どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 数分前。

ロケットモーターの加速が終了する。ジェットエンジンの轟々という音だけが支配する空間。徐々に各種パーツがパージされていく。

そして、燃料供給がストップする。落ちる、落ちる。落ちて、落ちていく。

パーツが、各種様々な部品が次々と脱落していく、そしてあらわになるのは人型、鋼鉄の巨人。

そして、通常のブースターウィングパッケージを装備したそれが、特定の高度に達した瞬間起動した。目指すは、敵地。降り立つはセグメンタタ。

狙いは、敵防空網の制圧。さぁ、始めよう。

同じく、数分前。

超高高度を強引にそれが飛んでいた。数機の超大型戦略輸送機だ。

それらは、空を飛んで『カランドの国境線』を超えた。それらは明らかにカランドではない空にいたのだ。

今、カランドの政府軍は第1派の対応に全力になっている。そもそも、目の前の連中、すなわちカランド領域内から来た連中を相手にするので忙しい状態だ。だから、こその国境外侵入。それでも何機かは落とされるかもしれない。だが、それでもいい。

カランドの政府軍は第1派の内容を、全容を知らない。反乱軍が仕掛けた第1派。それは空中からの地上兵力一斉降下。

一気に下りて制圧する。だが、これは現状無謀な話だ。だからこその小細工と第2派が待ち受けているのだが、だとしても第1派に選ばれた兵士たちは恐ろしい思いをしながらも政府軍の領域へと侵入する。

超高高度は元来大型機が飛ぼうと思って飛べるようなものではない。

そもそも通常の戦闘機ですら超高高度、すなわち『限界上昇』を超えた高度2万4千キロメートルを飛べやしないのだ。

大空と宇宙の狭間、8万フィート、すなわち高度2万4千キロメートル。その超大型戦略輸送機は強引にその高度を飛んでいた。

正直いつバランスを崩して落ちても不思議ではない。飛行機というのは飛ぶのも大変だが、降りるのもすごく大変だ。下手すれば落ちてしまう。

その飛ぶ危険と降りる危険、両方の危険が一度に常時襲ってくるのが超高高度という物だ。

にもかかわらず飛べているのは卓越した技術と強引に増設されたエンジンナセル、そして本来ならば不要な追加可変式カナード。

限界高度までとんで、機首を強引に引き上げ、無数の抵抗とともに速度が落ちて、代わりに高度があがる。

増設したエンジンナセルとカナードがなければいずれは揚力を失っていたかもしれない。それでも強引に飛んでいる。

与圧された貨物室。しかし、その与圧が徐々に説かれていく。宇宙服の様に見えるプレシャースーツっぽい何か、特殊な新しい降下服に身を包んだ兵士たち。そしてその兵士たちの真ん中に横たわって鎮座する2人分のセグメンタタ。

既にセグメンタタは起動している。

そして――――

ランプは赤から青に変わり、兵士たちはいっせいに走り出した。扉が開かれ、皆、暗闇と蒼空が同居する宇宙と大空の狭間の中へと飛び込んでいく。

と、全員が降りる前にすさまじい衝撃と業炎が機体を襲う。

高高度地対空ミサイル。

政府軍が保持していたSA-11カドフライ(9K37Mガンジス)が見事に超大型戦略輸送機を1機、今まさに撃墜して見せたのだ。

それを見る兵士たち。自分たちが数瞬前までいた場所が、飛んでいた鉄の塊がバラバラになって砕け散っていく。

そして、飛んできた飛行機の残骸が兵士たちに襲い――かかる前に吹き飛んでいく。

機銃掃射。

貨物室内の中央に鎮座していたセグメンタタは大空に落ちながら無数の機銃を使い、兵士たちに残骸が襲い来るのを迎撃する。

いつしか、高度はプレシャースーツを必要としない高度に入っていく。それでも高高度。HALO降下の高度。

仰向けの状態で逆噴射を始めるセグメンタタは兵士たちに落ちてくる航空機の残骸を次々と機銃掃射と様々な火器を使って迎撃していく。そのうち、政府軍の地上から砲火が上がっていく。

それに対して、解き放つ無数の無誘導ロケット。

兵士たちをかばうために精一杯弾丸を、砲弾を、ぶちかましていって――――限界高度を超えた。

プレシャースーツにもにた特殊な降下服を身に着けていた兵士たちは何もしなくてもパラシュートが開いていた。

けれども、彼らを守っていたセグメンタタ、重装歩兵はまだパラシュートに該当する装備を使用しない。

そして、1体。中距離地対空ミサイルが、セグメンタタを貫いた。

いかに防御斥力を展開しようとも、空中である。防御斥力で防御したところで、それを強力なGに振り回され、降下バランスを完全に崩す。

1体がそうして火だるまに包まれ、爆散する中――――

――小さな音がした。

衝突音と、金属がひしゃげる小さな異音が。

兵士たちが大地に降り立つ。スーツを脱ぎ捨てると、中から出てきたのは政府軍の軍服を身に着けた反乱軍兵士の一団。

彼らは自分たちを守り散っていたった者たちのためにも行動を開始する。

政府軍第11砲兵旅団第2野砲戦闘群は、敵縦深への攻撃を行う予定であった。方面軍砲兵司令部から伝達された通り、敵陣後方の対空陣地への撃破を目的とした砲撃を行うべく、多連装ロケット、MARSを稼働させる。

だが、最初の一斉には成功した。けれどもセルを交換し次を装填し、放とうとして、

 

「――ッ!? 不発!? こんな時に!? ぜ、全員はなれ――――――――」

暴発した。

その暴発の煙は第2野砲戦闘群の数少ない重榴弾砲小隊からも見えた。

 

「何てことだ……」

牽引式重榴弾砲を運用する彼らからすれば頼りにしていた多連装ロケットが吹き飛んでしてしまった。という事は攻撃は自分たちが引き継いで……?

「い、いそげ! 次弾装填!」

1発、2発、3発と次々と砲声が鳴り響く。

だが、そろそろ頃合いだ。こちらの位置は今までの攻撃で敵の対砲兵レーダーに感知されてしまっただろう。そろそろ対砲兵射撃が始まる。

 

「次で移動する! 次弾装填!」

そして、次の砲弾を装填する。つい最近納品された砲弾を装填して――暴発した。

繰り返される暴発の音を聞き、笑うものがいる。

反乱軍の重装歩兵、その中で一人の人間が笑う。

 

「腐りきった豚の軍隊は、数をそろえようと無心するあまり警戒を怠りました。砲弾を納品する外国業者、そのすべての業者はちゃんと確かめましたか? 輸送業者の身元はちゃんとすべて滞りなく無くチェックしましたかな? その中に貴様らが反乱軍と呼ぶわが正統軍の息が一切かかっていないものはいったいどれだけおりましたかな?」

反乱軍の仕掛け。よーいドンで始まる戦争の欠陥。それとも――――?

――戦争は外交手段の一つ。外交は政治一分野。つまり、戦争は政治。

政治ではなくなってしまった戦争を終わらせる方法は、敵をすべて殺しつくすか、敵対するものすべてを圧倒する絶対強者となる……。

それが嫌ならどれだけ何があろうとも、戦争を政治の一部として制御しきることが大事だ。

政府軍は『統治』という政治に失敗した。だから、こうして『内戦』に陥っているわけだ。

内戦は数多ある戦争の形の中でも最悪だ。

だって、双方ともに不満を抱えている。我慢しきれないほどの不満を。だからお互いに妥協できない。だから武器をお互いに取った。もはや内戦とは政治の一部としての戦争の領域を始まったその瞬間から超えている。

そんな、内戦を終わらせるには、下手なやり方では本当に――殺しつくすしかなくなってしまう。

そういう中において、皮肉にも反乱軍は政府軍や独立派といった連中よりもはるかに『政治的』に動いていた。

だからこその仕掛け。けれどもまだ、終わっていない。反乱軍第2派が遅い来る。

それは、政府軍後方より。政府軍は沿岸部、反乱軍は内陸部、独立派は山岳地帯。

だから通用する第2派。

政府軍の高官は思わず絶句していた。そして、叫んだ、「売国奴」と。

 

「列強から、借り受けたか! 義勇兵という名目での参戦か! 空母打撃群だと!?」

空母機動艦隊が政府軍領域を攻撃する。ステルス機、艦載機の群れが次々と政府軍施設を攻撃していく。

内陸部に向いていた空への監視網。防空体制。それを、内側から突き返される。

上陸戦に向けて艦隊の運用戦艦がその『戦艦主砲レールガン』を沿岸の港湾都市に向けて一発、二発、三発。

そればかりか、ヘリの編隊が政府軍の『カランド国境線』を超えていく。ここまでされては、政府軍とその最高指揮官は決断せざる得なくなっていた。

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