剣豪のあの二人が最高でしたが、全くガチャ出来ません。
雷光御伽草子を書いたら、ゴールデンが来た様に、これをかいて、あの二人が来るといいけど
あれから、長い都への旅を終えて頼光一行は都に到着した。
その日は案内された邸宅での食事の後に風呂に入り、それからすぐに倒れるようにカヅチと金太郎は眠ってしまった。
翌朝、頼光と共に仕える主人のために働くべく、将来へと向けて二人の稽古がはじまった。
まずはどのような武器に向いているのかを試す為、という名目で頼光四天王とそれぞれが武器を使った稽古を行う。
最終的にその後は、どういった武器を使うことになるのかは決めるのだが、最低限、刀は使える必要があると頼光は語り、基礎的な読み書きの他にそれも含まれるようになった。
カヅチは祭祀用の古い剣にしか見えない武器に拘っていたが、まつろわぬ民――鬼の一種ではないかと疑念の生まれやすいものであったため、その使用については厳しく使わぬようと念押しをされてしまった。
四天王が遠近距離とそれぞれ特化した武器を使う中、そういった武器全てを完全に使いこなせる頼光に対し、二人の男児は目を輝かせた。
心なしか、他の同僚たちに比べて彼ら二人に関わることが多く、兄貴分として振舞っていた綱には頼光の目の輝きようが二人に似ていたように見えたのは秘密。
虎の尾を踏まなければ、何も起こることはないのだ。なので、下手に危険な道を渡る必要はない。
「綱のあにき!」
「おう、どうした?金太郎」
都での暮らしにも慣れてきた頃、どたどたと使用人に「走られませぬよう」と注意されつつも、軽く謝り、それでも走ってきた金太郎に書物に目を通していた綱は顔を上げた。
都でも金太郎しかいないほどの金糸の髪のおかっぱ頭、鮮やかな青色の輝ける瞳は何かを探している様子。
ほとんど一緒にいる真面目で硬い彼の幼馴染とも言える少年がいないとなると、この金太郎の探している相手と言うのは、おそらくカヅチであろう。
これまでに見た中でこの広い邸宅の中、木の棒片手に綱の部屋に入り込んでくる者は金太郎しかいないだろう。
綱が気を許しているのもあるが、この金太郎と言う少年、その気概のよさに綱が気に入ったのもあった。
他の二人の同僚や頼光が許さずとも、俺の部屋に入るときは遠慮はあまりしなくともいいと言ったことがきっかけであった。
実際、カヅチと金太郎はよく部屋に来る。
「カヅチしらない?」
「だろうと思った。来てねえよ、あいつのことだ。真面目に書物でも読んでんじゃねえか?お前もたまには書物読めよ。大将はお前の稽古に対する姿勢は評価してるが、書物をあまり読まないと悩んでんぞ?」
いそいそと自分の傍にやってきた金太郎に対し、わしゃわしゃとくしゃくしゃに髪がなるまでに綱がなでてやると、くすぐったそうに金太郎は目を細める。
金太郎はその真っ直ぐな性格から術式を詠唱したりするのがじれったいと匙を投げるし、カヅチはまるで何かの呪いに掛かっているかのように最低限のことしかできないのだ。
それ以外では得意不得意が上手く別れており、互いの短所を長所で補えるようなよさがある。
稽古を綱がつけてやったこともあるが、金太郎曰く、薪割りに使う鉞を持っているほうが妙にしっくり来るのだという。
実地訓練にと頼光やその部下の誰か一人について下級の人外化生の類の討伐に出かけたとき、金太郎にやらせてみると、確かに鉞を持っての活躍は多かった。
さらに、頼光のように雷属性の魔力放出を可能としたのは偶然か必然か。カヅチも同様に雷属性の魔力放出を得意としており、他の部下たちはこれがどういうことを意味しているのかと悩んだ。
「うーん、そうかなあ?おれ、からだうごかすほうがあってるし」
「男はそれでいいが、最低限読めるほうが良いぞ?なんたって暇つぶしになるからな」
「ふうん?ひまつぶしっていってもなあ……、とりとかとはなせばいいし」
「それはお前にしか出来ねえよ」
こつ、と金太郎の額に綱は拳を当てる。
長い間、生まれてからほとんどを山で過ごしていたこともあったからか、金太郎は動物会話の能力を得ていた。
この異能染みた力は異端として大将は見やしないか、と不安に感じていた綱だったが、頼光的には問題がなかったようで、
「もっと母に早く教えてくれても良かったんですよ?」
と、ご満悦であった。
以前からカヅチに金太郎は動物と話せていたのかと問えば、肯定の動作で返ってきた。
そういうものは、山に生まれた以上、持っていても不思議ではないというのが頼光の認識であったらしい。
妖怪変化退治の専門家、平安の神秘殺しの異名を誇る源氏の彼女は外道の術だとかその辺の類のものでなければ、認める方向であるらしい。
「じゃあな、綱のあにき!行ってくる!」
「飯までに帰って来いよ」
また勢いよく裸足で庭に下りて行った弟分の背中を見送り、言葉を投げかける。
頼光をはじめとする者が暮らす、この邸宅において食事の時間は頼光自身が自ら飯を振舞う。
地位あるものがそうした炊事を使用人にさせないとは、と不思議に思っていたこともあったが、本人たっての希望であるという。
一度、その夕餉の時間に遅れた綱は頼光が泣き出してしまい、同僚たちにひややかな視線を送られてしまった。
同僚に比べ、新参者であった綱はその暗黙の了解である規則を知らなかったのもあるのだが。
“食事は共に必ず摂ること”
それは、即座に弟分たちに綱が教えた源一行の鉄の掟であった。守らなければ、どういうことが起きるのかとまではいわなかったものの、とりあえず、大変なことが起きるのだと主張。
彼らがつばを飲むのを見て、ちょっとやりすぎた気のした綱であった。あとで、綱兄貴に吹き込まれたと大将に言いつけられなければいいのだが、気のいい彼らのことだから大丈夫だろうと思うことにした。
さて、一方の金太郎。
都にやってきて、源氏の妖異退治の専門家たる頼光の下で戦うべく、稽古をこれから受けると知って気分が高揚した。
綱以外の頼光の部下たちの名前はまだ覚え切れてはいないものの、その中でやけに冷静な男によると、これは名誉ある仕事であるという。
よく分からなかったが、すごいことなのかと聞いてみたところ、「弱き者を俺達で守るのさ」と兄貴分に言われたのであれば、仕方がない。
意気揚々と稽古に取り組み、カヅチと二人で復習がてらにしたりもした。ちょっと嫌そうな顔をカヅチがしていたように見えたが、カヅチの練習に付き合うから、と言えば、カヅチはようやく頷いてくれた。
木の棒を持って走り回ってはいるものの、金太郎はカヅチとした約束を忘れたわけではない。
今日はカヅチとの約束の日、苦手な座学の成果を少しでも出す為に、と座学の時間である。
簡単な算術から、読み書きと教わってはいるものの、どうも性にあわんと感じていた金太郎だったが、こういうことには非常に真面目なカヅチに押されるようにして臨んでいた。
「おい、カヅチやーい!」
「しずかにしておけよ。おこられるだろ。……よく覚えてたな」
「まあ、やくそくだしな。やくそくはまもらなきゃ、だろ?」
都に来てカヅチのボサボサの黒髪はすぐに綺麗に整えられ、一つに結わえた。
手入れは大変だろうと思い、切ろうと思ったが、「私が手入れしたいので、そのままで」という頼光に任せることにした。
そのときの頼光の顔は、どことなく、喪った姉のアマメにそっくりだったから、見惚れてしまったのもあるが。
子供用のそこそこ仕立てのよく、動きやすい着物ではあるものの、独特なデザインなのは頼光なりの気遣いだろう。
金太郎とカヅチの寝泊りする部屋に戻ってきた頃、カヅチは机に向かって何かをしていた。
覗きこんでみると、座学の時間の板書を振り返っていたようだった。こんなこと倣ったっけ、と思っていると顔に出てしまったようで、
「それをいまからやるんだ。つぎのじかんにふりかえりがあるからな、それにむけてやるぞ」
「でも、おれ、さっぱりわかんねえよ?」
「おまえがぼくのけいこにつきあってくれたように、ぼくもつきあうよ。とことん、あたまにたたきこんでやるからな」
席に着くと、真面目にずいっと身を乗り出すカヅチを見、長い時間が始まりそうだと感じた金太郎であった。