BanG Dream! 〜I Should Have Known Better〜   作:チバ

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夏空 SUN! SUN! SEVEN!/Poppin' Party


夏空 SUN! SUN! SEVEN!

夏っていうのはいいもので、ありとあらゆるイベントが揃って詰め込まれている季節だ。

アニメをそれなりに見てる俺的に言えば、どこぞ神尾さんがゴールする季節であり、どこぞの国崎くんが最高!と叫ぶ季節でもある。

 

閑話休題。

 

まあともあれ、俺は夏という季節が好きだ。別に夏生まれとか、夏に良い思い出があるという訳でもない。

 

「いくぞ、水遁の術!」

「すごいっす!」

「いや、海に向かってル○ンダイブしただけでしょ…」

「香澄ちゃん、フグ見つけたフグ!」

「すごーい!釣れたりするのかな?」

 

現役JKが水着でキャッキャウフフをしている光景を生で、しかも間近で見ていると、そう思わずにはいられないだけなのだ。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

なぜこうして俺らは海にいるのか、それは二日前まで遡ることになる。

 

「ねえ、海に興味ある?」

 

市ヶ谷から藪から棒に聞かれたその言葉。

はて、とその場にいた俺を含むメンバーは首を傾げた。

 

「どしたの。突然」

「哲学的な話っすか?」

「そうじゃなくて」

 

沙綾からの当然の反応と、花園が抱いた発言した疑問を否定する。

 

「私の親戚の人が海の家をやっててね。その海の家でイベントをするらしいんだけど、出演者があと1組決まってないんだって。それで来ないかー?ってお誘いが来て」

 

へえ、と沙綾が声を漏らす。

確かに興味深い誘いだ。

 

「で、どうする?行ってみる?」

「焼きそばは美味なのか、ベンケー殿?」

「私の記憶が正しければ、料理は上手だった」

「よし行こう、師匠!」

 

牛込は飯を餌に釣られた。もはや少し前のジャンプの主人公にしか見えない。

 

「で、どうするの師匠どの?」

 

沙綾が隣でギターを抱えた戸山に腕を小突いて聞く。

 

「海…それって、すごく女子高生っぽい…!行きたい!」

 

牛込とは違う形で釣られた。

 

「自分は特に問題ないっす」

「私はどうだろうかな…夏休みってなると、お店のお客さんも多くなるし…」

 

花園は行けるが、沙綾は確かに店のことがあったか。

となると、さすがに難しいか…?

 

「ちょっと電話してみるね」

 

電話を取り出し、親父さんに確認する。

沙綾が状況を説明すると、親父さんはスピーカーとかっていう携帯のシステムをぶち壊すレベルの声で「行っきなさい!」と言った。

 

「え、でも忙しいんじゃ…?」

『俺はずっと、沙綾に苦労と迷惑をかけてきた……だから、今日ぐらいは、みんなと一緒に遊んできなさい」

「…お父さん…」

『沙綾がみんなと一緒に遊ぶ……ああ、香澄ちゃんたちに感謝をしなければ。それと、敦司くんにも何かお礼を…』

「お父さん!?」

 

別の意味で親父さんが壊れてきた。

 

「ちょっと、大丈夫?別の意味で」

『ああ、大じょ…ああ、いらっしゃいませ!宇田川さんじゃないですか、いつもご贔屓にどうも…』

「あー…もう切るね。ありがとう、お父さん」

『気にするな。めいっぱい楽しんできなさい』

 

そう言って通話を切る。

 

「OKになりました」

「お父さん…良い人だね」

 

一通りのやり取りを聞いていた戸山は、うるうるとした目で言う。

 

「あー…はいはい。そういうシリアスはもう終わり。じゃ、全員行けるってことでいいわね?」

「委員長はどうするんすか?」

「え?」

 

突然の切り返しに、俺は素っ頓狂な声をあげる。

 

「どうするって…別に行ってこいよ。呼ばれてるのはお前らだけなんだろ?なら俺のことなんか気にせずに遊んで来いよ」

「何言ってるの。敦司だって列記としたポピパのメンバーでしょ。担当楽器はないけどさ」

「最初からウチらを見てくれていた、という意味では最古参だな」

「お前ら…」

「このメンバーだと不安だし、まとめ役がいないと…」

 

多分、市ヶ谷のその言葉が本心だろう。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

ということがあって、俺は今ここにいる。

その五人は、今は海でバシャバシャと遊んでいる。

 

「敦司は遊ばないのー?」

 

沙綾が元気よく俺に聞く。

 

「俺のことはいいからお前らで遊んでろよー」

俺も声をあげて言う。

別に俺は見てるだけでいい。というか水着の女子の中に平然と入り込めるほど俺は肝が据わってない。

ちなみになんで遊んでるんだよ、という突っ込みに関してだが、これにはちゃんとした理由がある。

というのも、せっかく海に来たのだから遊びましょう!という花園からの提案である。

時間そのものはまだあるため、今は遊ぼう、というのだ。

 

「かすみーん?もうちょっとこっちにおいでよー!」

「あ…うん」

 

市ヶ谷からの呼びかけに、戸山は力なく答える。

 

「大丈夫か…?」

 

不安になったので一向に近づくとバシャバシャ、と音がなり、次いで牛込が叫んだ。

 

「師匠が落ちた!」

「落ちたっていうか溺れたでしょ!」

「はあ!?」

 

何をしてんだ!と心の中で叫び、急いで海に飛び込む。

 

「ちょっ、委員長!?」

 

市ヶ谷の叫びを無視し、とりあえず水中でもがいている戸山を発見する。戸山の顎を少しだけあげて、手振りで「落ち着け」と伝える。大人しくなった戸山をそのまま海上へと上げる。

 

「プハッ…ゴホッ…!」

「あー…世話がやけるわ…」

 

咳き込む戸山を尻目に、俺はぼやく。

 

「お前な…泳げないならちゃんと言えよ…」

「だって…みんなと楽しみたかったんだもん…」

 

子供のような返しをする戸山に、俺はため息をこぼしながら陸へと戸山を誘導した。

 

「かすみん大丈夫!?」

「ああ、無事だ」

 

ホッ、と胸をなでおろす市ヶ谷。何を心配をかけているのか…。

 

「ナイスだ委員長」

「牛込泳げるんだろ?なら戸山を見といてくれ」

「承知」

 

耳に入った水を取りながら陸へ上がると、沙綾が声をかけてきた。

 

「よかったよ敦司〜」

「まったくだ。俺が元水泳部じゃなかったら大惨事だったな」

 

小学生の時に水泳部だった経験がここで活かされるとは。

 

「とりあえず俺は座ってるから。何かあったら呼んでくれ」

「あはは…なんだか、敦司、ライフセーバーみたい」

「…否定できない」

 

沙綾とそんなやり取りをして、俺はパラソルの中で景色を眺めていた。その後は特に大きいハプニングもなく、無事に終了。

 

 

それからは練習だ。

セットリストは、全部で3曲。

″Yes! BanG_Dream!″、新曲の″夏空 SUN! SUN! SEVEN!″、市ヶ谷からの提案で、OK Goの″Get Over It″のカバーだ。

夏空は元々完成していたので、実質練習はGet Over Itのみになった。

 

そしてステージ上でのリハーサル。

以前のお祭りでのステージの延長線上のような感じだったので、特にメンバーは緊張していなかった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

そしてついに、イベントが始まった。

出場しているのはポピパを含めて4組。その中でもポピパは4組目。つまりはラストだ。

 

1組1組が完成度の高い演奏をし、観客を盛り上げていく。それにつれて、彼女たちへのプレッシャーは重くなる。

 

そして、ポピパの前のバンド″ハロー、ハッピーワールド″の演奏が終わり、ステージ裏に戻って来る。

 

すると、小柄な金髪の少女が、緊張している戸山の所に寄ってきた。

 

「んー…」

「は、はい…?」

 

当然、戸山は戸惑った様子で少女を見返す。すると、少女は何か思いついたのか、顔をパッとあげて、戸山のデコに人差し指を突き立てた。

 

「これでダイジョーブ!」

「…え…!?」

「じゃーね!」

 

戸山の戸惑いを意に介さず、少女ら走り去って行った。

 

「なんか…変な子だな」

「俗にいう不思議ちゃんね」

「どう、香澄ちゃん。緊張ほぐれた?」

「うん…!なんだか、今ならなんでも出来る気がする!」

「効き目早い!?」

「きっとあの少女は何か術を使ったに違いない…」

「はいはい、術はいいから、上がるよー!」

 

パンパン、と手を叩きメンバーをまとめる市ヶ谷。その姿はさながらお姉さんだ。

 

「よーし、それじゃあいくよー!」

「せーのっ、ポピパー…ゴーッ!」

「…それ、もう少しどうにかならないのか、師匠?」

「なんか締まってない気がするけど…いくっす!」

「円陣はまた変えるかー…」

 

などと言いながらステージへと上がっていく。

 

そこからはもう、会場はポピパ色一色に染まった。

 

一曲目のYes! BanG_Dream!。

メンバーの演奏技術が上がったことにより、迫力は増した。特に戸山と花園のギターの音はより重厚となった。さらに沙綾のドラムが入ったことにより、より音はバンドらしくなった。

 

一曲目の盛り上がりを維持したまま、二曲目の夏空 SUN! SUN! SEVEN!へと入る。

牛込によるベースソロから始まり、印象的な歌詞が紡がれる。

曲調が非常にキャッチーなので、二番からは観客も声を合わせるようになった。

 

ノリの良いポップな曲で、会場のボルテージは最高潮に達した。

そしてラストとなるGet Over Itが、戸山のギターと歌声から始まる。サビに入ると、市ヶ谷のキーボードが入り、より音に強みが増す。そして花園のギターソロが入り、観客は歓声をあげた。

Get Over Itと歌詞を繰り返すだけのサビ。しかし、それは非常にノリやすく、観客もすぐに合唱を始めた。

 

演奏が終わり、戸山は声いっぱいに叫んだ。

 

「私たち、Poppin' Partyっていいます!覚えてくださいー!」

 

戸山の名乗りに、観客も歓声で答えた。

歓声と拍手を受けながら、戸山たちはステージ裏へと降りてきた。

 

「ナイスライブ」

 

俺が拳を突き出すと、戸山は笑顔で拳をぶつけた。

 

こうして、ポピパの海の家ライブは大成功に終わった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

その夜。

打ち上げと称して、海の家で食事会を開いた。

海の家の店主が感謝のしるし、として色々と美味しいものを振舞ってくれた。

荷物は全部ホテルに置いてきたので、問題はない。

 

しかし、そこで一つの問題が起こった。

 

「ちょっとちょっと、委員長飲んでるの〜?」

「はいはい、飲んでますよ、市ヶ谷課長」

 

なぜか飲料水の中に酒が紛れ込んでいた。というのも、店主が「汗をかいた後は酒だ!」という謎の思考回路によって、酒を振る舞われたらしい。

しかし、思ってた以上の早さでポピパメンバーは、酔ってしまった。

 

「マジか…」

 

店主は完全に困った顔をしている。

 

「そんな困った顔をするなら酒を出さないでくださいよ…」

「いや、俺らの年代は、お前らぐらいの歳なら酒を飲んでたぞ?」

「立派な犯罪ですから、時代違いますから!で、どうするんですコレ」

「とりあえず、ホテルまで車で運ぶか。しかし4人しか乗れないのでな…その猫耳嬢ちゃんと、お前、残ってくれ」

 

と、店主から言葉に間を置き。

 

「はああああああ!?」

「敦司うるさい〜」

 

俺の断末魔に、沙綾から缶が投げられた。

 

そうして今は戸山と2人きりだ。

なんでこうなったんだ…?

 

「さあ飲め飲め〜!」

 

グイグイとジョッキを押し付けてくる戸山を適当にあしらう。

 

「戸山香澄!きらきら星を歌いまーす!きらきら光る〜」

「わーパチパチ…」

「って聞いてるのかー!?」

 

戸山って、酒が入るとかなりウザい絡み方をしてくるんだな。別世界の戸山を見てるみたいだ。

 

「落ち着け戸山。ボーカリストが、そんなに喉を酷使していいのか?」

「むー…」

「な、なに…?」

 

俺からの注意に、戸山は頬を膨れさせたまま俺を見返す。

 

「いつまで、戸山戸山って名字で呼ぶの…?」

「は、はあ?」

 

突然の言葉に、俺は素っ頓狂な声を出してしまう。

 

「私たち幼馴染なのに…同じバンドだった沙綾ちゃんには、名前呼びだし…」

 

そう言われると頷いてしまう。確かに、一応幼馴染なのに名字呼びというのは違和感があるな。

 

「こうやって仲良くなったんだから…名前で呼んでも、いいのに…」

「……っ」

 

その時の表情が、やけに色っぽかった。

その雰囲気に押されるように、おれは口を開いてしまう。

 

「なら…名前で呼んでいいのか…?」

「もちろん…私も呼びたいし…」

「…わかった。なら、今度から香澄って呼ぶ」

「うん、よろしい」

 

とだけ言い、戸山……いや、香澄は眠りについてしまった。

その後、店主の車に運ばれてホテルに着き、無事に朝を迎えた。

その時、「おはよう香澄」と挨拶をしたら、香澄は顔が赤くなり、テンパった様子で「どうしたの!?」と聞いてきた。

俺が経緯を説明し、香澄もなんとなく理解したのか、頷いた。その話を聞いたメンバーは「ずるい」と言い、自分たちも下の名前で呼べと言い詰めてきた。

もうあしらうのも面倒なので、俺はポピパメンバー全員を、下の名前で呼ぶことにした。

 

また一つ、ポピパとの距離が縮まった気がした。




どうも、アニメ版バンドリの方の作品も投稿し始めたチバチョーです。
今回はかすみんと主人公の距離を縮める回でした。次回はどうなるのか…更新がいつになるのかわかりませんが、お楽しみに!
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