嫌いな人は名誉を捨ててまで抹殺しますが、仲間は大切にする所存です 作:タクティス・ハルバード=レミィ
あふたさんには知り合いが居ました。
金色の鎧を纏った人で、あふたの僕にはその人しかいなかった。
城下町で、気さくに話せる仲で嬉しかった。僕の最高の記憶。
でも、夕日を背にマンドラジュースを飲みながらベンチで話している時か一番印象に残ってる。
ちなみにマスクは付けてないから。
『僕のダーイン弱いよお……なんで?』
「武器の特性を理解してないから」
「どゆいみ?」
今もだけどあの時からダーインを愛用していた、究極の。
「そうだな……武器だって意思はある。耳を貸せばいずれは答えるんだよ」
「そんなことなかったよおお」
「だから弱いんだよ、カス」
「ひどくね?」
騎士はヤレヤレと缶を持っていない手で人差し指を立てると『ちっちっ』と言いながら指を左右に振る。
にーっと笑顔とした笑顔が反射する夕日で白い歯まで魅せる。
『私のダイトは、応えてくれるよ。消えるまで』
「本当に?」
「嘘は言わない主義、それじゃ、次のクエストの時間だから……」
「うん……また話してくれよお!」
「帰ってこれたらな。またな、あふカス」
そう言うと、僕に飲み終えたマンドラジュースの缶を渡す。
「え、僕が捨てるの?」
「もちろん。良いでしょう?」
「良いけど……なんだこの気持ち」
彼女は、振り向かずに門を歩く。
だるそうに、左手で右肩を叩きながら。
少なくとも、僕はここで恋をしてしまったのかもしれない。
遠い存在に恋、変な意味じゃない。
全く、毎回高難易度をクリアしてヘラヘラしてる女性に恋するなんて、僕は…………バカを通り越して保身的かも。
after10、それでいいのか? もちろんダメだ。
それからして、久々に朝日を拝んで居ると彼女に声をかけられた。
『あふカス、元気にしてたか?』
「してたけど……前みたいに『さん』つけてください、会えるなんて早起きは三文の得だわ」
「えー、うーん」
彼女は口をモゴモゴさせてこんな事を言ってきた。
『は? カスに態度とかいるんか?』
「……僕は、カスだけど、カスだけど……カスじゃない!!」
「それ矛盾してる」
無意識に右手からダーインスレイヴが紫色の炎を燃え上がらせて、姿を現す。
「お? 私とやるって?」
「そ、そんなんじゃない」
――友達は失いたくない、失うくらいなら自分が負ける。ボッチは嫌なんだ。
「いいねいいね、この感じ。私も」
『オルタ・ブレイド』
風を握りしめ、下に振ると黒と白で彩られた剣が姿を現した。
「究極ダーインがそんな究極のゴミに負けるわけにわあああ!!」
『全力で来な、本気出さないから』
接近して振り下ろしたダーインは、感触もなく地面を掘る。
「先制で当たらないいい!?」
どうやら、見切られていたらしい。僕の隣に金色の鎧が見える。
「全力出したらあふたさん死んじゃうから」
「殺してやるううう」
突き飛ばすように肩を押し当てると、彼女は『カチャカチャ』と鎧を揺らし、大きくよろける。
すかさず、腹を突き刺すようにダーインをねじ込む!
「デットリー! インフェ」
『ダメ、だからカスなんだよ』
「ふえええ!?」
言い切る前に彼女はダーインスレイヴを蹴りあげる。
高速で縦に回転しながら宙を舞った。
『周りに何がいると思う?』
人だ。沢山の人、人気者に喧嘩を売ったみたいな感じで人が集まっているよ。
「まぁ、人だって言わなくてもわかる」
「ダーインは広範囲攻撃だ。こんな所でぶっぱなせば反動で地面は抉れ一般人は吹き飛ぶ。その時の責任と損害を負える?」
「ぐうう……」
責任と損害なんて負えるわけない。
ダーインは代弁するように地面に突き刺さった。
『周りを見るんだ、見ないからあふたはあふカスのままなんだよ』
「すいませええん」
「それをやめた時、さん付けもせずにあふたって呼んであげる」
そんな事を言いながら『またね』と、僕に背を見せクエストボードの貼り紙をちぎった。
「約束だよ……」
――その約束が果たされることもなく、彼女は2度と僕の前に姿を表さなかった。いや、表していたらしいが見かけなくなった。
嫌われたんだなあの時。