「畑中豊さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」
白い部屋に水色の髪の美しい女性がそんなことを話してきた。
……死んだ、か、そうだ。俺は確かに、よそ見をして歩いていたら信号を無視したトラックに轢かれて死んだはずだ。ならば、なぜ怪我も無くなって、意識があるのだ?なぜこうして考えられるのだ?ここは地獄か何かなのだろうか?
…………この女性が知っているのだろうか?
「……ところで、あなたは誰なのだ?それと、ここはどこなのだろうか?」
「あら、冷静ね。ま、いいわ。そっちの方が説明の手間が省けるし。」
「私の名はアクア。日本において、若くして亡くなった人間を導く女神よ。」
女神、か。導く神であるのなら人間に何らかの裁きを加えるのだろうか?
「そこで、あなたには二つの選択肢があります。ひとつは何もかもさっぱりと忘れて転生するか、もしくは天国に行くかの二択ね。」
「……それなら大概の人間は天国と答えるんじゃないか?」
「それがねー、天国は何にもないから一日中日向ぼっこをしているか、誰かと話しているようなお爺ちゃんみたいな生活になっちゃうのよね。」
……なるほど、それなら天国行きを選ぶ奴も少ないな。俺だって何にもないところに行くのは勘弁だ。それなら俺は―――
「ちょっとストップ、ここで三つ目の選択肢をあなたにあげるわ!!」
「…………三つ目、か?」
「ええ、あなた、ゲームは好きかしら?」
「ゲームか?人並みにはやってはいたが、それが何か関係あるのか?」
「大ありよ!あなた、RPGのゲームによくあるファンタジーな異世界に行ってみないかしら!」
………………は、異世界?ゲームによくあるファンタジーって剣と魔法のファンタジーとかのことなのだろうか?
その後の女神の話をまとめると、異世界では魔王たちにより転生することを拒む魂が増え、人間の数が減少して言っている。そこで、記憶を引き継いで魔王を倒してほしいとのこと。でもこのままだと弱くて死んでしまうから何か強い武器なり能力なりを一つ渡して戦うとのことらしい。その道具や能力が書かれたカタログを見ながら考える。
……何とも奇妙な話だが、この女性が本当に女神だとしたらあながち間違いでないだろう。何せ死んだはずの俺がここにいるんだ。その話も何割かは本当なのだろう。完全には信用できないが。
「……なるほど、その話はよく分かった。それで女神さん、このカタログにない能力でも大丈夫だろうか?」
「ええ、構わないわよ。それがあなたの力になって魔王を倒すのならね。」
「それなら俺は星詠みとか星に関する才能とかで頼む。」
「あら、チートの武器とかにしないのかしら?」
「別にそこまで強くなくてもいいし、それにせっかくの異世界だ。全く知らないことに挑戦してみたいし、夜空も綺麗だろうしな、それなら楽しめそうなのでもいいだろう?」
本当は戦闘とか怖いからあくまでサポートする形で居たいからな。魔王を倒すとかもっと無理だ。あと、異世界の夜空とか綺麗そうだし星について知っていたら面白そうだし。
「あなたがそれでいいならいいけどね、私も楽が出来ていいわ。でもそれだけだと魔王を倒せるか心配だし、ついでにその才能にちょっとオマケしておくわね。」
それを神が言ってもいいのだろうか?まぁ、貰えるのにいらないことを言って台無しにしては面倒だし黙っておく。
「それじゃ、異世界に送り込むわよー。そこの魔法陣の上に立っておいてー。」
なんかだんだんと適当になってきてないだろうか、とりあえず魔法陣の上に立っておく。段々と魔法陣から光が集まってくるな。
「それじゃ、豊、頑張って魔王を倒してきなさい…………あっ」
おい「あっ」ってなんだよ?
「……ごめん、ちょっとミスがあったけどごめんね!」
おい馬鹿どんなミスがあったんだ!?いったい何が起きるんだよ!?
「…………頑張ってきてね!じゃあね!」
ふざけるなよ女神!!ちゃんと説明しろやぁ!!
そして、俺は、異世界に降り立った。少なくとも見える範囲では草むらしかなく、人工物と思われるものは全く見当たらない。
「たくっ、あの女神一体どんなミスをしたん、だ……?」
ふと、自分の独り言に違和感を覚える。あれ、俺って、こんな声、高かったか?俺の声はかなり低かったはずだ。それに俺の視界に入るくらいの暗い紫色のような髪の毛、黒のはずだがこんな髪色だった記憶は一切ない。しかも視界に入るということはかなりの長さだ。背中にもそんな感触があるから後ろ髪も長いのは確定だろう。
「……………………」
嫌な予感がするものの、自分の体をまさぐってみる。手は女の子と思われるほど小さく、胸には小さいながらも膨らんでおり、股間にはナニとは言わんが、あったはずの棒と玉がなくなっている。
あんの駄女神、今度会った時は覚えていろよ……!
拝啓、お父様お母様。親不孝な息子は異世界に行ったら娘になっていました。