どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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3.

  3.

 『決勝戦プログラム』――その戦争の勝利勢力が世界から認定された唯一無二の勢力としてその地を制圧する。

それ以外の勢力の一定活動を超えた行動は――すべてが許されない。

あるものは決勝戦プログラムをこのように評する。『虐殺免許争奪戦』。

86%の泥沼化した紛争地帯を少しでも平和で安寧な14%の空間に引き入れるためのおぞましい狂気の戦い。

 

学院傭兵軍第3軍団の学生傭兵たちは制服にリックサックとナップザックといういでたちで街中を歩いていた。

ゲノポスの町はあわただしく、軍用四輪車が走り回り、銃を持った少年少女たちはもちろんの事、様々な人たちが、ライフル担ぎながら歩き回っている。

 

「あっ、第1軍団みっけ」

ひよりの言葉の先には、学院傭兵軍第1軍団の制服集団。

むこうもこっちに気が付いたようで、特に向こうの女子の視線が突き刺さる。それに気が付いた第3軍団の女子は優越感に浸るような顔と目線を返す。

一触即発か……? といわんばかりの時間。

そう互いの男子学生傭兵たちが感じるほどのにらみ合いが数秒続き――――

 

「――ふっ」  「クッ――!」

第3軍団女子が勝ったようだ。というかなんだったんだ。

 

「あいつらの制服見た?」  「かわいくねぇー!」

「あれなら、私らの圧勝ジャン」  「化粧の仕方一つ、大雑把なんだよ、ヴィンランドのデブ共」

いつしか、ガタガタ震える両陣営の男ども、どうやら、第1軍団のほうでも女子どもが息巻いているようだ。

女は怖い。どうやら世界共通のようである。

そもそも、何故こんなところにいるのか。簡単に言えば『仕事』である。

 

「……これは何だ?」

翔は、妙なドライフルーツ的なものを見つける。

青空市場、そこらじゅうで銃弾やら中古のアサルトライフルが売られているなか、そのドライフルーツは翔の目には非常に目立っていた。

 

「デーツ! デーツ!」

「デーツ?」  「Yes, デーツ!」

「ふぅーんデーツか……」

ドライフルーツの名前は、デーツというらしい。翔はドライフルーツを一つ手に取ってみる。

 

「ディナール! ディナール!」  「あっ、お金? いや、買うわけじゃ……」

そうつぶやきながら、彼は手元のPDAでデーツを検索して……

 

「全部買うわ」  「何があったっ!?」

翔の突然の豹変にイタリア系のサルヴァトーレ(トト)が驚いて突っ込みを入れる中、彼はいつしか、片言の現地語を駆使し、さらには相手側も片言の英語を駆使して、何やら値切り交渉の真っ最中である。

デーツを売っていた若い商人にとっても、デーツを全部買い取るなどという大きなお客様を逃がすわけにはいかんがかといっていっぱい値引いてたらやってられない。

デーツを買い取る翔としても、全部ほしいが、高値で買うわけにはいかにはいかない。自然と交渉という名の脅迫合戦にまで成り立っている。

どこのどいつに値切り交渉の場で、拳銃の安全装置を解除するのかという事だ。ちなみに両方。

ただし、お互いそれを露骨に構える真似はしない。「あーそんなこといっちゃうんだー」「いうんだよー」「へぇー、なんかかゆいな……あっ、それでね、これもう少し安くね」と、言った感じで目の前でホルスターの拳銃の安全装置を外すのである。

そのうち、露骨に翔が親指で、仲間の第3軍団を指さすようになる。

それに対抗するかの様に、商人は口笛を吹いて回りの男たちを手当たり次第に手招きする。

 

「ねぇ……」

何やら、集団の力まで動員しようとした翔に対し、仲間を呼んだらしい。

 

「ちょっ、なんかやばいことになってる感あるんだけど、大丈夫なの!?」  「うるせぇ、今いいとこなんだ、黙ってろ……こいつ……やりやがる」

何やら目に激しい闘士の炎を燃やす翔と若い商人がにらみ合っている。既にお互いの片手は拳銃のグリップを握っている。ホルスターから出さないだけで一触即発。

そして、一呼吸――

 

「――○××33LP! PO!」  「NON! 40!」

「 !  !!  ! ! !! ! !? !」  「! ? !!! !?  ! 」

「「「!!! ! !!!! !」」」

わけのわからん会話の応酬の果てに、翔は大量のデーツの仕入れに成功した。

 

「なんで!?」

思わずそんなことを叫びたくなるひよりだったが、そんな彼女を無視し、何故か知らないうちに若い商人と熱い握手を交わす――

――まではよかった翔だったが……。

一つ、重要かつ重大な問題がある。彼が仕入れたデーツは大量である。それこそ箱買いがどうこう言うレベルじゃない。

コンテナ一つ分という数。

当然だが、それをどうやって運ぶか。

 

「~~♪」

鼻歌交じりに歩く少女は、紅というコールサインで呼ばれるとともに、常にその『コード』で日常生活を送る少女。

その周りには彼女の部下たちが歩いている。そうだ、彼女こそ、学院傭兵軍第3軍団を率いる陸戦の総司令官である。

が、そこに携帯情報端末に入る緊急招集の入電。

 

「へ?」

送信者は森野・J・翔。

彼女だけではない。第3軍団の人間ならだれもが出来る形式の緊急招集だ。今は戦闘中ではなく紅の指示権限が常時生きているわけではない。

プライベートな時間にまであれこれ、上から命令される筋合いはないのである。が、それではそれで困ることもある。それ用の緊急招集だ。

が、そんなこんなで現場に駆けつければ、目の前にそびえたつクソの様なコンテナと偉そうにふんぞり返った翔。

 

「さぁ、仕事だ。運べ」

観光気分で街中をぶらついていた第3軍団の学生傭兵たちを勝手に緊急招集をかけ、挙句の果てに1人最低10キロ運べなどといわれ、文句の出ない奴はいない。

悪は直ちに征伐された。が、そのままコンテナ一つ分の荷物を置いたままにはしておけない。

犬神家よろしくな、翔をしり目に、溜息をつきながらも第3軍団の学生傭兵たちは重そうな荷物を手にとっていく。

結果として、最低10キロの荷物を自分たちにあてがわれた駐屯エリアまで運ぶ羽目になる。今更街に繰り出すのももう面倒だ。

 

「おい、そこの守銭奴、なんとかせえよ」  「なんで俺様が……ああ、んじゃ戦争記念館行けばいいんじゃね?」

自分たちの観光を邪魔した、翔(守銭奴)に対する、苦々しい言葉。

 

「……『戦争記念館』?」  「第2次世界大戦の記念館かー、どんなちっぽけな村にもあることはあるけど今更?」

会話の内容は徐々に目の前の立派なコンクリートの建物へとつながるのである。

 

「それぞれの国と地域で展示物が変わってたりするんじゃね?」

その立派なコンクリートの建物は、ちょうど学院傭兵軍第3軍団が駐留している、政府軍の駐屯地内部に構えられていた。

駐屯地の入り口から、すぐ近くであり、ここまでは町の人間ならだれでも入ってこれる。

と、言っても見渡す限り、街にまともな人間はいそうにない。政府軍が統治しているこのゲノポスの町は、『競合地域(コンテスト・エリア)』と政府軍の『支配地域(コントロール・エリア)』のちょうど境界線に位置する。

つまりは、最前線だ。

だからこそ、今この町にいるのは逃げるだけの気力も資金もない老人や子供、もしくは傭兵や家具類を売って少しでも資金の足しにしようとする連中など。

あるいは、祖国に帰る場所を失った犯罪者やどこぞの諜報員や軍需産業のエージェント、文字通りのテロリストから、戦死することを望む戦争に狂った自殺志願者などなど、思わず傭兵ごときが人間の生きる意味って奴を哲学的に考えてしまうような連中ばかりだ。

もちろん、ごくまれだが、善良な一般市民とやらはいたりする。が、こういう場所における一般市民とは、一方的に弱者という相手では断じてない。

 

「なんでしょう? 目線がいやらしいのですが」

目の前に突き付けられた上下二連式散弾銃、要するに2連発式のショットガンの銃口がこちらを向いている。

いや、向いているとかじゃなくて、1メートルにもいかない、ちーさな距離でバレルとストックを切り詰めたそれが無数にこちらを向いていた。

一人の、自分たち学生傭兵と同年代と思わしき少女と、そんな少女より明らかに年下な女児と男児の集団。

 

「……何でもいいが、それ、引き金引いたらテメェも終わるぞ?」 

無数に向けられる拳銃とライフルの銃口。

 

「はい、終わってしまいますね。でも、目線のいやらしいクソどもも終わりですね。最良の結果。いやならとっとと目線外してくださいませんか?」

とまぁ、こんな感じで、一見お嬢様の雰囲気を漂わせ、実際この地域の財閥のお嬢様だった経歴のあるらしい少女でさえ、このありさまだ。

たくましくなければ生きることなんて困難な空間。

第2次世界大戦におけるレメンゲトンとの激戦で出来上がった核のクレーターと底にたまった高濃度放射性物質に汚染された湖。それが『ゲノポスの水溜り』。だが、高濃度放射性物質が沈んでいる程度の湖を恐れはしない。

ゲノポスの町は防壁に囲まれながらもその『水溜り』のほとりに作られた、人工都市。

むしろ水溜り周辺の河川を人工的に整え運河網を構築するありさまだ。

後方の工業都市、リスティアと接続され、各所に支流だったりそれなりに整えられた道路網が敷かれていたりと、このゲノポス・リスティアのラインはそれぞれ頭文字をもじって『ゴールデン・ロード』と政府軍に呼称され、何が何でも守らなくてなならない重要補給線と位置付けられている。

15年の強制された平和が構築させたこの運河網と道路網。

もはやこれは政府軍の至宝といってもいい重大な存在だった。

だというのに、そのゴールデンロードの重要な出入り口たるゲノポスは最前線である。一応は政府軍の『支配地帯(コントロール・エリア)』だが、すぐ近くは『競合地域(コンテスト・エリア)』が広がっているありさま。

まぁ、仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。ゲノポスは典型的な地獄資源採掘用の人工都市だ。

資源採掘のためには最前線であろうと仕方ないのだ。どうせ、15年は世界に強制された平和だったのだから。

だったら、謳歌してやろうじゃないか。

とまぁ、そんなこんなでつい最近まで監視の多国籍軍が居座ってたこともあり、この町もご多忙にもれず、世界中、どこ行っても必ずあるといってもいい、この時代最強にしてこの世界至高の『インフラ施設(プロパガンダ・センター)』である、戦争記念館の中である。

 

「ねぇ、ところで、武器の没収ーとかふつーねーの?」  「没収されて万が一に対応できますか? お客様」

ライフルどころか、6連式グレネードランチャーに無反動砲さえを背負った警備員が何を当たり前なとの顔。

 

「分かってたけど、ここ、『安全領域(14%)』じゃないわ」

翔が脱力しながら警備員から離れる。一人の少女とその少女が連れた子供たち。いかにも『安全領域(14%)』でふんぞり返った金持ちが『慈悲行為』『自愛の行動』とやらを発揮して税金対策をする口実とする……そのきっかけとなる『写真写り』が良い少女と子供たちである。

(カモがネギをしょってきた!)

カモに見せかけたタカで、ネギはショットガンでした。

ついでに、彼女が口走った『いやらしい目線』とやらの言葉の効果か、学生傭兵の女子から受ける視線が痛い痛い。

とまぁ、そんなこんなで、彼を含む何人かの学生傭兵は戦争記念館の一室へと、退避する。

『乱射中毒(トリガーハッピー)』に構う必要も意味もない。あちらも傭兵相手に事を起こすつもりはなかったのだろう。ただし、身を守るためにはある程度、強気に出なくてはならない。

どちらも本気で事を起こす気がない以上、お互いの強気は一呼吸ののちに、『まぁ、今回はこのあたりで手打ちにしてやるぜ』で両者、姿を消すことが出来るからである。

それにしても、この『戦争記念館(プロパガンダ・センター)』に何の用だったのだろう。地元住民であることはすでに町に着いた時のブリーフィングで教えられた。

町に住む要人、あるいは要人だった人間の簡単な写真と経歴、名前は覚えている。

地獄資源採掘で一定の発言力を有していた今は亡き『財閥』。

『資源の呪いの代理人』とまで呼ばれ、『ミドルオリエント(肥沃三日月地帯)』においてそれなりの力を有していた。

下手な小国なんぞより、強力な企業軍隊を保持し、下手な民族より結束力と闇の経済力を保持する財閥として君臨していた。

過去形である。もとより『資源の呪いの代理人』などと呼ばれている財閥である。

財閥のトップ共はその意図がなかったとしても、恨まれる立場である。

さらに言えば、あくまで『ミドルオリエント(肥沃三日月地帯)』において力を有しているであって、世界全体に力を有しているわけではない。

それに、力を持っているだけで君臨はしてないだろ。所詮、『ミドルオリエント(肥沃三日月地帯)』に力を持つだけで、その空間を中心としたときの『非統合境界線(ノン・インテグレーションギャップ)』や『機能中心点(ファンクショニング・コア)』に力を持つほどの存在ではないのだ。

それが、答えだ。弱肉強食が当たり前の空間において、弱さは――ただの『罪』に過ぎないのだから。

それが嫌なら、強くなれ。それこそが弱肉強食空間唯一絶対の法。

彼女の父が経営していた『財閥』は敗退した。

今ではこのゲノポスの街で、戦災孤児の面倒を見て毎日を過ごす、貧乏姫君でしかない。それがブリーフィングで伝えられた内容だ。

構う事はない。もし敵となるのであれば容赦なくぶち殺せ、味方となるのであれば、存分に使って差し上げろ。

この期に及んで、この町から出ないのだ。数十時間後には敵か味方かはっきりすると。

最も――

 

「――興味ねぇ……」  「どしたの?」

翔のつぶやきがすべてだ。彼女の行方などに興味はない。

戦争記念館の最初のスペースはオーソドックスなものだ。簡単に言えば巨大な『年表』である。そして、その最初の一行目にはこう記されてあった。

『―― 1938年9月。人類大戦開始 ――』  『―― ナチスドイツの電撃侵攻 ――』  

『―― 1940年12月。大日本帝国、真珠湾を攻撃、マレー作戦を実施 ――』  『―― 同年同月、グリーン・ルーシ、ソ連へ宣戦布告 ――』

『―― のちの世に第2次世界大戦と呼ばれる戦いのおける初期の「人類大戦」はこうして始まった ――』

コの字を描く形状の戦争記念館。各種フロアや部屋などはそれぞれで、1年ごとの時代と民族、そしてその時の戦況などを全部示している。

彼らがたどりついた一室には38式歩兵銃から、モシン・ナガン。M1カービンから89式擲弾筒などの各種歩兵兵器たちの山が目の前にそびえたっていた。

すべて展示物である。

 

「…………当たり前だけど、骨董品の山だな」  「今でも使える特別製の骨董品だけどね」

展示物はどれもこれも、ちゃんとメンテナンスがされており、また弾薬さえあればいつでも使える状態が維持されていた。

おそらくこの記念館のどっかに弾薬庫もあったりするのだろう。

戦争記念館は鉄筋コンクリートは当たり前として、様々な各種軍用建材をふんだんに使用し、施設そのものはコの字を描くように作られているとはいえ、その周囲にはあからさまな鉄条網といわゆる島嶼型陣地が付いたこの場所はちょっとした要塞だ。

一帯陣地や付帯陣地を構築できない場合の苦肉の策の様な陣地であり、それぞれの小規模なトーチカやらなんやらといった陣地が島々、諸島を思わせるように点々と設置された陣地形状だ。

それぞれが、自分たち以外の陣地に対し支援が行えるように考えられた配置をしており、一つの陣地に攻撃が集中した際、他の陣地が暇をこうむることがないように構成されている。

中世イタリア式築城術から続く正統派なヨーロッパの星形要塞じゃぁないが、そういう風に考えられた島嶼型の陣地。

だから島嶼型陣地。

そして、この戦争記念館の場合、これらの陣地に設置されている多くの兵装が、陸戦を主軸に考えられたと思われる各種防御設計はどこへやら、対空レーザーばかりである。

 

「……で、だ。対空レーザーへのエネルギー供給として、こいつがあるのは、わかる。が、なんで建物内のど真ん中にあるんだ?」

重水素駆動炉。この時代と世界の動力源として最も使われる典型的な核分裂反応炉だ。その原子工学技術の結晶ともいうべき作りや基本構造から、事実上人災か意図的でもない限り、十分なメンテナンス環境がそろった場所において、事故ったりするのは天文学的確率とまで言われているものだ。

小さいものになるとトラックに乗せられるサイズのものとなり、今や世界中の戦場で各種軍用兵器類の動力源として使用されている。

しかし、だからこそなのか……小型強制加速駆動システムというこの動力炉の中心点というべき基軸システムを動かすためにはそれなりの特別な『初動始動機(スターター)』が必要とされており、スターターがなければ動き出せず、また動力炉の燃料元も「重水素」というものだ。

他にもアクチノイドなども燃料として使用できるし、本来ならばアクチノイドのほうが安定的に炉心を駆動できるのだが、それだとどうしても出力が足りず、遠からずスターターを何度も動かしてしまう事になる。

小型にした結果、小型強制加速駆動システムのほうでどうしてもエネルギーロスが生じるらしい。大型都市用だとスターターがほとんどいらないのだから、きっと小型にしたのが問題だったのだろう。

ともあれ、こうした持ち運びできる原子炉のおかげで、水、あるいは冷却用ジェルさえ十分に用意することが出来ればいかなる環境でも有効なエネルギー源として使用することが出来る……として世界中に当たり前のように配備されることになった。

そんな、『重水素駆動炉』が、ドデン! という効果音が付きそうなくらい派手に目立っていた。というより設置されていた。

 

「……さすがに不用心すぎるだろ」

翔のあきれたような声。ここを攻撃したいのなら、ド派手なミサイルや戦車などは必要ない。わずか1個分隊規模の特殊部隊を送り込むだけでいい。対歩兵戦を考えられたはずの陣地は対空兵器で固められ、何のための陸戦陣地と呼ぶ状態になり、こんな場所に鎮座する動力炉。

特殊部隊が持ち込むC4か無反動砲だけで片が付いていしまう。

 

「いや、違うさ……どうせ今の時代、その程度の大きさの重水素駆動炉一つ狙う意味はない」

背後から聞こえてきた流暢な『日本語』。仲間の第3軍団学院傭兵たちではない。

誰がどう見ても、その男は異様だった。

だって、そうだろう。『政府軍』の根城であるこのゲノポスにおいて、その男は明らかに『反乱軍』の軍服を身に着け、ボロボロの母衣の様な茶色のマントをかぶるというスタイルだったのだから。

 

「……ジャッカル正統軍中尉だ。君は?」  「……森野・J・翔。政府軍に雇われた傭兵だ」

「……やはり日本人か。こんなところにいるアジア人の少年兵は噂に聞く傭兵しかないだろうな……と思っていたが」

政府軍と反乱軍、そして独立派の3つの勢力の三国志。それがカランド紛争。

しかし、反乱軍当人が自らを「反乱」軍隊と呼び称するのはおかしい。あくまで反乱軍という名称は政府軍が読んでいるだけだ。

彼ら自身は自分たちをこう呼んでいる。

『正統軍』と。

 

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