どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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 独立派は政府軍や反乱軍と違い、資金に恵まれているとは必ずしも言い難い。また、もともとは強権的でありかつ部族的である政府に対する多部族・反政府地域による独立闘士の民兵集団でしかなかっため完全な組織だった指揮系統が存在しない。

そのため、『独立のための将軍委員会』という組織の統制のもと、各地の将軍たちが個別であるいは協力しあった上で戦いまくるという方式をとっている。そしてそれは今、決勝戦プログラムという面倒なことが行われている、この瞬間も変わらない……らしい。

つまりは、結局のところ軍閥の連合体といえよう。

そして、その中でも特に恐れられる独立派民兵の将軍、軍閥の親玉の一人が――――

 

「――『砂漠のナポレオン』ねぇ~。なんかやたらド派手で、バカっぽく聞こえるぞ」  「そんなもんでしょ。それっぽくかっこよく聞こえたらOKの世界なんだから、戦場なんて」

「まっ、難しい名前とか単語とかは基本はやらねぇからな。……よく考えたらかっこいいネーミングに聞こえてきたぞ。だってよ――――」

――――翔がその身振り手振りで説明する話。

その中身は――――

―――― 一人の男が、用を足しているとき、とたんに背後から味方の罵声が響く。

 

『敵襲だ! じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ くうねるところにすむところ やぶらこうじのぶらこうじ ぱいぽ ぱいぽ ぱいぽのしゅーりんがん しゅーりんがんのぐーりんだい ぐーりんだいのぽんぽこぴーの ぽんぽこなーの ちょうきゅうめいのちょうす、が攻めてきたぞっ!』

 

 

「言い終わる前に打ち殺されるわッ!」  「そもそもなぜ、トイレタイム中なのかよくわからない……」

ノリ突っ込みの翔と、ノリに乗り切れなかったひよりのコメント。

 

一人の男が用を足しているとき――「あっ、そこからまた始めるんだ」――とたんに背後から味方の罵声が響く。

 

『敵襲だ! ライオンが攻めてきたぞ!』  「何!? ライオン(動物)? そんなことで騒ぐな、撃ち殺せ!」

「――どうもみなさん、電怨(ライオン)です」  バラバラ(攻撃ヘリのエンジン音)

 

 

「夜露死苦ッ!」  「なんで日本語なの!? つか、レーダー要員今まで何してたん!?」

「KYB-OJ11だったんだよ、たぶんな!」  「あの駄作機まだ、使われてたのか!?」

「えっ? 2人とも何の話をしているの? カ号系統のあれの話? えっ? あれって計画機じゃなかったの!?」

「つか、わかりやずら! 素直に、オライオン(P3-C)でいいじゃん!」

 

一人の男が用を足しているとき――「まだ、続けんのかい」――とたんに背後から味方の罵声が響く。

 

『敵襲だ! ま○こち―ピ―こうんち○こせくーすのやり○ん―ピ―りまんが攻めてきたぞ!』

 

 

「「「……変態」」」  「まて、何故、みんな、俺様をそんな目で見る?」

 

一人の男が用を足しているとき――「もう、いいよ」――とたんに背後から味方の罵声が響く。

 

『敵襲だ! 「動くんじゃないぜ? 俺の一物がテメェのケツを掘りたがってる」が来たぞ!』

 

 

「「「ホモじゃったか……」」」  「まて、さっきはこっちの味方をしてくれた男ども、何故逃げる」

「そういうのも一つの人間だと思うよ。うん、文化だよな」  「ああ、そうだな、尊重はしてやるぞ。俺はそっち方面じゃないけど」

「だから、何故逃げる!」

翔は、そう叫ぶが、普段は一緒に馬鹿をやってくれるトトですら引き気味である。

 

「まぁ、要するに、砂漠のナポレオンが一番無難だってことなんだな!」  「だから、何故俺様から離れるんだッ!?」

そして、そんな連中の会話を聞いた、民兵たちが汚らしいものを見るような視線を向け、シルビアは必死に子供たちの耳をふさごうとしていた。

さすがに反省した。

―― 閑話休題 ――

 

「で、どうすんだよ」  「どうもしないでしょ」

石でできた牢屋。縛られ、その部屋に入れられたJ小隊と流民のメンツ。

ここは独立派の拠点の一つというか、勢力範囲下そのものの『アラフジーク山岳』のどこか。

 

「縄のようで縄じゃネーな。切れない」  「グラスファイバーを編んだ奴だよ。そう簡単に切れない」

ふてぶてしい言葉で縄が切れないという翔をあきれたような視線を向ける見張りの兵士。

 

「……言葉わかんのか?」  「一応、五大国の言語は全部脳にインストールしている。だから、読み書きや専門会話にはついてけないけどこうしてちょっと日常会話する程度には使えるよ」

翔と小隊のメンツは目を合わせる。どうやら、彼らのわからない日本語で脱出計画を練る事は出来ないらしい。最も意味が分からないらしい子供たちはきょとんとしている。

 

「さっきの、うちの将軍を茶化した会話も当然聞こえてた。……将軍にチクっていい?」  「「「やめて! やるんなら、こいつを生贄に!」」」

「おめーらっ! 俺様を! 差し出すなァ!!」

そして、笑い。牢屋とはいえ、そこには人がいる。

人の笑い声には――場を和ませる効果があるらしい。と、同時にスイッチでもあるようだ。今まではこれでおしまい。これからを始めようと。

 

「さて、君たちは結局どうする――?」  「……」

翔は黙る。この場で会話として言葉を出ていいのは一人だけだ。

 

「……あなたたちしだい……ではなくて?」

小隊長、ジェニファー・スコット。彼女の役割である。

 

「…………そうかもしれないな。……正直わからないよ。捕虜は今まで何度もとってきた。そして丁寧に反してきた。将軍がそうさせていた。あの人は言った。理性のタガを外すな。外せば相手も外す。たとえ、今、この瞬間に外れていたとしても……俺たちが外さすそして、強く戦い続ければいずれ敵も理性の兵となると」

兵士の言葉にこもる力。

 

「……かつて、戦争には理性があった。敵に対する尊厳があった。そして絶対に超えてはならない壁を人類はみな知っていた。その壁の名前を――『人倫』といい、その人倫の壁を『戦時国際法』とも呼んだ。将軍はいつもこういってたよ。ばぐ、じぇねぶ……パリ不戦協定。美しかったものが失われてしまったと」

まるで何か特別なものを知っている優越感に浸る信奉者の顔。

いや、信奉者そのものだ。

 

「…………奴らが奮う暴力から身を家族を仲間を守る……そのために暴力を奮うのがいけないというのであれば、国家が国外で自衛と称して暴力を奮うのもいけないことだ。将軍はおっしゃった。部族は美しい。自主自立への思いはもっときらびやかだ。

将軍はおっしゃった。将軍はおっしゃった。政府が、反乱軍が我らの背中にナイフを突き立てた。そしてナイフの刃先を半分まで取り出した。それを……ナイフを取り出したことを政府や反乱軍に感謝しなくてはならない道理はない。そうだろ? 将軍はおっしゃった。

でも決して、あきらめてはならない。人びとの間に、愛がなかったら、人生は寂しいものになるだろう。優しさこそが人間にとっていちばん、大事なものだし、理想の社会作りへの第一歩そのものだと。将軍はおっしゃった……おっしゃった……おっしゃった…………」  

兵士の顔は恍惚とした表情を見せ、偉大なる神をたたえる言葉を唱えるがごとく将軍をたたえる言葉が…………途中で止まる。

止まる。止まる。止まる。

まるで――――将軍をたたえる言葉すら見つからないほど高次元の何かをそれでも表現しようとして、結局は何も口から出ないように。

信奉者、信仰者、そして伝道者。

彼は兵士というよりは――――そういう存在だった。

 

「……聞くがよ、それは洗脳とかじゃなくて、本物か?」  「……もしも洗脳だったとしても、私は喜んで洗脳されるよ。あの方はみんなの……ぁ……あ……ダメだ。言葉が見つからない」

『独立派』の英雄。多くの兵士たちをひきつける『戦場の支配者(ロード・オブ・ウォー)』。

本物のカリスマなのか、それともただの洗脳技術を操る面倒な奴か。

翔にはどうにも判断できない。

それよりも面倒なことはこういう狂信者じみた奴らは敵に回すとすげー面倒だという事だ。

まぁ、うまくコントロールさえできれば鉄砲玉として最高だけど。それにはまず味方じゃなきゃね。

 

「だが、正直な話、今は捕虜どころじゃないんだ。君たちを監視する為最低でも2~3人の兵士をこっちに貼り付けなきゃいけない。食事だって用意しなきゃいけない。2、3日程度ならいざ知らずこれが決勝戦プログラムの期間中ずーとっていうのは無理なんだよ。

機密漏洩そのものだが、これが実情だ。だからこそ将軍が君たちを捕虜とすることに何の意味があるのかと。決勝戦プログラムの規定だって、それこそ『凍結処理』が認められているのに」

兵士の言葉。注意するべき同僚もまた何も言わずただ、突っ立っているだけ。

なるほど、いかに将軍様とやらがすさまじいカリスマの持ち主だったとしてもギリギリのお財布(経済的な意味でも兵力的な意味でも)を知れば知るほど無駄な事をしているように見えているわけだ。

 

「ハハハッ、耳が痛いな」

そんな、ところに、響く男の声。

兵士たちの背筋が伸び、牢屋の捕虜たちも声の方向へと目を移動させる。

砂漠のナポレオン……そう呼ばれる将軍が自らの侍従を引き連れながら現れた。

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