BanG Dream! 〜I Should Have Known Better〜 作:チバ
その日、教室はザワザワしていた。
その原因は2つある。
1つ目は、これまで1度も登校をしてなかった市ヶ谷有咲が今日、初めて登校をしたのだ。
これにはクラスのメンバーの大半も驚いた。
2つ目は、その市ヶ谷有咲と仲の良いメンバーだ。
1人目は戸山香澄。前まで暗めだった彼女は、市ヶ谷の前では笑顔を見せている。
まわりの人間の大半の反応は「スタ子にも友達がいたのか…」であった。
2人目は牛込りみ。この子は正直な話、俺も予想外だった。
牛込は授業中は大爆睡。最初の頃は先生も注意していたが、次第に馬鹿らしくなったのだろうか、スルーするようになった。
…が、最近になって彼女の化けの皮が剥がれた。
まず、彼女は何故か裸足だった。
さらに、彼女の昼食は白米のみ。しかも炊飯器セットだ。
ぶっちゃけ言うと、俺は今まで会った人間の中で1番の変人だ。
以上の2点が、今日クラスがザワザワしている原因だ。
「なぁ、あのメンバーどう思うよ?」
「いや、まあ…」
聞かれた言葉に、俺は苦虫を噛んだかのような顔で答える。
「濃いよな…」
その答えに、話しかけてきた男子も「おう」と頷いた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
市ヶ谷の遅めの初登校から数日後。
状態はと言うと、相変わらず話題の中心にいた。
今は昼休み。
俺は3年生の、俺らのクラスで英語を教えている先生に呼ばれた。
要件は宿題プリントを持って来いとのこと。
それぐらい自分で持てよ、と思いながらも仕方なく持ってきた。
そして今はその帰りだ。
「委員長ってなんでこんなダルいんだ…」
ひとり愚痴を吐きながら歩く。
暫くして屋上の階段前を通る。と
「綺麗な音色だ…」
「この音楽、どこかで聞いたことあるような…」
「っていうか固まるな、私が見えないじゃない」
「……」
何故か例の3人組が屋上扉前で固まっていた。
何でこんなところで固まってんだよ…。
声をかけようとも思ったが、なんだか面白そうなのでもう少し待ってみることにした。
「…あ、ギターの音が止んだ」
「え、マジで」
「早く離れ…」
ガチャリ。
タイミングよく屋上への扉が開かれた。
「…え?」
「…あっ」
屋上の階段で座っていた戸山、屋上の扉から出てきたパーカー姿の女生徒。
戸山が躱そうと少し体を動かしたのが仇となったのか、女生徒もまた躱そうとしてバランスを崩し、結果的に2人ともぶつかって倒れ込む。
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
「師匠、無事でござるか!」
「いっつ〜…あ」
「あたた…」
「おいおい、大丈夫か?」
さすがに心配になったので声をかける。
「あ、ちょっと」
「す、すいません!じゃあ!」
「いいですか…って速!?」
まるで兎のような足の速さで逃げるように立ち去る。
声をかけた戸山はその光景にあっけにとられたのか、暫く女生徒が逃げた先を見ていた。
「む?お主どこかで見たことがあるような…」
「委員長でしょ」
牛込が俺へ向けた疑問に、市ヶ谷が小さな声で教える。
「知ってた!」
「…って後藤、くん…?」
そして気が付いたのか、戸山も俺の名を呼んだ。
「何してるって、先生に呼ばれたからそこに行ってた。そして今はその帰り」
「ああ、なるほど」
「っていうか、今の花園じゃん」
「…え?」
声を揃えて俺に視線を向ける3人。
いや、名前知らなかったのかよお前ら。
「花園たえ。隣のクラスのヤツだ。いつもパーカー着てるからすぐわかったよ」
「花園、さん…」
「あいつギター出来るんだな…」
と、呟いていると
「情報提供、感謝する!」
「あ、ありがとう!」
「ありがとね」
上から順に牛込、戸山、市ヶ谷と俺に感謝をしてきた。
「…嵐のようだな」
まったくなんなのだろうか、あの3人は。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
あの屋上前の件からまた数日が経った。
俺は沙綾とバンド時代の頃の話をしている内に、また無性にギターを弾きたくなった。
で、いざ久々に弾いてみれば、もう聴けるようなレベルではなかった。
「こりゃ、暫く練習だな」
自室でギターを持ちながら呟いた俺は、翌日にピックと弦、捨ててしまったギター雑誌でも買おうと決めた。
そして翌日。
学校の帰りに楽器店に寄り道をした。
とりあえずピックは俺が昔から使っている愛用品を、弦の方はあまり拘りがないので、目に入ったものを。
最後に雑誌を買おうと手を伸ばすーー
「「あ」」
他人と手が触れてしまった。
「すいません、どうぞ」
「ああ、いえ…そちらの方こそ…」
互いに譲り合おうと相手の顔を見る。
その相手は、まったくの予想外の人物だった。
薄茶色の前髪ぱっつん。
一見地味そうな外見に見えるが、控えめながらも開かれた猫目と、それなりに整った顔立ちもあり、少し明るいのでは?という印象すらも持ててしまう顔立ち。
間違いない、彼女は俺の幼馴染(一方的に呼んでる)で、俺の思い人である戸山香澄だった。
「戸山、お前こんなところで何してんだ…」
「…ぇ、あ、ぅ…」
少し返答に困っている様子だ。
だがこれはある意味当然の疑問だ。まして、俺は彼女が歌を歌うことを拒絶したのを知っている。
それが一体なぜ?
「…バンド、始めたの」
「…バンド?」
な……に…?
あの戸山がバンドだと。
正直、考えられない。
「バンドって…いったい誰と?」
「りみちゃん、有咲ちゃん、たえちゃん…」
「あー…」
なんとなくだが納得した。
なるほどな。だから戸山はあの変人達とよく絡んでいたのか。
「担当楽器は?」
「え…?」
「だから、担当楽器。ギターか、ベースか、ドラムか…それともキーボードか」
少々立て続けに質問をしてしまったが、それぐらい気になるのだ。
好きな子が自分と同じバンドを始めたとあらば、かなり気になってしまうのだ。
言おうかどうか迷っているのか。
暫く間を置いて答えてくれた。
「…ギター」
「ギターか。なら俺と同じだな」
「え、そうなの?」
驚いた様子で戸山が聞く。
その問いに「ああ」と言って俺のバンド経歴を話す。
「中学の頃バンドやってたんだよ。その時、俺リードギターやっててさ」
「……」
なんだか俺が一方的に話しているみたいになっていたが、やがて戸山は決心したような顔つきで口を開いた。俺の目を見て、だ。
「あ、あの…私達にギターを教えてください!」
少したどたどしかったが言い切った。
その頑張りに、俺は「いいよ」と言いかけたが、それと同時に疑問が生まれた。
「ギターを教えてって…花園は?あいつとバンドやってるならあいつから…」
「それがその…と、とりあえずついて来て」
「え?あ、ああ…」
すぐに会計を済まし、俺は先を歩く戸山についていく。
「早く来い」とでも言うかのように早歩きで前を行く戸山。俺はそのことに戸惑いながらも背中を追う。
いったいどこに連れて行かれるのか。
その疑問を抱きながらも、俺は歩みを止めなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「はぁ…はぁ…」
少し息切れをしながらも私は歩いた。
たえちゃんからオススメされて読み始めた音楽雑誌。それを買おうと手を出したら、私の…幼馴染(一方的に)であり、クラスの委員長でもある後藤くんと会った。
前よりはマシになったとはいえ、まだ人と話す恐怖から抜け出せずにいた私は、やはり緊張してしまった。
早く帰りたいと思いながらも、彼と話しをしていると。
––––––ギターか。なら俺と同じだな。
––––––中学の頃バンドやってたんだよ。
彼が明かしてくれたのだ。
自分はバンドをやっていた、君と同じギターも、と。
私はその言葉を聞いて、殆ど勢いだったが、頼みごとをした。
ギターを教えてくれ、と。
唐突すぎるその頼みに、彼は断るかもしれない。
そう言う考えも一瞬よぎったけど、私は確信していた。
彼なら了承してくれる。
よくわからないが、私はそう確信していた。
そして彼は「いいよ」と言ってくれた。
そこで私は後藤くんを、私たちの秘密の部屋…蔵に案内することにした。
教えてくれる。
なら、彼も私達の仲間になるんだ、と。
そして有咲ちゃんの家に着く。
「入って!」
「お、おう」
少し戸惑っていたかもしれないけど、歩みを止めずに蔵へ向かう。
そして戸を開けてーー
「みんな!」
私は、
ど直球にHelp!。