どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
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どこまでも俺様主義 Re-meke
Episode.1:砂漠の国の紛争 第4章「R.P.V.――The war of tank and two people.」
1.
――――急な覚醒。気配。銃口と爆薬の。
ほおを伝わる微妙な空気の揺れ。
(アレ――? 確か俺様は――――)
危険の兆候。
空気が――
わずかに目に飛び込んでくる光が――
確か、俺様は――――
(――――しまっ――!)
飛び起きて、左手で銃を探す。
そして、同時に焦る――致命的だ。致命的なタイムラグだ――! 〝探す〟時間など!
触られた砂に汚れたプラスチックの肌触り。
見つけた、M4カービン――――!
「――そこまで」
突き付けられた銃口。
ライフリングすら、くっきりと見える接近距離――ほぼゼロ距離という状況下。
「って、何勝手に暴れているのよ。よっぽど疲れてたとか、言い訳する気?」
が、相手は知り合いの少女で
「なんだって、てめーかよ、ひより。この俺様を撃とうなんて100年早いぜ」
「……撃ってあげようか?」 「はい、調子に乗ってすいません。やめていただけませんか?」
翔は、立ち上がる。ソファをベットにぐっすり寝ていたようだ。ワイヤーやスプリングが見えるくらいボロボロだが、数時間程度眠る程度、大したことはない。
むしろ……
「あんたさぁ、何やってんの。死ぬ気? 全部、あたしらに任せて。家の中で休むなんてこっちだって眠いのよ!」
ひよりの言葉――しかし翔の目線は……。
「誰だそいつ」 「シルビアです」
ひよりの後ろのもう一人の少女に向いていた。
その少女は珍しい銀色のきれいな長髪を風もないのになびかせ、その黒い目はどことなく鏡の様に澄み切っている。
そして何よりも――感じるのは……。
「……純人?」 「はい、生まれも育ちも『純粋種』です。一切、他者の『人工的な肉体強化・戦闘能力増幅』を受けていません」
このご時世に、珍しい純粋種の人類にまっさか、戦場のど真ん中で会えるとは、翔は思ってもみなかった。
2.
翔が休んでいた建物はかつては豪邸と呼ばれるものだったのだろう。本館やら別館やら広い庭やら、外壁やら。プールと思わしきものまであり、これを豪邸と呼ばずになんと呼べばいいのか。
最も――要塞じみた豪邸だったが。
かつて、ここには銃眼が設置されていたのだろう壁の穴や、銃座跡。
自立殺戮型ドローンにも使われている対人センサーが無数に仕掛けられた空間やら弾薬庫と思われる部屋などなど。
おまけに、個人所有としては明らかにオーバーな巡航ミサイルが3発分用意されていたり、防衛用の警備ドローンが何機もあったり……極め付きのどでかい金庫だったり。
地下のドローン制御用の管制室だったり。
「なんだここ……」 「? 現孤児院ですよ? まぁ、今も昔も私の実家ですが」
「は?」 「あっ、防御機構のほとんどは維持できず停止しているんで、守りを固めてもあまり意味ないんですけどね」
「ここ、Youの家、OK?」
思わず、棒読みでそのことを聞いてきた翔に対し、シルビアはそんなことを聞いてくる翔の言葉がよくわからないのか、頭をかしげながらも答える。
「……つまり、金持ちのお嬢様、OK?」 「まぁ、一応そういう事になると思います。『元お嬢様』ではありますが」
「…………」 「……あの……?」
「シルビア様、お嬢様のの財産管理をこの俺様が是非ひきうけ――――」
――大きな音とともに、どこからともなく取り出されたハリセンが、翔という少年の頭を床にめり込ませていた。
「一応、勉強はしているぞ。資産管理のイロハ程度なら確実に出来る」 「普通に弁護士や税理士に頼ったほうがましだわ!」
「連中は高い! だから俺様に」 「あの……私はあくまで『元お嬢様』なんですが……」
「だから、財産相続くらいしてるだろ! だから俺様に!」
白けた2つの目線が翔を貫く!
「な、なんだ?」 「……こいつは、こういうやつなのよ」
「はい、わかります……苦労なさっていますね……」
2人の心の底から出てきた溜息に対し、非常に物申したい翔であるが、女2人、完全にタッグを組まれると厄介なのは理解している。つまり
「ちっ……あきらめるか」
はい、そうしてください。
「ところで、なんでだ? なんで――――」
――翔が次の言葉を紡ぐ前にシルビアは答える
「逃げてないか? ですか? ……そうですね。全体数としては少ないですが、あえて逃げてない人々は多いですよ」
――なぜか?
「先祖伝来の土地がようやく解放されたのに――――それを簡単に手放せるほど、分かる人なんて、そういませんよ」
カランド紛争。
「地獄に汚染された大地が解放されたのはほんの数十年前。あの大戦はすでにあとわずかで1世紀というのに、私たちの土地が解放されたのはほんの数十年前なんです。だから――――」
――それは、よくある民族対立として、片づけられている。けれども、その発端はどこか。きっとそれは、第2次世界大戦が人類同士の戦いから人類と化け物の戦争になったときからだろう。
「第一、どこに逃げればいいんです――? 隣国は国境を封鎖しまくってますよ? そしてどうやって逃げればいいんですか? 私は今孤児院をやっています。子供やお年寄りの足でどうやって――――」
彼女の声が響き渡る。言葉が、部屋の一室を支配する。
「――どうやって逃げればいいんです? そしてどこまで逃げればいいんですか?」
全世界の86%が泥沼化した紛争地帯。残された14%も大国が軍事力で押さえつけているだけ。倫理のタガはとっくにはずれ――人類は戦後処理に失敗した。
神妙な空気の中、変な気配が複数背後に。
翔は後ろを除く。見慣れない小さな子供たちが数人。
なーんだ。逃げ遅れた例のガキ達か……と再び正面を向いた次の瞬間。
「何やってんの?」 「おー、秘儀千年殺しは本当に効くんだな!」
「こ……の、く……そ、が……きが……!」
ひよりがあきれ、翔が尻を抱えて倒れこんでいた。
「こらこら、お兄さんに謝りなさい。謝りたくなかったら、最初からやらないか、最初から全力全快、文句が言えない死ぬまでやり続けなさい!」
「ど、ういう教育方針だァ!?」
笑っていた。この状況下でみんな。
「……クソッ」 「だって、当然じゃないですか。やるからには確実に! そして全力で! 生き残る鉄則じゃないですか!」
「えい」
ぶす。
「あっ……」
再び翔が尻を抱えて悶絶を始めたのは、その直後だった。