どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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第7章 「障害システム――Militiamen in hope of independence.」
1.


  どこまでも俺様主義 Re-make

  Episode.1:砂漠の国の紛争  第7章 「障害システム――Militiamen in hope of independence.」

 

  1.

 最初の第一声で台無しになった。

 

「よぉ、森野に、ひよりんで、こぶつきだなぁ!」

次の瞬間、トトの体が空中に吹き飛ぶ。

 

「誰が、こぶつきだ、誰がっ!!」

まぁ、確かにぼろぼろの2人組、そして、その後ろについてくる無数の子供たちと1人の女の子。この風景は――――

 

「――死のハイウェイでも通る難民家族?」  「すっごく嫌なたとえ方なんですが……」

「……貧民ごときが子だくさんだな」  「おい、それ、誰に対して?」

ジェンのその評価に思わずそう返すしかない翔であった。

ようやく合流して、感動の再開――のはずが、このざまである。

 

「まっ、感動の再開シーン……って感じでお涙頂戴BGM流されるよりはいっか……」

「…………流してほしかったか?」  「!?」

いつも無口な戦闘工兵リンの言葉と、その手元の端末から流れだされる壮大なBGMに妙な驚きを感じながら、翔たちは歩き出す。

……歩き出す。あるきだ――――

 

「――あの、なんで私の存在が無視されているんですか!?」

シルビアはたまらずそう叫び出した。

 

セグメンタタの介入。

あの町で起きた戦闘はそれだけで終わりを迎えた。

そればかりか、そのままセグメンタタの1個小隊近くの重装歩兵人員が街に足を踏み入れ、敵は撤収した。

だが、同時にすぐ近くに反乱軍の爆撃機部隊が飛んでいるという情報も彼らによってもたらされ、避難民を連れて小隊は移動を開始したのだ。

 

「鎧が歩く。足のない俺様たちがその鎧に張り付く……うん、そこまではいい。が、何故」

翔は、心の底から、謎であるという口調で、そして、落ちそうになる体を踏ん張る。

そして、そんな彼の頬を引っ張る小さな手が――――

 

「――だからいてぇっつーの!」

「……離してあげなさい」  「はぁーい、ねーちゃん」

シルビアのその声でようやく話す子供たち。なぜか、翔の体にへばりつく小さな男の子、女の子たち。

いや、女の子のほうはひよりなどの女性のほうに当然引っ付いているか。なぜ~か、翔に引っ付いて離れようとしない一人を除けば。

 

「懐かれちゃったわねぇ~ロリコン」  「俺様は無実だ。何があろうと常にな!」

「……いや、そんな曇りのない目で言われても逆に困る」

そんなこんなで、合流した味方――――

――すなわち、学院傭兵軍第3軍団、第3打撃大隊テミドール中隊J小隊の仲間たちである。最も全員そろっているわけではない。

翔が所属していたS分隊が中心といった程度である。 

セグメンタタの場合、特に学院傭兵軍では次のような人員編成だ。分隊6人。小隊20人。

そして、今ここにいるのは翔とひよりの2人を合わせて十数人程度。

厄介な話だ。

たったそれだけの人員でお荷物な避難民連れて大変なのだから。

老人たちは一人の疲れて寝ているばあさんを除いて全員がもういない。散っていった。

子供たちだって、全員は生きていない。

おまけに爆撃機の編隊が近づいているという話がある。出来る限り、早く動いてはいるが、基本は……見ての通り歩きでの移動だ。

セグメンタタのエネルギーから言って稼働時間に限界点だってある。

だからこそ、今のうちに速度を稼いでおきたいが、現実的ではない。

とはいえ、必死に距離を稼いでいる。出ないと爆撃に巻き込まれそうだ。

最も、爆撃機の部隊の目的がなんなのか、わからないから爆撃されるのかもよくわからないが。

少しずつ、GN-11Bの音響センサーがそれの接近を伝える。

 

「……音響算出想定機種『アブロ・バルカン』?」

戦術A.I.が伝える音響センサーの情報から読み取れる爆撃機の群れ。その機体。

 

「名機……だが、骨董品!! 部品供給的な意味で金食い虫! それも戦略爆撃機の類…………。反乱軍めぇ……お金持ちめぇえええ」

翔は激怒した。ブルジョワジーの権化である戦略爆撃機に対して、激怒した。

必ずや、あのブルジョワどもに一泡吹かせてやろうと――――

 

「――はいはい、そんなこと言ってないで、そろそろ自分の足で歩けや」

強引に鎧の中をのぞかれて……まぁ、掴みやすいようにわざと装甲版を一部開いているのでそれが出来るのだが、結果としてそういった各種情報を見ようと頭を突っ込んでくる翔にいい加減いら立ちを隠せないトト。

鎧につかまる人間が、1人、2人、3、4、5、6、という人数のおかげで、荒野の大地に1歩、鋼鉄の足が踏み出すたび、地面に大きな足跡が付く。

そのうち、落とし穴か何かに引っかかりそうだ。

二足歩行という物はそう言う意味では問題が多い。

しかし、人間が二足歩行で世界のあらゆる場所へ1歩を踏みしめたがごとく、適切な重量と扱い方をすればそれらはカバーできる。まぁ、登山とか手を使って四足歩行みたいなことにもなるけどね。

が、今の状況は適切な重量と扱い方だろうか?

 

「「だぁ……! ガキどもうっせえええええ!」」  「ちょっと、子供相手に何言い出してるの!」  

「そうですよ! みんなちゃんとお名前があるんですからね!」

翔とトトの思わず重なった言葉にシルビア参戦状態で女子たちから攻撃が始まった。

そこに、音が聞こえる。何かが爆弾を投げる音。爆発の音。

もうそれが何かはわかる。間違いない。あれは爆撃機の編隊が何かを熱心に爆撃している音声だ。波動だ。衝撃音だ。

一体どこを爆撃しているのだろうか? 方向としてはさっきの街に間違いない。だが、距離が合わない。

不可解な爆撃音が続く中、音響センサーがさらに新たな目標が接近してくることを示した。

これは……偵察用のドローンだ。

対処法は、2つ。無視するか撃墜する。

何せ、この大人数。素人も混じっている。偽装なんぞする暇がない。

だから、その2つの選択肢。

 

「どうせ、もうばれてんだ! 落っことしたほうが、相手も探す手間がかかる!」

「迎撃せよ!」  「あいよ!」

携帯式地対空ミサイル。

念を入れて2つのポットが稼働する。FIM-43E-AE レッドアイ・Type.AE・ブロック7

大量生産され、今も大量に世界中に出回る旧式携帯式地対空ミサイルのベストセラーの一つ。

ただし、本来のそれはあくまでも歩兵が装備するべきものであり、歩兵が持ちやすいようにできている。

鋼鉄の腕が簡単に持って操作して、撃てるようにはできていない。だからセグメンタタが持てるようにいろいろと改良した結果、二連装の使い捨てミサイルボックスになっている。

2つの筒が上下に並ぶようなフォルムの何かがそのまま長方形の箱に突き刺さったような形状。

それが2つ天へと掲げられた。

見えてくるのは偵察用の飛行ドローン。

高高度偵察でもされりゃ、ミサイルが届かないのでお手上げだったが、そういうわけでもなく高くもなく、特別低くもない高度。

なら、落とせる。

1発目が放たれる。直後に2発目。セグメンタタの頭部防空レーダーが感知するドローンに向かって、ミサイルへの誘導を開始する。

最もそれはちゃんとしたそれと比べるとあまりにも荒い。所詮は小さなお人形に乗せられた小さなレーダー。

だからこそ、あてには出来ない。それでも――――レーダー波形は確実にドローンをとらえていた。

ロックオンされたことを感知したドローンはチャフとフレアを放出し、加速上昇へと転じる。

ドローンのその行動――――しかし、天に向けられた携帯式地対空ミサイルは一つではない。

予測位置測定演算プログラムに基づき、そういった回避行動を予想した戦術A.I.による補正。

1発目は回避されたが2発目がドローンへ

 

「3……2……1 『迎撃(インターセプト)』!」

もう1セットは必要なかったか……という空気が流れる中、再び音響センサーが飛行物体をとらえる。  

砲爆撃飛翔ドローン。移動する地上目標を専門的に攻撃するそれが近づいている。

 

「……偵察を焦って迎撃した意味なかったか?」  「クソッタレ、CASドローンは厄介者だ! 群れで来る前にあれも落としておくべきだぜ!」

「待ちなさい! 落としたところで、次が来るというのなら、今はSAM(地対空ミサイル)をケチっておくべき」

「ケチって死にたかねーわ」

意見がわーわーぎゃーぎゃー。しかし、分隊をまとめるジェンはすぐさま決断。

 

「落とせ! 使い切ってから考える! 最悪、鎧を囮に足で逃げるだけよ!」

「あいよ」

トトはすぐさま、空からくる敵にセンサーの能力を集結させる。

何せ、数少ない地対空ミサイルだ。できれば1発、2発で仕留めたい。

とはいえ、不意打ちがあっては困る。もう1人がその鎧のセンサー系統レーダー類を空ではなく地上から襲撃してくる敵を索敵する。

が、そこに奇妙な雑音の様なものが混ざり、センサー系統に異常が発生していく。

 

「クソッタレ! ECMの類か!?」  「トト! どうした!?」

「こちらでも観測している! やばいぞ、レーザー誘導に切り替えろ! このままじゃ何も見えなくなる!」  「音響センサーはどうなっている!?」

「乱反射している。何か妨害物質をまかれている! 濃度次第じゃ100メートル先の音もろくに聞こえなくなるものだ! 人体への有害性だの何だの反乱軍めぇ!」

直後、無数にCAS(近接航空支援)専門のドローンの群れが飛んでくる。

そして、空に撃ち上がる無数の地対空ミサイル。どれもこれも自分たちで撃ち上げたものではない。

この高出力のECMや妨害物質の中でも、センサー系統が警報を出す。

気が付けば――――どこに潜んでいたのやら。無数の民兵が囲んでいる。

AK-74アサルトライフルの銃口が無数に向けられる。

T-72の砲門がこっちに向いている。センサーがわずかにとらえた2キロほど離れた先に隠されていたTOS-1ブラチーノの連装ロケット砲すらこっちを向いている状況下。

というか、どうやって今の今まで隠してきたのか。

 

「……」

ジェンは自分たちの状況を考える。子供たちとその保護者という厄介な邪魔者。

鎧を喪失した者たちが何人かいる、肝心の鎧だって、実のところエネルギーや弾薬は乏しい。

小隊長として下す判断は一つしかない――――。

 

「――…………こちらには避難しきれなかった難民も抱えている。できれば和平調停機関が求める決勝規定にのっとった扱いを求める」  「……それくらいなら構わない」

砂漠のど真ん中。いや、砂漠といっても延々と砂の大地が続くわけではない。

砂漠というのは降水量が極端に少なく、乾燥した岩ばかりの大地の事だ。その岩が崩れて砂になっているだけなのだ。

故に、岩場じみた場所……それが、砂漠だ。

そして、岩に見えてたそれは演算電子パターン迷彩。

彼らは――――「独立派」。

カランド紛争を構成する三大勢力。その一角。それと接触した。捕虜として。

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