後、追いかけ   作:RENAULT

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レポートがぁ…………



第玖局

 

 若獅子戦二回戦

 進藤ヒカル(虎次郎)対村上プロ

 

 村上プロは焦っていた。一回戦の時に早めに終わったから進藤の対局を見ていたがコロッと打ち方が変わったからだ。

 左右キレイにバランスがとれており、石の引き際が絶妙で、どちらかというと守りながら勝つスタイル。

 

(受けろよ! 何でそこで引くんだよ! ハネて受けたらこっちに傾くのに!)

(小僧、十一の8でハザマだ)

(りょーかいっと!)

 

「ッチ!」

 

(うぜぇな! こんなやつが院生なわけねぇ! ぜってぇおかしい!)

 

 なんとか打ち返すがそれも虎次郎に漬け込まれる。

 

「……ありま……せん」

「ありがとうございました」

 

(虎さん、ハザマの後に打ったコスミはカケてもよかったくない?)

(いや、それも考えたが続きが浮かばんかったのよ)

(やるとさ、ここで合わせやすいだろ? で、ノビたのをアテて、白がツケてからハザマにしたらよかったんだよ)

(良い手ですヒカル。ですが白がツケてからハザマをしたときツケから開いたらどうします?)

(えっと……)

(先までヨミなさい。相手の強さは毎度変わるのですから、すべてにヨミ勝てるようになりなさい?)

(わかった佐為)

 

「進藤! お前勝ったのかよ凄いじゃねぇかよ!」

「うるせぇ! 和谷はどうだったんだよ」

「完敗だぜ、打つところ全部かっさらわれた」

「他の皆は?」

「伊角さんの見てる。冴木さんと対局してるやつ」

 

 成る程見ようかななんて考えてると。

 

(次ぎは私ですよね? 私)

(そうだけど、どうしたのそわそわしてさ?)

(いえ、私の相手は誰なのかという……)

(待てって、伊角さんが最後みたいだから終わったら呼ばれるって)

(わかりました)

 

 部屋の角で院生が騒いでる。よく聞くと、

「伊角さんの勝ち」や「さすが伊角さん」などが聞こえてくる。

 

 ●○

 

 若獅子戦三回戦

 進藤ヒカル(佐為)対渡部プロ

 

(村上さん! 言ってたのと真逆じゃないですか! 何が守ってくるですって? どんどん攻めて来るんですけど)

 もちろん佐為の仕業である。

(半目で負けるんですよね?ヒカル)

(うん、細かいのは佐為に任せようって思って、プロ相手に残すのはきついしさ)

(良いですよ)

(ごめん佐為)

 佐為は絶妙な力加減で打っていた、プロでも分かりにくく石を調節し会わせていく。黒のコミ五目半をあわせて半目に持っていくその腕は化け者だ、現にヒカルと虎次郎は開いた口が塞がらないという間抜けな表情見せている。

 

(ヒカル! 十一の8、カカリ)

(カカリね)

 

 村上プロは不思議だった。一回戦の時に早めに終わったから進藤の対局を見ていたが、コロッと打ち方が変わった二回戦、そして今打ってる三回戦は前の攻めと守りをあわせて巧くまとめあげた物だ。

 

(プロでも通用するのに、試験を受ければ受かるだろ?わざわざ院生になんかならなくても良いはず……)

 

 カチカチと秒針とパチパチという石の音だけがする。

 

「負けました……」 

 

 向こうの席で伊角さんが投了した声が聞こえてきた。良い所までは行ったみたいだ、検討の声が聞こえてくる。

 

(ヒカル、ヒカル!)

(あぁ、ごめんごめん、何? 佐為)

(ぼっとするな小僧。常に盤面を見ておけ)

(虎次郎の言う通りですよヒカル? ここでノビて、白が左からアテたら私たちの半目敗けです)

(ノビっと)

 

 ヒカルがノビたのを見て渡部プロが右からアテてきた。

 

(狂ったな佐為!)

 

 アテて来たのを見て虎次郎が大爆笑している。

 

(五月蝿いですよ? 虎次郎!)

 

 頬をパンパンに膨らましながら佐為が言う。

 

(こんなミスをする子にはお仕置きです!)

(ち……ちょっと、佐為? なにするつもり?)

 

 佐為の顔がどんどん鬼の面に変わっていく。

 ここからは何もさせなかった。さっきのアテが悪手に気づいたところでどうすることも出来なくなっていた。結果はもちろんヒカルのかち。動揺してミスを連発した渡部プロは大分落ち込んでる。

 

「進藤どうだった?」

 

 伊角が話しかけてきた。

 

「どうしよう伊角さん……」

「どうしたんだ?」

「勝ちゃった」

「ほんとに?」

「本当に」

「次ぎは準決勝だぞ?」

 

(ごめんなさいヒカル。つい勝っちゃいました)

(あれはあの相手が悪いな)

 

 会場は大いにざわついていた。いまだに院生が残っているからだ。

 

「あの子そんなに強いの?」

「一回戦の時に早打ちしてた子だろ?」

「無駄に強いぞ、あいつ。一回戦見てたときはずっと攻めてたのに俺とやったらずっと守ってた。プロレベルだと思うぜ」

「そうよ、さっきの私との対局だってずっといなしながら攻めてたわよ私がミスするまでは、負けようとしてたみたいだし、半目で……た……ぶん」

「マジかよ、そんなやつとヤンのかよ。三島さん」

「でも三島さん冴木君より強いから」

「何でそこでおれの名前が出るんすか?」

『準決勝に出る方々は座席についてください』

「それじゃ行ってくるわ」

 

 三島が席へ向かった

 

 ●○

 

 若獅子戦準決勝

 進藤ヒカル対三島プロ

 

 ヒカルは少し怒っていた。佐為が言うことを聞かずに勝ってしまってへんに注目の的になってしまったからだ。

(もういいや、本気だそう)

 ヒカルは攻めの時はいつも通りに打ち、守りの時にわざと隙を作っていた。大きいミスをせず、小さなミス、ずらしながら打っていた。

 

(攻めは異様な強さだな石の死活をすぐ見れてるけど、守りはイマイチだな)

 

 そのまま流れていくが途中で三島プロが気づいた。

 

「まじか!」

 

 寄せの直前に盤面が代わった。ミスに漬け込んだ筈がすべて返されてる現状。

 

(打つ手なくないか。本因坊並みにねちっこくないかこれ)

 

 程なくして投了が告げられ院生が決勝に残った。

 

 ヒカルは決勝まで残ったものの決勝では少しの差で負けたが、プロたちの目に見てもほんの少ししか差がなく小学生がこのレベルだと世も末だと対戦相手の倉田は語っていたとか。





10/2  内容など修正

 ここから話の筋を変えていきますのでよろしくどうぞ。

 よしなにご容赦を
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