どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争   作:ホエール

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6.-7.

  6.

 砂漠のナポレオンが椅子に座っている。

目の前には無数のモニター。敵軍が次々とアラフジーク山岳地帯各地に設置したセンサーにとらえられてその場所を教えてくれている。

最も、敵側もまた、こちらのセンサー系統に対する電子戦を展開している。

これらの情報が真実であるとは限らない。

何せ、どんなにセンサーを張り巡らせようとも、基本的に情報は伝わらないと意味が無い。

 

「敵の偵察ドローンはこちらのECMとブービートラップで対応するとして……」  「将軍。急ぎ第2中隊を――――」

 

 

砂漠のナポレオンの部下たちが囀る。彼らは小さく恐れている。

負けることを。そして、それ以上に勝てるはずの敵に己が信じる将軍が敗北してしまう事を。

彼らは勝利を疑わないからこそ、小さな万が一に怯えている。

矛盾だ。壮大な矛盾だ。

だから……一言だけ、将軍は口を開く。

 

「……作戦実行」

 

それだけで、民兵たちは動き出した。彼らがそれぞれ思い描く勝利の図柄へと。

 

  7.

 どういうことか。そういう空気が流れた。正統軍にとって、多少の損害は覚悟の上だった。

なのに、何故?

損害という話では済まされない。

山岳地帯に……

 

「3個師団が……閉じ込められた……?」

それも重要な機甲師団が……。

 

「か、解囲だ! いや、救援だ! 第2師団司令部とは今もつながるのだな? そちらからも脱出を目指せないかもう一度……!」

何処から、失敗した。どこから狂った。

山岳地帯に閉じ込められることが明白となった今。その直前は――――

 

 

「――――廃棄車両はさっさと破壊して処分せよ!」  「クソったれ! この雨はなんだ!?」

黙々と黒煙が上がる中、急激に降り注ぐ洪水を思わせる雨。

重金属で汚染された雨が大地を穢していく。

そこにたつMBTはとっくに対戦車砲の攻撃を受けて大破している。

何故、対戦車砲があった? 使い捨てで赤外線センサーで自動的にぶっ放すようなブービートラップの古典に気が付かなかった?

 

「なんだ、この山岳……は……?」

センサー系が……役に立たない。

音響センサー、赤外線センサー、磁力センサーに対レーダー波センサー。

別にすべてのセンサー系統がダメにされているわけではないが、雑音……ノイズがひどすぎる。

 

 

「この雨だ……くそったれ、重金属で汚染されている? 対処マニュアルL11を持ち出せ! クリアリングプログラムを実行。

戦術A.I.による補正を強化」

戦車隊の指揮官がそう支持を下し、それに従って次々とマニュアルに従って、雑音を排除できるように戦術A.I.がディープラーニングを

開始し始めた。

戦術A.I.担当の補正技官が5分くださいと時間を要求するその横で、

 

「円陣防御!」

兵士達やガントラックの類いが次々と防御態勢をとっていく。

天候兵器を持ち出したなクソ野郎。自然とそういう思いが兵士達そして将校達にわいてくる。

山岳地帯を汚染する雨なんて間違いない。そのたぐいだ。

という事は戦車を撃破したのは…………。

第9師団の第73戦車大隊の大隊長は最悪を考える。

足止め。

歩兵部隊の指揮官も同じことを考えたのだろう。戦術A.I.による補正がきちんと機能すれば、このノイズまみれでも

ある程度ではあるが、問題なく活動することが出来る。

だが、それには状況にあった補正が行われなければならない。

砂漠におけるノイズ処理のアルゴリズムパターンではジャングルのノイズ処理に無理があるように。

 

「中佐! 対人レーダーに反応があります。偵察ドローンはダメですか?」  

「高高度からは雲が邪魔で見えない! 低高度では気流の変化や地形の影響を受けるので遠隔操作と事前の地形データによるA.I.補正が必要だ!

この雨の中、その遠隔操作と地形データが何処まで頼りになるか分からん! 物量作戦をとれるならカバー出来るが……」

中佐の前に一人の技官がそれを出す。

サッカーボールのようにも見える索敵ドローン。

 

「そいつと偵察ドローンの組み合わせて一時的ではありますが擬似的な物量作戦を展開出来ます」

「衛星や空軍、車両のセンサー系統が使えないのなら、無数のドローンで空と陸から対応すると言うだけでございます」

技官の提案。

だが、中佐は却下する。

 

「進むぞ! 戦車は走ってナンボだ! 敵の狙いがこちらの足止めである以上、進むしか無い。戦前の地図を信じて今は進む。

だが、目標は変更する!」

変更された場所は、言ってしまえばぐるりと山岳地帯を回って、スタート地点へと戻るルートへ事実上の変更を示す地点。

 

円陣防御を解除して走り始める。

スプルート突撃砲。空挺戦車として求められた機動砲に近いそれ。

その天板は空挺戦車じゃなくても弱点。そこが……打ち抜かれた。

 

「くそったれ! 案の定、砲兵の待ち伏せか!」

戦場に安易な三すくみを求めるとすれば、歩兵は戦車に弱く、戦車は砲兵に弱く、砲兵は歩兵に弱い。

唯一にして絶対。それを覆す方法……それは、当たらなければどうと言う事は無い。

けれども、逆に言えば、当たってしまえば意味は無い。そして動かなければ当てられると言う事だ。

 

「敵砲兵への対抗戦をすぐさま開始させろ! 我が軍の航空部隊を――――――!」

――で、その航空部隊の確実な援護、すなわちエアカバーの現状は?

豪雨と黒煙がすべてだ。それも天候兵器と思われる汚染された豪雨。

そして、所々燃えさかるタイヤ。その黒煙で空気が汚され、汚染され、視界を悪化させている。

重金属がレーダー派を反射したり妨害したり、音響センサーがシェイクされ、赤外線探査がやりにくく、そもそも視界が悪く

レーダーの状況も悪い。これで地上支援のために山岳地帯を飛ぶ? 冗談じゃない。

航空部隊の本音はそんなところだろう。

おまけに航空司令部では復活した無数のレーダー波に警戒せよと怒号が飛び交っている。

政府軍のモノではない。独立派の旧式レーダーだろう。

旧式でもレーダーはレーダー。とっとと、破壊しなくちゃいけないが、数分ごとに稼働が止まったりしている。

おまけに複数機、それも移動式なようで、すべての位置の特定が最優先と彼らは見ていた。

 

けど、それすら囮だとは思ってもみなかった。貧乏所帯の独立派にとって貴重な戦力兵器である事は間違いから。

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