どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 既にここも制圧されている。 

 

(動けん!)

移動しようにも移動できない。だが、それ以上に――――

――積み上げられたゴムタイヤやごみの山。それに、ガソリンなどをぶっかけ、火をつけた……煙幕。

轟々と無数に立ち上る黒煙の火柱。

敵軍と自軍。その双方が放ったものだ。

一方は火炎のバリケードを張り巡らせることでこちらの行動を制限しようとし、一方は黒煙の煙幕でもって相手の航空機や飛行するドローンの類の行動を妨害しようとする。

どちらがやろうが寡兵が大勢を市街地で相手にする……民兵の類が正規軍相手に紫外線をする際のポピュラーな戦術の一つだ。

この煙が相手の行動を阻害し、市街戦をやりやすくする。だだっ広い野原や荒野では使われない戦術でもある。

信号弾は合流の合図でもあり、同時にこの黒煙の世界を作る合図だった。だが、それに対して敵もまた仕掛けておいたそれを発動させた。

見事だ。敵は重要な幹線道路などの類は覗いて狭い路地などを封鎖するように火炎を配置している。

黒煙に包まれながらも空を飛びまわるドローン。もちろん敵軍の物だ。

黒煙で視界が封じられ、火炎の熱量でよく見えない? それなら別の手段を講じればいい。

空から降り注ぐのは、奇妙な粉塵。

燃えたカスではない。この粉塵は――――

 

(――音響媒体!)

ソナーで探すだけ。空からソナーで探す。だが、現実にはエコーロケーションとも呼ばれるこの方式にはいろいろと問題がある。

音が伝わりやすい水の中ならともかく、空気中では雑音が多いため、効率が悪すぎるという事だ。

そこで、使用するのは『指向性音響』と呼ばれる一方向にだけ聞こえる音と、この媒体と呼ばれる粉塵上の物質だ。

とはいえ、ドローンは空に飛んでいるのである。回転翼機の様にホバリング……つまりその同位置にとどまっているわけではない。

それを解決する手立てとして――――

――増えていくドローン。次々と音響探査用の小型ドローン。テニスボールより少しでかいサイズのそれが増えていく。

2人の子供たち抱えて、どこまでやれる?

 

(心音探知とかされたらもう一貫の終わりだぞ!)

さすがにこの状況で、屋外でそんな真似が出来るとは言えない。いかに優秀なセンサーでもさすがにそれはないだろう。でも、音響探査されてることは間違いない。

動く物体を発見するのは案外簡単だ。対処法は――――

――虎の子を出すとしよう。

使えないから捨ててた、あの『戦闘防護服(コンバット・プロテクター)』。あれを再び取りにいけるルートを探す。PDA端末を使って探す。

脳内に地図をいくら叩き込んでも道順が一致しない。土地勘がない市街地。それも短かった準備時間だとこんなもんだし、市街戦の真っ最中でもある。

地形なんぞよく変わる。

やっとの思いで見つけたルート。走る。どうせ居場所がばれるというのなら、気にする必要はない。

とはいえ、念のためで、移動はすべて、窓と小さな路地である。

そして、たどりついた『戦闘防護服(コンバット・プロテクター)』のもとへ。

彼はそれを突然分解し始める。子供たちがその行動に最初驚くがすぐに道具を持って手伝い始める。

最も道具は一つしかないので、渡し役と見張り役である。

取り出したのは冷却パック。要するに冷却装置や放熱装置のパッケージ化された機械の箱だ。

『温度境界層(サーモクライン)』と呼ばれるものが海の世界には広がっている。

温度が違う水同士が触れ合った結果、生じる目には見えない境界線が発生する。

この境界線にはソナーが通じない。

この境界線で弾かれてしまうのだ。だから、潜水艦はこのサーモクラインがどの海域にはどこにあってどれくらい深く潜ればいいのかを探り、そして潜まなくてはならない。

潜水艦を狩る側はどこに、どの深さにそれがあるのかを把握し、できれば海底にセンサーを投入して、境界線の存在を無力化しなくてはならない。

だから――――

――パッケージ化されたそれが、起爆し大量の冷却材が大地に吹き上がる。

圧力でもって強引に小さな立方体にされてたものが解放され、急速に周囲の温度を下げていく。

その冷気が、空気内に、『温度境界層(サーモクライン)』らしき何かを一時的かつ瞬間的とはいえ、形成していく。

(あの量なら、水蒸気爆発は起きない……か……。起きたらおきたで方法を考えてはいたんだが……まぁいい)  

持って数分程度。数十秒ですら怪しいし範囲もそれほど大きくはない。それでも――――

(――空からの音響センサーに引っかかるような状況からは解放された)

まるで、おんぶ紐のように、1人の子供を背負っい、胸元に抱え込んだせいで、なんか逆に子供を盾にしているようで気が引けるが、この状況でフードをかぶる。

例の携帯天幕だ。

 

「寒くはないか? いや……熱くはないか?」

子供たちの反応は少ない。仕方ないかもしれない。この子たちは間違いなく『生産目的喪失型所属不明者(アウトサイダー)』となったのだ。

アウトサイダになった……。どうしていいかわからない。何もかもわからない。

この世界では数多い、戦災孤児の一種になった……。

自分がそうさせた……。

走る。走る。奔る――――――――――

                        ――――止まった。

道が、燃えている。車両が、燃やされている。明らかにわざと!

どういう事だ? この道の封鎖は予定には――――

――予定第2ルートめざし動き出す。

予定が役立たずになることくらい予測できなきゃ戦争何ぞ出来ないものだ。

だが、その第2ルートも封鎖されている。なら、第3ルート。

いや、まて……何故こうも行き先が封鎖されている。まさか第3ルートも封鎖済み……か?

地理は万人に平等であり、長期にわたり不変の唯一の解である。

背中を軽くたたかれる感触がある。子供たちだ……。

指さす向こうは高射砲塔。

そうだ、あそこなら、周囲に安易にバリケードを張り巡らせることができにくい空間だ。

あの周辺を迂回して移動する新規ルートを脳内に構築。よし、終わった。行こう。

彼は気が付いている。その新規ルートはどうあがいても合流に時間がかかることを。

でも、確実に安全に移動できそうだという事を。そして、高々歩兵一人考え付くこと、将校が考えないわけがないのだという事を。

そして、自分の合流相手もまた、時間がかかっている状況からそれを想定するだろうという事を。

弾数は……まだありはする。手榴弾。数は足りてないが……それでも何とかして見せよう。

――いい焼き加減のお肉の匂い。

それが教えてくれるのは焼け焦げた何かの存在。

翔は一瞬だけ、顔をゆがめて――――再び走り出した。行き先は高層ビル。高層ビルといってもこの紛争地帯の集落において、数少ない3回以上の無事な建物だ。

最も、そういうのは無事に見えてトラップだらけだったり、敵の陣地だったりするわけだが。

けれども、それでも。翔はそれに向かう。向かって行って――――。

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