後、追いかけ   作:RENAULT

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第参局

  

 ヒカル(佐為)対アキラの第一局が始まる。

 

「棋力はどれくらい?」

 

 アキラが問いかけてくる。

 

「本因坊秀策並み」

「本因坊秀策並みに強いの? ハハハ、じゃあとりあえず、キミの置き石は四つか五つくらいにしようか」

 

 アキラは言いながら俺に黒の碁笥を渡してきた。

 

「ハンデなんか要らねぇよ。オレがお前を観るんだから」

「え? どういうこと?」

 

 狼狽しながらアキラが返すと後ろから。

 

「“塔矢アキラ”に自分が上? とんでもないボウズだな…………」

 

 後ろで打ってるおっさんどもを無視して

 

「いいよ、じゃあ先手はキミから」

 

 パシッ、

 

(最初は普通)

 

 ジャッっと碁笥から石をとりピシッっとアキラが打つ。

 

 ピシッ、

 パシッ、

 ピシッ、

 パシッ、

 ピシッ、

 

(石の筋はしっかりしている。自分で強いと言うだけあるけど、だけど………なんでこんなに定石の型が古い………それにヘンな所で止まるのはなぜだ?)

 

 ●○

 

 ヒカルは佐為が打つのを虎次郎と一緒に少しずつ邪魔していた。三~五手に一回くらいで間に入って打っていた。

 

(こっちに打つのはないと思うよ、虎さん)

(とっ、虎さんだと)

(だって虎次郎って長いじゃん。だから虎さん)

(まぁそれはよいが、ここはないと思うとは何故だ? ここに打てばこっちにあるのが薄くなる。さらに、ここでコウを潰せば良いはずだが?)

(でも塔矢はこっちに乗っかって欲しいからここを打ってきたんだろ、だからこれにわざと乗っかって途中でここに跳ねればここはもう詰められなくなくなるから、こっちにいけば………)

(良いですねそれ。やりましょう)

 

 ●○

 

(いや、それにしてもボクの打ち込みにも動じない………いや動じないどかろかきれいにかわしている? 局面を彼がずっとリードしている⁉)

「あー、こっちだ」 

 

 バシッっと碁盤に石が打たれたとたん塔矢は気づいた。

 

(これは………最善の一手ではない、最強の一手でもない………ボクがどう打ってくるか試している手だ! ボクの力量を計っている!!

 遥かなる高みからーーーーーー)

 

 ●○

 

「あら、終わったの?」

「うん」

 

 ヒカルは受付の前を通る。

 

「やっぱ、対局はまだ早いわ。久しぶりに打って疲れたよ」

「あらあら」

 

 すると市川さんが一枚の紙を出してきた。

 

「そうそう来週こんなのがあるんだけど、よかったら見に行って見たら………」

「ま、今日はアリガトー市川さん」

「またいらっしゃい」

 

 市川さんが手を降っていたので自分も手を振り、家へ帰る。

 

「フフ、なんだかおかしな子ね」

 

 サロン内がざわついている。

 

「えっ………負けた……?」

「負けたのかいアキラ君⁉」

「置き石はあったんだろ?」

「相手の子が黒だったらしいけど」

「2目差で?」

「あり得ない!」

「私ちらっと見てたけど普通な感じでしたよ。途中途中でへんな手があったけど」

「アキラ君はプロに近い実力者なんだぞ、それに勝ったってことはただの素人じゃないだろ」

「だけど2目差ってことはコミを入れればアキラ君の勝ちだ、じゃあつまり、アキラ君と実力が変わらないってことか………」

 

(2目差とか……………そんなレベルじゃない……………)

 

「ちょ…ちょっと待ってよ、負けたってホントなの⁉ アキラ君。だってあの子久しぶりに対局したって言ってたのよ!」

 

 場が凍りつく。

 

(父さんにきいてみないと!)

 

 ●○

 

 家についた後、ヒカル、佐為、虎次郎はじいちゃんと約束してた囲碁セット(五万円)で佐為が考えた詰碁を解いていた。

 

「ここはハネて白がノビたここをつけたら上がり!」

「ああぁぁぁ!!!!」

「ヒカルの勝ちですね虎次郎」

「後少しだったんだ、後少し」

 

 虎次郎が悔しがる。

 

「あかりにも囲碁教えようか」

「あかりさんに?」

「あの小娘か」

「ヒカルぅ~、ご飯出来たから降りてきなさい~!」

「ま、あかりがやりたいってちゃんと言ってからだけどな」

 

 ●○

 

「あかり、囲碁やってみるか?」

「私? やってみたい! この前白川さんに教えてもらってから、ちょっとやってるの」

「ま、オレが言うんじゃなくて佐為と虎次郎にやって貰うんだけどな」

 

 そんなこと言いつつあかりを部屋へ呼ぶ。

 

「あかりさん、一回やってみましょう。まずはそこからです」

「虎さん、二人でしようか」

「わかった」

「あっ、そうそうあかり、明日オレ行くところあるんだけどついてくるか?」

「行く行く」

 

 こうしてあかり囲碁特訓は始まった。

 

 ●○

 

 日本棋院 

 

「ここなのヒカル?」

「そうだよ。桑原って人に会いに来たんだ」

 

 そんな話をしていると狙ったようにあの人がやって来た。

 

「いやはやこんなところで会うとはな坊主」

「桑原のじーちゃん」

「わしに勝った者がこんなところに何のようじゃ、打つのは嫌じゃが」

「いやいや打つんじゃないから。オレもまた打つの嫌だし」

「そしたらなんじゃ、勝ったから一つ言うこと聞いてくれぇ~、か?」

「そんなところなんだけど、とりあえずオレとこいつのぶんの昼飯おごって欲しい。その後話すからさ」

「まぁ良いか、なかに入ろう」

 

 桑原のじーちゃんについていきながらオレとあかりがついていく。

 

「二人ともなに食べるんじゃ?」

「オレ、カレーでいい」

「ヒカル! 良いんですか?」

「構わん構わん。お嬢さんも好きなのお食べなさい」

「それじゃ私もカレーでお願いします」

 

 二人分のカレーを頼む。

 

(この方は強いのですか?)

(めっちゃ強いよ。なんとか勝ったから)

 

「で、何のようじゃヒカル」

「あっ、そうそう。オレさ院生に成るからさ。推薦を頼まれてほしんだよね」

「そんなことなら全然。てかお主が院生なんてならんでもいいだろうに」

「院生ってなに?」

「ここで囲碁を特訓し続けるんだよ」

「へぇー、私はなれるの?」

「頑張って囲碁の勉強をすればなぁ」

「あれ? 桑原本因坊、お孫さんと一緒なんですか?」

 

 出た! 別の意味でストーカー。

 

「やぁやぁ緒形クン、孫ではない。嬢ちゃんは孫でも良いが。この坊主が孫だったら産まれた瞬間に死んどるわ」

「へぇー。そうですか………」

 

 興味無さげに答える。

 

「こやつはもうすでにタイトルリーグ出れるぞ。わしはそう思っとるぞ」

「アキラとどっちが強いんですか?」

「塔矢ならこの前倒したよ。んじゃじーちゃんまたね。あかり帰ろ!」

「うっ、うん」

 

 二人で帰ってる途中急に虎次郎があかりに話しかけてきた。

 

「小娘、お前は佐為とヒカルと我だったら誰に教えてもらいたい」

「私は三人に教えてもらいたいな。ヒカルがいってたけど佐為さんのきれいな流れに虎次郎さんのバランス全部を教えて欲しい。そうじゃないとヒカルと同じに成れないから」

「だそうですよ? 虎次郎」

「わかった。佐為は甘くても我は甘さなどないからな」

「いい。私がそれで強くなれるのなら」

 

 この言葉はヒカルとあかりの覚悟を決める一言になった。ヒカルは師匠と兄弟子に追い付き塔矢とあかりに追い付かれないため。

 あかりはヒカルに追い付くため。二人各々で進む者を見つける。




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