過換気症候群。

緊張、か・・・?美嘉ちゃんの様なアイドルが・・・?

しかし俺がアイドルになって超が付くほど有名になってからと言うもの、実際こう言った事が少なくはなかったわけだけど。

俺自身全然気にはしてないのだが・・・それでも相対した人たちは、この『トップアイドル』と言う肩書に対して余計な緊張をしてしまう事があるみたいだった。

 

「さ、早く運んでしまいましょ?」

 

少し考えに耽っていた俺を楓さんが捲くし立てる。

 

「いやぁ、あのぉ・・・ですね。そう思ったんですが・・・そのぉですね、気を失っている女性に・・・えーっと・・・勝手に触れる、と言うのは・・・ねぇ?しかも、重症でもないと判ってしまって尚の事・・・ねぇ?」

 

煮え切らない俺に対し元気な声がかかる。

 

「じゃあ、きらりが運ぶよぅ☆」

 

ズズイッと楓さんの後から手を上げて、一際背の高い女性が名乗り出てきた。

 

「大変ありがたい申し出助かります。本当に申し訳ありません。是非ともお願いします」

 

渡りに船とばかりに頭を下げる。

 

「大丈夫大ジョーブー☆びっしぃ♪」

 

ニコニコと俺にピースをして、ひょいと美嘉ちゃんを抱え上げると、この部屋に非常に不釣合な豪奢なソファーの上へ寝かせた。

美嘉ちゃんはあちらにお任せして、気になっていた事を武内さんに質問してみる。

 

「ここに来たメンバー全員がシンデレラプロジェクトの一員なのですか?」

 

「そう、なります・・・いや、城ケ崎さん・・・のお姉さんは違いますし、あと一人、ここに、いないですね・・・?」

 

キョロキョロと辺りを見渡し、次いで申し訳なさそうに頭を下げ左手を首に当てる。

 

「そうなんですか。なんと言うか、流石武内さんと言いますか、良くこんなに個性が光るメンバーを見つけてこられますね・・・」

 

「それは・・・」

 

訝しげな目を向けてくる武内さん。上手な言い回しが出来ずテンパる俺。

 

「あーと、あのですね・・・ごめんなさい。気を悪くしないでください。良い意味で言っているんです。えーっと、このアイドル史上主義の世の中で、原石の状態であれほど個性が光っている・・・アイドルとしての武器が秀でている人を見つけられる・・・と言うのはやはり才能・・・ですよね。素晴らしいと思います。ウチの社長に爪の垢煎じて飲ませてやりたいですよ」

 

そう言って精一杯の作り笑いを送る。

 

「ありがとう、ございます」

 

顎に右手を添え、しばし悩んだ後、

 

「ですが、一ノ瀬さんをスカウトしてきた(はなぶさ)さまの方が、間違いなくその才能は上かと・・・思うのですが・・・」

 

「それは無いですね」

 

間髪居れずにきっぱりと否定する。

 

「そう・・・なのですか?」

 

「そうなのです」

 

「はあ・・・」

 

武内さんは困ったような顔をし、また首に左手を添えるのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「う~ん・・・・」

 

目を開ける。視界がぼやける。なんか頭がぼんやりする。ちょっとだけ痛い・・・

えっと・・・何があったんだっけ・・・?

 

「お姉ちゃんが目を覚ましたー!!お姉ちゃん、だいじょーぶ?」

 

莉嘉が頭に響く声でそんな事を言っている・・・どうやらアタシは眠っていたらしい。

 

・・・あ、そうか、思い出した・・・

わたしは上半身を起こす。

 

「莉嘉・・・アタシ、どれ位寝てた?」

 

「ん?10分くらい?数えてたわけじゃないからよくわかんない」

 

「えへへ」と頬を掻きながら笑う莉嘉。

 

「そっか・・・ゴメンね・・・」

 

アタシが眠っていた事に対しなにも考えて無いであろう莉嘉を見て、非常に申し訳ない気持ちがこみ上げてきた。

 

「別に謝る必要は無いと思いますけど・・・体調はどうですか?」

 

右側から声が聞こえ、そっちを向くと騎士さんがいた。

 

「えぇ、特に誰かに大きく迷惑を掛けた・・・と言うわけではありませんし。ところで身体の具合はいかがですか?」

 

続いて楓さんが騎士さんの後から顔を覗かせ優しい声でアタシに問いかけつつ近付いてくる。

顔が近い。恥ずかしい、でも良い匂い。香水かな?それともシャンプーとかかな?

寝起きの所為なのか混乱しているようで、そんな思考が現在のアタシの考えを上書きした。

 

「はい、大丈夫です」

 

だがそんな事は顔に出さず(多分出ていないと願いたい)に2人の質問に答える。

しかし2人は気にするなと言うが、気にしないのは到底無理な話なわけで・・・記憶が徐々に蘇り、それと同時にアタシの中の罪悪感がどんどんと肥大化していく。

 

「本当にゴメンなさい・・・」

 

申し訳無さで自然と目の前が潤み、霞んでいく。

 

「大丈夫ですよ。これ、お水です。さっき騎士さんが目を覚ましたら水分とれるようにって言ってたから・・・」

 

智恵理ちゃんが水を手渡してくれる。

 

「ん・・・ありがとう」

 

「あー、あと、彼女にも、お礼を・・・あー・・・」

 

歯切れ悪くそう言って騎士さんが手を向けた方を見る。

 

「おっす、おっす!346プロ所属、シンデレラプロジェクトの諸星きらりでっす☆よろしくぅっ!!」

 

「と、諸星さんがここまで美嘉ちゃんを運んでくれたんだ。正直、俺が運んでも良かったんだけど、やはり女性に触れる、と言うのは・・・ねぇ?」

 

きらりちゃんが挨拶をしたあと、騎士さんがそんな事を言う。

 

「・・・」

 

「美嘉ちゃん?」

 

「全っ然OKです!!もうそりゃもうがんがん触れて頂いて結構ですっ!!なんなら、その、勢い良く間違えてお、おっおぱおおぱ・・・・」

 

「へ?」

 

「え?あ・・・えっ?」

 

うきゃーーーーーー!!!アタシ声出てたーーーーー!!??

 

「お姉ちゃん、『おぱおおぱ』ってなにー?」

 

莉嘉が興味津津に質問してくる。

 

「いや、あの、その、それは、あの・・・」

 

よし、一旦落ち着こうかアタシ・・・さて、どう答えるわたし?

しかしきらりちゃんは本当にすごいスタイルだ。

背が高いのもそうなのだが、最早何もかもが大きいと言わざる得ない・・・

アタシもあれ位あったら騎士さんを悩殺・・・とか出来ないかなぁ・・・

もう、止め止め!!さっきから何考えてんのアタシ!!

起きてから冷静さを欠如しちゃってる気がするよっ!

 

「しかし、みんな本当に素晴らしいものを持っていらっしゃる。シンデレラプロジェクト、きっと大成功間違いなしですね。一先ず僕がファン第1号って名乗っても良いですか?」

 

唐突に大きな声でそう語る騎士さん。

もしや、アタシの為に・・・キュン

 

「うおぉ、天下の騎士様からお墨をもらったぁ!?」

 

「しかも私たちのファンですよ、ファン!!」

 

未央と卯月が声を上げた。

アタシはシンデレラプロジェクトではないので、ちょっと残念・・・

 

「あら、騎士君は私のファンにはなってくれないのですか?」

 

楓さんもアタシと同じ気持ちだったらしい。

 

「楓さんのファンにならない人は、楓さんを一度も見たことが無い人だけだと思います」

 

それはそうだ、うんうん。

 

「あらあら、うふふ。ありがとうございます。でもそれは騎士君にも言える事になりますよね?」

 

それもそうだ、うんうん。

そんなアタシを見つめる騎士さん。いやん、恥ずかしい・・・

 

「美嘉ちゃん、体調はもう大丈夫ですか?」

 

「うぇ!?あ、はいっ。ご心配おかけしました。みんなも本当にゴメン」

 

体裁を瞬時に整え、頭を深く下げみんなに再度謝る。

全く何やってるんだアタシ!!自分で自分を叱りつける。

 

「さーて♪一応一段落した事ですし、自己紹介(・・)の続きと行きましょうかい(・・・・)?うふふふ♪」

 

仕切り直しとばかりに楓さんがパンと軽く手を叩く。

さすがにこう言った事に慣れているのか、とてもスムーズだ。

アタシもこう言った配慮の出来る女性にならなければ・・・だけど、ダジャレは・・・いらないかな・・・

 

「はーい、では僭越ながら(わたくし)めが・・・本田未央、15歳。高校1年で、趣味はショッピングッ!騎士様のようなちょースゴいアイドルになりたくてシンデレラプロジェクトに応募しましたっ!夢は世界制覇っ!!これから、シンデレラプロジェクト共々よろしくお願いしまーすっ!」

 

「未央、なんかそれ面接みたいだよ・・・それに世界制覇って・・・」

 

さっきまで静かだった凛がツッコミをした。

 

「おっ?しぶりんナイスつっこみー!!私の自己紹介の魅力度が10ポイントはアップしちゃったよー」

 

「うりうりー」と肘で凜をつつく未央。

 

「今ので魅力がアップするんですかっ!?凛ちゃんすごいですっ!!是非私の時もよろしくお願いしますね!凛ちゃんっ!!」

 

瞳をキラキラと輝かせながら未央のボケに素で乗っかって行く卯月。この子、出来る・・・

 

「卯月ぃ・・・」

 

心配そうな眼で見つめる凛・・・この先凜は苦労しそうだ。

 

この後、多田李衣菜ちゃん、三村かな子ちゃん、緒方智絵里ちゃんとささやかな自己紹介が続いた。

 

「じゃあ次は私が、346プロ所属シンデレラプロジェクトの新田美波です。19歳で、プロジェクトの中では一番年上になります。よろしくお願い致します」

 

とても丁寧に挨拶をする。この辺りは流石年長者と言った所だ。まぁ、言った所でアタシと然程離れてはいないんだけど。

 

「趣味は色々な資格取ることと、最近はラクロスをやっています」

 

「ふふふ、本当に、なんだかだんだんと面接みたいになって来てますね。どうですか、一人くらい8723にヘッドハンティングしてしまってみては」

 

その言葉にガタガタッと瞬時に反応するCPの数名をアタシは見逃さなかった。

そして困り顔の武内P。

 

「ラクロスかぁ・・・、前にやった事あったなぁ。懐かしい」

 

楓さんのそんな台詞を気にも留めず騎士さんが呟く。

そして極端に落ち込むCPの数名をアタシは見逃さなかった。

 

「はい、確か3年位前でしょうか?テレビで騎士さんがプロの選手とラクロスの試合をしたんですよね?」

 

美波ちゃんも特に気にすることなく騎士さんの言葉に反応を示す。

 

「実はその時の記憶が強く残ってて、大学にラクロスのサークルがあったのでやってみたんです」

 

「へーそうなんですか。しかしあれ・・・そうかぁ3年前かぁ・・・」

 

「結局その試合どうなったの?」

 

李衣菜ちゃんが質問をした。アタシもそれは気になる。

 

「当然その試合は、騎士さんの圧倒的な勝利だったにゃ!!」

 

「うむ、如何に因果(カルマ)を積もうが世界を総べし彼の方(モノ)の前では所詮浅学菲才(ムシケラ)・・・どれ程数が増えようが塵芥(クズ)よ!!一度(ひとたび)攻撃に廻れば神を裁きし稲妻(ゼウス)の一撃・・・蹂躙と呼ぶに相応しい聖戦(ジハード)であった。アレこそが黒き運命(オーメン)・・・アレこそが此の世の摂理(プロヴィデンス)・・・」

 

なぜか、みくちゃんと蘭子ちゃんが熱弁を始めた。

物凄い情熱は感じるけど蘭子ちゃんが何言ってるのかさっぱりわかりません。

ただ、2人の年齢を考えると小学生時代から騎士さんのファンだったのか。

恐るべし・・・

 

「話の流れ的に、大体何となーく今のは雰囲気でわかった気がするんだけど・・・

【せかいをすべしもの】って・・・何?」

 

次いで気になる所をかな子ちゃんが聞いてくれた。

 

「うむ、始祖の事である!!」

 

揚々と答える。シソ???????

うん、更にわからない・・・

 

「今思ったけど、その言葉使いって、もしかして更にむかーし僕が出てたアニメの・・・」

 

「やはり解ってくれるかっ!!我が始祖よ!」

 

アニメ何それ・・・全然知らない・・・

 

「【ニーベルングの指輪】かぁ、僕が中学生時代に声優として初めて出演したアニメだねぇ。今考えると設定もさる事ながら台詞回しとか凄い恥ずかしいなぁ・・・正に暗黒歴史(ダーク・クロニクル)って奴だよなぁ・・・と言うか、えーっと、お名前は・・・」

 

「ふっふっふ、我が名はブリュンヒルデ、血の盟約によりこの地へと降り立った。孰れは魔王に至り、始祖の前に立ちはだかってしんぜよう!!なーっはっはっはっは!!」

 

え、えーっと・・・

 

「名前以外は何となくわかったけど・・・本名は?」

 

「え、騎士さんわかるの?」

 

「まぁ、もともとこの台詞回しは僕が考えたからなぁ・・・いやぁ、正面切って堂々と使われるとスッゴイ恥ずかしい!!やばい、枕に顔を埋めて両足バタバタしたい位今ハズカシイ!!」

 

両手で顔を覆い出した騎士さん。

うわ、ヤッバイ!!騎士さんがスッゴイ可愛い!!何この生き物!?

 

ティロリン♪

パシャ♪

カシャシャシャシャシャシャッ♪

 

「え?」

 

シャッター音がたくさん聞こえた。特に最後。

 

楓さんと卯月、みくちゃんの3人だった。

 

「え?・・・あの・・・え?」カシャシャシャシャシャシャシャシャ

 

騎士さんが両手を前にワナワナしている。

未だにシャッター音は続いている。

 

「消しませんよ?」

 

楓さんがスマホを隠し素早く答える。

 

「私、この画像いえ、スマホを一生の宝物にしますっ!!」

 

卯月のこの顔はマジだ。出会ったばかりの私でもわかる。マジだ。

 

「こ、これはヤヴァイにゃ・・・引き伸ばして部屋に飾るにゃ・・・ゴクリ。最高にゃ・・・」カシャシャシャシャシャシャシャシャ

 

シャッター音の犯人はみくちゃんだった。しかし、みくちゃん?みくちゃんの顔の方がアタシにはヤヴァく見えてるよ・・・?

 

「ぬぁ~!!わ、私も、私も欲しい。それ欲しい!!」

 

え!?蘭子・・・ちゃん?

 

「蘭子ちゃん、後で私が送ってあげます」

 

卯月が言う。

 

「本当!?ありがとう、卯月ちゃんっ!!」

 

両手で卯月の手を取る蘭子ちゃん。あまりの出来事に言葉が普通になっていても気づいていない模様。

 

「えー・・・コホン。ごめんなさい少し取り乱しました・・・失礼。で、君は蘭子ちゃん、で良いのかな?」

 

「ぴゃぃっ!?わ・・・わ・・・我が真名を・・・」

 

蘭子ちゃんが取り乱し始める。

 

「ほら、蘭子ちゃん。ちゃんと自己紹介しないと」

 

美波ちゃんが蘭子ちゃんの肩に手を添える。

 

「う・・・うむ・・・。われ・・・わたし、は・・・か、神崎蘭子・・です。こ・・・今回は、スカウトされて・・・シンデレラプロジェクトに参加する事に、なり、ました・・・」

 

蘭子ちゃんはスカウト枠だったのか。そりゃそうか。顔立ちもそうだけど、個性も光ってるもんね。

武内Pならスカウトしちゃうかー。

 

「でも・・・ずっと騎士さんに憧れてて・・・騎士さんを遠くから見ている事しかしてなくて・・・でも、今回スカウトされて・・・騎士さんと同じ・・・アイドル・・・に、なってみたい、って、同じ場所に立ってみたいって・・・もし全然ダメでも、とにかくやってみようって・・・思ったん、です・・・」

 

騎士さんに面と向かって自分の思いを包み隠さず言える蘭子ちゃんの勇気が、素直に凄いと思った。

普段隠すような言葉を使っている反動みたいなものなのかも知れない・・・いや、違うか。そう考えるのは失礼だ。間違いなく蘭子ちゃんの人柄なのだろう。

 

「そっか・・・ありがとう。これからよろしk・・・うーん・・・」

 

一瞬握手をする動作に入って、突如動きを止めその手を顎に持っていく騎士さん。

一体どうしたのだろう?

握手すらも女性とするのは的な事なのだろうか・・・このお人は本当に初心・・・

 

【汝!ブリュンヒルデよ!!】

 

騎士さんが大声を上げる。突然の出来事にアタシは驚き、思考の海から浮上する。

見ると騎士さんの雰囲気と言うか周りの空気感と言うか、何かが一変していた。

先程の挨拶の時から感じていたが、騎士さんは演技・・・何かを演じる時、演じ始めた瞬間から騎士さん自身、見ている人、そしてその周りの空気すらも騎士さんの世界で呑み込んでしまう。そうとしかアタシには表現が出来なかった。

 

【我、ジークフリートの名に於いて、汝、ブリュンヒルデと魂の誓約を!!】

 

???

騎士さんは声高らかに大げさな身振り手振りをする。

 

「ふぁ・・・ふぁあぁ・・・」

 

その様を見ていた蘭子ちゃんが・・・蘭子ちゃんの目が、すっごいキラキラしていた。

 

【どうした?ブリュンヒルデよ・・・怖気付いたか?】

 

騎士さんが続けて言う。

蘭子ちゃんは何か慌てて姿勢を正し、右手を右目の辺りにそっと持って行き、左掌を広げ騎士さんの方へ向けた。

 

「ふっ・・・ふっふっふっ・・・我が怖気付くだと・・・?笑止っ!!我、ブリュンヒルデの名に於いて、汝ジークフリートとの魂の誓約をここにっ!!」

 

【今、この瞬間(とき)この空間(ばしょ)で、我々の誓約(セールマン)契約(コントラ)へと昇華するっ!!】

 

契約(コントラ)の名の下に、我の(クロノス)を汝の歪なる(ディストーション)虚無(ヴォイド)に奉げよう!!」

 

契約(コントラ)の名の下に、我の(プシュケー)を汝の赫き(クリムゾン)(コフィン)奉げよう!!】

 

(クロノス)(プシュケー)を浄化させ、何れ神々の黄昏に誘われん・・・」

 

(プシュケー)(クロノス)を加速させ、何れ肉体と言う牢獄から開放されん・・・】

 

【幾億もの死せる戦士の魂(エインヘリャル)の導きに縁りて】

 

(カルマ)を刻まれし囚われた形骸(うつわ)死の国(ヘルヘイム)の鎖より解き放ち」

 

【「我ら共に約束の地(ヴァルハラ)へ!!」】

 

二人は天を差す。

???????

 

「・・・ふぅ、なんか懐かしいなぁ」

 

その言葉を皮切りに周りから拍手喝采が起こる。

 

「あ、あの・・・今のは?」

 

またもかな子ちゃんだ。

 

「あぁ、今のはそのアニメのワンシーンなんだ。ちょっと?はアレンジはしてあるけど。いやぁでもあそこまでしっかり動きまで憶えてるなんて凄いね、蘭子ちゃんは」

 

そう言って蘭子ちゃんの頭を撫でる騎士さん。

 

「あぴゃぴゃぴゃ・・・・あ・・・あの、あ・・・ありがとう・・・ございましたっ!!!一生の思い出になりました!!!」

 

蘭子ちゃんが素の状態でお礼を言う。当然だが、この子もいい子だ。言葉がわからないけど・・・

 

「そう言ってもらえると僕もやった甲斐がありました」

 

「凄いにゃ・・・感動したにゃ」

 

みくちゃんも食入る様に見つめていた。

 

「うふふ、騎士君はそう言った事もするんですね。なんか意外でした」

 

楓さんが楽しそうに騎士さんに告げる。

 

「それは、僕だって一アイドルですから。一人でもファンは大切にしたいと思ってますからね。ファンサービスだってしますよ?」

 

「でも・・・私にファンサービスなんてしてくれた事無いじゃないですか?」

 

「か・・楓さんにファンサービスを許すのは少し怖くて・・・ですね・・・そもそも何をすれば良いのかもわかりませんし・・・ねぇ?」

 

騎士さんのまさかの返答。

 

「まぁ、ひどい・・・よよよ」

 

「よよよって、物凄い嘘っぽさが増しますねそれ。そのうち何か考えておきますって事にしておいてください」

 

「ぶー」

 

この二人は付き合っているのではないのだろうか・・・?

とか考えていたらちょっと胸の奥が苦しくなった・・・

 

「次はみくが行くにゃー!!」

 

そんな中空気を読んでか読まずか、みくちゃんが気合を入れ始めた。

 

「私は前川みく。可愛い可愛い猫ちゃんアイドルにゃ。よろしくにゃん♡」

 

片足を上げ、猫っぽいポーズをとるみくちゃん。騎士さんたちの前でも臆する事無くその自己紹介・・・

この子も恐ろしい子・・・

 

「よろしくお願いします。にゃん?」

 

楓さんが真似をした。・・・はっきり言って可愛い。

 

「ほら、騎士君も」

 

楓さんが騎士さんを促す。

それと同時に騎士さんファン(私も)面々が携帯やスマホを取り出し、

録画や録音モードに切り替えている。

 

「いや、言いませんからね?」

 

「っ!!??・・・ファンサービス・・・は・・・?」

 

みくちゃんが凄いしょぼんとした顔をする。

騎士さんが凄い困り顔をしている。

それをシャッターで収めて行く騎士ファンズ。

 

「うーむ・・・しかし、僕が『にゃん』とか言ってんの見て何が楽しいのか・・・」

 

「おもしろいからですよ♪」

 

「控えめに言っても最高だと思います」

 

「至高っ!!」

 

「萌にゃ!!」

 

「わかるわ」

 

「はい、わかりま・・・す?」

 

「何故に川島さんがここに?」

 

川島さんがサラッと混ざっていた。

 

「はぁーい」

 

手を振る。

 

「楓ちゃんが、今夜騎士君と飲みに行くから来ないかーってお誘いが来てたから、事務所には来てたけどお仕事も特になかったし、一緒に行こうかなと思ってお姉さん来ちゃいましたー♪」

 

「なるほど・・・お早い事で」

 

騎士さんは溜息を吐きつつも満更では無さそうな笑みを零す。

騎士さんと食事・・・良いなぁ・・・アタシも誘ったら、ご一緒してくれたりするのかなぁ・・・

でも、アタシはファミレスとかしか知らないし、どうしよう・・・少し高めにロイホとかで許してもらえないかなぁ・・・でもでも、騎士さんの好きなお店に誘ってもらってもアタシは一向に構いませんよ?

等とくだらない妄想を脳内で繰り広げている間にも現実世界では淡々と時間は進んでいた。

 

「この間はありがとうございました」

 

川島さんへお礼をする騎士さん。

ん?何かあったのかな?気になったので妄想を切り上げる。

 

「別に良いのよー。むしろ私達の方がお礼をすべきだったと今更ながらに思うわ」

 

「いえいえ、やはり企画進行は大事ですし大変ですから。それがなければあの時間は生まれていなかったわけですし」

 

「それって、なんの話ですか?お二人って最近共演はしていなかったと思ったんですけど・・・」

 

さらっと疑問を飛ばすみくちゃん。しかもスケジュール管理出来てるのかー。

さっきから思ってたけどやっぱこの子は色々と凄い。騎士さんが絡んでると本当スゴイ。

 

「騎士君のお誕生日会のお話ですよね?残念ながら私は忙しくて行けなかったのですが・・・埋め合わせは後日で♪」

 

楓さんが答える。

 

「きっ・・・騎士さんの聖っ!誕っ!祭っ!?」

 

みくちゃん・・・字面が変わってるよ・・・?

 

「そんな素敵イベントがあったんですか?」

 

が、私も気になったので思わず口に出してしまう。

 

「えぇ、公にはしてないけどね」

 

川島さんが言う。

 

「って、あら?私、美嘉ちゃんにも招待状出したと思ったんだけど・・・違ったかしら・・・?」

 

「え゛?」

 

「確か・・・えーっと騎士君の誕生日って「「「12月10日です!」だっ!」にゃ!」だそうよ。ふふふ」

 

騎士様ファントリオ(卯月ちゃん・蘭子ちゃん・みくちゃん)が大声で答える。

 

「は・・・ははっ・・・お・・・思い・・・出した・・・」

 

過去を思い出し、沸々と自分に対する怒りがこみ上げると同時、落胆し崩れ落ちる。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

茂森P『おっ、仕事お疲れさん。なぁ美嘉、今月の10日に開催する誕生日会の招待状が川島の姉さんから来たんだけどもちろん参加で良いんだよな?』

 

『あ~、ゴメンパス。その日仕事終わった後、予定入っちゃってるんだよね~』

 

茂森P『そうなのか?結構凄そうだぞ?なにより・・・』

 

『あーもういい、いい。不参加で返事しておいて。ごめんなさいって。じゃ、次の仕事の準備あるから』

 

茂森P『そうかぁ・・・せっかくき・・・』

 

 

バタンッ

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

――あの時アタシは、話を最後まで聞かずに次の仕事に向かってしまったのだ・・・

 

アタシのバカーーーーーーーー!!!!

 

「そう言えば、茂森くんが『美嘉は予定有りだから欠席です。』って言ってたわね」

 

川島さんが言う。

 

「・・・はい・・・そうです・・・そうでした・・・」

 

そもそも茂森Pもなんで最初にハッキリと騎士さんの誕生日会って言ってくれなかったの!!それがわかってたら仕事すらキャンセルだったわ!!

それが原因じゃない!?アタシ別に悪くなくない?

あぁ、でも嫌悪感・・・超超超絶に嫌悪感・・・

結局あの日は友達と一緒に騎士さんの誕生日を祝ってカラオケ行ったりしたんだよね・・・

騎士さんの誕生日に本物の騎士さんをお祝いできるってわかってたら友達には悪いけどそっち行ってたよ~!!

も~私のバカバカ大バカ~!!!

 

「美嘉ちゃん・・・大丈夫?」

 

「はい・・・あの日の事を思い出してちょっとブルーになってるだけです・・・」

 

「そ・・・そう」

 

川島さんが「お気の毒にね・・・」と呟く。

 

「まぁ、終わった事を悔やんでも仕方ありません。今度何かあった時は僕からちゃんとお誘いするようにしますね。さて・・・っと、じゃあ次の方の自己紹介を・・・」

 

話を進めようとする騎士さんの右手首をがっしりと掴む楓さん。

 

「騎士君?話を逸らしたらダメですよ?」

 

「・・・ファン・・・サービス・・・」

 

目元が真っ暗で何も見えなくなっているみくちゃんが見える。

少し、と言うかかなりホラーだ。

 

「~~~~~っ・・・・」

 

下唇を噛み、とても悔しそうな顔をする【全知全能の偶像】こと騎士さん。

ここに来てからと言うもの、騎士さんのイメージに無いとても新鮮な騎士さんが拝めている事に感激を覚え始めている。騎士さんファンからすれば垂涎ものだ。

 

「さっ騎士君♪」

 

「良いじゃない。言ってあげなさいよ」

 

「――い・・・一回だけですよ・・・?」

 

騎士さんは何度か深呼吸を繰り返し、「よしっ」と気合を入れ始めた。

そこまで?そこまでの事なんですか?

 

 

 

 

 

「行きます・・・・・・・・・・・・に・・・にゃん///」

 

「「「「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」」」」」」」」

 

一斉に湧き上がる黄色い悲鳴。

 

「死にたい・・・」

 

騎士さんの悲痛の呟きは黄色い悲鳴によって掻き消えた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

――――――――――

 

 

――簡素な丸椅子を3つ並べ、そこで器用にうつ伏せで寝ていた少女は、まどろみから静かに目を覚ました。

 

「んぁ・・・。ふぁーーーーー・・・んー・・・?」

 

見た目小学生程度の体躯の少女は上半身を起こし、大口に左手を当て、愛着の裏返りか解れや綿の飛出しが窺えるぬいぐるみを持った右手を空に上げ伸びをする。

 

「あれ・・・?みんなは・・・?」

 

少女は辺りを2・3度見渡し、誰も居ないのを確認した後、特に慌てる様子も無く今日の仕事は終わったものだと判断し、椅子を降りると非常に面倒臭そうにぬいぐるみを抱える事無くそのまま引き摺りゆっくりと移動を開始した。扉をくぐり、隣の撮影所での騒動にも気付かず、自分の荷物を取りに行かんと一人、撮影所を後にする少女であった。

 

「あー・・・だるっ。今日は出前でいいや・・・」

 




最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。

歩みは非常に遅いですが、最後まで進んで行く所存であります。

では、この辺りで失礼致します。

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