嫌いな人は名誉を捨ててまで抹殺しますが、仲間は大切にする所存です 作:タクティス・ハルバード=レミィ
まだ記憶に残るほど、彼女は凄い存在だった。
本来なら、私が機械神ヘルフォートレスを倒すはずだったのにルルハは
『君の名前は?』
「私ですか? 幻想歌です」
「げんそう……?」
「げんそうか、です」
健気に黄金の鎧を好んで着る女の子は、「いい名前だね」と言った。
「逆にあなたは?」
「閃光の騎士」
「本名はあるんじゃないんですか?」
「…………」
城下町で、こんな話するのは暇なだけだけれど、閃光の騎士は苦虫を噛み潰したように顔を
昼間の街は賑わっている。
「なんて呼べば?」
「なんでもいいけど……あっそうだ、ユッコとかどう? 適当だけどさ」
「そうですね、ユッコさん」
「やったー、幻想さん優しい〜! 暇なら私と遊んでみない?」
ニヤニヤと、私に寄りかかるユッコ。拒否権はなさそうだ。
「ナイトですけど……?」
「いいよー!」
彼女は咄嗟に私と距離を取り、黒と白で彩られた剣を取り出す。
『オルタ・ブレイド』
「オシリスじゃないんですか?」
「オシリス? 全力出したら死ぬから」
私のこと、なめてますよね? さっと観客が集まる。
『まじかよ、閃光の騎士と対決するだってー!』
『ワクワクするー!』
人目を気にせず、手のひらに灯った火種に息を吹きかけると炎を煮えたぎらせた剣が姿を現した。
『ジン・ヴァイス』
愛剣の火属性。この時私に盾はなかった。
『幻想さん凄そう』
「それほどでもないです」
『全力で来な、本気出さないから』そう言って彼女は仁王立ちをする。
「練習でも気合が入ります」
火柱斬で抜き去っても、切った感触がない。
「あれ……ん?」
「そんなに早くなかったね」背後から声が聞こえ、頬に誰かの人差し指がツンツンしてくる。
「もちもちしたお肌羨ましいなぁ」
「ダメです!」
勢いに任せて薙ぎ払い、距離を取らせた。
「いいーじゃん! お肌くらい!」
「良くないです!」
「じゃあ、オルタブレイドあげるから……ダメ?」
「――良いですよユッコさん」
オルタを貰う代わりに頬を触らせるという損益など何も無い取引を受けた、でもその取引には損益しかなかったのは後で分かることになる。
「こんなに柔らかいのいいなー! 狐族?」
「狼……」
「そっちかー! くっ」
遊びなど忘れて、私は飽きるまで体を触られていた。
「そうだ、いい事を教えてあげよう」
「なんですか?」
ほっぺを引っ張られたり、マッサージされながら返事を返す。
「オルタブレイドは高く売れるよ」
「そうなんですか……」
「もう一つ、火柱斬をする時威力が低くなってもいいから最速で使った方がいい」
そんなことを教えられて以来、ジンヴァイスは必ず当てるようにしているのはここだけの話。
「もちもちお肌〜最後に」
「へ?」
『もうこのお肌とはお別れの時間〜』と私の頬をギュッと両手で挟む。
凄く暖かい手だ。
『――まだ触れてないお肌、あったよね』
「えっちょっうーダメ〜」
離れようとしても、流石騎士で動かず、生まれて初めて人とキスを交わした。
ファーストが女性ということより、驚くほど柔らかい唇に気が入ってしまう。
「幻想さん、またね」
「もう、それでいいです。また今度」
ニコニコしているユッコは、私の視界から消え去る。
――彼女に会えるなら会いたいし、目の前でオシリスを見てみたい。
そして、凄そうじゃなくて凄くなった姿をいつか……