この素晴らしい占星術師に祝福を!   作:Dekoi

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今回もいつも以上にひどい駄文です。申し訳ありませんが、どうか生暖かい目で見ていただけると幸いです。


第33話 走り蜥蜴

 カズマの説得に失敗してから数日後の今日、宿屋の手伝いは休みという事で冒険用の服や靴の準備で午前が潰れていた。さて、これからどうしようかと考えていた時にちょうど通りがかったカズマたちと一緒に昼食を頂くことにした、のだが……。

 

「なんだよ、ちゅんちゅん丸って……せっかく村正とか、菊一文字みたいなかっこいい名前考えていたのに、なんでちゅんちゅん丸ってキテレツな名前になるんだよ……」

「……えっと、ご愁訴様、です?」

「おい、そこの二人、何か言いたいことがあるなら言ってくれませんか?」

 

 なぜかうなだれているカズマを慰める羽目になっていた。しばらくカズマ達と接してこなかったからかは知らないが、なんか変な役回りになってきたのは気のせいか。周りにいる冒険者やギルドの関係者からの目線も、このパーティー特有のそれに代わっているのは気のせいだと思いたい。

 

「まったく、せっかく私が考えたかっこいい名前だというのに、何が不満なんですか?」

「何もかもに決まっているだろ!!せっかく、せっかくの俺の刀が……」

 

 相変わらずカズマの賑やかな声が響くが、周りはいつものことと言わんばかりの雰囲気で楽しんでいる。俺も是非ともそちらに向かいたい。

 

「……ところでダクネス、ここに全員揃っているという事は……それにカズマの服装を見る限り、何とかなったようですね」

「ああ、余りにも手強かったからな、最終的にはコタツごと屋敷から放り出すことで何とかなったよ」

「……あの、それは何とかなったというのですか?」

「なった……とは思いたい。アクアもカズマが外に出たことで渋々だが一緒についてきてくれるようにはなったしな」

 

 いくら何でも強引だと思うが……そこまでやらされるという事は、どこまで酷い有様になっていたんだ?少し興味がわく。

 

「カズマー!めぐみーん!ダクネスー!それにユタカもー!いいクエスト、見つけたわよー!」

 

 っと、アクアが依頼を貼ってある板の所で叫んでいる。ご飯はあらかた食べたことだし、急ぐか。……あれ、なんで俺もクエスト参加する気になってたんだ?

 

 

 

 ―――――――――――― 

 

 

 

 リザードランナー。それが今回討伐するモンスターの名前だ。

 このモンスター、普段は危険性のない二足歩行のトカゲなのだが、春になると繁殖期に入るらしく、姫様ランナーという雌の個体が生まれることで厄介なモンスターになる期間限定な討伐対象だ。

 リザードランナーはこの姫様ランナーとつがいになるべくある勝負をするのだが……その勝負方法が、二足歩行で走り速さを競い合う事なのだ。これだけならまだ元の世界でも聞いたことはありそうなことだが、こいつらは同種だけでなく他種の生物を見つけては勝負を挑み、走り、追い抜いていくのが特徴だ。その結果として一番抜き去った数が多い奴が王様ランナーとして、姫様ランナーとつがいになれるのだ。

 

 ここまでなら特に害はなさそうに見えるが……いや、こいつら群れ全体で走るが進路の邪魔とかにはなりえるが、もう一つの方が迷惑なのだ。

 こいつら、相手が勝負をさせる為なのかは知らないが、物怖じせずに蹴るのだ。蹴って、そのまま逃げるのだ。その蹴りの威力も半端ではなく、当たり所が悪ければ骨折では済まないらしい。

 その蹴られたのが馬車を牽いている馬であればその場で立ち往生するという危険な羽目になり、もしドラゴンのような屈強な相手だと人が住まう土地まで連れてきてしまう可能性があるのだ。

 そのため、この時期ではギルドからリザードランナーの群れを討伐する依頼が発注される。

 

 

 

 

 ―――という話をギルドの受付嬢から聞いた後、俺たちはその群れの一つが発生した草原に来ている。近くには森があるためか、ここら辺でも木はまばらにある。

 その一本に上ったカズマから号令ともいえる声が響く。

 

「みんな、準備はいいな!ユタカの話では、そろそろリザードランナーも来る。念のためしっかりと備えておいてくれよ!」

 

 念のため、新調した皮の靴紐を確かめ、周りの地形を確認する。冬から春に変わるため、雪解けによるぬかるみを想定した靴ではある。そう滑ってしまうことはないよう処置はされているし、ここの草原では泥とかはあまりなさそうだが、それに足を取られて隙が出来ないようにしなければ。

 

「こっちはいつでも大丈夫よ!こうなったら、カズマにはとっととレベルを上げてもらって、どんどん強くなってもらわなくちゃ!」

 

 アクアの言葉に分からない点があり接敵する前に聞いてみたが、今回のクエストはカズマのレベル上げも兼ねたものだったらしい。そういえば、作戦は珍しくカズマを主軸としたものとなっていた。大抵いつもはめぐみんの爆裂魔法に頼っていただけに意外ではあったが、そういった理由があったらしい。

 

「ああ、アクアの支援魔法も掛けて貰ったし、これなら何匹でも耐えられる!」

「撃ち漏らした時はこの私に任せてください。皆まとめて吹き飛ばして差し上げますよ」

 

 いつもはダメなところが目立つ二人も、ここ戦闘時には頼もしい能力を持った人材となっている。

 

「……まあ、できるだけ補助側に回れるようにしておきますね」

 

 既に『ポラリス』で周囲は警戒済み。リザードランナーの群れも確認している。

 

「よし!なら、手はず通りいくぞ!まず俺が、王様ランナーと姫様ランナーを狙撃!その二匹さえいなくなればリザードランナーの群れは解散するそうだから、残された雑魚は放っておく。狙撃に失敗してこっちに襲ってきたら、ダクネスが耐えてる間に俺が王様と姫様ランナーをもう一度狙撃。それすら失敗したなら、囲まれる前にめぐみんの爆裂魔法でまとめてぶっ飛ばし、撃ち漏らしたやつを俺が上から撃破。アクアは全体の援護を頼む。ユタカは群れの動きを察知して全体の指揮を補助、余裕があるなら撃破を頼んだ。……じゃあ、行くぞ!」

 

 ……ただ、なんとなく、本当になんとなくだが、嫌な予感がしてたまらないのはなぜだろう。

 

 

 

 ~~~~~~~~~

 

 

 

「……!リザードランナーの群れ、カズマの狙撃範囲内に入りました!情報より、戦闘にいる一回り大きな赤いリザードランナーが姫様ランナーです!方角は……私たちのいるやや右側から来ます!」

 

『ポラリス』での空中からの視点から、土煙を上げて走るリザードランナーの群れがこちらの傍を通るのを確認できた。ルートとしては右側から狙撃範囲内に入り、そのまま左側に抜けていくといった形になりそうだ。これなら最初から接敵するようなことは起きないから気が楽だ。カズマが狙撃に失敗しても、この距離からなら対処は簡単にできそうだし、範囲から逃げようとしてもダクネスが囮になって引き寄せてくれるらしい。

 

 ……にしても、姫様ランナーは分かりやすいが、王様ランナーはいったいどこにいるんだ?一番早い奴といっても、現状姫様ランナーに群れがついていくといった形になっているからどれがどれか分かりにくい。というか、数が多すぎて判別がしづらい。

 

「おいアクアにユタカ、あのリザードランナーが姫様なのは分かったが、王様はどいつなんだ?」

「どれが王様なんかは分からないけど、王様ランナーって言うんだし、偉そうなのが王様なんじゃない?」

「お前に聞いたのが馬鹿だったわ」

 

 アクア、それはいくら何でも雑過ぎやしないか?

 

「……えっと、情報不足でよく分かりませんが、姫様ランナーの近くにいるランナーほど王様に近いのでは、と考えましたが……」

 

 かといって、俺も似たようなものだが……つがいになるのにライバルがいっぱいいるのなら、その近くにいて独占しているのでは、程度の素人考えだ。

 

「あー、なるほど、ありがとな。なら、あのリザードランナーかな?」

「……かも、しれません。確証が持てずに申し訳ないです」

 

 これで王様らしき奴が先頭を走ってくれればそいつの可能性が高いのに、先頭にいるのが姫様だとなあ……

 

「……あ、そうだわ!カズマ、王様ってのは一番早いわけよね」

 

 ……ん?アクア、急にどうしたんだ?

 

「ん、そうだが?」

「それならモンスター寄せの魔法であいつらを呼んで、一番にここに着いたのが王様よ!」

「……ちょ!?」

 

 …………ははっ、確かに良い案だけど、それやるときはあの群れから守ってくれる奴がいないと厳しいんじゃないか?まあ、ダクネスがいるとはいえ一人だと厳しいし、アクアもそれくらいは分かってくれるはず―――――

 

 

 

「『フォルスファイア』!!」

 

 

 

 ―――――やっぱりアクアはアクアだった。馬鹿と天才は紙一重というが、こんな形で紙一重は見たくなかった。アクアの手から放たれた黄金色の光は空に向かって直進し、俺たちはここにいるぞと言わんばかりに主張してくれる。

 空中から見ている俺でも目立つ光にリザードランナーが気付かないわけでも無く……群れはいったん立ち止まって、こちらに全力で走り出してきた!てか、速っ!?これあと数十秒程度でこっちに来るぞ!?

 

「このクソバカ、毎度毎度やらかさないと気が済まないのかお前は!?王様と姫様さえこっそり打ち取れれば無力化できるのに、なんでわざわざ呼び寄せているんだよ!」

「な、何よいきなり!私だって役に立とうとしてやっていることなんだから怒んないでよ!ああ、分かったわよ!どうせこの後の展開なんていつものことでしょ!!きっとあのリザードランナーたちに私が酷い目に遭わされるんでしょ!分かっているわよいつものことなんでしょ、さあ、殺すなら殺せー!」

 

 ……あの二人は何しているんだよ、そんな事言っている暇あるなら早く狙撃するなり支援するなりしてほしい。

 

「……そこ、喚いている暇があるなら早く自分の仕事をしてください!ダクネスは先頭でリザードランナーの足止め、めぐみんは爆裂魔法をすぐに放てる準備を、アクアは皆の支援を、カズマはとにかく王様か姫様だけでもすぐに狙撃してください!」

 

 というか、本来はカズマが狙撃しながら指揮をするはずなのになんで俺が指揮しているんだよ。今回の俺はあくまで補助扱いなんだし、カズマが頑張らないといけないんだからもっと気張れよ。

 というか、この数相手だとダクネス一人で耐えられる気がしないんだが……どう考えても抜けられるのが目に見える。

 カズマが先に王様と姫様を狙撃するか、めぐみんの爆裂魔法で一気に倒してしまえば何とかなるかもしれないが、こんな形になってしまった以上、そう上手く行ける気がしない。となったら……

 

「……すみませんがカズマ、こうなってしまった以上、私は補助から遊撃に切り替えます。ここでカズマの経験値だとかレベルアップだなんてことが言えるほど余裕があるわけでも無さそうなので……」

「ああ、うん、なんかいつもうちのパーティーメンバーが迷惑かけてすまんな」

「……なんかもう、慣れてきたので気にしないでください」

 

 本当に、悲しいことにな。

 

 

 さて、そうなってくると俺は攻撃しなければいけないが……ここで『コメット』だと一発で1,2体しか当たりそうにない。連発すれば運よく姫様や王様に当たるかもしれないがそんなのはカズマの領分だ、幸運がそこそこ程度で当たる気がしないし、魔力の消費が激しく底をつくのが見える。

 『ガーディアンサテライト』も防衛目的ではいいが、あくまで俺を守るだけだろうし、このたくさんいるように思えるリザードランナーたちに襲い掛かられたらひとたまりもないはずだ。

 

 それなら『コンプレスグラビティ』で多数の撃破、ないしはあの群れの拘束、だな。このスキル、練習していて使い方が分かってきたのだが、効果は弱まるが範囲を広げて、その範囲内の重力を強めることが出来る。当然範囲を狭くすればその分かかる重力、もしくは圧力は強くなっていくが……今回はカズマに狙撃させるためだ、群れの何割かを足止めして狙撃しやすくすればいいはずだ。もしくはめぐみんの爆裂魔法で一気に倒してしまっても良い筈。

 

 それならばさっそく、よく、狙って……できるだけ密集しているところを狙って……今だ、『ポラリス』解除、からの……

 

「狙撃ッ!」

 

 あ、先にカズマの矢が王様ランナーらしき奴に刺さった。頭部を貫かれたリザードランナーは体を震わせ、そのまま倒れた。よし、一匹は倒したし、後は姫様だけ―――

 

「やった!これであいつらも止まるは、ず……って、ええっ!?な、なんであいつら止まらないんだ!おい、王様っぽいの倒したのに、かえって凶暴になっているんだけど!」

 

 …………あれ?何かあの群れ、来る速さがさっきよりも早くなっているんだけど……。

 

「……王様を先に倒すと、新しい王様ランナーになれるチャンスが出来たと影たちは張り切り出すわよ。倒すなら、先に姫様ランナーから倒さないと」

 

 それを先に言えよ!!

 ああ、もう、群れとの距離も大分近くなって危ないし、早く足止めしないと!……群れに標準を合わせて範囲拡大……。

 

「……めぐみん、一旦足止めをしますので爆裂魔法の準備、お願いします。申し訳ありませんが、ダクネスは範囲から漏れた敵から私たちを守ってください」

「もちろん任せてください。ユタカやカズマの見せ場もないくらいの爆裂魔法をとくとご覧あれ!」

「こっちも大丈夫だ。しっかりと受け止めて見せるから安心してくれ……その、私の分くらいは残しておいても構わないからな?」

 

 ダクネスの戯言は一旦無視……

 今だ。

 

「『コンプレスグラビティ』!!」

 

 …………よし、効果通り、範囲内にいたリザードランナーたちは転ぶように地面に縫い付けられた。効果は弱めたといえ、しばらくは動けないほどの重力がその身に掛かっているだろう。

 とは言っても先頭にいた姫様ランナーたちと、魔法の影響に抵抗して範囲から抜け出した十数匹は取り逃したが、姫様はカズマが何とかしてくれるはず。後方のはダクネスに任せよう。

 

「あれ、なんかいつものと効果が違うような気がするのですが?いつもだと、こう、瞬間的につぶれるような感じでしたよね」

「………カズマみたいにスキルを組み合わせたり、少し変化を加えたりするのを見て思いついただけです。あと、これですと魔力の消費が激しいので、できるだけ早急に討伐をお願いします」

 

 バニル戦でもそうだが、俺には大多数の敵を相手にするスキルがあまりない。これはスキルが習得してやっと効果が分かるようなリスキーな職業たる占星術師(ゾディアック)だけでなく、器用貧乏になりがちで習得のスキルポイントが大領に必要になる冒険者でも同じことが言える。そこで、カズマも『初級魔法』だけで様々なことが出来るのなら、俺でもできるのでは?という発想の元、できた案だ。これのおかげでまた妨害役として立ち回れるようになったのは嬉しい。

 ……問題は、スキルを本来の使い方でない方法で行っているためか、魔力の消費が激しくなってしまう。爆裂魔法に比べればまだまだ少ない方だが、俺の現在有している魔力を考えると大分厳しい。

 

「おや、それはすみませんお話は後程、聞かせてくださいね。では、トカゲたちよ、我が爆裂魔法を喰らうが良いっ!『エクスプロージョン』ーッッッ!」

 

 めぐみんはいつもの詠唱を省略しての『エクスプロージョン』が炸裂……

 

 ……炸裂?

 

「……あの、めぐみん?『エクスプロージョン』は……?」

 

 何にも起きていないんだけど。いつもの爆発どころか、輝くような魔力の奔流もないんだけど、一体どうしたんだ?

 

「……魔力が!?あの、爆裂魔法発動に必要な魔力が足りません!」

 

 はあっ!?この土壇場で何言っているんだよ!?もうすでに爆裂魔法を撃ったから空だったなんてアホなことはやめてくれよ!

 

「はっ!?なんでこんな時に限ってそんな……。って、ああっ!今朝やっちまったドレインタッチで……俺のせいかあああ!!」

 

 ……カズマ、お前もか。お前もなのか。何があったかまでは詳しく知らんが、何アホなことしやがる。ドレインタッチしたのなら、ちゃんと返してあげろよ。それで冒険して大変な目に遭ったらどうするんだよ。というか、現在進行形で大変な目になっているよ。

 

「……えー、ダクネス、大変かもしれませんがしばらく前衛をお願いします。とにかくあの群れを引き付けておいてください」

「うむ、任せろ!さっきまでの大群ならともかく、このくらいの数ならずっと引き寄せ続けられるからな!……その、いざとなったら魔法を解除してもいいからな?あのランナーたちもしっかりと引き寄せて見せるから、私を巻き込んで魔法を使って討伐してもいいぞ?」

「……申し訳ありませんが今はそんな馬鹿なこと構えるほど余裕がないです」

 

 もうやだ、頭痛い。ついでに魔力がガリガリ削られていくのに合わせて体がだるい。

 

「……カズマ、ある程度は抑えましたので、姫様ランナーの狙撃を、お願いします」

「お、おう、すまないな……」

 

 あ、なんかいつも以上に平坦な声が出た。すっごい平坦な声が出たよ、自分でも驚きだ。この調子だと眼とかも死んだ魚のような感じになっている気がするなー。はあ……なんでこのパーティーにいると、こんな目に遭う羽目になるのだろうか。

 ともかく、今はランナーたちを抑えておかないと……集中が切れかかって、徐々に体を持ち上げ始めている奴もいるから、再度圧を掛け直しておく。このスキル使っている時は集中していないといけないから、戦況がどんな形になっているかが分かりづらいのも難点だな。今度、しっかりと問題点抽出して危機に陥らないようにしておくか。

 

 

 

「狙撃ッッ!」

「クキャアァァァァッッ!!」

 

 

 っと、背後の木の上からカズマの声とランナーの叫びが聞こえてきた。いったい、どうなっているんだ?カズマは姫様を狙撃できたのか?

 

「……ふう、紙一重だったな……!おーい、無事に姫様、討伐できたぞー!」

 

 そんなカズマの、安堵したような溜息と声が聞こえてきた。どうやら何とかなったようだ。今回も色々と大変だったが、無事で何よりだ。警戒しつつもランナーたちに掛けていた『コンプレスグラビティ』を解除する。情報通り、王様と姫様がいなくなったリザードランナーの群れは先ほどのような凶暴さは鳴りを潜め、普段の大人しいモンスターに戻ったようだ。

 ……さて、今日も疲れたしさっさと帰って報酬を受け取ろう。

 

「って、ああっ!?」

 

 そんな事を考えていたからかは分からないが、後ろの木から鳴り響く軋むような音と、カズマの悲鳴に思わず振り返る。

 

 

 そこにいたのは、枝や幹をよくしならせている木と、その枝から足を滑らせて落ちていくカズマの姿。

 落ちていくカズマの姿が、どこかゆっくりとした動きのは気のせいなのだろうか?段々カズマの頭と地面が近づくのを見ているのに、何故か体が動かない。やっと体が動いたと思って、右手を前に出して―――

 

 

 

 

 ゴキッ

 

 

 

 ―――――世界は、一瞬で時を止まったような錯覚を覚えるくらいに静かに、その音を響かせた。その音の発生源は、木から落ちていったカズマ、正確には頭から落ちていった、奇妙なほど曲がってしまっているカズマの首―――

 

 ふと、腹から何かがせりあがってくる嫌悪感と、何か悪寒のような寒さが、世界が灰色に染まったような感覚が、力が抜けるような―――

 

 

 

 

「か、カズマ!?大丈夫ですかっ!?アクア!カズマが変な体勢で落ちました!回復魔法を……?!ユタカ!?急に倒れこんで大丈夫ですか!」

 

 

 




「ところでユタカだったら、この刀になんて名前を付けるんだ?」
「……………………………………………………………………………………………………」
「ああ、いや、そこまで悩まなくても……」

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