どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
2.
兵舎というものをご存知だろうか? 文字通り、兵士が寝泊りするところである。傭兵とは兵士の一種だ。故にそれにふさわしい寝床が得られるのである。
「諸君。集まってくれて歓迎する」
イタリア系のサルヴァトーレこと、トトと普段皆から言われている少年がポーズを決めながら丁寧な口調で自分の周りに集まっている者たちに言う。
「この部屋のことだ」と、周りの男達が唾を飲み込む。
「具体的にはベットのことだ」
男達の目が見開く。そしてトトが大げさなまでの身振り手振りで方向を指したベットの方向を見る。
「諸君の判断を仰ぎたい。具体的には審議をもらいたいのだ。みなの判断を欲する。言ってくれ」
そして、男達が口を開く
「「「別にどうでもいいんじゃね? 相手が相手だし」」」 「なっ!?」
彼らが見ていた方向は男部屋で寝ていた一人の少女の存在であった。
「「「むしろ、俺らが連れ込んだってことにされて……」」」 「……て、撤収ゥゥウ――ッ!!」
「も、もう既に遅いんですけど」と、少女がおきてた。
「こ、これは……」
「別にね、あたしは自分の意思でこの部屋に来てるから問題ないとして、何でテメェらがあたしを と り か こ ん で る ?」
「いやはや、日和様。このサルヴァトーレ決して邪なる思いなどございません」
自分で邪なる思いがあったと言っているようなものである。それを聞いた日和と呼ばれた少女が「そう……」と呟きながら一つのごつい拳銃を取り出した。
「ここから出ろ そう、今すぐだ(Get Away...... Right Now!!)」
わざわざドスの聞いた英語で日和はトトに対して銃口を向けようとして
「お前らは俺様の部屋で何をしている?」 「おう! 森野! 助けてくれ!」
トトがしがみついてきたのを森野と呼ばれた少年が吹っ飛ばす。
「何故だ?」
「部屋に入ってきていきなり男に襲われる趣味は俺様にはねぇ! いくら俺様がかっこよすぎるといっても限度をしれ!」
「いや、イタリア人の俺が男襲うわけねーじゃん」 「古代ローマなら分からないだろ」
「……古代ローマなら仕方ない」
話が違う。
なんか勝手に意気投合している。が、一瞬とはいえこの場から忘れ去られた人物が一人
「何で、あたしのことを忘れているのか、箇条書きにして教えてほしいんだけど」
「1.キャラが薄い 2.男の世界に入ってくるな 3.俺様かっこいいの3つの理由が上げられるぞ」
「誰が、マジで箇条書きにしろと言った!?」 「きゃんきゃんうるさい女だなー」
カチャリという音がしてお前ら殺すとでもいいたげな表情で拳銃の銃口を向けている女がいた。
「よし、戦友に銃口を向けたと教官に言いつけよう。俺様頭いい」
「ああぁぁー! そ、それだけはやめて、お願い」
そして日和がベットから飛び出した。典型的な痩せ型体系ながら意外と肉付きがいい体格、黒髪、そして透き通った目とウェットスーツに軍用コートにも似たそれを重ねたようなナリウスの戦闘服をつけた少女。ウェットスーツのぴっちりと張り付き、体のラインが浮かび上がるそれをつけた少女が少年に飛びついた。
「おい、拳銃下ろせ、というか、俺様にのしかかるなぁぁ!」
「あんたが教官に言うとか言うからでしょ! 絶対に言わせないし! それに弾の管理は厳重って知ってるでしょ! マガジンなんか入ってないわよ!」
わーわー、きゃーきゃーうるさい。トトはなんだか虚しくなってきた。
「……忘れられてる……」
つまり、彼女は森野・J・翔に渡すものがあって、彼とトトの相部屋に侵入。だが、2人ともいなかったので、待つことにしたが暇だったので昼寝していた。
「で? この俺様にひよりが渡すものは何だ?」 「はい、先週の機動テストの結果」
「……整備の連中、何故俺様を避けた!?」 「あんたがぶち壊しまくったからその不満を表明しているんでしょ」
「この俺様が、遺憾の意を表明されたというのか!」
「どこがどういう風にすばらしいのかあたしには理解に苦しむけど……とりあえず明日の演習までに間に合うようにしておくそうだから、様子を見に行きなさいよ」
「俺様の自分自身の鎧だ。当たり前だ」
翔はそういうとテスト結果を受け取りその中身を読み始める。
んじゃ、あたしはそういうことで~と帰ろうとした日和はせっかくだ、飯をおごってやるという翔の声で足を止めた。
「よし、早速学食行くぞ」 「って、学食かよ……もっと何かないの?」
「このドケチの俺が人におごること自体が珍しいのだぞ?」
「自覚してるならそのやたらケチな性格何とかしなさいよ」 「俺は俺様だ……断る」
まっ、無理かと日和は納得したようなことをいい、2人はそのまま兵舎という名の寮を出て行く。
目的地は学院食堂。
ここは学院傭兵軍第3軍団の本拠点。新生日本連邦の西日本太平洋側の岩礁地帯を利用して作られた人工島に存在する世界的企業連合直属特殊人材育成機関3rdレギオー学院。
レギオーとは、古代ローマ帝国の『軍団』をあらわす言葉である。すなわち、第3軍団学院。
それが、今2人のいる場所だった。週2回の連絡船と週5回のセスナで日本本土とつながっている。逆に言えばそれが断ち切られれば孤立する場所にその施設はあった。
だが、その心配はない。世界的企業連合は世界を管理する五つの超大国こと、五大国ほどではないが、その五大国と遣り合えるだけの力を持っている七つの大国、七大国並みの経済力と技術力を保有している。そして、その経済力と技術力の2つからくる私設軍事力もかなりの規模だ。PMC(民間軍事会社)という形で保有している兵力は十万単位を超えているとされている。
『利潤兵隊(profit soldier)』と『学院傭兵軍(The academy employing mercenar)』その2つの組織を世界的企業連合直轄のPMCにしている世界的企業連合の庇護がある限り、ここが孤立することはない。第一、日本政府が黙っていないだろう。新生日本連邦の経済に深く食い込んでいる世界的企業連合の直轄組織の国内本部が自分たちのあずかり知らぬ所で孤立攻撃を受けるなど見ていられない。
五大国の一角というプライドと国益というものだ。
「はいはーい、あたし特級ランチ」 「あ、てめー一番高いのを!」
学食でわいわいと言い合いしていると復帰したトトと同じくイタリア系で翔と日和の同じ小隊に所属している女、シモーナがやってきた。
「……うそだろ! 翔!」
「あ、もりのー私にもおごってー」 「誰が!」
「ねーひよりーん、どんな手を使って小金を貯めまくってるドケチの財布を引き出したん?」
「あー……あたしの華麗な魅力に決まってるジャン!」
「安心しろ、この俺様にそれだけは絶対にないから」
そんなドタバタを続けながらみんな同じテーブルに着いたところで一人の女の子が自然に4人のテーブルにやってきた。
「ん? ジェンどうした?」
その場にやってきたジェニファーは4人の配膳を見渡して一言……
「あ、特級……」 「あげないよ」
「そんなことしませんよ。あ、そうだひよりさんガールズトークしましょう、お互いの食べ物を試食しあいながら」
そういってポケットから大量の駄菓子を出してくる
「ジェン……お前……」 「はいなんでしょう?」
翔のやたら深刻そうな声に普段どおりの調子で返事を返す。そして翔はジェニファーに究極の言葉を口にする。「その大量の駄菓子……太りたいのか?」と、その瞬間、空気が凍った。
「……森野J翔さん……小隊長として命令します。私に特級ランチを奢りなさい!」
かなーり理不尽な命令である。その命令に対し翔は――
「だが、断る。休み時間だ」と、そういって味噌汁を啜る。彼が味噌汁を啜る音だけが周囲に響いた。
「そんなー皆さんの小隊長なのにー」
一人いじけているジェニファーをみんなは…………見ないことにした。
淡々と食事が進み、みな食べ終わると……自然に会話が始まる。
「そういえば来週だっけー? 決勝戦プログラム」 「お、そうだっけ。思った以上に余裕ねーなー」
宿題があるのにと愚痴があちらこちらからもれる。いつの間にかそれなりの人が集まってきていた。
「仕方ないだろ、俺たちは学生傭兵、宿題もあれば戦闘もある。いい加減疲れるけどな」
「はぁー、学費免除、逆に給料が出る上に世界中に派遣されますって学院のキャッチコピーは本当ね。悪い意味で」