一夏の部屋で剣護は自身の家族について語り始める。
「まあほとんどじーちゃんから聞いた話なんだけどな。実は俺、父さんや母さんのことあんまり覚えてないんだよ」
「え?な、なんで?」
「俺が小さいときに亡くなったんだとよ。父さんは病気で、母さんもそこまで体は強くなかったらしい」
「そうなのか……」
「それでもかなりの実力を持ってたらしいぞ。父さんは病人とは思えないほどの剣戟で、母さんは流水の如く色鮮やかで、一切の迷いや乱れのない美しい太刀筋だったそうだ」
「へえー……一度でいいから見てみたかったなぁ……」
「お父さんとお母さんの名前はなんなの?」
「父さんの名前は月島剣真、母さんの名前は月島桜。だってさ」
「お祖父さんとお祖母さんのは?」
「じーちゃんが月島源二、ばーちゃんが月島実……だったはず」
「ふぅん……どんな人だったんだ?」
「じーちゃんは剣を教えてるとき以外は俺に甘々だったよ」
「あー……よくいるよね、孫に甘いおじいちゃん」
「ばーちゃんは優しかったな。美味しいご飯作ってくれたり、裁縫とか料理とかも教えてくれたっけな……」
「そうなんだ……」
「あと薙刀が得意だったわ」
「薙刀!?」
「うん、それでじーちゃんと喧嘩してるときにどつき倒してた」
「……やっぱ今の時代は女の人が強いんだな」
「世も末だねえ……」
「ぼ、僕はそんなことないけど……」
「嘘つけ、とっつきらー」
「うっ……」
「まあ家族についてはこんなところかな」
「すごいんだね……剣護の家族って」
「先祖が武士だったからな。みんな剣が得意なだけさ」
「得意つっても達人級だけどな」
「そういえばこの前そのご先祖様の刀を見せてくれたよね?」
「あぁ、そうだったな」
「ご先祖様ってどんな人なの?」
「…………うーん、どんな人か……ちょっと待ってて」
そう言うと剣護は部屋を出て行った。しばらくするとボロボロの書物を持って戻ってきた。
「この書物に書かれているはず……あ、あった」
パラパラとページをめくっていくと『月島仁兵衛』と書かれたページを開いた。
「えっと……月島……仁兵衛?」
「この人が剣護のご先祖様?」
「そうらしい」
「たしか蟲を退治する仕事をしてたんだっけ?」
「そうそう。蟲退治を専門とする蟲奉行所でな」
「なんか……頭のところとか剣護と似てるな」
「なんかそれじーちゃんにも言われたような……」
「もしかすると剣護が一番濃く受け継いでたりして?」
「どうだろねえ……今となってはもう教えてくれる人なんていないしな」
「……一人ぼっちで寂しくないの?」
「寂しくない。と言えば嘘になる」
「やっぱ剣護でもそんなときあるのな」
「そりゃあるわ。人間誰しも」
「「え?化け物じゃ?」」
「あん?」
「ま、まあまあ……気にしない気にしない」
「そ、それより、えーと……ズズズ」
シャルルはキレかけてる剣護を宥めて、一夏は話題逸らそうとするが思いつかないのでとりあえずお茶を啜る。
「そ、そうだ!剣護って確か結構刀持ってたよね?ほ、他のも見てみたいなあ〜?」
「……はあ……はいはい、ちょっとお待ちよ」
「「ホッ……」」
刀を取りに部屋を出ていく剣護を見て2人は息をつく。そしてすぐに刀を持って剣護が戻ってきた。
「はいよ、俺の刀。見せたやつ以外全部だ」
「えーと……1、2、3……7本もあるんだね」
「多いな……あ、この二本は見たことある」
「そいつはいつも使ってるやつさ。『鈍』と黒刀『十六夜』だ」
「なまくら?」
「切れ味の鈍い刀だから鈍って呼ばれてる」
「なんでそんなものを使ってるの?」
「殺傷率が低いから」
「そうなの?」
「斬れないからな。打撃ぐらいだよできるのは」
「この『十六夜』ってやつは?」
「それは中学に上がったときにじーちゃんから贈られたものさ」
「へえー……なんで十六夜って名前なんだ?」
「なんでもそいつは俺が生まれたときに作られたそうだ」
「じゃあ剣護の誕生日は?」
「10月16日。さらにその日の夜に生まれたんだと」
「16日の夜、だから十六夜なのか……あ、これはセシリアのときに使ってたやつだ」
「名刀『鏡華』。鏡のような刀身が特徴の刀さ」
「これでレーザーを弾いてたのか……」
「この桜柄の刀は?」
「『姫桜』。桜を表したかのような刀だ。そして……母さんの形見でもある」
「剣護の……お母さんの刀……」
「じゃあこの龍柄の鞘の刀は……親父さんのか?」
「それじーちゃんの刀だよ。『龍皇」といってかなり頑丈な刀なんだよ」
「ふぅん……じゃあ親父さんのは?」
「この十字形の鍔が付いてるやつ。『焔火神楽』って刀でこの紅い刀身が特徴さ」
「紅い……刀……」
「すげえ……初めて見た……」
「まあこんぐらいかな」
「これは?」
「あ、忘れてた。そいつは日輪刀。特殊な刀で鬼を斬るための刀と言われているらしい」
「この刀も黒いね」
「別名、色変わりの刀と呼ばれ、持ち主によって色が変わるんだと。俺のは貰い物だから貰ったときから黒だった」
「へー……ちなみに誰から貰ったんだ?」
「竈門っていうじっちゃんだよ。炭職人なんだ」
「す、炭職人が刀持ってんのか?」
「じっちゃんが言うにはじっちゃんの先祖の物なんだそうだ。貰ったときは若干刃こぼれとかあったけど俺が研ぎ直した」
「それもお祖父さんに習ったのか?」
「もちろん。自分のもんは自分で管理しないとな。竹刀とかも同じだぞ?」
「なるほど……」
「まあこんなところかな。なんか聞きたいことは?」
「はいっ」
「はい、シャカリキスポーツ」
「僕、自転車じゃないよ!?」
「ハハハッ。冗談冗談、はいシャルル」
「もう……えっと唯一両親のことで剣護が覚えていることは?」
「……そうさなぁ……ほとんど覚えてないけど……」
剣護は目を閉じて深く考え込み、しばらくして優しく微笑んで答えた。
「唯一覚えてるとしたら……二人に抱きしめられたときの温もりかねえ……あれだけは今も覚えてる」
「そっかあ……」
「他には?」
「あ、はいっ」
「はい、イチボ」
「誰が肉だコラァ!!」
「はいはい、一夏」
「ったく……まあこれは質問というよりお願いか頼みみたいなもんだけど……」
「じゃあいいわ」
「聞けよ。今まで大変だったと思う。だからこれから先何かあったら俺たちを頼ってくれよ。できるだけ力になるからさ」
「そうだね。僕たち友達だもんね」
「……ありがとよ。一夏、シャルル」
「おうっ」「うんっ」
「それじゃあ……ゲームでもすっか!」
「「オッケィ!」」
その後3人は遅くまでゲーム対戦をして、次の日3人とも寝不足になったのだが何故か剣護だけ体調を崩したのだった。