どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
2.
無反動砲。
それは本来屋内で撃つようなものではない。何故ならば強力なバックブラストが襲い掛かってくるからだ。
安易に使えばバックブラストで撃った人間が吹っ飛ばされたりバラバラにされたりする。
2本の無反動砲がお互いめがけて発射される。
『―― 鮮血砂漠の ――』
解説音声が、
『―― かの師団の敗退は、劣勢人種たる連中が中心となったが故の ――』 『―― ド・ゴール将軍は植民地独立を支持し、植民地出身の兵士たちのさらなる供給を ――』
『―― 優越民族たるわれらならば、必ずや勝利を収めると私は信じる! 神の祝福があらんことを! ――』 『―― 神の祝福演説に対し、宗派対立から ――』
何故か、頭の中に響き渡る――解説声。
目の前で炸裂するのは、ウォータータイプと呼ばれる水という緩衝材を使った結果、バックブラストを気にせず打てる無反動砲。そして、その砲門より発射されたそれの破壊音。
『―― 裏切ったのだ! 彼らはわれらの思いを! 独立の約束は嘘だった! ――』
『―― レメンゲトン総裁級2体を倒すためにわが民族は30万の犠牲で達成した! 奴らは45万よ! いかに奴らが劣等種であることを示しているか! ――』
そして、破壊の衝撃波と熱量が壁や柱を突き崩し、ホール2階部分の床建材が音を立てて、崩れていく。
『―― 軽雑兵級15万、重雑兵級7万の大軍に対し、7000トンの生化学兵器の溶液を投入し、あたり一面を生物学的・化学的汚染地域に変えることで対処し ――』
熱量。そして、衝撃波とその熱波。ウォータータイプの無反動砲が噴き出す水煙。
ホール2階部分は吹き飛び、翔は、その肉体を1階、石材の床に強くたたきつけられた。
痛みの――ブラックアウト!
「クッ――――っ!」
痛みの衝撃が背骨を揺らし、骨盤が響く。鈍い痛みが全身を走るが――――
(早く、立て! くるっ!)
ライフルのストックを杖に、立ち上がる。感じる嫌な視線。
右腰のポケット――煙幕弾。来る、銃口がこっちに向いてる――――伸びる手! そして、手に取るは煙幕弾!
走れ――――! 走れ――! 死にたくなければ走れ――!
銃弾が、大理石の柱を削る――!
跳弾が天井に小さな穴をあけ、その屑が大地へと舞い落ちる!
体重移動――失敗か? ふらつく体。
足に走る、鈍い痛みの様な信号。だが、すぐにそれは削除される。痛覚はすでに意図的に切っている。
それでも痛覚神経は必死に肉体の異常を頭脳に伝えようとする。――あわてて捻ったか?
吹き飛ばされて大穴があいた壁の向こう側へと走って――――
――足元で炸裂する、跳弾!
今、何かが、首筋を切る! 熱で切る! 空気で切る!
壁の向こう側へ――――!
7,62mmの銃弾――!
コンクリートブロックの壁ごとそれは翔のボディーアーマーへ、そしてその向こうの肉へと肉薄する!
そのまま、再び地面の床に体を殴打。ライフルを片手に壁穴向こうに引き金を引く。
「――ちっ、きしょぉぉぉ!」
叫びながらの連射。5.56mmの銃弾の特徴的な真鍮色をした空薬莢がアツアツの鉄板の様に肉を焼くのに十分な熱を放ちながら、翔の頬にあたる。
焼けた――
――お肉の匂い。
(――畜生。焼肉が食べたくなっちまった。腹はったな)
だが、食べられるのが俺様であってはならない。絶対にあってはならない。
(残念だが、焼き肉を食うのは俺様で、テメェらの分はねーんだよ!)
取り出した、手榴弾。口でピンを引き抜き、そのまま壁穴向こうへと投げる。そして、匍匐で移動。
――起爆の轟音と同時に立ち上がる。
衝撃波が館内を揺さぶるが、そんなもん、何度目だ、ど畜生。
むしろ、戦地の急増の建物であろうに、それに耐え切る戦争記念館の構造にあきれる。
『―― 生化学兵器を ――』 『―― 核の分散。これほど危険なことはない ――』
『―― 北九州において、炸裂された核兵器テロに対し ――』
響き渡る解説の音声たち。
こんなことになっても放送を続けるそれら。
そんな音声がいっぱいの展示室の一つに、翔は入っていく。
(――立体映像!)
AMX-13、第1世代MBTの姿が部屋いっぱいに広がっている。
(ガスの――匂い。いや、オゾンか)
ホロプロジェクターが映像投影に使っているオゾンガスの特徴的なにおい。
(……あまり長くはいられない)
翔は、道具を広げて――――
――ワイヤーを引っ張って無数のプラスチック爆弾が建物の床を崩して、階下へと兵士たちを叩き落としていく。
わざと2階へと上がったのはこのためだ。
とはいえ、1回使った手が2度使えるわけがない。
おまけに今回の崩落で一部の通路が使い物にならなくなってしまっている。
そして、ホロプロジェクターが使用していたオゾンが階下へと流れていく。
一定量を超えるオゾンガスの特徴である薄青い空気が階下へと流れ落ちていく。
翔は再び歩き始める。
やっとたどり着くのは、大戦期の兵器展示室。全部本物だ。バネ式の初期型無反動砲が転がっている。
最近の戦闘の余波で展示用の棚から落ちたらしい。
最も砲弾がなければ意味はないのだが。砲弾も一応展示されているが、信管が抜かれている。
抜かれた信管もまた、一か所に集められて展示されている。
今更取り付けたところで……いや、そもそも取り付けるような暇もあるのか。
とはいえ、使えそうなものは何かないか探す。
探して、結局古い銃剣を手に取るだけで終わる。
次のフロアへと移動して……
「あん?」
翔が仕掛けた床の崩落で謎の地下への階段を見つけた。見つけてしまった。