この思いは。   作:如月の夢

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どうも、初めましての方は、初めまして。
駄文でお馴染みの、しずねは最かわっ☆です。

2作品目なのに、八色って言う…



八幡ライオン

恋愛、人それぞれ形があるもので、それがうまく噛み合わないと、長く続かなかったり、そもそも叶わない事もある。

俺は今まで、優しい女の子に惹かれ、そして振られてきた。

面白半分で、避けられて、いじめの一環で。

理由は様々だが、結果は皆同じだった。

高校生になってからというもの、人を避ける生活をしてきた為、恋人はもちろん、友達すらいない現状で何を言ってるんだ貴様状態だが、突然このような事を言い出すのはもちろん理由がある。

そう、俺は愚かにも、また、恋をしてしまった。

 

 

しかし、その恋の自覚は、同時に失恋を自覚させられるものだった。

 

 

 

 

 

季節は、冬後半。

雪は残るものの、植物は力強く、春へ向けて成長している。

植物は凄いぞ、コンクリートにも侵食してくからな。

俺は、冬は基本炬燵でぬくぬくする人なので、植物さんには一生勝てないですね、わかります。

そんな俺は、この寒空の下ある人物を待っているのだが。

なかなか来ないのである。

いい加減寒いのだが、凍え死んじゃうよ?

「マッチはいかがですか?とか言ってたら、本当に死んでしまいそうだな。」

そんなことを呟くほどに、寒く、暇なのだ。

そんな時、

「うりゃ!」

掛け声と共に、腰に衝撃が走る。

こんなことをする人物は、俺の知り合いには二人しかいない。

一人目は小町だ、小町にやられたなら、抱き返すまである。

え?気持ち悪い?千葉の県民なら普通じゃないの?ハチマンヨクワカラナイ。

しかし、その可能性はゼロである。

なんて言ったって、ここは学校の駐輪場である。

まだ小町は、この学校に来る理由がないので、消去法で、もうひとりの人物であると理解する。

「一色、なにが、うりゃ!だこのやろう。」

「背中が隙だらけでしたよ?」

「背中の傷は剣士の恥ってか?。」

「はい?」

「何でもねーよ。」

ようやく来た、待ち人に、深くため息をつく。

その空気は白くなり、未だに寒いことを指し示すようだった。

 

「うぅ、寒いですね。早く帰りましょう。

「俺はこの中で、お前を待っていたんだがな。」

「なんですか!どんな環境でも、俺は絶対にお前のこと待っててやるぜって言うアピールですか?お気持ちは嬉しいですが、先輩に何かあったら嫌なので、無理ですごめんなさい。」

「何言ってるかわかんねーよ……」

「にしても、寒いですね」

と言いながら、防寒着を再度しっかりと付ける一色。

完全にスルーである。

 

 

「先輩は春休み、どう過ごすんですか?」

「んー、基本は寝て過ごすだろ?で、起きたら読書。あ、プリキュアは欠かせないな。」

「私ですら、見てないですよあれ……」

「うるせぇ、プリキュアはいいぞー」

「なんですかその言い方、なんか、イラっと来ますね。」

「わかんねーならいいよ。」

「はー、かわいそうな先輩。」

そんな会話をしながら、駅までの道を歩いている。

一色を、駅まで送るのだ。

そう、頼まれたのである。

普段の俺からすると、面倒臭い事限りなく、絶対に断るのだが。

しかし。

少しでも、こいつといたい、そう思ってしまうが故に、断れなかったのだ。

 

 

「そうだ、先輩。」

「ん?」

「葉山先輩へのアピール方法、何か思いつきました?」

「それに関しては、俺に頼るなよ。」

「えー、いいじゃないですか、ケチ!ボケナス!八幡!」

「いや、八幡は悪口じゃないからね?」

例え、流れだとしても、名前を呼ばれたことに、喜んでしまう。

「何かいい案、ないですかね。」

「さぁな」

分ってはいることだが、こいつはそれだけ、あいつのことが好きなんだろう。

「先輩で試すんですから、先輩が好きなことでいいですよ?」

「俺に合わせてどうするんだよ。」

「いいんですよ。」

「そうだなー、読書がしたいな。」

「なんですかそれ、つまんなくないですか?」

「聞いといて、それは無くないか……」

「本当に読書でいいんですか?」

「俺はな。」

「じゃあ、今度図書館行きましょう!二人で」

「分かったよ」

葉山の代わりにとは言え、二人でいる時間は取れる、と言う利益に目が眩む。

それが余計、自分の心を傷つけると知っていても。

よし、と、隣から声が聞こえる。

 

「先輩にアピールできますように」

そうつぶやく彼女の一途に頑張る姿に、さらに心は悲鳴をあげる。

分かっているんだ、分かっているけど、この気持ちは止まらない。

無理でもせめて、その手伝いだけでも頑張ろう。

他の人間には、頼らないでくれ。

俺だけにしてくれ。

お前の、頑張るその姿が好きなんだ

本当は、ずっと見ていたい。

 

「どうか、この役目だけでも、誰にも取られませんように。」

 

そう、空に呟いた。

 

 

 

 

その数日後、図書館に行くことになった。

ここに来るまで、終始にこやかだったのは、何を想像しているのか、考えたくはなかったが。

笑顔の彼女は、やはり可愛かった。

 

 

そして、図書館では、お互い読みたい本を見つけて、読書スペースで読むことにした。

平然と隣の席に座ってくる。

「なんで隣なんだよ。」

「先輩の隣がよかったんです。」

「あざといから。」

そう口にするが、やはりうれしいものである。

 

二時間程度経っただろうか。

ふぅ、と息を吐き出す音と共に、本を閉じる音が響いた。

「読み終えたのか?」

「はい。」

「俺も、ちょうど読み終えたところだ。」

「案外こういうのも悪くないですね。」

「だろ?」

そう思ってもらえるのは、光栄なことである。

「でも、葉山先輩に出来るかなぁ」

その発言により、俺のテンションは歯止めが効かないほど落ちる。

「さぁな。」

どうにか平然を保って、返事をするのがやっとだ。

ちゃんと受け止めたはずだが、いつまで経っても理解しようとしない。

そんな自身に嫌気がさす。

頑張れよ俺、大丈夫だろ?今までだって、恋愛は叶わなかったんだろ?

一色の幸せを願えよ。

「先輩?」

ふと声を掛けられる。

「なんだ?」

「なんで……なんで泣いてるんですか?」

はっとなって、頬に触れる。

すると、少し暖かい液体に触れた。

「っ……」

「!大丈夫ですか!?先輩」

「わりぃ、ちょっと外行ってくるわ。」

「私もついていきますよ!」

「だめだ!来るな。」

先輩…と背後で声がしたが、無視をせざるを得なかった。

 

 

 

 

だめだ、やはり、やはり何度も諦めるが、諦めきれなかった。

こんな気持ちになるなら、いっそのこと、出会わなければよかった。

一色が好きな気持ちと、諦めて一色の幸せを願う気持ち。

そんなの、天秤にかけられるはずもなかった。

「どう。したらいいんだよ。……くそ……」

流れ出す涙は止まらない。

「何でなんだよ、なんで葉山なんだ……俺を…俺を見てくれよ……

何でなんだ、なんで、なんで俺は一色と巡り会ってしまったんだ!」

そう泣き叫ぶ。

少しでも、この嘆きが天へと伝わるように

ライオンのごとく、吠えた。

 

「こんな事なら、一色と巡り合わなければ、」

よかった、そう続ける予定だった言葉はそこで止まる。

背後から、そっと包まれたからである。

「へ?」

そんな、素っ頓狂な声を上げる。

何故なら、包んできたのは

「そんなことは……言わせませんよ先輩。」

同じく、大量の涙を流した、一色いろは本人だったからからだ。

 

 




最後まで読んでいただき、ありがうございます。

タイトル、内容ともに

遊助さんの"ライオン"を参考にさせていてだきました。
いやぁ、いい曲ですよね。

この連載にあたって、今後の内容も、何らかの曲に沿っていきます。


感想等宜しくお願いします。

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