どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 第1派は無数のデコイドローン。デコイに対して防空レーダーが反応を示し、そして確実に接近してくる敵を捕らえるべく、レーダー波を向けていく。

さらに、デコイを撃ち落とすために照準用のレーダーが起動したところで、『対レーダーミサイル(A.R.M.)』をぶち込む。この無数の対レーダーミサイルと巡航ミサイルが第2派となる。

そして、低空飛行から侵入してくる歩兵を積み込んだ輸送ヘリと攻撃ヘリの編隊が第3派あるいは第4派となる。

彼らは、短距離や近距離地対空ミサイルの射程距離外から歩兵をおろし、そしてより長距離射程の空対地ミサイルを発射して敵地対空ミサイルを撃破する。

同時にそれなりの高い高度――超低空飛行と比べると――から飛んできたステルス機をはじめとする精鋭が操る制空戦闘機や戦闘爆撃機が中距離地対空ミサイルや生き残った防空レーダーなどを撃破し、さらにそのまま敵空軍を撃破するための敵空軍基地制圧攻撃、『航空撃滅戦』へと移行する。これが、第3派あるいは第4派。

そして、当たり前だが、常時AEW(電子戦機)やAWACSを使い、常時強力なECM(電子妨害)を戦場全域に張り巡らせておく。

それが、教科書道理の『S.E.A.D.(敵防空網制圧)』戦術にして基本である。

当然、当たり前だが制圧される側もそれを前提に対抗戦術を考えている物だ。

政府軍が考えたのは、あえて第1派は見逃すという事。むろん何もしないわけではない。おとり用の防空レーダーを起動させるだけで終わらせるというだけの話だ。

その中で『本物』がいて、こっちに攻撃を直接攻撃を仕掛けたならまだしも、そうでもない限りは第1派は囮レーダーをつけるだけで無視する。

そして第2派には全力で迎撃し、敵の第3派が来る前に自分たちが敵に仕掛けるS.E.A.D.で泥仕合を裂け、そのまま航空優勢を獲得後、PU-44の精神にのっとり動くのだ。

いや、航空優勢の獲得が前提なのがPU-44ともいえる。

それが、政府軍の方針だった。

だから――第1派を見逃し、来るはずの第2派を探して……。

来ない。10分たったが来ない。おとりに食いつかない。いや、そもそも――

 

「チッ、衛星が全部やられたか」  「クソッ、高い金払って七大国のマスドライバーを借り受けて撃ち上げた衛星だぞ!? 大国のそれと比べれば小さく簡素だが、確かにわが軍の衛星だ!」

政府軍の高官たちがそう叫ぶ。

衛生が使えないせいで、『陸軍型指揮伝達系統制戦術機構(レゲンダ・アーミーシステム)』が予定していた規模、レベルで使い物にならない状態だ。

人工衛星を介したC4Iはどうやらキラー衛星を使った攻撃により機能不全に追い込められているようだ。

そして、今更ながらに囮レーダーの画面に皆が釘付けになっている。

デコイドローンらしき第1派は燃料切れになったのか次々と高度を落として降りてくる。いや、落ちているのだ。

 

「これが狙いか? 危険な地域では躊躇せず迎撃せよ。レーダーを使用しても構わん」

よーい、ドンで始まる戦争。それゆえに各勢力は策略を練り、それがあだとなる。

そうだ、よーいドン! で始まる戦争の欠陥。双方は先手を取るべく策士策に溺れる状態となる。

気が付いたときには、問題が発生している。

そう、たとえば――

 

「――敵のデコイは、デコイじゃありません!」  「何? いったいなんだ?」

「反乱軍は、巡航ミサイルやドローンに偽装した特注品に――『甲冑』を載せています! 次々と敵甲冑が空挺降下してきます」

「そうとわかれば撃墜せよ!」

そして、防空レーダーを起動し、撃墜作業に入れたとたん、『対レーダーミサイル(ARM)』のシーカーが反応した。

デコイドローンのすべてが重装歩兵の空挺装備ではなく、いくつかは小型の対レーダーミサイルプラットフォームとして機能していた。

まさに、この瞬間を狙っていて――――。

 

――キルボックスに設定されている空域。

主に戦略爆撃のための部隊選定などに使用される『空地一体(エアランドバトル)』ドクトリンにおいて使われるそれをそっくりそのまま、移植した政府軍の空軍戦術に違和感を感じる人がまれにいると聞いている。

何故ならば、PU-44こと、『縦深同時攻勢』と『空地一体(エアランドバトル)』のドクトリンは非常に似ているが、同時にお互いを敵対するドクトリンだ。

もっと言えば、『縦深同時攻勢』というドクトリンに対抗するために編み出されたのが『空地一体(エアランドバトル)』のドクトリンである。それゆえにエアランドバトルのドクトリンの概念である『キルボックス戦術』をそっくりそのまま、『縦深同時攻勢』ドクトリンを採用している政府軍が使用するのに違和感を持つ人間がいるのだ。

だが、少なくともそんな違和感を一切持たない人間がいる。

各キルボックスを示した立体映像(ホログラム)の色が変わった。いくつかのキルボックスの色が赤色から黄色に変わったのだ。

つまりは、そのキルボックスに指定された空間はすでに次の段階、すなわち航空優勢の限定的獲得が終了し、航空撃滅戦を主体とする戦略爆撃へと入ったという事だ。

要するに

 

「――S.E.A.D.は限りなく成功か」

政府軍の将官たちは思わず目を見張る。その人物は、どうにもうまくいかない政府軍の防空戦の状況を見もせず、ただ政府軍の攻勢作戦の様子だけを見ていた。

一切ふるえなどなく、おびえもなく、恐怖もない。

豪胆とはこういう意味の言葉なのか――将官たちは思わずそう思ってしまう。

まさにこれこそが、将器という物だろう。

反乱軍や独立派からは『豚』などと蔑まれている偉大な政府軍指導者。カランドの最高指導者。

かの人物は、一通り戦況を示したモニターやホログラムなどを見た後立ち上がる。

 

「諸君、すでに戦は始まった。故にあえて遅いことを言おう。誰もが望んでいる。誰もが欲している。平和で豊かで強い国を、そしてそんな希望に満ちた未来を。だからわれらは戦っているだからこそ、言わねばならない。

『うんざりだと』……。我々はこの戦いに負けることが許されない。このことはまさにうんざりだと。『たかが1度』の戦いですべてが決まってしまう。このバカバカしさに! ……だから終わらせねばならない。高々1回で国家存亡の危機に陥るような戦いなどしない国を作り上げるためにも。何度でも負けてやろう。何度でも敗北の味を知ろう。だからこそ……この戦いだけは、なんとしても我らは勝たねばならない」

彼は指をさす。それは防空戦を示したもの。

 

「我が軍の上空にはいまだ敵軍が居座っている。いや、居座ろうとしている」

続いて、指をさしたのは、防空戦とは真逆、政府軍が進めている敵軍への航空攻撃の状況、すなわちS.E.A.D.の進行状況。いくつかのキルボックスの色が変わっていく。成功の色へと。

 

「それに対し、我が空軍将兵たちの奮戦ぶりは誠に素晴らしいものがある。もうじき航空優勢を獲得するだろう。しかし、いかに将兵が奮戦しようとも、ここで我らが決断をしなければ変わるものも変わらない。防空計画ハームを変更する。

すべて、撃ち落とせ、我が軍の大空を飛ぶものを――――」

政府軍が持っていた計画、第1派を見逃し、第2派に対処、敵が第3派を送る前に全線にて航空優勢を獲得する大攻勢と地上攻勢を発起する。

それを変更する。

 

「――今から、5分後に、われらは進むぞ」

下知は下った。

 

「「「偉大な国父閣下のご決断に!」」」

空に花開く炎の花。それこそが、政府軍の決断を示したもの。

けれども――――

 

――何がどうなっている!? 誰かの悲鳴。

どうして! 金切り声。

そして、轟音と破裂音。これが、結果。反乱軍はこの瞬間を待っていた。

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