バッティングセンターへと向かう途中俺は真島さんがどんな人間なのか聞く事にした。
「あの人はな、ホントに読めないんだ。」
「読めないですか……」
「俺も何回か闘った事があるが、あの人とだけはなるべく闘いたくないな。」
「なるほど…なら真島さんとは俺が闘いますけど。」
俺も真島さんとは一回闘ってみたいのでこれはチャンスだと思った。
「あぁ。兄さんが、遥の100億狙いなら頼む。」
「それ以外にあるんですか?」
「これは思いたく無いんだが…兄さんが俺と闘う為だけに遥をさらったという線もある。」
「そ、そんな事の為に遥ちゃんをさらうんですか?」
俺はそんなバカなのかと思ったが。
「まぁ、頭の片隅にでも置いといてくれ。それより急ごう。遥が心配だ。」
「は、はぁ。」
この時の俺はそこまで変な人じゃないだろうと思っていた。
_______________________
「前からワシャずっーと望んでいたんや。堂島の龍と直接やりあえる。この機会をのう!」
バッティングセンターに入って少したった後真島さんが来てこう言っていた。
桐生さんの言うとうり嶋野の狂犬は読めなくてバカな人でした。
~~桐生視点~~
(うーむ。やっぱりこの人はそういう事の為に遥をさらったのか。考えるだけで頭が痛くなってくるな。)
ほんの数分前の事
『会いたかったでぇ!!桐生ちゃぁぁん!!!』
『真島の兄さん…お久しぶりですね。』
『ええのぅ。見た感じムショ勤めでも体は鈍ってないよう野なぁ。』
『兄さん、今はそんな話をするためにここに来た訳じゃ無いです。遥を返して貰えませんか?』
『別に…ええで。嬢ちゃんならそこに隠しとるわ。ワシャお前…』
言葉の途中でボールが兄さんの頭に当たった。
しばしの沈黙そして兄さんの爆笑それに続き組員も笑い出す。しかし、俺らを除く組員の中で笑っていないメンバーがいた。おそらく新しい組員だろう。
『笑いどころやないか!!!』
ガツン!
バットが組員の頭に直撃してしまった。
『このドアホ!何で今の所で笑う事が出来んのや!』
バットを使い何回も組員を殴っていた。竜也の方を見ると不思議そうに見つめていた。確かに普通の人間の反応ならばそれなのかもしれない。
(これ以上はあの男が可哀想だな。)
『真島!止めろ!』
『あ?まぁそうやな。ワシの楽しみが目の前にいるんや。』
兄さんは笑みを浮かべながらバットを握りしめていた。
『前からワシャずっーと望んでいたんや。堂島の龍と直接やりあえる。この機会をのう!』
こんな感じでいろいろと起こったのだ。
「桐生ちゃん。何ぼーっとしてんのや?これ以上ワシを焦らすなや!」
真島組の奴らもぞろぞろとバットを持ち始めた。
「竜也、周りの連中を頼む。」
「はい。」
「行くでぇ…桐生ちゃぁぁん!!」
〈真島吾朗〉
俺が戦闘に意識を向けるより早く兄さんは攻撃を仕掛けてきた。
バットを地面に叩きつけたかと思うと、バットの反動を生かしそのまま自分の体ごと、宙に浮かびバットで殴ってきた。
「!?くっ!」
右腕で急に受け止めたため、右腕が痺れた。しかしその程度で思考を止めていられるほど、兄さんは甘くはない。
すぐさま右手でバットを掴み反撃をしようとすると、逆に手を離し、手刀で喉元を狙ってきた。
バットを遠くに飛ばしながら左手で手刀を抑えて、何とか開始早々の死闘を凌げた。
お互いの距離が50㎝ちょいの距離感での組み合いが続く。
「やっぱりええなぁ。桐生ちゃんとやっとると楽しくてしゃぁない。お前もそうやろ?」
俺はそれには答えずこの人の隙を探した。
(ダメだ…この人は一見隙だらけに見えるが何処か突こうとすればすぐさま反撃が飛んでくる。)
「考えすぎやで。」
「どういう事だ?」
「これはただの喧嘩やない。命張った喧嘩…言わば殺し合いや。せやのに桐生ちゃんと来たらどこをどう動いたら勝てるとか、理屈で考えすぎや。」
「何が言いたい?」
「直感や。」
「何?」
「ワシは今から直感で桐生ちゃんの攻撃を避ける…全部や。」
「上等だ!」
お互いに一気に離れそのままラッシュスタイルへと移行。ラッシュ自慢のスピードで兄さんの顔面へと殴りに行く…がこれは囮 本命は右の蹴り。
(いくらラッシュスタイルでも全力の蹴りなら、兄さんもきついはずだ!)
「うぉぉぉ!!」
兄さんは俺の上半身しか見ていない。
(決まりだ!)
右ストレートは背中をのけ反り回避。そして蹴りは……飛んで回避された。
「な!?」
いつの間に取っていたのか、飛んでいる兄さんの手にはバットが握られていた。
そのまま腹へと突かれた
ドスッ!!
「くそっ何故?」
「甘いのう…桐生ちゃんアマアマや。そんなんじゃすぐにやられて終わりやで。」
バットを器用に回しながら近づいてきた。
「そんな足に力溜めとったらバレバレやで。一瞬で全ての情報を手に入れてそっから相手がどう来るか見分ける。」
俺の真ん前に立った兄さんに俺は攻撃を仕掛ける事が出来なかった。
「桐生ちゃん。鈍ったなぁ…が、わるないで。」
「何?」
俺は言ってる意味が分からなかった。
「今の攻撃や。鈍ったちゅうのにあそこまで速く動けるんやから上出来や!」
「褒められてる気がしねぇな。」
実際本心だった。あそこまで実力がついているのだ。
「何や、ワシは嬉しいんやで。ムショいっとっても、この十年で変わったといえば反応速度くらいや。むしろ攻撃は今のが凄いで。」
自分では違いに気づけないため、首を傾げるしかない。
「ええか。桐生ちゃん、戦いで悩み過ぎたらあかんで。それじゃそろそろ再開しようや!」
先ほどと同じく、バットでの突きが、バットを避け、足を踏み動きを封じる。
「ほう…?でも、まだや!」
踏んでいないもう片方の足の蹴り。
「はぁ!」
壊し屋スタイルになり、蹴りを防ぐ。
「オラァ!」
ドスッ!
兄さんの腹をお返しと言わんばかりに殴り返す。そのまま、よろめいた兄さんの肩を掴み顔面を殴り続ける。最後に殴り飛ばした。
「ハァ…ハァ…どうだ?」
しばらく動かなかった兄さんだが、また動き出した。
「やるやないか…これなら本気でやっても問題ないな。」
バットを捨て、ドスを取り出した。そのドスには不思議な事にドスの刃にどす黒いヒートがついているのだ。しかし兄さん自身はヒートを出していないというあのドス自体が意思を持っているかのようなものだ。
あのドスを使い、兄さん一番の強みスピードで切り刻むスタイル“嶋野の狂犬スタイル”
(兄さんがあれを使うとなると、俺も本気でやるしかないか。)
昔ながらのスタイルを止めて、使うのは伝説と名付けられた“堂島の龍スタイル”
東城会本部から抜け出した時もこのスタイルだったが、あの時よりも動けるはずだ。
「何や、桐生ちゃんもようやく本気か。」
「えぇ…まぁブランクはありますけど、戦えない程じゃない。」
周りを見てみるともう戦いは終わっていた。
「なんや、桐生ちゃんが連れて来た若いのもやるやんけ。」
どうやら兄さんも周りを見ていたらしい。
「あいつとも楽しくやれそうやなぁ。ヒッヒッヒ。」
「あいつはかなり強いですよ。」
「ほう…桐生ちゃんに強いと言わすとは何もんや、あいつ?」
「年齢的には高校三年かと。」
「高校!?ほんならあいつまだ成人してんのか!?」
俺も自分で言っていてびっくりする。確かに顔は若いが、実際いきなり高校生と言われれば驚くだろう。
「まぁええわ。それより速く終わらせようか、この勝負。」
ドスを構えヒートを出す。
(いきなりか。まずはガードだな。)
「行くでぇ。桐生ぅぅ!!」
ドスをのけ反りながら回避、裏拳でドスを持ってる手を叩くも、離す事は無かった。
ドスを真下に突き刺してくるが、余裕を持って兄さんの隣に立つ。
全力の一撃。これは少し顔を動かすだけで終わる。
(まだだ!)
膝蹴り 手刀 アッパー 肘打ち
休む事なく、連続で攻撃し続ける。
「ぐっ!ぬぅ…」
兄さんの表情に焦りの顔が見えてきた。
顔を掴み、足を掛けて倒す…が、回避され背中に刺された。
グサッ!
「桐生さん!」
竜也の叫び声が聞こえた。
刺されたまま、取り敢えず兄さんから離れる。
「ぬ…ぬぅ…」
背中のドスを痛みを感じた所を頼りに抜く。
兄さんとは正反対の場所にドスを投げ、改めて兄さんと向き合う。
「どや、桐生ちゃん。久しぶりに喰らった感じは?」
当たり前だが、気持ちのいいものではない。
(あまり深く刺さらなかった事が、儲けものだな。)
兄さんから目を離し足元を見るとボールが落ちていた。
(これを使えば…)
「桐生ちゃんそんなものじゃワシに傷を付けることなんて出来へんで。」
確かにそうかもしれない。ただ投げるだけでは。
(喰らうかどうかは喰らってから考えろ!)
ボールを兄さんに向けて全力で投げる。これをあまり気にかけない兄さんそれこそが俺の狙いだ。
超低空姿勢で兄さんとボールが直線上に並んだ所をアッパー元々強力な(自分で言うことでも無いが。)アッパーに硬球ボールの固さも入っている。肩を押し少し距離をとって空いた脇腹に蹴りを入れる。
バキッ!!
肋骨が折れる音が聞こえる。
(終わったか…遥を迎えに行かなくては、もう竜也が行ってるかも知れないが。)
ちょうど遥がいる所に兄さんが居てくれて助かったかも知れない。疲れた為目を閉じていて、開くと兄さんが目の前全体にいた。
「!?」
咄嗟の事だったが上手くガード出来た。これで俺と兄さんのたち位置が逆だったら兄さんの方を見ずにやられていた。
「ハァ…ハァ…流石に…強いなぁ…今完全に…決まった思うたわ。」
「俺も…あんたがまだ…立ち上がれる事に…驚きだな。」
(流石にもう限界だぞ!)
体の状態を見ると、兄さんが顎、腹等喰らっている箇所は多い。逆に俺は辛い箇所は腹だけだがドスに刺された背中もある。もちろん端から見れば兄さんが辛いかも知れないが、俺は十年の内に体力が落ちたのだ。これ以上は俺の体力的に闘えない。
(悔やんでいても仕方ない。やれるだけやってやる!)
しかし勝負は意外な形で終わりを告げる。
「死ねぇぇ!桐生ぅぅ!!」
竜也が気絶させた組員の一人が気がつき兄さんが使っていたドスを持って俺に向かってきた。
(くそっ…ここまでか。)
その時真島の兄さんが俺の前に立ち、組員の攻撃を黙って受けた。
「お、親父!どうして…」
「こんのドアホ!!桐生ちゃんを…やんのわなぁワシだけなんじゃぁぁぁ!!!」
そこまで言って兄さんは倒れた。元々かなりお互いに無理した勝負だったのだ。あそこまでお互いやれたことが、誉めても良いだろう。
組員は兄さんの肩を掴みバッティングセンターから出ていった。
そしてここには俺と竜也しかいなくなった。
「おじさん!」
「遥…すまなかったな。」
「ううん…私こそごめんなさい。竜也くんも…」
「いや、俺の方は桐生さん程じゃないし…それより支えますよ。」
「いや…大丈夫だ。それより遥も無事助けられた事だ。セレナへ行こう。」
「あ!そうだ竜也くん。」
「ん?どうかした?」
「あのね。竜也くんにすぐ知らせて欲しいって私の事を助けてくれた人が言ってたの。」
(竜也が助けた訳では無かったのか。)
「俺に…?」
「うん…何か手紙をすぐに見て欲しいだって。」
「手紙…?遥ちゃんを助けたのって女の人?」
「ううん。男の人。」
俺は全く話が分からないため、話しかける訳にもいかない。
「じゃ…じゃあ心当たりがある場所に行ってきます。」
「あぁ。ただ罠の可能性もある。気を付けろよ。」
「はい。」
竜也は俺達より先に出ていった。
「遥…俺達も行こう。」
「うん…」
_______________________
「じゃあその謎の男は遥のペンダントを狙っていた訳ではねぇんだな。」
俺達は竜也を待たずして伊達さんとさっきあった事を話していた。
「うん。でもあの人…このペンダントには百億の価値があるんだよって。」
「百億の価値だと!じゃあそいつは遥からペンダントを奪ったのか?」
「ううん。無くさないで持ってろだって。」
「どんなペンダントなんだ?」
遥は俺らにペンダントを見せた。
「鍵付きかぁ…壊すってのは?」
(伊達さん流石にそれは…)
「「駄目よ!!」」
麗奈と遥に怒られていた。
「……冗談だ。」
「ただ今の状況で一つ分かった事がある…俺達はいつの間にか事件の中心に立たされていたって事だ。」
しかしまだこの時の桐生は気づいていなかった。このペンダントが後に大切なものを壊す事になろうとは。
感想をくれると喜びます。次回はオリジナルストーリーです。2月15日までに投稿します