雷光御伽草子   作:ふくつのこころ

4 / 10
巌窟王ピックアップは大勝利でしたね、極大成功からの単発引きで見事に来ました
まわりはQP半減なので、毎日周回しているようですが、一刻も早く再臨を終えたい私にはどこ吹く風。
速く再臨させたいよ、巌窟王!

ちなみにですが、この小説を書いているくせにゴールデンは騎兵、イバラギンはかろうじて持っているってくらいです。
開始初期からやってきて、星五もようやく六体。
これからも、頑張っていこう……



都の武士

 数日後、カヅチは一日中を外で過ごすようにと姉に言われた。いつもは姉に夕方の日が落ちる前には帰ってくるように言われているのだが、そうやって言われるのは珍しかった。

 金太郎と一日中、遊んで回れることは嬉しい。なんせ、二人はぎきょうだいのちかいを結んだのである。

 大人から見れば遊びでしかない行為だけれど、それでも、二人にとっては重要な意味を持っていた。

 

『カッコよくあること』

『よわいものはまもること』

 

 決めた規則はこの二つだけ。

 おんなこどもをきずつけるやつはぜったいにゆるさない、というのが彼らの弁で後日から悪い奴はいないかと山の中を巡るようになっていた。

 

「……今日の姉上、珍しかったな」

 

 カヅチは家を出発する前の姉の様子を思い出していた。珍しく取り繕った笑みを浮かべ、集落の人々の寄り合いに参加するらしい。何があったのかと聞いてみれば、

『大丈夫ですよ、カヅチが心配することじゃありませんから』

と、一点張り。

 

 いつもは分からないことがあれば、首を傾げる弟に対して分かりやすく諭すように説明をしてくれる姉が教えてくれないとはよほどのことなのだろう。

 待ち合わせ場所の大きな木の下、木の葉の合間合間から日光が差し込んでいる。

 今日は、金太郎とカヅチが仲良くなった熊を含め、山で最強を決めるための相撲を取る予定である。

 もちろん、これは大人たちには秘密だ。過保護な姉や集落の人々に知られれば、やめさせられること間違いなしだろう。熊と関わるのは、それも大きな熊と遊ぶのは危険だと。

 

 けれど、金太郎とカヅチは山の動物たちとはともだちだと思っている。

 彼らと喧嘩をすることはあれど、襲われることは決してないと心から信じているのだ。

 

 一日遊べば、もう明日はともだち。

 

 それが金太郎の性格であり、カヅチが強く影響を受けた生き方だった。日差しのもと、金太郎を待っていると見慣れぬ人物がやってきた。

 

「よう、坊主。何やってんだ?てか、此処に住んでんのか?」

「そうだ、ともだちを待っている」

「へえ、元気があっていいじゃねえか。……見慣れねえ格好だな?」

 

 その人物の服装は、都の“武士”とでも言うところか。

 鎧を纏い、刀を差した武士は少年たちの憧れと言ってもよいカッコよさがあり、思わずカヅチも見惚れてしまった。

 自信満々に答えたカヅチを武士は口端を吊り上げて笑い、それから、白装束に都では見ない刀剣の形に目を細めた。

 

 そんな武士の視線にも臆さず、ぎゅっ、と奥歯を噛みしめてカヅチは武士を見つめている。

 カヅチの様子に武士は気づいたのか、人のよさそうな快活な笑みを浮かべ、しゃがんでカヅチと視線を合わせ、頭をくしゃくしゃに撫でた。

 

「悪い悪い、怖がらせちまったか?」

「こ、怖くなんかない!なんせ、僕は長男だから……!」

「おーおー、男児たる者、強くなくっちゃあな?良い心がけだ、坊主」

 

 目の前の少年を怖がらせたのは、確かだったらしい。しかし、強がってみせる様子は好感が持てる。

 まだ幼いだろうに、大人に睨まれてもなお、涙を流さなかった意志の強さ。それは素直に評価を送ってやってもいいだろう、と思えた。

 だが胸に芽生えた疑問を晴らすことは先決だと思い、武士は少年に尋ねることとした。

 

「なぁ、坊主」

「ん、どうかした?おじさん」

 

 おじさん、と言われて武士は内心、肩を落とした。

 確かに自分はこの少年から見れば、年を取っているかもしれない。しかし、それでも、おじさんと言われるには年齢は食っていないつもりだったが、こうも真っすぐと言われると辛いものがある。

 

「坊主、家族はいるか?」

「?姉上ならいる、それに父上と母上がいなくても僕は寂しくない。姉上がいるし、集落のみんなは良くしてくれるし」

「そうか……、なぁ、坊主。アマメって名前に心当たりはないか?」

「アマメ?」

 

 聞きなれない名前だった。

 そうだ、と言った後、武士はアマメと木の板に石の欠片で刻もうとしたが、すぐに消した。

名前に聞き覚えがなさそうなのもあるが、山に住んでいる少年が文字を読めるのかどうかも怪しいと考えたからだ。

 

「ああ、俺は渡辺綱という」

「僕はカヅチ、カヅチって言うんだ。アマメ……」

 

 その武士――渡辺綱は笑いながら、カヅチの肩に手を置き、名前を名乗った。

 カヅチが綱の後に続いて名前を名乗ると、何かを思い出すような素振りを見せていたので、カヅチがしばらく綱を見ていると、悪い悪い、と綱は笑って謝罪した。

 

「聞いたことはないか?カヅチ。そうだ、お前の姉ちゃんの名前を教えてくれないか?」

「僕の姉上の名前?」

 

 改めてみてみると、世間での経験の疎いカヅチであっても、綱の容姿は整っている。

 長い髪を後頭部で一つに結わえ、髪紐で留めている。

 端正な顔立ちで、里では見たことのない容姿端麗ぶりだ。

 

「えっと……、」

「綱で構わねえよ、堅苦しいのは合わねえんでな?ま、何を考えてるのかわからねえ卜部には煩く言われてるんだがな。……おっと、すまねえ。で、どうなんだ?カヅチ」

 

 綱への呼び方に迷っているカヅチ、そんなカヅチの肩をぽんぽんと綱は叩いた。

 力はそれほど綱は入れているつもりはないんだろうが、思った以上に力が入っていたようで、

 

「うーん、綱兄には悪いんだけど……」

「綱兄とは俺のことか?こいつは恥ずかしい呼び名をつけられたもんだ!で、お前の姉ちゃんの名前はなんだ?」

 

 悩むカヅチに綱兄、と呼ばれたことが気恥ずかしかったのか、大きな声を上げて笑った。

 綱はカヅチに目を合わせている、見上げることの多かったカヅチにとって、姉と金太郎以外に自分と目を合わせて話してくれた相手は綱くらいではないだろうか?

 

「姉上の名前、分からない」

「は?おいおい、それはねえだろ?家族だろうに?」

 

 姉の名前が分からない、と首を振るカヅチに思わず綱は大きな声を出してしまった。

 少し怯えた様子を見せたカヅチにすまん、と一言を入れた後、綱はカヅチの言葉を待つ。

 

「僕、姉上に拾われるまでの記憶がないんだ。姉上には赤ん坊の時に拾われてから一緒に生活してるみたいで。だから、血がつながってない」

「それに、姉さんのことは呼び捨てにしないものだろ?」

「……っ!?」

 

 思った以上にカヅチとその姉の兄弟の事情は複雑な物であったらしい。

 人の良い渡辺綱はそれ以上、掘り下げることができず、カヅチを抱きしめた。

 

「わ、わ、綱兄……?」

「辛かったろうな……、今は幸せか?」

「え、うん、僕は幸せだよ。金太郎もいるしね」

 

 熱い抱擁の後、一度離されれば、カヅチは満面の笑みを浮かべて返した。

 金太郎の名前が出た時、またここでも綱は驚いたような表情を見せたが、カヅチが不思議そうに見ていると、「気にするな」と制した。

 

「おーい、カヅチー!」

「あ、金太郎!遅いぞ!」

「友達か?」

「うん、あの呼んでる元気なのが僕の友達だ。綱兄も遊ばない?僕らと」

 

 遠くから轟くような声で叫んでいる、別の少年――金太郎の声が聞こえると、カヅチは笑って大声で返す。手に持った大きめの枝を振り、合図を返したようにも見えた。

 

「いや、俺にも仕事があるからな。また会ったら、その時は一緒に遊ぼう。良い子にしているんだぞ?」

 

 と、綱は再度、しゃがんでカヅチを抱きしめた。

 特にこれと言って意識はしていなかったが、綱からは甘い良い匂いがしたようにカヅチには感じた。

 例えるなら、大好きな姉と同じような、良い匂いを感じ取ったのである。

 

「う、うん……」

「じゃあな、カヅチ。よく食べ、よく寝て、よく遊んで、よく姉ちゃんの言うことを聞くんだぞ?元気でな」

 

 親友と武士が入れ替わりになり、カヅチは綱の姿が見えなくなるまで手を振った

 

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