龍の背中を追いし竜   作:Kurato

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2話連続投稿です。ホント不定期でごめんなさい


31話 東京帰還そして

「うっ……」

 

「どうした?」

 

「大丈夫よ…ちょっと目眩がしただけ」

 

「失礼……熱ありますね」

 

 

桐生が抑えてる薫の額を触る竜也。

 

 

「大丈夫だってば!」

 

 

お姫様抱っこをする桐生

 

 

「ちょっと!やめてよ!恥ずかしいじゃない……!!」

 

「うるさい…ちょっとそこまで行くだけだ」

 

 

セレナの裏門を開け、ソファーに寝かせる桐生。

 

 

「ここは……何処……?」

 

「俺の馴染みの店だったとこだ…」

 

「そう……」

 

「無理してついて来るからこうなるんだ」

 

「休めばすぐによくなるわ」

 

 

パチン

 

 

「営業してなかったですけど、電気は使えるみたいですね」

 

「すまない。ありがとう」

 

「別にいいっすよ」

 

 

プルルルル

 

 

「柏木さんこそ無事で何よりでした。」

「神室町に戻ってきたところです。」

「郷田会長と大吾が、何者かに連れ去られたんです。詳しい事は東城会本部で……」

 

「東城会に向かうんですか?」

 

「あぁ、今までの報告がてらな。その間竜也はどうする?」

 

「1回家に帰ります。色々着替えたいし」

 

「分かった…こっちが終わったらまた連絡する」

 

「分かりました」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「(とりあえず家に帰ったら風呂かなぁ……てかスーツの上着ひでぇな…)」

 

「……!」

 

 

スっ!

ドンッ!!!

 

 

竜也が紙一重で避けた所にはデカい2本の斧が突き刺さっていた。

 

 

「ほう……コレを避けるとは…やるじゃないか…」

 

「まぁた意味分かんねぇのが現れやがったな。何だてめぇ」

 

「俺は亜門一族三兄弟、長男『亜門一也』!お前を殺す」

 

 

「(亜門…って事はアイツの知り合いかよ!ッ!!!)」

 

 

ブンッ!ブンッ!ブンッ!

 

 

常人なら1本を両手で持っても振れない程のスピードで攻撃を繰り出す一也。

 

 

「どうした!逃げるだけか!」

 

「うっせーんだよ!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

一瞬の隙をついて殴る竜也。

しかし

 

 

「そんなものか」

 

「やべぇ!!」

 

 

全くきいていない様子でまた振りだす一也。

 

 

「頭おかしいのは亜門丈譲りって事ね。……………まぁいいや」

 

「ふざけているのか」

 

 

 

突如一也の前で無防備な状態になる竜也。

 

 

「いいから来いよ…無駄口叩いてんならこっちからやんぞ?」

 

「ふん!」

 

 

「(小牧流奥義……受け流し!)」

 

 

物凄いスピードで振り下ろされた斧を受け流しながら背中を肘で腹を膝で殴る小牧流最大の奥義。

 

 

「さぁて、今度はこっちの番だよなっ!オラァ!!!」

 

 

マシンガンスタイルに変化し自信が出来る最大のラッシュを叩き込む。

 

 

「グッ!調子に乗るなぁ!!!」

 

「ウッ!!」

 

「死ねぇ!!」

 

 

気を痛みにとられた瞬間に斧が首めがけて振られる。

 

 

「(死っ!!っざけんな!!!)」

 

 

ドンッ!!

 

 

自分の太ももを全力で殴り、痛みでしゃがんで何とか回避する。

そのままロケットの要領で頭突きを繰り出す。

痛みで一也が斧を手放す。

 

 

「おー痛て、危ねぇのはこの斧だよな。フンっ!」

 

 

額を擦りながら、両方の斧をコンクリートで全力で叩きつけ斧を折る。

 

 

「さぁて…真剣勝負(ステゴロ)と行こうか?」

 

「良くもやってくれたな……」

 

「うっせぇ!先にやべぇの出したのそっちだろうが!」

 

「今日はここまでだ…」

 

「あん?勝手な事……パァァァン!!!

キィィィン!!!

ッ!!」

 

 

物凄い至近距離で何も対策無しで閃光手榴弾を喰らってしまい周りが見えなくなる竜也。

 

 

「っクソが!!何処行きやがった!!」

 

 

ようやく目が慣れ、周りを見渡したがそこに一也の姿は無かった。

 

 

「…………家帰ろ…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「何をどんな話し合いしたらあんなスーツボロボロになるのよ」

 

「返す言葉が見つかりません」

 

 

家に帰った竜也がした事はまず心愛への謝罪から始まった。

 

 

「折角高いスーツ買ったのに…」

 

「悪いとは思ってる。でもしゃあ「無くないよ」……っす」

 

 

心愛の圧により全く反論出来ない竜也。

 

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「わざわざ今回着いていく必要あったの?」

 

「どうして?」

 

「だって桐生さんが近江連合の本部に話し合いに行くだけだったんでしょ。まぁ結果そうじゃなくなったけど。」

「わざわざ竜也君が怪我するなら私は行かないで欲しい」

 

「そうだな……確かに俺が行く必要無かったかもな」

 

 

ちょっと笑いながら上を見上げる竜也。

 

 

「でもさぁ、俺はどんなに自分が傷つこうがどんだけ絶望したとしても俺自身が後悔したくねぇんだ。」

「あの人の周りにいれば少なくとも俺は後悔しねぇからな。それで死んでも後悔0ってわけ」

 

「そうだったんだ……」

 

「そっ!だから俺も今回の騒動に首突っ込む事にしたから!また多分すぐに大阪行く事になると思うけど……」

 

「別にいいよ。大体竜也君がそこまで思ってるのに止めるなんておかしいもん」

 

「悪ぃな。あ、そだ!もしあれだったらさ!今遥ちゃんヒマワリに戻ってるんだけど…良かったら心愛もそっち行って手伝いとか…どうかなぁって……」

 

「うん!良いかも!!私も明日ヒマワリに行くね」

 

「!そっか!園長には俺から言っとくからよろしくな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シャワーを浴び、リビングでくつろぐ竜也。

 

 

プルルル!

 

 

「はい、黒瀬です」

 

『竜也か、桐生だ』

 

「東城会での報告終わったんですか?」

 

『あぁ。それで今から「賽の河原」へ来れるか?』

 

「『賽の河原』ですか?行けますけど……」

 

『詳しい事情はそっちで話す。入口前の公園で待っててくれ』

 

「分かりました。失礼します」

 

「桐生さんから?」

 

「あぁ、神室町行ってくる」

 

「分かった。行ってらっしゃい」

 

「行ってくる…あ、一個聞いていい?」

 

「何?」

 

「自分の限界って勝手にきめるもん?」

 

「何その質問?意味わかんないだけど」

 

 

心愛が呆れながら聞き返す。

 

 

「いいから。心愛自身の結果で別にいいし」

 

「………私含め大体の人は決めちゃうんじゃない?仮に頭の中で『まだこれからだ!』って思っても本能が『無理』ってなったら限界の線引きだろうし。でも……」

 

「でも?」

 

「私的には桐生さんとか、竜也君みたいな人は頭の中がどんなに折れてても、きっと本能が“負け”を認めない人達だろうから、そうゆう人達は限界なんて関係ないんじゃない?」

 

「………そっか…!ありがとな!行ってくる!!」

 

 

「(そうだよな…俺いつの間にか全部にビビってたんだ。亜門(あん時)も、錦山(あん時)も全部桐生さんや真島さんがやってくれるから…俺は最低限でいいとか……バカかよ…。)」

「(そんでもって1回ボロクソに負けただけで簡単に限界貼ろうとしてんだからよ……。)」

「(負けが怖くて喧嘩が出来るかよっ!!)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「(寒いな……それなりに厚着したけど…まぁ冬だからしゃあねぇか)」

 

「すまない。待たせたな」

 

 

ベンチに寒がりながら座る竜也に話しかける桐生。

 

 

「あ、大丈夫ッスよ。俺も数分前に着いたとこなんで。薫さんも来たんすね」

 

「ええ。この人の身辺保護をしている以上勝手な事をしないか見ているの」

 

「なるほど……」

 

「もう良いだろう。早く河原に入ろう」

 

 

そう言って普通に男子トイレにむかう桐生と竜也。

 

 

「ちょっとここ男子トイレ!」

 

「黙って着いてこい」

 

「ホントにここなの?」

 

「俺も初めは信じられなかった」

 

 

ガチャ

 

 

河原への入口を開け、桐生達の目に入ったのは昔のような公園ではなく、ただの工事現場だった。

 

 

「へー、だいぶ変わりましたね」

 

「あぁ、1年前と今じゃえらい違いだ」

 

「前はどんな感じだったの?」

 

「ホームレスのたまり場ですよ」

 

 

ガガガガ!!

 

 

至る所から工事の音が聞こえてくる。

 

 

「何かの工事をしているようね」

 

「あぁ。竜也は何か知ってるか?」

 

「いや、俺も河原は出入りしなかったんで全然わからないです」

 

「久しぶりですネ。桐生さん、黒瀬。」

「ボスは地下の1番奥でお待ちしてます。……どうぞ」

 

 

ゲイリーに案内されるまま地下鉄への入口を降りていく三人。

地下に降りた薫の目が開く。

その景色は上とは正反対の騒がしい景色だった。

 

 

「地下にこんな街があるなんて…」

 

「ここのボスの変な趣味ですよ」

 

「驚くのはまだ早い」

 

 

奥の屋敷へと足を踏み入れる三人。

 

 

「桐生だ!誰かいるのか?いるのは分かってるんだ…出てきてくれ」

 

 

そう言って真島のドスを下に落とす桐生。

 

 

「!?そのドスって!」

 

「ヒッヒッヒ待ってたで……桐生チャン、黒チャン。」

「桐生チャンが堅気になってしもうてこの1年、メッチャ淋しかったわ〜。」

「せやけど桐生チャンなら絶対この街に帰ってくると思っとったでェ。」

「もちろん、黒チャンも久しぶりやなァ。あん時以来やな」

 

 

高い笑い声をあげながら桐生の因縁の相手、真島吾朗が現れた。

 

 

「何?この人」

 

「元東城会島野組の若頭……俺の兄貴分だった人だ。1年前の事件にも絡んでる。」

「久しぶりですね。真島の兄さん」

 

「なんや桐生チャン。もう女作ったんかいこのスケコマシが」

 

「誤解すんな」

 

「なんや?じゃあ黒チャンの女っちゅうんか?」

 

「久しぶりですがそれも違いますよ。真島さん」

 

「府警第4課主任、狭山薫です……よろしく」

 

「府警?4課?……姉ちゃんデカなんか?。」

「桐生チャン、どないなっとんねん?」

 

「それより、どうしてアンタここに居るんだ?」

 

「ここの前の親分が居なくなったからや」

 

「花屋が消えたんですか?」

 

「花屋…?」

 

「ここが出来てからずっと伝説の情報屋として健在してた奴の名前です」

 

「せや…通称“サイの花屋”元警官のオッサンや。なんや情報渡す時に花束使うてたらそないな名前なったらしいわ」

 

「花屋はどうしてるんだ?」

 

「今は表の人間や」

 

「表?」

 

「なんや警察の下請けで、神室町のモニター映像から情報提供しとるらしいわ。」

「ま、ある意味花屋にとっちゃ元のサヤに戻ったってだけのことなんやがな」

 

「つまり警察関係者になったって事か?」

 

「そうや……それで河原が機能しなくなったんや。」

「そこで俺は真島建設を立ち上げて神室町ヒルズの建設事業を請け負った」

 

「神室町ヒルズ?」

 

「上に建っとったやろが〜。バカでっかいビルの鉄骨が……あれが神室町ヒルズや。」

「ま、俺のほんまの狙いはそれに乗じてこの地下街丸ごと乗っ取る事やったがなぁ」

 

「アンタも意外と頭が回るんだな」

 

「せやろ……で、なんの用や?」

 

「東城会に戻ってくれ」

 

「かしこまって……何アホな事言うてんねん!?。」

「桐生チャンに冗談は似合わんで〜」

 

「本気だ…今の東城会にはアンタが必要なんだ。戻ってくれ」

 

「お断りや」

 

「頼む……兄さん…」

 

「やめろや桐生チャン!俺は桐生チャンのそないな姿見とうないんや」

 

「東城会を救うには真島組の力が必要なんだ……頼む!」

 

「………しゃあないなぁ…それなら1つ条件や」

 

「何だ…?」

 

「桐生チャンにしか出来へん仕事や」

 

「まさか……」

 

「せや、トーナメントや。どや?引き受けるか?」

 

「それ、俺がやってもいいですか?」

 

「あん?」

 

 

途中から黙って話を聞いていた竜也が口を開く。

 

 

「竜也!?」

 

「トーナメントなら俺も何回もやってますし……真島さんを退屈させる事ないと思いますけど……」

 

「……黒チャンなら別にええで」

 

「ありがとうございます。それで良かったらなんですが1つ願い聞いてくれませんか?」

 

「何や?」

 

「トーナメントは3回勝ち残ったら勝ち……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3回戦目俺はアンタに出て欲しいです」

 

 

竜也の言葉を聞き終えた真島がうっすらと笑う


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