BanG Dream! 〜I Should Have Known Better〜   作:チバ

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My Way/シド・ヴィシャス


My Way

俺が高校生になってから早数週間。

その日、戸山は珍しく遅刻をして登校した。

2時間目に何故か手足に擦り傷があり、髪の毛をボサボサだった。

何があったのかはわからないが、間違いなく何か変な事にでも遭遇したのだろう。

 

「戸山のやつ、大丈夫か?」

 

俺の隣の席の男子が呟く。

 

「なあ委員長や、お前は心配じゃないのか?」

 

ちなみに委員長とは俺のことだ。

俺は部活動をやっていない。それが原因で、委員長などという面倒くさい仕事を押し付けられたのだ。

 

「まあ心配だけど…」

「お、先生来たぞ」

 

教室に先生が入る。

次の科目は…現国か。

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

「恋はスタンプカードって何だよ〜」

「ホントにそれな!」

 

昼休み。

昼食の話題の中心は「恋はスタンプカード」。

これはさっきの現国の授業で、先生に指名された戸山が何故か読んだ文体である。

 

「あいつの名前はスタ子にしよう!語呂よくない?」

「ナイスセンス〜」

 

正直、聞いていて不愉快な気分になる。

当然だ。好きな女子の陰口とか悪口とかを聞いているのだ。

 

「委員長はどう思う?」

「…ん?」

 

突然話しかけられたので反応に少し遅れた。

 

「だから、委員長はスタ子のことどう思うって聞いてるの。同じ中学だったんでしょ?」

「…別に」

 

その問いに、当然「好きです」なんて答えられる筈もなく、俺は素っ気のない返事をする。

 

「えー、何だよつまんない〜」

「もっとないの?こう、面白いエピソードとかさ〜…」

「あーもう、んなこと言ってないで、さっさと朝のHRで配られた書類出せよ。俺が怒られるんだからな」

 

聞いていられなかったので、俺は強引に話題を変えた。

その話題が表に出たのか、反応は様々だった。

 

「あーそうだった…」

「めんどくせーな…」

「誰か代わりに書いてよー」

 

俺はため息をつきながら戸山の席を見る。

今日も1人で弁当を食べていた。

だがその雰囲気はいつもとは違っていた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

「えーと、あと出してないのは…」

 

放課後。

昼休みに言った書類の確認をしている。

未提出者はいないかどうかを探しているのだ。

出来ればいて欲しくないと願いながら出席簿と照らし合わす。

…俺の願いはすぐに打ち壊された。

 

「戸山…」

 

未提出者は戸山香澄。

戸山ならまだ帰っていないだろうか。

辺り見回すと、ドアから出て行く戸山の姿が見えた。

やべ…。

急いで席を立ち、彼女の背を追う。

彼女はやや足早に歩いていたが、すぐに追いついた。

 

「戸山、HRの時の書類なんだけど…」

 

声をかけると、戸山が振り向く。

その振り向き姿に見惚れそうになったが我慢をする。

すると戸山はすぐに顔を紅潮させ、目が泳ぐ。

 

「えっと…その…」

 

彼女は俺の聞きたいことを察したのか、バッグを漁って1枚のプリントを取り出す。

 

「…これ…で、いいんだよね…?」

「…あ、ああ。ありがと…」

 

俺がプリントを受け取ると、戸山は逃げるように小走り(さっきよりも少し早い)で、逃げるように去っていった。

 

プリントをめくると、そこには名前以外は白紙だった。

真っ白な紙を見て、俺は目頭を抑えて呟く。

 

「…こりゃお叱りの刑か」

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

帰路。

俺はある場所に向けて歩いている。

その場所は自宅からは離れている。というか、道自体は正反対だ。

だが俺はそこには定期的に行くことにしている。

ほら、自宅からは遠いが、学校からはすぐに着く。

 

歩みを止める。

目の前に建っている建物は3階建ての、周りの住宅より少し大きい家だ。

付近には旗が立っている。

その旗に″ヤマブキパン″と書かれていた。

 

俺は慣れた足つきで店に入る。

 

「よーッス」

 

およそ来店時に発するべき言葉を発してドアを開く。

 

するとカウンターに立っていた1人の少女が振り向く。

 

「いらっしゃい…なんだ敦司か」

「なんだとはなんだ。一応客なんだから、ちゃんと″いらっしゃいませ″ぐらいは言ったらどうなんだ、沙綾」

「2日に1度のペースで来なければ、ちゃんと言うんだけどね〜」

 

俺と軽口を叩き合っている少女の名は山吹沙綾(やまぶきさあや)。中学の頃に俺が入っていたバンドのメンバーの1人だ。

一応高校は同じなのだが、彼女は店の経営のために、定時制で夜での登校となっている。

 

「おっ、いらっしゃい敦司くん」

「あ、ども」

 

カウンターの奥から出てきた男性に挨拶をする。

彼は沙綾の父だ。基本的に裏方でパンを作っている。

 

「敦司くんはこの店1番の常連だな〜。いいんだよ?このまま沙綾の旦那さんになっても…」

「それはないね〜」

「そうですよ。第一俺、別に好きな子がいるし」

「えっ、そうなの?そこら辺ちょっと詳しく…」

「あー…お父さん。そろそろパン焼けるよ?」

「え?あー、そうだった。それじゃあゆっくりしていってくれ」

「すぐに帰りますよ」

 

カウンターの奥へと戻って行く沙綾のお父さん。やっぱり良い人だな。

 

「まったく…で、今日は何にするの?」

「ん?そうだな…」

 

一応ここはパン屋なのだ。

来店したからには商品を買わなければ無礼というものだ。

メニュー棚に置いてあるパンを見ながら悩むそぶりを見せる。

 

「レッドホットドッグ(チリペッパー味)とメタリカあんパンで」

「メタリカあんパン?本当に好きだよねー」

 

メタリカあんパンというのは、沙綾のお父さんが作ったあんパンだ。

何故メタリカが付いているかというと、作っている最中にメタリカを聞かせていたから、だというのだ。 ちなみに売り上げはヤマブキパンのワースト1位だ。

 

慣れた手つきでトングでパンを袋に詰めていく。

すると、彼女が付けていたドラムスティックの形をしたネックレスに目がいった。

 

「…ドラム、やってないのか?」

「…忙しすぎてね。たたいてない訳じゃないんだけどさ…」

「たまにはたたいとけよ。いざバンド組んだ時に…」

「バンドは組まないよ」

 

俺の言葉を遮るかのように強く呟く。

彼女の目には、これ以上は喋るなと言っていた。

 

「…ああ、んじゃまた来るよ」

「少しは日数を空けて来てよね」

 

そうして店を出た。

 

 

さっきの会話で、少し彼女とバンドを組んでいた頃の記憶が頭に蘇った。

 

沙綾は3つのドラムスティックを操る、独特な演奏法していた。

その独特かつ、高度な演奏テクニックと愛らしい容姿、姉さん気質な性格などから、地元のバンド仲間、ライブハウスの客からは人気を集めていた。

俺はそのバンドではギターを弾いていたが…まあそれはどうでもいい話だ。

 

だがある日、彼女は突然バンドを抜けた。

沙綾は幾つかのバンドと掛け持ちをしており、俺らのバンドもその1つだった。

そのうちの1つであるガールズバンドのライブ当日。

どうやら、さっきの沙綾のお父さんが倒れたというのだ。

沙綾はライブを途中でキャンセルし、病院へ向かった。

幸い、命に別状はなかったが…その出来事が原因で、沙綾はバンドを抜けた。

 

当時、彼女を責める人間は誰もいなかった。皆が「あれは仕方がない」、「君は何も悪くない」と沙綾に言ってくれた。

だが彼女にとってその言葉は逆効果だったのだろう。

沙綾はその言葉を聞かずにやめてしまった。

俺らのバンドも、沙綾の脱退と同時に自然消滅していった。

 

俺がああしてヤマブキパンに通っているのは、その事が繋がってもいる。

心配なのだ。嘗てのバンド仲間として、友人として。

 

「…また、沙綾のドラムを聞きたいな…」

 

叶わない確率が高い願いを呟き、袋から出したメタリカあんパンをかじった。

その独特な餡子の甘みが口に広がる。

 

「もうちょい売れてもらいいと思うけどな、これ」

 

売り上げワースト1位のパンを見て1人呟いた。

 




My Wayの歌詞と、沙綾ちゃんのバンドへのトラウマと拒絶の心を合わせました。

レッドホットドッグ(チリペッパー味)は食べてみたいです。
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