嫌いな人は名誉を捨ててまで抹殺しますが、仲間は大切にする所存です   作:タクティス・ハルバード=レミィ

18 / 33
クエストマイナスワンあふたの既視感

 あふたさんには知り合いが居ました。

 

 金色の鎧を纏った人で、あふたの僕にはその人しかいなかった。

 

 城下町で、気さくに話せる仲で嬉しかった。僕の最高の記憶。

 

 でも、夕日を背にマンドラジュースを飲みながらベンチで話している時か一番印象に残ってる。

 

 ちなみにマスクは付けてないから。

 

『僕のダーイン弱いよお……なんで?』

 

「武器の特性を理解してないから」

 

「どゆいみ?」

 

 今もだけどあの時からダーインを愛用していた、究極の。

 

「そうだな……武器だって意思はある。耳を貸せばいずれは答えるんだよ」

 

「そんなことなかったよおお」

 

「だから弱いんだよ、カス」

 

「ひどくね?」

 

 騎士はヤレヤレと缶を持っていない手で人差し指を立てると『ちっちっ』と言いながら指を左右に振る。

 

 にーっと笑顔とした笑顔が反射する夕日で白い歯まで魅せる。

 

『私のダイトは、応えてくれるよ。消えるまで』

 

「本当に?」

 

「嘘は言わない主義、それじゃ、次のクエストの時間だから……」

 

「うん……また話してくれよお!」

 

「帰ってこれたらな。またな、あふカス」

 

 そう言うと、僕に飲み終えたマンドラジュースの缶を渡す。

 

「え、僕が捨てるの?」

 

「もちろん。良いでしょう?」

 

「良いけど……なんだこの気持ち」

 

 彼女は、振り向かずに門を歩く。

 

 だるそうに、左手で右肩を叩きながら。

 

 少なくとも、僕はここで恋をしてしまったのかもしれない。

 

 遠い存在に恋、変な意味じゃない。

 

 全く、毎回高難易度をクリアしてヘラヘラしてる女性に恋するなんて、僕は…………バカを通り越して保身的かも。

 

 after10、それでいいのか? もちろんダメだ。

 

 

 

 

 

 それからして、久々に朝日を拝んで居ると彼女に声をかけられた。

 

『あふカス、元気にしてたか?』

 

「してたけど……前みたいに『さん』つけてください、会えるなんて早起きは三文の得だわ」

 

「えー、うーん」

 

 彼女は口をモゴモゴさせてこんな事を言ってきた。

 

『は? カスに態度とかいるんか?』

 

「……僕は、カスだけど、カスだけど……カスじゃない!!」

 

「それ矛盾してる」

 

 無意識に右手からダーインスレイヴが紫色の炎を燃え上がらせて、姿を現す。

 

「お? 私とやるって?」

 

「そ、そんなんじゃない」

 

――友達は失いたくない、失うくらいなら自分が負ける。ボッチは嫌なんだ。

 

「いいねいいね、この感じ。私も」

 

『オルタ・ブレイド』

 

 風を握りしめ、下に振ると黒と白で彩られた剣が姿を現した。

 

「究極ダーインがそんな究極のゴミに負けるわけにわあああ!!」

 

『全力で来な、本気出さないから』

 

 接近して振り下ろしたダーインは、感触もなく地面を掘る。

 

「先制で当たらないいい!?」

 

 どうやら、見切られていたらしい。僕の隣に金色の鎧が見える。

 

「全力出したらあふたさん死んじゃうから」

 

「殺してやるううう」

 

 突き飛ばすように肩を押し当てると、彼女は『カチャカチャ』と鎧を揺らし、大きくよろける。

 

 すかさず、腹を突き刺すようにダーインをねじ込む!

 

「デットリー! インフェ」

 

『ダメ、だからカスなんだよ』

 

「ふえええ!?」

 

 言い切る前に彼女はダーインスレイヴを蹴りあげる。

 

 高速で縦に回転しながら宙を舞った。

 

『周りに何がいると思う?』

 

 人だ。沢山の人、人気者に喧嘩を売ったみたいな感じで人が集まっているよ。

 

「まぁ、人だって言わなくてもわかる」

 

「ダーインは広範囲攻撃だ。こんな所でぶっぱなせば反動で地面は抉れ一般人は吹き飛ぶ。その時の責任と損害を負える?」

 

「ぐうう……」

 

 責任と損害なんて負えるわけない。

 

 ダーインは代弁するように地面に突き刺さった。

 

『周りを見るんだ、見ないからあふたはあふカスのままなんだよ』

 

「すいませええん」

 

「それをやめた時、さん付けもせずにあふたって呼んであげる」

 

 そんな事を言いながら『またね』と、僕に背を見せクエストボードの貼り紙をちぎった。

 

「約束だよ……」

 

――その約束が果たされることもなく、彼女は2度と僕の前に姿を表さなかった。いや、表していたらしいが見かけなくなった。

 

 嫌われたんだなあの時。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。