BanG Dream! 〜I Should Have Known Better〜   作:チバ

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SING/My Chemical Romance



SING

「……何してんだ」

 

ある日の蔵。

扉を開けてみれば土下座をしている花園、それを前に狼狽えているしている戸山、何かを想像している様子でニヤニヤしている牛込、そして何か考え込んでいる市ヶ谷がいた。

 

「あっ、委員長」

報酬(ギャラ)しだいだ!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「いゃ、え、えあ、おぉ…」

「状況説明しろ!」

 

5分後。

 

「えーっと、つまりは花園が今度開催するお祭りの舞台に、このバンドで出ることを約束してしまった、というわけか」

「纏めるとそういう事になるわね」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「それでおまえは土下座してたのか…」

報酬(ギャラ)しだいだ!」

「それでおまえはずっとそれ言ってるのか」

 

ギャラなんて出ないぞ、当たり前だが。

さて、問題は…。

 

「出るか出ないか、か」

「その事なんだけど…」

 

市ヶ谷の声により緊張が走る。

出るか出ないか、それはこのバンドのリーダー格でもある市ヶ谷に決めてもらう。

 

「出るわよ」

「えぇぇぇぇ!?」

報酬(ギャラ)しだいだ!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「…なるほど。で、市ヶ谷。出ると言ったその心は?」

 

俺の問いに市ヶ谷は狼狽える戸山をなだめながら答える。

 

「そろそろ腕試しもいい頃かと思ってたのよ」

 

なるほど。確かにそうだ。戸山と花園のギターの腕もだいぶ上がってきた。

 

「でも…」

「あんだけ練習したのよ。大丈夫」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

報酬(ギャラ)が入ったら、コシヒカリにゆめぴりかに…」

 

花園はもう何に対して謝っているのかわからなくなっている。

牛込は…うん、米が好きなんだな。

 

「いい、かすみん。びびってるのはあんただけよ。どうせいつかは通る道、腹をくくりなさい。おたえちゃんは、気にしなくていいのよ」

「でも…かすみんさんあんなですし」

 

緊張のあまり、放心状態となった戸山が直立不動となっている。その顔はまさしく無だ。

 

「コレは大丈夫。りみ、コレにアレを」

「ギョイ!」

 

牛込が素早く戸山にギターを持たせる。

 

「いぇーい!」

 

ギターを持った途端にテンションがハイになる戸山。ハンドルを握らせると人格が変わるとかそういうシステムで出来ているのか、コレは。

 

「いい、いずれやらなきゃいけないことなら、これいいチャンスよ。ちびっこや年配者が多いはずだから、学校やライブハウスよりも、ハードルは低いでしょ」

 

ランダムスターを握りしめた戸山は、徐々に元気を取り戻していったかのようだった。

 

「うん、そうかもしれない」

「よし、そうこなくっちゃ!委員長、それでいい?」

「俺がおまえらの決めた事にとやかく言う筋合いはないからな。一発かましてやれ」

「よし!ならやるわよ、みんな!」

 

市ヶ谷の号令に、メンバーが手を合わせる。

市ヶ谷の飼い猫のザンジ&バルが立ち上がった4人を見上げる。

「1、2、3、わっしょーい!」

 

4人のかけ声は、蔵の中でよく響いた。

 

それから数日間は猛練習だ。

合宿をしたり(俺は未参加)、衣装を考えたり、セットリストを考えたり、スタジオでリハーサルをしたり。現状出来ることは全てやり尽くした。

 

残った不安としては、やはり戸山のコンデションだ。彼女は人前で歌う事にためらいを覚えてしまっている。それが当日にどう出るかだが……。

 

ギターを弾いてる時の彼女の笑顔を見ていると、要らぬ心配と思えてきた。俺は頭からその心配を放り捨てる事にした。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

そして祭り当日。

 

「うー…」

 

戸山が楽器を置いた駐車場の片隅でうずくまっていた。

 

「おおー、かすみん。引き篭もってるねえ」

「昨日までの調子はどうした?」

「当日になったら…なんだかまた緊張してきて…」

 

顔を上げると、血色悪くなっていた。大丈夫か、やっぱり。

 

「大丈夫、リハーサルも完璧だったでしょ?お祭りなんだから、楽しまないと」

「少なからずとも、拍手を送る奴は1人、ここにいるぞ」

 

市ヶ谷が戸山の手を取って引っ張る。

側から見れば、市ヶ谷が戸山を励ましているようだが、実際のところは市ヶ谷も緊張しているのだろう。声が震えている。

 

「あの……ありがとう」

「なに、気にすんな」

 

何故か赤面しながら戸山が礼を言う。その可愛らしい姿に、俺も少し顔が赤くなった。

 

「あー…なるほどー」

「……なんだ、そんなニヤニヤして。はっきり言って気持ち悪いぞ」

「どうしたの、有咲ちゃん」

 

何かわかったかのように腕を組んで頷く市ヶ谷。何かおかしなものでも食べたのか、と本気で心配になる。

 

「ちょっとちょっと、かすみん」

「え、ちょっ、あ…」

 

市ヶ谷に手を強引に引かれて俺から少し離れた所に連れていかれる。

 

何かコソコソしているがどうしたのだろうか。

 

それから数分後のことだ。

 

「いやーごめんごめん、ちょっと話し込んじゃって」

「別に構わんが…何を話してたんだ?」

 

素朴な疑問をぶつけると、戸山がびくりと体を震わせる。

 

「ほら、かすみん」

「え、あ…」

 

市ヶ谷に小突かれる戸山。

戸山はすごい赤面だが、何を話し合ってたのか。

 

「あ、その……ライブ終わったら、一緒にお祭り回りませんか!!」

「ああいいぞ」

「やっぱりダメだよね…って嘘ぉ!?」

 

何を早合点しているのか。

 

「別に祭りを回るくらいならいくらでもしてやるよ」

「え、え…いいの?」

「何回同じこと言わせるんだ。いいに決まってんだろ、それに…」

 

それに、戸山と回れるなこちらも嬉しい……なんて言えるわけもなく、心の内に閉じ込める。

 

「……なんでもない。ま、一緒に回るならライブをクリアしろよ」

「うん、頑張る!」

 

と、そこに。

 

「…なんか聞こえてこない?」

「ん?何かって…」

 

市ヶ谷が耳をすませ。その姿を見た俺も耳をすませてみる。

 

––––––ちんちきちきちき

 

徐々に徐々に近づく音。その音の正体はーーー

 

「お囃子、か?」

「みたいね」

 

すると正面から近づいてくる物体が見えた。

それは獅子舞だった。おはやのリズムに合わせて、激しく踊っている。

その見事な踊りに、見物人から拍手や歓声があがる。

 

「……あれ?」

「どうしたの、かすみん?」

「ねえ、有咲ちゃん!?あの獅子舞、こっちに向かって来てない!?」

「……っぽいな」

 

お囃子を引き連れた獅子舞が、体躯をうねらせながらこちらに近づいて来てる。

 

「あれ……いや、え、え?」

 

ぐいぐいぐいぐいと近づいて来る。

徐々に、徐々に……というか近すぎやしないか!?

荒ぶる獅子舞の顔面が、戸山の眼前で動きを止めた。

まるで時が止まったかのように動かない2人。聞こえてくるのは観客の歓声。

 

「……あ、あの、わた、しは」

 

がぶり。

弁明を言い終えるよりも早く、戸山は獅子舞の口腔に飲まれた。

時間にして約30秒余りといったところか。

獅子舞は戸山の頭からくちを話し、何事もなかったかのように去って行った。

 

「…………」

 

一瞬の出来事に、戸山はぼう然と獅子舞を見送っている。

 

「……あんた、よかったね。獅子舞に噛まれると、厄が落ちるんだよ」

 

市ヶ谷が固定されたかのように立っている戸山の肩をぽんぽんと叩く。

 

「あの獅子舞、ただ者ではないな」

「すごくリズミカルでしたね。尊敬っす」

 

獅子舞にくっついて来たのか、花園と牛込も戻って来た。

この2人が戻って来たということは…と思い出し、腕時計を見る。

 

「そろそろ時間だな。自由時間は一旦終了だ。こっから本番だぞ」

 

花園、牛込、市ヶ谷が頷く中、戸山はまだぼう然としていた。

 

「これ、さっき買って来たんだけど…かすみんに似合うかなと思って」

 

そう言って市ヶ谷が2つある内の1つを花園に渡す。

 

「これでいつも、″STAR BEAT(星の鼓動)″はあんたと一緒」

 

ぱちり、と、何かを戸山につけた。

 

「かすみん先輩、すごく似合うっす!」

 

戸山の両耳には、星型のイヤリングが。

 

「師匠がいつも気配を消していたのは、こういう時に輝くためだ」

 

ぬっと現れた牛込が、真紅の星型ギター……ランダムスターを戸山の肩にかける。

 

「ステージでは師匠はうちの添え物。抱えこまなくてもよい」

 

それは、牛込なりの気遣いだ。

そんなに緊張をしなくていい、何かミスすれば、自分がなんとかする––––––そういう事だ。

 

「大丈夫だよ、かすみん。あんたはもう1人じゃない。あたし達3人…と委員長がいる」

「自分、不器用っすけど、センパイに何かあれば全力でフォローするっす!」

 

花園も声をあげて戸山を励ます。

 

「大丈夫だ。自分を信じろ。おまえは凄い、ここにいる全員がそう思っているよ」

「……うん」

 

戸山は顔をあげて俺たちを見る。

 

「わたし……わたし……」

 

戸山の顔は、さっきとは変わって笑顔だった。

 

「わたし!銀河よりビッグになる!」

 

その時の戸山の笑顔は、誰にも負けないくらい輝いていた。

その姿に、俺も市ヶ谷たちも笑顔になる。

 

「いいわね。あたしも成り上がってやるわよ」

「うちは伝説のりみりんになる!」

「自分は!自分は……自分は、サンダーボルトっす!」

「…なら俺は、ジョージ・マーティンにでもなるか」

 

ジョージ・マーティンというのは、ビートルズをプロデュースをした人物だ。

俺は裏方として、この蔵Partyを支える。

 

セッティングとサウンドをチェックする為に、クラパのメンバーはステージに向かった。

 




更新遅れて申し訳ございません!
にしてもアニメ始まりましたねー(話題変更)
完全にみもりんが全てを持って行った…(笑)
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