後、追いかけ   作:RENAULT

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第拾肆局

 

 プロ試験初日

 

「ヒカル? 大丈夫ですか?」

「何が?」

「佐為、小僧はこんなやつだ、気にしたら駄目だぞ」

「こんなやつで悪かったね!」

 

(何で棋院に行くだけで疲れるんだよ!)

 

「おはよう!」

「おはよーフク」

「どうしたの? 独り言して?」

「大丈夫、大丈夫(後ろの二人が五月蝿くしなければ)」

「中入ろうよ、暑いし」

「そうだね」

 

(五月蝿いだとよ佐為)

(悲しいですね虎次郎)

 

 そういうところだ! という突っ込みは入れるとまたうるさくなるだろうと思い、ヒカルは口にせず試験待合室に向かった。

 

「皆早いね~」

「フクと進藤が遅いだけだ」

 

 既に⅔の受験者は集まっていた。もちろん塔矢の姿も有った。

 

「はぁ、聞いてよ和谷オレの師匠が五月蝿いんだけど」

「ああ、藤原さん?」

「この前のあかりが受かった後夏休みだからって夜中までずっと対局して最後の一言が『ヒカルもあかりさんみたいに守りもしてくれれば安心なんですけど』ってニヤニヤしながら言うし、虎さんも『小僧は生意気だ』って五月蝿いんだけど!」

「俺に言われてもどうすることもできないんだけど……」

「まあ、そうなんだけどさぁ、桑原のじーちゃんも無言のプレッシャーかけてくるし、しんどい」

 

 待合室の椅子に座り頬杖をつく。

 

「そんまま落ちてしまえ! 桑原先生をじーちゃん呼ばわりしてるし、本人も気にしてないし」

「そうよ進藤! あの光景は不思議すぎるわ!」

「奈瀬まで……しんどい」

 

 ガタッ!!

 待合室の端に陣取ってた塔矢が此方に向かってくる。

 

「進藤!」

「どっ!どうしたんだよ塔矢! 急にビックリするだろ!!」

「言うぞ進藤!」

「はぁ、だからなんだよ!」

「今回こそ君に勝って一位通過でプロになる!」

 

 塔矢の背後にジョジョのバンッ! っていう背景が浮かび上がってきそうに指を差しながら告げられる。

 

「塔矢、一度でもオレに勝ってから言って? 今の時点で既に疲れてるから。後、今回も負けないし、負けるわけないし、ガチガチの台本みたいな打ち方する塔矢くん」

 

(((ヤバイ! 疲れすぎて素で毒舌はいてる! 怖すぎだよ進藤!)))

 

「うっ! 五月蝿い! どうせまたヒカルマジック使って打つんだろ!」

「ヒカルマジックってなんだよ! 只の先読みだろ!」

「いや、進藤のあれは最早マジックだから」

「そうそう、将棋の羽生マジック並みにマジックだから」

「二人とももういいよ!」

「とりあえず! 今回は勝つ! 勝って僕をライバルとして認めさせてやる!」

「塔矢は既にライバルだから」

 

 …………………ポッ!

 

(照れんじゃねぇよ!)

 

「今回は勝つ! じゃあ!」

 

 そう言って塔矢は大広間へ向かった。

 

「受験生の皆さん、会場へ向かってください。5分前です」

「進藤、俺らも行くぞ」

「既に疲れたんだけど」

 

 ●○

 

「初回の対局相手はわかりましたか?」

 

 指示に従いながら席へ向かう。

 

「よろしく、進藤」

「よろしく、奈瀬」

 

 全員が黙り、時計の音だけが聴こえてくる。

 音が邪魔だと思う者、緊張感でガチガチな者、不安で怖い者、精神を統一する者、全く緊張していない者。だが全員が思っていることは一つだけだろう……

 

『オレ(僕)(自分)(私)(俺)が合格してやる!!!』

 

「では、始めてください」

 

 試験が始まる。

 盤に石が当たる音が、次の手を悩み唸る声が、相手の一手を待ち受け呼吸する息の音が蔓延する。

 

(よし! 先手を取れたわ!)

(くそっ! 微妙にズレた、悪ノリし過ぎたかな?)

(このまま引き伸ばすして離す!)

(序盤だからついていけば……)

 

 序盤戦の主権は奈瀬が掴んだ。

 

(小僧は楽しんでるな)

(ここ最近私と虎次郎との対局以外で先手をとられてないですからね。久し振りの感じでしょう。いい顔ですし)

(楽しそうだな)

 

 実際にヒカルは楽しんでいた。

 基本的にはポカしない限りすべて勝つヒカルだが大概の対局では先手を取り、急所を抉りつつ引き離して勝つのが常のスタイルだから、先手を取られるとかなりノッテル状態だった。

 

(えっ? どうしてこんなに?)

 

 パシッ!

 

(……)

(……)

 

 パシッ!

 パシッ!

 

(……)

(……)

 

 パシッ!

 パシッ!

 

(……)

(……)

 

 パシッ!

 パシッ!

 

(まっ!待ってよ!そんな疾く打たないでよ!)

(………)

 パシッ!

 パシッ!

 

(えっ?! 早打ちで間違えた?! いや、進藤のことだから何かある? どっちなの?)

(乗っかってくれねぇかな奈瀬。まぁ、乗っからなくても良いんだけど)

(右からアテる方が良いの? ノビ? どっちだったら進藤の手の裏を行けるの?)

 

 パシッ!

 

(これでどう!)

 

 パシッ!

 

(無視なの! えっ? 何で? 裏を行けてないの?)

(予想通り過ぎてヤバイ! ノビの方が良いのは確かだけど、ノビの方が良いってだけ右からアテてもどのみちダメなんだけど、読み切ったらわかるはずなんだけど奈瀬は奈瀬だな)

 

 パシッ!

 パシッ!

 

(まだ行ける! まだ離された訳じゃない! リードはまだ私にある!)

 

 ●○

 

 パシッ!

 

(待って?これって……)

(奈瀬気づいたな。築いたリードは底をついて既に更地にされてるっていう気分だろうなぁ)

(負けてる!? いつの間に?)

 

 パシッ!

 

(奈瀬の敗因は要らない策に乗ってしまったところだな)

(この娘調子は良さそうだったのにな)

(ヒカルの毒牙にかかってしまいましたね)

 

 パシッ!

 

(ここにツケられた

 

 パシッ!

 

……ら、敗けじゃ……ない)

 

「……ありません」

「ありがとうございました」

「敗けた……」

「書いて来るから終わったら検討しよう」

「うん」

 

(結局あそこはアテた方がよかったの?)

 

「はぁ、なんだろう、今までで一、二を争うくらい打てたんだけどな?」

「よいしょっと。奈瀬の敗因はここだったね。」

「結局どっちだったら正解なの?」

「これは、ノビてもアテてもダメな場所ここは無視が一番だったよ。読み切ったらわかるはずなんだけど……」

 

 ヒカルは盤を戻し自分が読んだ道を打った。

 

「こうで、こっちで、ノビて」

「大ケイマで、こっち?」

「うん、それでいてここへ入って、アテて、そっちが逃げても……」

 

 パシッ!

 

「ここで大死に」

「あぁ~あ、大敗よ、よかったのに」

「オレ的には先手とられたから逆に楽しかった。大概とられないから、先手」

「あんたが負けるときはミスるか腹痛だもんね。周りも終わり始めたわね」

「うるせぇ!」

「片付けましょう」

「そうだな」

 

 一日目終了時点結果

 

 一勝

 

 進藤、塔矢、和谷、伊角、本田、、磯辺、小宮

 

 一敗

 

 奈瀬、福井、中村、飯島

 

(塔矢以外院生のみ)




 2017 04 25 対戦成績を修正しました。
 いやー、間違って覚えてたぜww
 対局の順番が変わっていますが気にするなよ?汝ら


 10/6 修正
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