BanG Dream! 〜I Should Have Known Better〜   作:チバ

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カゲロウ/ONE OK ROCK


カゲロウ

お祭りといえば、やはり夏を思い浮かべることが多いだろう。

 

この街は、六月が終わりに差し掛かってきた時期に、祭りをやるのだ。

そのため、周りには浴衣を着た女性はいない。

獅子舞は踊っているが。

 

そして今。

俺は、隣で歩いている戸山を横に、何も話せずに顔を赤くしながら横を向いていた。

 

なにぶん、こういうのは初めてなもので、どうしていいのかよくわからない。

 

「えーっと…どこ回る?」

 

こうぎごちなく聞くことしかできない。お互いに推していくことができない性質なので、こういう状況だと一言声をかけることすら難関なのだ。

 

「と、とりあえず…何か食べよう!そ、そうだ、たえちゃんが焼きそば美味しいって言ってたから、焼きそばにしよ!」

「そ、そうだな!俺も焼きそば食べたいところだったんだー!」

 

もう色々と違和感ありすぎな会話となっている。十代の高校生が取るべきコミュニケーションなのかこれは。

 

そうして色々と屋台を回っていると、人に声をかけられる。

さっきのライブを見てた人たちだろう。その声はどれも好意的で、これからの蔵パを励ますのが多かった。

最初のうちは戸山も緊張していたが、次第に笑顔を見せて接するようになってきた。

少し前の戸山では考えられない事だ。

 

屋台で売っていた焼き鳥を買って、ベンチに腰を下ろす。

 

「どうだ、ライブは楽しかったか?」

 

ガヤガヤと、お祭りに来た人たちの声がBGMとなる。

 

「うん、楽しかった。…少し前の私が、この事を知ったらすごくビックリするだろうなぁ」

「まったくだ。俺も驚いてる」

 

俺と戸山はやはり、同じ感想を抱いていた。戸山の変わり様に、ビックリしている。

だが、それと同時に俺は嬉しかった。

 

「でも、嬉しいよ。こうしてお前の歌声が聞けるってことが」

 

あの日以来、人前で歌うことをやめて、性格も変わってしまった。俺は、もうあの頃の戸山香澄は二度と戻ってこないのでは、そう薄々思っていた。

 

だが、その思いを戸山はぶち壊した。

私は成長した。私は変わった。

あのライブは、戸山の宣言のようなものにも見えた。

 

「お前はお前自身を変えたんだ。それが嬉しい」

 

戸山は笑顔で、優しく首を振って俺の言葉を否定した。

 

「ううん。変えてくれたのは私じゃない。蔵パだよ」

 

まだ夕日のオレンジを帯びた夜空を見上げて、戸山は言う。

 

「あの日、有咲ちゃんがランダムスターを出してなくて、私にバンドをやろうって誘ってくれなかったら、今の私はいなかった」

 

まず最初は、市ヶ谷だった。

 

「りみちゃんも、私に学校で話しかけてくれて。最初は少し戸惑ったけれど、楽しかった」

 

牛込は精神面をはじめとした、色々なところを支えている。まるでバンドを守るかのように。

 

「たえちゃんはちょっと不思議だけど、優しくて、いつも私の心配をしてくれてる」

 

花園は優しく、常に周りのことを見ている。

 

「そして後藤くん。私たちが技術不足だった時に、まるでヒーローみたいに現れて、私たちをここまで支えてくれた」

「現れたっていうか、SOSコールが出てたから、とりあえず面倒を見るってことになっただけだけど…まあいいか」

「本当にヒーローみたいで、カッコよかった。どんなことでも私たちを見てくれてて、困ったことがあったら自分のことのように考えてくれる。本当に、会えてよかった」

 

泣きそうに、嗚咽を漏らしながらも感謝を述べる。

その姿を、俺はただ見ているだけだった。

戸山はもう一人でも立つことができる。俺が手を差しのばさなくても、蔵パのメンバーが背中をさすらなくても。

 

『これより、花火の打ち上げの準備を開始します』

 

アナウンスが流れる。

このお祭り恒例の打ち上げ花火だ。

今から準備が始まったということは、おそらく四、五分もすれば打ち上がるだろう。

 

「花火の打ち上げ…別の場所に向かう?」

「いや。ここでいいんだよ」

 

今たまたま思い出したが、ここは絶好の花火スポットとして有名な場所なのだ。

 

「そう…なんだ。みんな呼ぶ?」

「せっかくだし呼ぶか」

 

戸山が携帯を出して、それぞれのメンバーにメールを送った。もしかしたら花火打ち上げには間に合わないかもしれないらしい。

 

そうして花火打ち上げ開始までしばらく待つ。

お互いに話すこともなく、戸山ら夜空の星を見上げて何かを考えているようだ。きっと歌詞を考えているのだろう。

 

そんな彼女を邪魔しないようにと、俺はこれまでの戸山の事を思い出した。

 

小学生の時に彼女の歌を聞いた。

BGMの代わりのような感じで聞いていたが、次第にそうではなくなってきた。

そして、彼女の歌に合わせてリズムを取るようになっていた。それに気づいた時には、もう惚れていた。

この頃の時点で、俺は戸山の事に惹かれていた。

 

そして忘れもしないあの出来事。

ショッキングで、あまり思い出したくもなかったが、重要なイベントだ。

 

俺がいじめ部隊に喧嘩を挑み、ボコボコにされた。

そしてその時に、戸山から貼られ、渡された絆創膏。

思えば、これが彼女と初めて目を合わせてちゃんと話した瞬間だったのかもしれない。

 

そしてそれから時は流れて高校生。

彼女はバンドを始めて、性格が変わってきた。いや、元に戻ってきた。

まだ限られてはいたが、蔵パのメンバーの前では笑顔になれていた。

 

そして俺が蔵パに関わることとなり、彼女の変化を直接目で見れることができた。

嬉しくて、楽しくて。

彼女の笑顔を見ることが、どんな遊びよりも楽しかった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

私が彼のことをいつ好きになったのかと言われると、あまりはっきりとわかってはいなけど、多分割と最近だ。

元々、幼馴染として顔は知っていたし、優しくて面倒見のいいひとだと思っていた。

 

そして、最近になって、私は彼に助けを求めた。

その助けを、彼は快諾して私たちに協力してくれた。

 

その時に、思い出した。

 

彼が、私をからかった人たちに喧嘩をしたことを。

そのことは、仲介に入った先生から教えられて、初めて知った。

そして、私が彼に絆創膏を貼ったことも。

 

それから、彼を見る目が変わった。

思えば、私のところにヒーローのような事をしてくれている。

 

そしてある日、私が怪我をした時に、彼は私が何年も前に渡した絆創膏を貼ってくれた。ずっと持っていてくれた。その事実に、私は涙を流しそうになった。

なんで?

そう私の心に聞いた時にはもう、好きになっていた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

–––––ああ、やっぱりだ。

 

『花火が打ち上がります!』

 

この気持ちと、今の()をたとえるなら、陽炎だ。

ゆらゆら揺れて、口に出すことはできない。

 

『5、4、3、2、1!』

 

でも、この想いは本物だ。

素直に言えず、ぎこちない会話でいつも終わらせてしまう。

でも、それではダメだ。

()は進むんだ。

この想いを、口に出すんだ––––––!

 

『発射ー!』

 

花火が打ち上げられる。

赤い光の玉が上空に上がっていく。そして爆発するまであと少し。

 

人々が、おおっ、と声をあげる。

 

()も空を見上げる。

 

ピカッ、と少し光が生まれ、そして大きな音ともにカラフルな線が夜空に絵を描く。

 

その瞬間––––。

 

 

「「––––好き」」

 

 

誰にも聞こえないぐらい小さな声で、デモ口はしっかりと開けて言った。

それはお互いには聞こえず、自分自身に言い聞かせるように言った。

 

その言葉に、()はクスリ、と笑う。

 

どうやら、この陽炎な気持ちが、はっきりとしたモノになるには、もうしばらく時間がかかりそうだ––––。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「青春してるっすねー」

「まったく、ドラマを見てるみたい…」

「師匠、ここは押し倒せ!」

「うお!?」

「きゃっ!」

 

突然背後から発せられた聞き慣れた声に、俺と戸山は驚きの声を上げた。

姿を見れば、見知った三人、花園たえ、市ヶ谷有咲、牛込りみだ。

 

「やっと来たのか…」

「少し遅れちゃったけど」

「花火大きかったっす!」

 

いつものメンツが集まり、自然と談笑が始まる。

 

「で、どうする?この五人で回るか?」

 

俺からの提案に、市ヶ谷たちは考えるそぶりを見せる間も無く答えた。

 

「もちろん」

「時間はないっすけど、せっかくのお祭りだし、楽しみたいし!」

「五人デートだ!」

 

牛込の声に、俺と戸山は目を合わせてから笑う。

 

「よっし、じゃあ急いで行くぞー!」

「あっ、それじゃあライブ頑張った私たちへのご褒美ということで、代金は全部委員長持ちはどう?」

「ナイスアイデアっすね!」

「ええ、それはちょっと可哀想じゃ…」

「師匠にばかり褒美は不公平だ!」

 

ああ、楽しいな。

この瞬間、俺と蔵パは、本当の意味で、心の底から笑えていた。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

暗い部屋。

そこで出来もつけずに、窓に肘をついて外の景色を眺める一人の少女–––––山吹沙綾。

 

打ち上がった花火を見て、沙綾は少し笑いをこぼす。

 

 

–––––きっと今頃、カスミちゃん達は笑っているんだろうな。

 

 

チラリと、部屋の隅に置かれている物を見る。

 

「……ううん、ダメダメ。今は…ね」

 

自分を自制するかのように一人つぶやいた沙綾は、窓を閉めて、部屋を後にした。

 




だいぶ遅れてしまい申し訳ありません!
アニメ版面白いですねー!おたえちゃんが可愛くてGOOD!
そして今、バンドリ内のユニットの一つ″Roselia″の作品を書いております!
公開の方はもう少し後になるかと思いますが、気長に待っていてください!
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