戦姫絶唱シンフォギア 命を燃やせし歌姫の戦士   作:木原@ウィング

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6話 勃発 防人の喧嘩 後編

「それでは、響ちゃんのメディカルチェックの結果発表~~♪」

 

恐怖のエレベーター体験をした響の前に初めてギアを起動させた時に〝あったかいもの〟を渡してくれたオペレーターの友里さんと藤尭さんの二人が見守る中、初対面の時と寸分違わぬテンションで宣言する櫻井了子が、昨日の響の身体検査の結果を報告し始める。

 

「検査の結果、響ちゃんの身体にはほぼ異常は見られず正常値でした~。……でも、響ちゃんが知りたいのはこういうことじゃないわよね」

 

「はい……あのシンフォギアって力のこと、もっと詳しく教えてください」

 

 響は昨日の時点から聞きたくて仕方のなかった質問を、改めてぶつけた。

 

「その前に、まずは聖遺物の説明をしなければならない」

 

「せいい……ぶつ?」

 

「聖なるの聖に、遺物と書いて聖遺物、要は世界各地の伝承に登場する、現代の科学力では再現できないオーバーテクノロジーの塊で、多くは遺跡から発掘されるんだけど、大抵は経年劣化が激しくて完全な形で残っているのはごく希でね」

 

「は、はぁ」

 

いまいち良く分かっていない響は首をかしげながらも真剣に了子の話を聞く。

そんな響に対して了子は少し苦笑いをして弦十郎にアイコンタクトを送る。

了子の意図を察した弦十郎は頷いて許可を出す。

許可を貰った了子は立体モニターに翼の首元にある多角系状の細長く水色なペンダントの画像を映し出す

 

「翼の使うシンフォギア、第一号聖遺物――天羽々斬。これも元は砕けた刃のごく一部の欠片に過ぎないんだ」

 

「天羽々斬?」

 

「元々はスサノオノミコトがヤマタノオロチを退治した際に使ったと伝わる、神代三剣の内の一振りなんだ」

 

「うぇえ!? そ、それってあの神話の!? す、凄いじゃないですか!!」

 

「あら? その反応、良いわねぇ~話がいが有るわ~」

 

響はスサノオノミコトと言う人物の名前が出た瞬間、驚愕した。

その名前は昔、椿が話してくれた神様だったから。

 

「話を戻して貰って良いでしょうか?」

 

「あ、はい。すいません」

 

「もう、緒川君のせっかち~」

 

緒川に言われ、響は申し訳なさそうに頭を下げて謝る。

 

「で、その欠片に残された力を増幅して解放させる唯一の鍵が、特定振幅の波動なの」

 

「? えっと、その特定振幅の波動って何ですか?」

 

「その鍵こそ〝歌〟なんだ」

 

突然、その場にいない筈の人物の声が聞こえて来た。

聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、みなギョッとして辺りをきょろきょろし始める。

そして扉が開くと、そこには椿が立って居た。

 

「つ、椿君!?」

 

「なんだ、随分と遅かったな?」

 

「少し家で考え事していて出るのが遅れてしまいました」

 

弦十郎に笑いながら言われ、椿も少し笑って答える。

しかし、遅れた理由が考え事に夢中になっていた、なんて如何にも椿らしい遅れた理由にみんな少し呆れたように笑った。

 

「で? なんでその聖遺物を起動させる鍵が歌なんですか?」

 

「そうだ、普段は力を発動させず眠っている状態の聖遺物は、歌が持つ力――俺達は〝フォニックゲイン〟とも呼んでるんだが、そいつが高まる事で呼び起こされる」

 

「そして、フォニックゲインで活性化された聖遺物のエネルギーを鎧の形で再構成したものが、アンチノイズプロテクター――シンフォギアなの」

 

立体モニターに映し出された画像や、紋章、了子による〝変身の原理とメカニズム〟の説明は、とても分かり易い説明だった。

2課の面々はそう思っていた。

 

「だからとて――どんな歌にも、誰の歌声にも、聖遺物を起動させる力が備わっているわけではない!」

 

沈黙の姿勢でいた翼は、いきなり語気を強めに、意固地さも抱えた声色でそう言い放った。

その言い方に椿は溜息をつく。

 

「翼、そう怒った風に言うなよ。響がびっくりしてるだろ?」

 

「…………」

 

「まぁ、翼の言う通りで、誰もが聖遺物を起動させる歌声を持っているわけではないんだ。その数少ない歌声の主を、我々は〝適合者〟と呼んでいる」

 

シンフォギアの開発は何年も前から行われていた。にも拘わらず、特機二課に所属するシンフォギアの担い手は過去と現在でたった〝二人〟だけだった。それだけギア――聖遺物の眠りを呼び覚ませる人間の数は極端に少ないと言うことだ。

 

「で、どう? あなたに目覚めた力について、少しはご理解いただけたかしら? 質問は大歓迎よ」

 

「あの――」

 

「はい♪ 響ちゃん!」

 

「――言っている事、全然分かりません」

 

苦笑いながら正直にきっぱり〝分からなかった〟と正直に打ち明ける響。

椿はその潔さに思わずずっこけた。

 

「でしょうね」

 

「だろうな」

 

「ごめんなさい……いきなりは難し過ぎた話だったわね」

 

同席していた友里さんと藤尭さんも、同意を示す。

 

「響。つまりは、現代科学を凌駕する力を秘めている聖遺物の武具の一部から作られたシンフォギアは、歌声でスイッチを入れることで鎧と武器に変換出来るようになって、鎧はノイズからの攻撃を防ぐ〝盾〟になって、武器、ここはアームドギアって言った方が良いかな? アームドギアはノイズを倒す〝矛〟になるって事」

 

「そういうこと♪ そして聖遺物からシンフォギアを作り出す唯一の技術――〝櫻井理論〟の提唱者がこの私であることも覚えておいてね」

 

「ほへぇ……」

 

そこで響はふと、何かを思い出したか了子に尋ねた。

その発言が、爆弾だとは気が付かずに……

 

「あの、そのシンフォギアに関するお話は大体分かったんですけど……私、聖遺物なんてものは持ってもいないのにどうして?」

 

「その原因は、身体検査の結果判明したわ、これを見て」

 

先程までの陽気さは鳴りを潜め、真面目な物腰と声色になった了子がモニターに表示させたのは、胸部の骨と心臓が映し出されたレントゲン写真。

その心臓部には、何かの破片らしき小さな物体が、確認できるだけでも十個ほど付着している。

 

「この〝影〟が何なのか、君には分かるな?」

 

「はい、二年前のあの怪我です」

 

響は顔に影を落として、自分の胸元を触る。

触っている部分の服の下はなにやら記号のような模様のf字に似た傷跡が有った。

その傷跡は……椿と奏が死んだ日に出来た物だ。

2年前のツヴァイウィングのあのライブで……

 

「心臓付近に複雑に食い込んでしまっていた為に、手術でも摘出できなかったこの無数の破片、検査の結果……これはかつて奏ちゃんが身に纏っていたシンフォギア、第三号聖遺物――ガングニールの破片の一部であることが分かったの」

 

了子の発言で椿と翼は絶句していた。しかし、翼は目を見開いて驚愕するだけではなく、握りこぶしから血が出そうになるほど力強く握っていた。

しかし、それだったら何故奏の物だったガングニールを纏うことが出来たのかが納得できるのだ。

 

「奏ちゃんの………置き土産ね」

 

その残酷な〝真実〟に翼は眼を見開き、完全に顔を伏せ、弱弱しく震えながら、おぼつかない足取りで指令室から出ていった。

今の顔を誰にも見せたくは無かった。

つまり、言い方は悪いが響は自分の大切だった相棒の奏が死んでしまった原因の一つだったのだ。

その響が、彼女と同じガングニールの装者になってしまった………穏やかでいられるわけがない。

 

あの場を退室したのも、響を目にしていることで、翼自身の精神的外傷が彼女の意志と関係なく、疼いて暴れまわり、ここにいてはとても耐えられそうになかったたから。

〝戦場〟では気丈に振る舞い、研ぎ澄まされた刃の如き佇まいで、鍛え抜いた剣腕を以てノイズたちを切り伏せていった彼女ではあるけど、本当は――泣き虫で弱虫な女の子なんだ。

 

「あの……」

 

「どうした?」

 

「この力のこと、やっぱり誰かに話しちゃ、いけないんでしょうか?」

 

響のその質問に答えたのは椿だった。

 

「響、そんなことをしたら君と、君の大事な人たちの命が危ない、勿論未来も例外じゃない」

 

「え? そんな、い、命って……」

 

「政府がシンフォギアをずっと隠し続けているは、その力が強すぎるからだ………それが露見してしまったら――君達の命が危ない」

 

「……え?」

 

椿の発言に弦十郎が続く。

その目は至って真剣で、まっすぐと響を見つめていた。

 

ノイズの猛威に晒されたこの地球で、現在対抗する為の手段の一つであるシンフォギアを持っていると言うことは、ある意味で世界を手中に収めるに等しい。

 

「……シンフォギア以外にも対抗手段は【存在していた】。が、そちらと比べるとシンフォギアの方が性能が上だと言われている」

 

「その……対抗手段って、何ですか?」

 

「……対ノイズ武装、【艤装】を纏う少女達。通称【艦娘】だ」

 

「艦娘?」

 

椿もその存在は知らないようで首をかしげている。

響と椿の疑問に答えるように弦十郎は頷き口を開く。

 

「これは2年前に作られていた対抗手段だ。シンフォギアの適合者よりは多く、普段は六人体制で行動している部隊だ」

 

「……この艦娘は数もそうだがそ艤装の火力が強かった」

 

「その艦娘、日本には?」

 

「……現在は存在していない」

 

「存在していない?」

 

「……その存在を作り出すために人体実験が繰り返されていた」

 

「じ、人体実験?」

 

「……艦娘は確かにシンフォギアに比べると適合者が多かった。しかし、艤装に適する人材たちを人工的に作り出す非人道的な者達も現れ始めたんだ」

 

「結果、【艦娘計画】は解体。残った艦娘も他の国に連れて行かれて各国のノイズに対する対抗手段になっている」

 

「そ、そうだったんですか」

 

その先を言いにくいのか、弦十郎は言葉を詰まらせた。

艦娘という存在がすでに存在すると言うのに、それより上に行くシンフォギアの存在が明るみとなったら………同じく特異災害に悩まされている国家達が黙ってはいない。 

 

国によっては平気で内政干渉をけしかけてくるだろうし………ギアの生成技術と適合者を強引に手にしようと裏工作に打って出る可能性も高い。

それこそ、各国の艦娘を使っての襲撃が起こるかもしれない。そして、その襲撃のターゲットの一人として響と響の友人たちが入るかもしれない。

極めつけは、響の体質………適合者でなかった彼女が、偶然の不幸によるものとは言え、体内に聖遺物を埋め込まれたことで、後天的な〝装者〟になってしまった。

こんなことが露見してしまえば………多感な年頃の少女を〝兵士〟に仕立て上げる悲劇が、【艦娘計画】の悲劇が再び起こってしまう。

………実際に某国では、すでにシンフォギア並びに艦娘に対する多少の適合数値が有る子供達が行方不明になっている事件も起きている。

 

「俺たちは、機密ではなく、人の命を守りたいからこそ、シンフォギアの存在を秘密にしてきた……その為にも、どうかこの力のことを、隠し通してはもらえないだろうか?」

 

「あなたに秘められた力は、それだけ大きなものでもあるの、響ちゃん」

 

 特異災害対策機動部が、必死になってシンフォギアの存在を秘密にしていたのは、つまるところ、そんな〝悲劇〟を再び起こさぬ為でもあるのだ。

 

「立花響君、日本政府、特異災害対策機動部二課として―――君には協力を要請したい」

 

 毅然とした物腰で弦十郎が、響と正面から向かい合う形で、協力を求めてくる。

 だけど、その逞しく隆々な体躯と精悍な容貌の裏には、本来〝大人〟として守らなければならない〝子どもたち〟に、人類の存亡と命運を託して、戦場に送り出さなければならない〝現実〟に対し、無力さを噛みしめているのだと、椿の目は見抜いていた。

 一体どれだけ、その非情な現実を突きつけられながら………シンフォギアの戦士である少女たちの、戦場に向かう〝背中〟を、目に焼き付けてきたのか……。

 

「どうか、君たちのシンフォギアの力を、対ノイズ戦に役立ててはくれないだろうか?」

 

 響はその弦十郎達、特殊災害対策機動部2課からの願いを受け、覚悟を決めた。

 これ以上奴らの暴虐によって、生命が無慈悲に蹂躙され、響も味わったあの〝哀しみ〟ばかりの、〝生き地獄〟。人々を苦しませない為にも、弦十郎達が味わい続けさせられた苦しみに対し、少しでも報いる為にも、そして何より………〝誰もが心から歌える世界〟を取り戻す為に!

 

「私の力で……誰かを………助けられるんですよね?」

 

響の問いに、弦十郎と了子は頷き、程なくして――

 

「分かりましたッ!」

 

 ――昨日まで普通の学生であった筈の少女は、余りにも早く、余りにも躊躇せず………承諾の旨を明かした。

その回答に一抹の不安を持って椿は口を開く。

 

「ま、俺も翼と響と共に戦うから安心しろ」

 

笑顔で、しかし心の内では響に対する不安を持ちながらそう言う。

椿の宣言に響も笑顔で答える。

 

「椿君! 一緒に頑張ろう! 翼さんと三人で」

 

「……あぁ。だけど、お前は訓練をしてからな?」

 

「うぅ、はい……」

 

響からの力強い決意表明に少し嫌な予感を感じて先手を打つ椿。

それを受けて少ししょんぼりする響。

しかし、それを見ても椿の中に有る不安が消える事が無かった。この響に対する不安は例えるなら……自分の命を顧みずに突き進む様な不安だ。

そんな不安が渦巻く中………特殊災害対策機動部2二課の本部中に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

「何事だ!?」

 

「エリアG-9にノイズの発生パターンを検知!!」

 

「ノイズの出現までの時間は!?」

 

「推定で約1分後!!」

 

「1課に伝達! 近隣住民の避難を開始させろ!!」

 

サイレンが鳴り始めてこの間、約20秒。

凄まじい速さで伝達を完了させ、指示を送る弦十郎。

 

「転移反応感知、位置特定、座標は――」

 

 ノイズの出現地点を突き止めたオペレーターの友里あおいは、冷静さを維持しながらもその声音に驚きを混じらせていた。

 

「――リディアンより東! 距離は、五百!」

 

「近いな……」

 

「弦十郎さん。すぐに向かいますか?」

 

「あぁ、椿君は翼を連れて現場に向かってくれ」

 

「分かりました」

 

「ま、待ってください!」

 

それに異議を申し立てたのは響だった。

 

「私も椿君達と一緒に戦います!」

 

「なに?」

 

「響、何を言って……」

 

「ノイズが来るんですよね!?」

 

「そうだが、君はまだ訓練も何も――」

 

「そうだ響! お前は訓練をしっかりしてから実戦に……」

 

「私の〝力〟が、〝誰かの助け〟になるんですよねッ!?」

 

椿の発言を遮って弦十郎と椿に聞く響。

その顔は鬼気迫るようだった。

 

「シンフォギアの力でないと―――ノイズとは戦えないんですよね!?」

 

「確かに、そうだが……」

 

響本人にそのつもりはないのだが、こちらからも返しを遮り、半ば一方的に響は弦十郎と椿に言葉をぶつけてくる。

 

「私だって、椿君と翼さんみたいに誰かを助けたいんです! だから行きます!」

 

響はそう言って真っすぐ弦十郎を見る。その様子はまるで、何かに急かされている様に見えた。

そして弦十郎からの返答を待たずにそのまま走って行ってしまった。

 

「……危険を承知で誰かの為になんて、あの子、いい子ですね」

 

藤尭が、戦場に向かっていった響をそう評するが………椿と弦十郎は違和感を覚えずにはいられなかった。

確かに響は、誰かの為に自分の身を顧みず危険に飛び込む勇敢な子に見えなくはない。

響は人一倍強い優しさと善意の持ち主………度々口にする〝私、呪われてるかも〟とぼやくことはあっても、他人を故意に攻めたり、貶めたりなんてことは、椿と知り合って以来一度もない。

 

「……違う」

 

「え?」

 

拳を握りしめる椿は藤尭の発言に、震える声色で否定の意を示していた。

勇気と無謀は似て非なる、なんて話を聞くが椿もそうだと考えている。

 

「俺も椿君と同じ意見だ」

 

そこへ、弦十郎が椿の言葉に同調を示してきた。

 

「あの子は翼のように幼い頃から鍛錬を積んできたわけでもなく、椿君のように死んでからとは言え〝修羅場〟を潜ってきたわけでもない………ついこの間まで〝日常〟に身を置いていた少女が――誰かの為になると言うだけで、命を賭けねばならない戦いに赴けると言うのは……【歪なこと】ではないだろうか?」

 

〝誰かの為〟響本人も口にしていた言葉を、弦十郎が口にした瞬間、椿の脳裏に色々な事を思い出した。

 

【人助けと言ってよ……人助けは私の趣味なんだから】

 

【私は、食べることと人助け以外には何の取柄もないダメな子だから】

 

【だからさ、少しでも、みんなの役に立ちたいんだ】

 

椿の記憶から再生される………響の人となりを表した彼女の言葉の数々。

 

浮かび上がる、一つの確信。

立花響と言う少女は―――時に自分の命を軽視してしまうまでに、〝人助け〟と言う呪縛に、捕われていると。

それを言うなら、椿も〝常人〟逸脱している。

 

「椿君、これを」

 

弦十郎は椿に、似た掌に収まる小さな機具を渡してきた。

 

「通信機ですか?」

 

「そうだ、二課保有のシンフォギアには通信機能が常備されているが、君は仮面ライダーだ。通信機なんて無いだろう? これで本部と他の装者とリアルタイムに連絡が取りあえる」

 

「ありがとうございます!! それじゃあ、行ってきます」

 

椿はそう言って響達の後を追いかけて指令室を飛び出して戦場に向かって行った。

 

 

「…………」

 

ノイズが街を徘徊している中、一人の男がそれを建物の上から見下ろしていた。

その手には……椿が持っているのと同じ、一つの眼魂を持って。

 

「……行くか」

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

椿達より先に現場に到着した翼は天羽々斬でノイズを切り裂いていく。

その太刀筋はいつもの翼とは違く、荒々しい物だった。

ノイズ達が出現して市街地からぎりぎり外の道路上に移動した所で翼が戦っていた。周囲には建物という建物は無い。だがノイズは前回の戦闘程で無いにしろかなりの数だ。そんな中、翼が刀で流れるような動きで胸の歌を歌いながらノイズ達を斬り捨てていく。

そんな翼の背後から大型ノイズが襲い掛かる。

 

「翼さん!」

 

ようやく追いついた響は翼の背中に迫る大型ノイズに目がけて飛び掛かった。翼は既に背後からノイズが迫って来ている事を織り込み済みだったのだが、響の行動が結果的には翼の邪魔になってしまった。

響の勢いの乗った飛び蹴りが大型ノイズの側面に炸裂し、大型ノイズが大きくよろけ翼から離れる。

 

「やった!!」

 

翼の助けになれたと、響は喜びの表情を現わした。

そんな響を眼中に入れずに翼はそのまま天羽々斬を変形させ、大剣形態に変形させて刀身にエネルギーをため込む。

エネルギーが溜め込まれ青い閃光となった斬撃が大型に引導を渡す!!

 

―――――蒼ノ一閃―――――

 

蒼ノ一閃を受けた大型ノイズは体を真っ二つにされそのまま爆発した。

それを見届けるとすぐに翼は辺りに居る小型ノイズの殲滅に移る。

ノイズの集団に突撃し、逆さになり足の部分の刀で一気に狩り尽す。

 

――――逆羅刹――――

 

その剣技の舞でノイズ達を一網打尽にしてみせた翼。

戦闘が終わったと安心したのか響は翼に近づいて話かける。

 

「翼さん! 今は私足手纏いかもしれませんが一生懸命頑張ります。だから―――私と一緒に戦って下さい!」

 

「そうね―――貴女と私、戦いましょうか」

 

響の申し出に翼は天羽々斬を向けることで答えた。

 

 

その様子は特殊災害対策機動部2課にも届いていた。

指令室にいる殆どの人間が翼の行動に唖然としてしまっている。

そんな中、一人の男が溜息をつきながら出て行こうとする。

 

「司令、どちらへ?」

 

「俺たちは〝同士討ち〟をさせる為に、シンフォギアをあの子たちに託したわけじゃない! それに、頭に血が上った翼を誰かが止めてやらなきゃいかんだろうよ」

 

そう言って弦十郎はエレベーターに乗って消えた。

 

「ふぅ……全く。貴方も人の事言えないと思うんだけど」

 

了子は出て行った弦十郎を思い、そう口にした。

しかし、そう恰好付けて見たは良い物の現場では更なる展開が待ち受けていた。

 

 

「って、あのバカ! 何をしようとしてるんだ!!」

 

翼たちから離れた所にいたノイズの殲滅を終えたゴーストは翼の突然の行動に悪態をついた。

まずい、このままでは響が翼に斬られてしまう。

 

「つ、翼さん?」

 

「どうしたの? 早く構えなさい」

 

「い、いや。わ、私は翼さんと一緒に戦いたいだけで―――」

 

「――私は立花響を受け入れられない………ましてや力を合わせて戦うことなど、風鳴翼が許せる筈がない!」

 

「どうしても〝一緒に〟戦いたければ立花響、アームドギア――貴方の戦う意志を私に見せるがいいッ!」

 

「あ、アームドギア?」

 

「それは〝常在戦場の意志の体現〟、何物をも貫き通す無双の槍――ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば………胸の歌を、覚悟を構えてご覧なさい!」

 

「そ……そんなこと言われても……私、アームドギアが何なのか分かりません……」

 

響も翼のその態度に段々と小さくなっていく。

その表情には戸惑いと焦りが見えていた。

 

「分からないのに、いきなり覚悟とか、構えろとか言われても………全然分かりませんよ!」

 

響のこの発言はある意味正論だっただろう……しかし、この現況において、響の正論な反論は、風鳴翼の〝逆鱗〟に触れてしまった。

翼は構えを解き、天羽々斬を下ろして響に背を向けて歩き出した。

しかしその背中からは戦意も敵意も失せず衰えないどろか、さらに膨れ上がっていた――

 

「覚悟を持たず……のこのこと遊び半分に戦場の渦中へ出てくる貴方は……」

 

翼の言葉は、半分は言いがかりであり、されどもう半分は事実でもある。

さすがに響も、遊び半分な軽い気持ちで戦場には来ていない。

が、やはり弦十郎達の見立て通り、彼女にある種の呪縛として存在している〝人助けしたい〟衝動に駆られ過ぎた余り、戦場の過酷さ凄惨さを認識、想像できぬまま、覚悟も伴なえず入り込んでしまったのも否めなかった。

 

「奏の……奏の何を受け継いでいると言うのッ!!」

 

「不味いッ!! あいつ、頭に血が上りすぎだ!!」

 

響に今にも斬りかかりそうな翼の表情を見て駆け出そうとするゴースト。

そんなゴーストの懐から一つの眼魂が飛び出してくる

 

「に、ニュートン!?」

 

『彼女達を止める為に私も力を貸そう!!』

 

「あぁ! ありがとう!」

 

ゴーストは眼魂の横の起動スイッチを押し『04』と書かれた待機状態へ移行させるとそのままゴーストドライバーにセットしてカバーを閉じる。

 

【アーイ!】 【バッチリミナー!バッチリミナー!】

 

待機音声と共に今度は青いパーカーがゴーストアイコンから飛び出して来た。

そしてゴーストはゴーストドライバーのレバーをそのまま押し込む

 

【カイガン! ニュートン! リンゴが落下!引き寄せまっか!】

 

青いパーカーがそのままゴーストに覆いかぶさると両手に球状のリパルショングローブとアトラクショングローブをはめ、他の形態より厚手などどこかボクサーを思わせる外見へと変化した。

 

これが仮面ライダーゴースト ニュートン魂

 

そのままゴーストは左手を響に向ける。

すると響の身体がゴーストに引き寄せられるように跳んでくる。

 

「うぇえ!? な、なにこれ~!!」

 

「少し手荒になったが、無事みたいだな!」

 

「邪魔をするな!!」

 

響を斬り損ねて気が立っているのか翼の怒号が飛んできた。

そんな翼に対してゴーストも叫ぶ。

 

「翼ァ!! お前、やって良い事と悪い事の区別もつかなくなったか!?」

 

「その子の覚悟を見定める為よ!! 邪魔をするな!」

 

「何が覚悟を見る為だ! お前がやっていることはただの【八つ当たり】だ!」

 

「ッ!!」

 

ゴーストの発言にさらに怒ったように顔をしかめる翼。

しかし、その手に有る天羽々斬は少し刀先が震え始めていた。

 

「お前が使っている力は! ノイズから人を守る物じゃ無かったのか!? 壮絶な喧嘩に使おうとしてんじゃねぇ!!」

 

「……い」

 

「響に戦場の過酷さ、戦う事によって背負う事になる十字架の重さを教えるんだったら他にも方法は有るだろう!!」

 

「……さい」

 

「少し見ない間に、お前に何が有ったんだ!!」

 

「……るさい」

 

「こんなことが、こんな事が防人のやる事か!?」

 

「うるさい!!」

 

ゴーストの問いかけにも答えず翼は再び天羽々斬を大剣形態に変えその刀身に再び青いエネルギーを溜めて放つ

 

――――蒼ノ一閃――――

 

その攻撃に眼をむきながらゴーストは右手を突き出し、斥力の力でずらして避ける。

 

「響ッ! 逃げろ! あいつは本気だ!!」

 

「で、でもッ!!」

 

「よそ見をするなぁ!!」

 

「っく!!」

 

自分に都合の悪い事を叫ぶゴーストを黙らせることにしたのか翼は響からゴーストに標的を変えていた。

そんな翼の攻撃を防ぎながらゴーストは考える。

 

(どうやってこの翼を止める!?)

 

ゴーストは翼からの鋭い斬撃をギリギリで何とか躱す。

ニュートン魂はあんまり接近戦などが得意ではない。

しかし、そんな状態でも何とか食らいつこうとしていた。

 

「落着け翼! これ以上やったら被害が出るぞ!!」

 

ゴーストは翼の一瞬の隙を見つけて右手の斥力の力で飛ばす。

しかし、その攻撃を利用して翼は天に上ると天羽々斬を巨大化させ、足のブレードを展開しそこからエネルギーを発し、推進器となる

 

――――天ノ逆鱗――――

 

その攻撃を見てこれを直撃させたら不味いと直感で悟ったゴーストはゴーストドライバーのレバーを引いて押し込んだ

 

【ダイカイガン! ニュートン! オメガドライブ!】

 

右手の斥力の力を最大まで増幅し、そのまま右手を突き出そうとした瞬間、

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「うぇ!? げ、弦十郎さん!?」

 

翼とゴーストの間に入った弦十郎に邪魔された。

弦十郎は息を吸い込むとそのまま地面を踏み抜き、拳を天ノ逆鱗に叩き込む。

その衝撃で起きた突風に煽られて響が飛ばされた。

拳で受けた衝撃を受け流すかのように地面から“離していない”足で踏み抜くと、人間では壊すのがほぼ不可能なアスファルトをいとも簡単にひび割り、抉り、吹き飛ばす。

さらには埋まっていた水道管を破裂させ、間欠泉の如く溢れ出る

翼はその衝撃に吹っ飛び受身も取れぬまま地面に落ちる

 

「いって~~」

 

天ノ逆鱗を殴った拳を撫でながらそう呟く弦十郎。

しかし、あんまり痛そうには見えない。

翼のシンフォギアはすでに解除され、元の制服に戻っている

 

「あーあ、こんなにしちまって。何やってんだお前達は」

 

「……すいません」

 

「こんなにしちまって……この靴、お気に入りだったのに」

 

呆れるような口調の弦十郎に頭を下げるゴースト。

そしてニュートン魂を取り出して変身を解除する。

しかし、この場で戦闘をしていたのは自分達だが、ここまでやったのは弦十郎の特殊な武術のせいだ

破裂しぶらさがっているような革靴で弦十郎は翼に歩み寄る

 

「らしくないな、翼。ロクに狙いもつけずにぶっ放したのか、それとも―――」

 

そこではたと気付く

 

「お前、泣いている―――」

 

「泣いてなどいません!!」

 

弦十郎の言葉を否定するように大声で、俯きながら答える。

その姿は、まるで自分に言い聞かせるようだった。

 

「涙なんて、流していません……! 私は、風鳴翼はその身を剣と鍛えた戦士です。だから……!」

 

見ていられなかった。それがその場にいた全員の感想だった。

椿は立ち上がり、声をかけようとするが何を言ったら良いのか慎重に言葉を選ぼうとし、弦十郎はそれ以上何も言わず翼を抱き上げようとして、響は必死に自分の思いを告げる。

 

「あのっ……私、自分が全然駄目駄目なのはわかっています。だから、これから一生懸命頑張って―――頑張って、“奏さんの代わりになってみせます”!」

 

しかし、それは今の翼にとっては言ってはならない禁句だった。

響にとっては慰めのつもりだったかもしれない。

だが響は宣言した。宣言してしまった。

流石の椿もぎょっとする。そして、その言葉を、宣言を受けた翼は

 

「―――ッ!」

 

全ての想いが止まれなかった

怒り、悲しみ、何もかもを動員させ、最後の力で左手を振るった

 

「二度と……二度と! 奏の代わりになるなんて言わないで!!」

 

それだけ言って翼はその場を離れた。

しかし、椿は見た。そう言った翼の目から涙が流れていたのを。

響は何故叩かれたのか理解できていないようで、叩かれた頬を押さえ呆然としていた

 

「……まあ、当然の結果なんだけどさ……」

 

響の横に並び立つ。

自分も分かっていた筈だった。

なぜ翼があんな行動に出たのかを、しかしそれでも間違っていると思って翼を止めた。

 

「誰も誰かの代わりになんて、なれやしない。ましてや俺や翼にとって奏はとても大切な存在だった。感情を捨てたって言ってるはずの翼が響を叩くのも無理ない」

 

「……私は……どうしたら……翼さん、泣いてた……」

 

「うん、泣いてた」

 

どうしたらいいかなんて、正直な所、椿も知りたかった

眼魂を使って……生き返らせたい。でも、それをして全員が納得するのか?

翼の為になるのか? そう言った疑問が今更浮かび上がってきた。

 

「……本当に、ままならないな」

 

さっきまでの翼を見てしまえば、その思いはさらに強くなる。

しかし、さっきの行動で椿は響に感謝していた。

再会してからあんまり感情を表に出さなかった翼。

その翼から……結果的に負の感情だったが、それでも“今の”翼から感情を引き出したのだ

 

「―――さぁ、俺達ももう帰ろうか」

 

「……ありがとうございます……」

 

弦十郎がそう言って響も歩き出そうとしたその時、

 

ズガガガッ!!

 

弦十郎達の足元で火花が散った。

それを受けて弦十郎は響を抱き守る。

椿も攻撃が来た方を見る。

 

「……眼魂を寄こせ」

 

そこに居たのはゴーストとは色違いの青い仮面ライダーだった。




【次回予告】

「お前は何者だ!」

「仮面ライダースペクター!! お前の眼魂は全て頂く!!」

「これが、眼魔かッ!!」

「なんだこの人間! 滅茶苦茶強い!!」

「……奏、俺はお前を」

【カイガン! サンゾウ! サル、ブタ、カッパ! 天竺を突破!】
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