城下町のダンデライオン-Begins of KUUGA-   作:ノアJAM

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EPISODE3 恐慌

 国王・櫻田総一郎は、昨夜の一件の事から眠る事が出来なかった。それは、総一郎の妻・五月も同様だった。

 

 櫻田城 am.09:00

 

 身支度を終えた総一郎と五月が自室を出ると、そこには昨夜蜘蛛のような生物と戦い、撃破した相馬雄介の姿があった。

 

「よう、二人とも……眠れたか?」

 

「いや、あれほどの出来事だったんだ。眠れる訳ないだろう」

 

「私も同じ……相馬君は?」

 

「俺は戻ったら、すぐにバタンキューだったさ。久々に体力消耗したって感じだな」

 

 雄介は能天気に言った。

 

「雄介、なぜあんな行動をしたんだ?」

 

 総一郎が雄介を問い詰める。

 

「確かに軽率な行動だった。でも、あの時俺が戦わなかったら、あの場で全員死んでたよ」

 

 雄介は、いつもと同じ調子で言った。

 

「大丈夫だ。またアイツみたいなのが来ても、俺が戦って倒せばいい‼」

 

「しかし、それでは君の身体が……」

 

「俺がやるしかないから……何かよく分かんないけど、あのベルトを着けた時、視えたんだよ。これは俺がやらなきゃって……俺にしか出来ないなら、やるしかないだろ?」

 

「…とにかく、一度身体を調べてもらう必要がある。すぐに彼の所に行った方がいい」

 

「彼って……まさか、木野のとこか?勘弁してくれよ。俺、アイツの事苦手なんだよ」

 

 

 

 某所 am.11:00

 

「ガヅラダダバ…ゼパ、ゲゲルゾ、ザジレスゾ(集まったな…では、ゲゲルを始めるぞ)」

 

「ラデ、ゴオマグ、ギバギゾ(待て、ゴオマがいないぞ)」

 

 人気のない場所に、数人の男女が集まっている。彼らは、全く謎の言葉で会話していた。

 

「ガギヅパ、グゼビ、ザジレデギス、ゾゲゲル(アイツは、既にゲゲルを始めている)」

 

「チ……ガデデバ、ボドゾ(チ……勝手なことを)」

 

「ギギジャン、ゴオマブビゼ、ザジレジョグジョ(いいじゃん、ゴオマ抜きで始めようよ)」

 

「ゴグザバ、ラズパ……バヅー(そうだな、まずは……バヅー)」

 

「ゴセグ、パパンビンレバ(俺が一番手か)」

 

「ドググビヂゼ、バギング、バギンビンザ(二日で、81人だ)」

 

「サブショグザ(楽勝だ)」

 

 

 

 王家警備局・会議室 pm.13:00

 

 櫻田城にある会議室では、昨夜の九郎ヶ岳遺跡での事件と、連続して発生している謎の生物による殺人事件の対策会議が開かれていた。

 

 その場には、総一郎と雄介も参加していた。

 

「それでは、改めて未確認生命体に関する情報を整理したいと思います。まずは、こちらから…」

 

 スクリーンに、落雷直後のに撮影された画像が映し出されていた。

 

「この画像では不鮮明ですが、便宜上これを第0号とします。続いて第1号と第2号。1号は、2号と争って死んだようです」

 

「仲間割れか?」

 

「しかし、2号は1号と腹部の装飾品が異なる事から、同一の存在ではないと思われます」

 

「他に何か、未確認生命体について情報はありますか?」

 

 総一郎が他の情報を求めると、警備隊のの一人が報告した。

 

「九郎ヶ岳遺跡周辺に、集団の墓のようなものが発見されたと、再度現場に向かった調査隊の報告が、先程上がりました。それと、その墓から一斉に何かが出現したとの報告も入っています」

 

「その墓の数は?」

 

 雄介が問う。それに対する答えは……

 

「最低でも……200」

 

 その数に、会議室にいた全員は言葉を失った。

 

 

 

 櫻田城・某所 pm.18:27

 

 対策会議を終えた雄介は、日が沈み、街灯やネオンの光が輝く街の風景を眺めていた。

 

「こんな所で何してるの?相馬君」

 

「…なんだ、さっちゃんか」

 

 雄介に声をかけたのは、五月だった。雄介は五月を見ることなく、気のない返事をした。

 

「なんだじゃないでしょ、あなたそれでも櫻田家の使用人なの?」

 

「使用人の前に、俺は総一郎とさっちゃんの友達だ」

 

 五月と会話はしているものの、雄介は一向に、五月の顔を見ようとはしなかった。

 

「……ねぇ、答えにくいなら無理には聞かないんだけど」

 

「……何?」

 

「会議で何かあったの?総ちゃんに聞いても全然答えてくれないし」

 

「……別に…」

 

 雄介は、少し言葉を詰まらせて答えた。

 

「出た」

 

「は?」

 

「相馬君って、隠し事してるときは必ず少し間を置いてから(別に…)って答えるのよね」

 

「……何で分かるんだよ?」

 

「能力……とまではいかないけど、なんとなく分かるもんよ」

 

「…敵わないな」

 

 雄介は会議での決定事項「未確認生命体が出現した場合、発見し次第射殺せよ」を五月に伝えた。無論、総一郎がこれに対し「第2号は対象から除外すべきだ」と異を唱えたが、最終判断は現場に委ねるという形で決定された事も五月に伝えた。

 

「何よそれ…相馬君はそれでいいの?」

 

「いいさ」

 

「何で⁉どうしてそんな簡単に言えるの?自分が死ぬかもしれないのに、そんな軽く…」

 

「軽くなんかない……俺の願いは、この国の人々皆が、笑顔で平和に日々を過ごす事…でもそれは、俺一人の力ではどうにも出来ない。それが出来るのは、国王である櫻田総一郎と、櫻田五月だけだ。……つまりな……ざっくり言えば、国民を笑顔に出来る二人の笑顔を守りたいって事さ」

 

 雄介は少し微笑みながら五月にサムズアップした。

 

「ねぇ、相馬君」

 

「ん?」

 

「前から聞こうと思ってたんだけど、それって……」

 

 五月の声は、突如鳴り響いた警告音でかき消された。

 

「出たのか……行ってくる‼」

 

「相馬君‼……気を付けて」

 

「おう‼」

 

 

 

 市街地 pm.19:02

 

 雄介が警備隊より早く現場に到着すると、そこには九郎ヶ岳の有り様だった。

 

「そんな……間に合わなかったのか」

 

 雄介は拳を強く握りしめた。すると、どこからか翼の羽ばたく音が聞こえてきた。その音は徐々に近づいていき、遂に雄介の真後ろに来ていた。

 

 危険を察知した雄介は、横に転がった。すると、雄介を襲ったモノの正体が月明かりに照らされて、その姿を現した。

 

「蝙蝠?……いやいや、ここはゴッサムじゃないんだから、さっさと出て行ってくれないかねぇ…オリャア‼」

 

 雄介は、その姿を見た瞬間、別の未確認生命体だと悟り、攻撃を始めた。そして徐々に白い身体・未確認生命体第2号に姿を変えた。

 

 雄介は、2号に変身して蝙蝠の未確認生命体を何度も殴っていたが、怯む様子もなかった。

 

「何だ…効いてないのか⁉」

 

「バンザ?ゴン、ボヅギパ……(何だ?その拳は……)」

 

 未確認生命体は、雄介を強引に引きはがした。

 

「ボンドグン、ボヅギゾ、ゴギゲデジャス(本当の拳を、教えてやる)」

 

 未確認生命体は、雄介を殴り飛ばした。殴られた雄介の身体に、トラックに轢かれたような衝撃が走る。

 

 その勢いで、雄介はアスファルトを滑るように飛ばされ、元の「相馬雄介」の姿に戻った。

 

「ゴラゲゼ、バギング、ドググド、パパンビンレザ(お前で、19人目だ)」

 

 ゆっくりと近づく未確認生命体に対し、先程の衝撃が強すぎたため、雄介は身動きできずにいた。

 

(このままじゃ……死ぬ‼)

 

 雄介がそう思った瞬間、大型車のライトが雄介たちを照らした。国の警備隊が今到着したのだ。

 

 すると、未確認生命体は、ライトの光から逃げるようにして、夜の闇に消えた。

 

 

 

 櫻田城 pm.19:30

 

 国の警備隊により保護された雄介は、櫻田城に戻っていた。城に戻った雄介を、総一郎と五月が出迎える。

 

「雄介、大丈夫だったか?」

 

「……何も、出来なかった……自分には力がある。守る事が出来ると思ってた。…でも、本当はそう思い込んでただけで、誰一人守れていなかった」

 

「でも、それは未確認生命体が……」

 

「それでも、結果はこれだ‼何の罪もない18人が死んだ。彼らだけじゃない、九郎ヶ岳では、何人死んだ?これも、俺の戦う覚悟が半端だったからだ」

 

 雄介は、静かに自分の拳を握りしめていた。

 

「戦う覚悟って、どういう事?」

 

 五月が問う。

 

「俺が初めてベルトを着けた時、頭に流れたイメージでの2号は赤い姿をしていた。でも、俺が変身したのは白だった。本当は赤じゃなきゃいけない気がするんだよ」

 

 雄介は、総一郎と五月に背を向けた。

 

「雄介、どこに行くんだい?」

 

「少し、一人にしてくれ」

 

 雄介は、城の外に出て行った。

 

「雄介……」

 

「仕方ないわよ、突然別なものに変わったんだから。戸惑うのは当たり前でしょ?私たちに出来るのは、今迷ってる友達を支える事……でしょ、総ちゃん」

 

 総一郎と五月は、手始めに城の敷地内にある教会に向かった。




「こんな奴らのために‼」

「あなたも、誰かを亡くされたんですか?」

「これ以上誰かの笑顔が消えていくのを見たくない‼」

「それが、亡くなった皆さんに対する償いだと思うから」

「だから、そこで見ていろ‼」

「(…………変身)」

「ゲガゴゾ、ラロスダレザ‼」







EPISODE4 『決意』
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