どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 やっとの思いで合流場所についた。

しかし、目当ての人間はいない。待ち時間は120秒。

1……2……3……と数を数える。

数えながら周りを見渡し、何らかのメッセージ類が隠されていないか探る。

なさそうだ。時間が来た。移動する。ここがだめなら別の合流地点へ。

問題なのは、もしも次の場所でもダメだった場合だ。

万が一に備えてそんなに多くの場所は指定していない。

何しろ、移動するだけで骨が折れる作業だ。特に今は。

だからこそ、かえって無駄な行動を強いかねない。だから、あまり多くの場所を指定していない。けれどもだからこそ、こういう時面倒なことになる。

そして、それ以上に――――

 

(――まさかとは思うが、あいつ……)

直後、爆音が町全体を響き渡らせた。

方向は――――

 

(――まじかよ)

翔たちが出来れば行ってほしくなかった場所。

翔たちはある区画には連中に行ってほしくなかった。だって、基本的には敵の1個小隊を足止め、できれば撃退することで、時間を稼ぎ脱出中のガキどもの安全性を高めようという物だったから。

けれど、そこから響く爆音。

ああ、間違いない、緊急事態だ。万が一に備えて用意していた大量の爆薬に火が付いた。

最も、大量といってもシルビアの豪邸だったところに保管されてた期限切れの危険なものだ。不安定で危ない代物だが、それしかないのだから仕方がない。

とはいえ、それが使われた。ああ、という事は…………。

 

「いかなきゃいかんな」  「「?」」

小さな瞳がこちらを見ている。ああ、こいつらをシルビアたちに引き取ってもらう必要もあるし。

翔は再び駆け足で移動を開始する。

再び小さな音が聞こえる。ボール状の何かがバウンドする音。

索敵ドローン。AKSを担ぎ走り始める。ああ、早くガキどもを開放したい。どうしても足が遅くなる。

銃声が聞こえてきた。かなり多い。いや、多すぎる。無数の銃弾が無限を思わせる数、飛び交っているイメージが浮かぶ。

銃声の数がさらに一気に増えた。まるで『突撃粉砕』の真っ最中。敵かそれとも脱出しているガキどもを守っている老人たちの引き金か。

あまりの多さ。やばい、これは本当にやばいかもしれない。

『最終防御射撃(F.P.F.)』――「突撃粉砕」とも呼ばれるそれは分隊規模、小隊規模の部隊を防衛する最終手段だ。簡単に言えば狙いを定めるあらゆる火器を動員して範囲攻撃射撃を敢行することで敵の突撃突破を破砕することを目的としている。

元々はWW1における夜襲対策が始まりだといわれている。夜、怪しいと思った場所にありったけの銃弾を撃ち込み、その銃声を聞いた後方の砲兵が規定量の砲弾をさらにぶつけるという二段構えの緊急火力集中攻撃。

まるでそれを思わせる何か。

無数の砲声、銃声、爆音。

翔は走る。だめだ、足の速さでは間に合わない! 何とか、移動手段は他にないか。

考えても出てこない、周りを見てもない。やはり走るしかない。周りを警戒して走るしかない。

走って、走って走って、走って走って奔って――――――――――

――走って、奔って――――――――――――――――――――――

――――――

――――

――

黒煙があたりを汚染する。空気を、建物を、道路を、あらゆるものを真っ黒く汚染している。

激しく轟々とした何かが走ったのか、大地に大きな裂け目が出来る。

それは衝撃波。それは衝撃波によって引き裂かれた大地への爪痕。

この町の住人だった爺の胴体が転がっていた。

この町の住民だった婆のものと思われる頭らしきものが転がっていた。

それが、頭部であることがわかるのは髪の毛と思われる何かが、べったりと張り付いているから。

ライフルの実包が無数に転がっている。そして、同じように真鍮色の空薬莢が山の様に。

実包はおそらく、期限の切れたもので、この町が死蔵していたもの。空薬莢は使われたもの。

よく見ると、それは6.55mmの新生日本連邦が中心になっているアジア枢軸の共通規格弾丸と5.45mmのロシア共和連合が中心核の連合東側の共通規格。

6.55mmがこの町にもともと住んでいた爺婆の使う弾か、5.45mmが敵の弾丸か。

敵はAKS-74Uだし、よく見なくても当たり前なのだが。けれど転がっているだけ。そこに――――――

――反乱軍……自称正統軍の「お金」が見えた気がした。

ゲリラにとって、空薬莢は資源だ。リサイクル可能な資源だ。全部は無理でも空薬莢は次の弾丸を作るリサイクル資源だ。

全部は無理だが、それでも一人当たり数発程度は拾っておきたい。けど、それをした様子が見えない。豊富な資金力。

ドローンの大量運用を見ても彼らがそれだけ豊富な資金力と資本力を保持しているように見える。

だが――――であるならば、何故こんなにも物量が少ないのだろうと思う。

結局のところ、翔はいつも通りの結論あるいは、事前情報に行きつくしかない。

本当の物量を保持しているのは、あくまでも政府軍の側だ。本当の資金力を保持しているのはあくまでも政府軍だ。

反乱軍はどこぞの大国の援助を受けた存在だ。

だから、本当に自力兵力的な意味で物量を保持しているのは政府軍の側で、政府軍に言わせれば反乱軍は大国からの援助で見せかけの物量を保持しているだけである。

無論政府軍だって、どこぞの勢力、国家の援助が一切ないとは言えない。とはいえ、自力で物量を兵力をそろえたという誇りの様なものが漂っていたりする。

そして……この大量の空薬莢からはそれを感じない。

感じることがない…………。

 

だから――――

 

――――――なかなか増援が来ない。

 

あの坊主たちが来ない。

そう考え、今はそんなことを考えている暇はないと引き金を引く。

どうせ、もともと一か八かの方策だったのだ。このような結果になるのは仕方ないことだ。

少年兵が来た。いろいろと疲れ果てていたが、技能は確かでありそうだ。少なくとも、あの大戦期以降戦い続けた、ただの老兵だった何か……でしかない自分らに比べればはるかに使える有能な兵士たちだろう。だから、こいつらが戦ってくれればきっと……。

しかし、これだ。今は自分たちしかいないのだ。

引き金を引く。M1A1カービン。

こいつの使える7.62mmは残り少ないというのに、自分の手元の銃はそんなものしかない。

連続した銃声。これは、軽機関銃か。

誰かが――おそらくは仲間のジジババ、あるいは10にもなってないガキ――RPKの引き金を引いている。

やれやれ、もう銃弾も少ないのに。

飛び出した空薬莢が腕に当たった。

熱いけど、熱くない。体が訴えている。銃が重いと。

そして、そこに――――

――何かが次々と落ちてきた。

空からドローンだったものが、そして大量の実包が。

思わず目がそっちに行く。

彼一人だけでなく、なんだかんだでじいさんばあさん、そして10にもならないガキの目線が実包へ――――

――そして、反乱軍兵士たちは物が落ちてきた空へ。上へ顔を上げて

直後、空気を切り裂く様な音とともに、反乱軍兵士たちが1人、2人と倒れた。

「弾は豊富にある。腐るほど。だからこそ、むしろ弾がやってきたところを真っ先に見る。例え一瞬だったとしても、お前ら……隙を見せたな? 顔を上げたな?」

AKS-74Uの銃声。

無数に鳴り響いていた銃声。だから、銃声が一つ増えただけだと耳が感じ取れなかった。

それは空気を切り裂く音で、反乱軍の兵隊の顔面に弾丸が撃ち込まれる音だった。

 

「頭を上げた奴を撃つのは簡単だろ。で、お前ら、何人殺されりゃ引いてくれるんだよ。クソ野郎」

戦車小隊とそれの随伴歩兵。敵は所詮そういうもの。だというのに、何人殺されりゃいったい引いてくれるのか。

もう10人近くは殺している気がする……。だが、あくまでもそれは翔の目線。

ひょっとしたらまったく致命傷になっていないのかもしれない。

身を隠す。銃の射線から身を隠さないと危険だ。さすがに奇襲になっているので、相手も気が立っているだろうし。

直後、大きな音が鳴った。

轟音。衝撃音。破壊音。

戦車砲の砲撃。建物の壁が吹き飛んで直後、瓦礫を突き崩しながら戦車が現れる。

そして、その砲身をこっちへ――――

 

「――やッ!」

携帯天幕ひるがえして、走り出して――――機銃の弾が足に当たった。

とっさに外す。抱えているガキどもの紐を。

崩れ落ちる体を強引に、体内の金属骨格を使って支えようとする、しかし、金属の異音が頭蓋骨に響く。

最後の『調整』から時間がたった。強引な戦いの連続により疲労しているのかもしれない。

銃身を杖代わりに瞬間的に体を支える。

そして、倒れる。

そのまま身をひるがえして、拳銃取り出して敵へ――――

 

「――IFV!」

装甲で身を包んだ敵。

拳銃で通じる相手ではない。

そして、その車体にくくりつけられるような――――ひより。

――誰かの悲鳴。少女の声。

銃声。崩壊。

爺が撃ち殺された。婆が死んだ。そして、ガキどもが引っ張り出される。

即座に打ち殺される気はないのか、それとも――――適当な戦力として「再利用」しようと考えているのか。

拳銃が蹴り飛ばされた。いつの間にかすぐそばに一人の葉巻の男。

男がサブマシンガンを片手にその銃口をこちらへ。

 

 

『――2人とも伏せてろ!』

頭の中で声が響いた。

エンジン音。戦車やI.F.V.の車両エンジン音。それに隠れて――――

――戦車兵がポップアップされた警告ウィンドウに気が付く。

ジェットエンジンそして、ロケットモーターの稼働音。

センサーが感知した何かだ。

戦車兵が声を上げる。

何かが、来る。甲冑が――――甲冑が!

轟音と共に、それはやってきた。

直後、H.E.S.H.(粘着榴弾)が戦車装甲を吹き飛ばした。

轟々と、噴煙を吐き出しながら、ブースターウィングによって大空を滑空しGN-11Bが現れる。

頭部にはT字の緑色のスリットがついており、流線型の形、人の手にあたる場所には親指に当たる機械の指は常に内側、つまり手のひらの上に存在し、また、全部で5本の指ではなく、4本の指となっている。

足は、まるで神話の怪物を見るように、そして恐竜のように爪を持った長い指が前に3本、後に2本とそれぞれついており、それが二足歩行というバランスの悪い歩行法を可能にしている。

だが、その足は使われていない。

背中に取り付けられたロケットモーターや滑空翼が滑空を可能としている。

強引に作り上げられた揚力による強襲侵攻。

4連装ロケットポットを構えて、鎧の内部で誰かが引き金を引く。

飛び出すH.E.A.T.のロケット砲弾。

アクティブ防護システムが稼働。

戦車側面よりアンテナ上のそれより小さな単身が放たれる。

そして、1発目が空中で迎撃されて爆破。

2発目が戦車の『金網装甲(スラットアーマー)』を打ち破る。

3発目が側面装甲へと

4発目で、ついに装甲を貫通。戦車1両撃破。

取り出すのは対装甲大剣。

高周波と微細なナノレシプロソー連結体の力で強引に装甲に切れ目を入れて、大量の液体火薬を流し込むそれ。

切っ先のジェットブースターが稼働し、その大剣の振り下ろされる力が強化され、足の爪が地面を接触。

大地をえぐり、接触点を起点にブースターウィングの生み出す推力をそのまま振り回し戦車砲塔へと大剣を振り下ろす。

足の爪が大地を蹴り上げ再び宙へ。ブースターウィングが『再加熱(リ・ヒート)』モードへ。

ジェットノズルから青い焔が吹き出しその場を一気に離脱。直後戦車砲塔に突き立てられた大剣から火が噴きだし、戦車2両目が激しい火柱を衝撃と共に上げた。

最後の加速。すべての燃料をつきこんで突撃するのは1両の戦車へ。

右拳を握り、甲の部分に収納されていた一枚の板状の兵装が突き出して……

……そして、足の爪で再び強引なターン。

板状の兵装――――それは『破甲爆雷』。

ターンした先には3両目の戦車の側面装甲。アクティブ防護の機構が働いて、迎撃短針が放たれる。

だが、それを無視して、破甲爆雷が装甲をぶち抜いた。

そして、場違いなほどの軽快な音と共に、爆炎が上がった。

ブースターウィングはパージされ、あちこちから火の粉が舞う。たった1体の重装歩兵が登場して1分と立たないうちに戦車が3両、I.F.V.が1両撃破されていた。

 

「クソッタレ」

葉巻の男がそうつぶやいた直後、無反動砲が火を噴き、セグメンタタへと砲弾が飛んでいく。

と、同時に葉巻の男たちはもちろんの事、兵士たちが翻る。

13.1mmの50口径銃弾がそんな兵士たちへと向けられる。

無反動砲の砲弾はGN-11Bセグメンタタのアクティブ防護システムの迎撃短針によって撃破される。

しかし、全弾は落とせない。

けれども、すでに無反動砲が狙っていた場所にはいない。大地を傷つける足音と足跡。

現代に復活した重装歩兵、マニュピレート・セグメンタタ。GN-11Bが戦場に君臨するように立っていた。

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