どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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3. 4.

  3.

 決勝戦プログラム、実行まで残り11時間18分。

仮眠をとれと言わんばかりに寝袋を広げる翔たち。

先ほどの30分で終わる程度の演習も終了し、あとは戦争に向けて英気を養うだけである。

だからこそ、仮眠をとらなければならないのだから。

が、

 

「つまりだな、政府軍は典型的な縦深攻勢をしようとしているわけだ。だが、こうしてみるだけでわかるのだから、反乱軍や独立派もまた、それに対抗する戦術、戦略を保持しているといってもいい」

「という事は、ECMや対レーダーミサイルの大活躍ってことになりますよね」

「両軍ともにな。って事はあれだ、俺様たちセグメンタタ砲兵の役割は必然的に高射砲兵ってわけだ。つまり、俺様たち大活躍! お前ら、地べたを這いまわる歩兵どもはかわいそうに!」

「「「……寝ろッ!!」」」

枕代わりの畳んだ携帯天幕が次々と投げられる。個人個人が当たり前の様に所持する携帯装備品の一つだが、こうして、枕代わりに使われるのも携帯天幕の使われ方の一つだ。

当然まくら投げ如く、投げられるんのも携帯天幕さんのお仕事である。ご苦労様です。

 

「翔さんいつもの減らず口は、そろそろお口にチャックでお願いしますね」  「……むぅ……俺様はただ、戦術的に」

「はいはい、おやすみなさーい」  「…………」

「「「……………………………………………………」」」

…………。

………………。

 

「…………やっぱさ、俺様思うんだよね」  「「「だから、寝ろって!」」」

そんなこんなで4時間後、戦争開始まで残り時間7時間とちょっと。

 

「うーん……」

小隊長のジェニファーは悩む。

戦争開始5分前に開封せよというカプセルを前にだ。

これには、これからジェニファー小隊がかかわる作戦内容が24時間分そのすべてが書かれている。

本来は高度に暗号化して、ネットワークを通じて全軍にリアルタイム指示を出すべきなのだろうが、

そう簡単にはいかない。学院傭兵軍第3軍団はその名前の通り本来は傭兵部隊であり、政府軍の忠実な兵士たちというわけではないから。

最も、傭兵といってもいろいろと種類や状況というのによるのだが。

たとえば中世から近世にかけてのスイス傭兵はそこら辺の正規軍兵士よりも勇敢で精鋭で、正規軍兵士以上に忠誠心があふれていたといわれている。傭兵だというのに。

傭兵だからこそ、誰よりも精強で裏切らない兵士であることもあるし、それとは真逆で、自分の身が危なくなれば契約を破棄し、戦いを放棄する傭兵もいる。

傭兵とは角も不思議で扱いに困る存在であると同時に、いなけりゃ困る存在でもある。

第1次世界大戦や第2次世界大戦における『義勇兵』と呼ばれる存在も広義には『傭兵』の一形態であるのだから、古今東西ありとあらゆる戦場で何らかの形でその影を見ることが出来る存在だ。もしも傭兵に世界的な組合組織があったとしたら、きっとのちの世の中で、『傭兵を語る陰謀組織』によって歴史は操作されていたなどと唱える人間がいそうである。

 

「だから、通常のネットワークを介して指示を出すことに戸惑いがあるのはわかるけど……うーん」

悩むジェニファーのもとに漂ってくる匂い……。

 

「いいか? 腹八分目やぞ! どこぞの水兵みたいに、上陸作戦で自分のゲロで喉詰まらせて窒息死なんてシャレにならんからな!」

「アレ? あれは腹が重くて水に沈んだんじゃなかったっけ?」  「どっちでもいいわよー、さっさと肉食べましょうよ!」

「なんでみなさん焼肉なんてやっているんですか!?」

C4爆薬を燃料にして鉄板焼きとかいうパーティーを開くジェニファー小隊の面々。というか、爆薬を燃料にするな。それも備品だという話でもある。

 

「さっきは眠た。後数時間で戦争。なら、食べるでしょ」  「戦争は無駄に腹が減るからな」

「つかさ、腹が減らない戦争なんてないじゃん」  「なら、食べとかないとね」

「食べ過ぎて、ゲロのどに詰まらせんなよー」

女の子はゲロ吐かないんだよ! という言葉と共に、男子どもがとろうとした肉の塊をすかさず女子がとっていく。

男子代表、サルヴァトーレ(愛称:トト、イタリア系)がとろうとしたやたらでかいステーキ肉をシモーナというイタリア系女子が長い菜箸でとっていった。

ある意味、すごい器用な事である。

その器用な技で次々と確保されていく、肉、肉、肉。

 

「……見ましたか? 奥様、あんなに肉ばかり食べて」  「最近の子たちは慎みってものがないのかねぇ……太るわよ」

「レディーファーストって奴よ。少し黙ってなさい」  「あら、見ましたか? 奥さん。アレ、きっと朝起きたら肉で口臭がくさk――――」

「「「――女の子は臭くなんかない」」」

ぼこぼこにされた男子の山を前に息巻く女子生徒(傭兵)の構図。

なんだか、とってもバカバカしくなってきた。ジェニファーは自分も割り箸をとって焼肉の中に入って――――――

 

――轟音の中、目を覚ました。

 

「い、今は――!」

時計を見る。戦争開始から、47分が経過。

頭を打って脳震盪でも起こしたのか? とにかく状況を把握しないと。

 

「小隊長! よかった! やっと目を」  「反撃しろ! 敵はどこからきている!?」

小隊長が脳震盪でぶっ倒れるなんて事態、原因は一つだと思った。

 

「いえ、これは事故です。いや……仕組まれてる。仕組まれてるけど、起きた事実としては『同士討ち(ブルー・オン・ブルー)』です……」

政府軍の前提が大きく狂った。反乱軍の計略は想像以上に張り巡らされていた……。

 

  4.

 空を飛ぶ無数の戦闘機。

役割はただ一つ。『ワイルドヴィーゼル』。

政府軍と反乱軍、そして独立派の3つの勢力を分ける、『フロントライン』。

その中でも特に危険なホットゾーン。

その上空で、まるでにらみ合うように分かれて無数の編隊が飛んでいる。

その分かれ目は宇宙からあるいはレーダー上に見るとまるで一本の線が見えるように感じる。それくらいはっきりと分断されている。

それぞれの勢力の『S.E.A.D.』――敵防空網制圧のための編隊が戦争開始5分前になって空を旋回しているのだ。

また、それとは別でまるで隠れるようにアクロバティックな動きと共に低空飛行をする編隊もある。狙いとしては航空撃滅戦のスムーズな展開だ。

サイレンが鳴り響く。

『――こちらは、国際和平調停機関です。カランド紛争決勝戦プログラムを実施します。決勝戦を開始するまで、残り231秒……』

そして、宇宙空間で発生した小さな爆発とともに、戦争がはじめられ、大空に数百を超えるデコイドローンが飛び回った……。

 

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