どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
7.
戦況情報。
政府軍のリスティア攻勢第1梯団はおおむね作戦目標を達成しつつある。ゲノポス梯団隊は戦列に混乱発生中。
リスティア方面第2梯団が侵攻開始。ゲノポス第1梯団の混乱収束の見込みは現段階では薄い模様。
さらなる火力投射によりゲノポス第1梯団による敵縦深同時粉砕の遂行を確実に。
火力投射終了後、ゲノポス第2梯団が進出開始予定。
第3航空爆撃軍がゲノポス方面に進出まで残り300秒。
第71砲兵連隊の戦略的再配置終了まで残り約720秒。
第2梯団進出予定開始時間は、今から約1200秒後。
反乱軍に大型無人機動兵器の運用を確認。対抗措置――さらなる火力投射。
第84砲兵連隊の戦略的再配置を決定。ゲノポス方面へ移送中。
第2空挺団をゲノポス方面へ移送中。空挺団到着はおよそ600秒後。
その他戦線。現状に変更なし。なお、キルボックスA16タイル3にて、敵性航空戦力の存在が確認中。警戒されたし。
8.
新たな高脅威目標が接近。戦術AIの警告文。
敵の騎兵隊――といっても4体。だが、4体もだ――の接近。
「補充です! 大丈夫ですか!?」
補給中隊の人間が1人、輸送型のセグメンタタを操りながらやってきた。輸送型特有の小コンテナとは別にその鋼鉄の両腕双方にたくさんの武器を抱えている。
むしろよく撃たれないなと感心するほどだ。
「どんぐらいかかる!? もう来てる!」 「えっ、ドローンで足止めします!」
6本足の親機と4本足の子機、2機からなる陸戦遠隔砲撃自爆ドローン。大きさは親機が1メートル台、子機が60センチほど。
砲撃し、敵に張り付いて自爆することで敵性への脅威となる。
砲撃といっても、やってること自体は擲弾機銃(グレネードマシンガン)によるものだ。グレネードランチャーをそのまま機関銃に転用したもの。
いくつか、徹甲弾が含まれているが、基本は40mm榴弾擲弾(グレネード)である。装弾数は親機が40発。子機が20発の計60発。
それらを親機と子機に分かれ、十字砲火で撃ち尽くした後に敵性に特攻するというシンプルなモノ。
「翔さん! 1分で換装作業をします! もしもオーバーした場合、私はこのまま離脱させていただきます! ほかの方が待っているので!」
「OKわかった。早くやれ!! かろうじて残ってるライフル弾で牽制してやる!」
GN-11Bキャットファイト砲兵型の右肩の軽榴弾砲のリボルバーに専用のスピードローダーを使い補充の砲弾が入っていく。20mmリボルバーカノンは弾頭を弾薬ボックス内部に収めていく。
ソレとは別に、マルチ・アサルトライフルのマガジンを回収、弾薬の詰まった新たなマガジンポーチ――ポーチと言うにはメカメカしいが――を用意する。
詰め直すより、ポーチごと交換するのが手っ取り早い。だが、それでも時間はかかる。
「急げ急げ、もうテメェのドローン撃破されてんぞ!?」 「もう少し待ってください!」
翔はせっかく補充してくれたマガジンポーチから新たな50口径の銃弾が詰まったマガジンと、グレネードの弾を取り出し、ソレをライフルにリロード。
小さな空気の押し出される軽快な音とともにグレネードが飛び出し、直後より12.7mmの銃弾が無数に飛び出していく。
翔は小さく息を吸い、通信機に話しかける。
「中隊長。もう一度、お願いします。持ちません――――」
「――。わかりました。各小隊長、3秒以内にこたえて。やれる?」
『――……』 『……――』 『…………』
「60秒後に再要請。みんな気を付けて」
翔のお願いは認められた。けれど60秒の猶予・無駄が与えられる。
それまでの間に隠れられるか、それとも敵に倒されるか。
「それでは行きます! あとは自分で!」 「くそったれ!」
補給中隊に属する補給人員は切り上げを選択した。
もう時間がないのだ。次の人へ、弾薬や燃料を補充しなければ。いや、セグメンタタに燃料は必要ない。
マイクロ送電による無線充電できるし、そもそも全身12か所のプラズマ・バッテリーからの電力供給の2つの方法をとっている。
「これ、交換用です。腕だけでも変えといてください!」
プラズマ・バッテリーは有限ではあるが、簡単には無くならない。何しろプラズマから磁気流体力学的処方により、電力を取り出している。
だが、だからこそ、翔のようなバカな使い方をする奴らも出てくるので、どうしても補充が必要だ。
補給要員は最後に、バッテリーを1つおいてその場から立ち去る。
と、そこに警報。その補給要員に向かって――――迎撃システムが起動。迎撃短針射出。
空中で敵の砲弾が起爆する。
「さっさといけ!」 「ありがと!」
新たな高脅威目標が接近。例の騎兵型セグメンタタ、アラクレ
亡命した日本人技術者とやらがロシア共和連合で作ったといわれる3.5世代概念試験用技術実証兵器。
まだ見ぬ第4世代の模索のための実験装置。
よくもまぁ、そんな面倒なものを作ってくれたものだと思う。
と、そのうちの1つが、せっかくの騎兵の衝撃力を投げ捨て、ブレーキをかける。
そして、慣性の法則にしたがいそのまま前のめり状態から1回転。その状態で、例のみょうちくりんな変形。二足歩行の人の形になる。
その手には自分たちと同じ50口径のライフル。ただし、騎兵用のランスカービン。
その円錐状の先端はHEATになっていて、敵の装甲を破ることを目的とし、そのすぐ下に50口径の銃身がのぞいている。
その手にといったが、正確には武器腕というべきだろうか。腕の第1関節あたりからその先がカービンライフルになっている。
騎兵の動きに対応しようとするとこのような形で『装着』するのが一番効果的であったが故だ。
そこら辺は人間の腕とは違う機械的な鋼鉄の腕だから出来る事だ。
そして、その武器腕が動き出す。だが、そんな暇なんてあげない
ブースターを稼働、強引にその場から飛び出し、敵の騎兵へと一気に接近。距離のアドバンテージをあえて捨て去り、武器腕がこちらを向く前に高振動ブレードを構えて突撃する。
懐に入られると、対応出来ないのが武器腕! とっさに敵は武器腕の接続を解除、鋼鉄の腕を取り返そうとして、そのまま甲高い金属の異音の中におぼれてその命を散らしていく。
1人、撃破。だが、その隣で同様に一回転のとともに二足歩行に変化する敵の騎兵が――――
――弾込めの終わったばかり、ある意味で新品ピカピカの砲弾を、肩の軽迫撃砲をただ、そいつのいる方向にろくに狙いも付けず、ぶっ放した。
弾種は81mm榴弾。相手を面制圧するために使用されていた信管は近接信管。
人間が把握できる限界を超えてほとんど一瞬であった。まるで暴発のようだった。
ぶっ放された砲弾は砲身から飛び出してほとんど次の瞬間といえるその――刹那の――うちに起爆しその衝撃波と鉄片をもって敵へと襲い掛かる。
自動防御の斥力――も完全には間に合わず、思わずとった防御姿勢――腕で頭をかばう――により武器腕が破壊される。
そこに翔は50口径のライフル弾を次々と打ち込んでいく。
正直な話、肩の軽迫はもう使い物にならないと翔は見ていた。あまりにも至近距離すぎる。自分だって正直ダメージを受けている。何が起きるか知っていたからこそ飛翔装甲を展開することで、防御しただけにすぎず、飛翔装甲の装甲版にはあちらこちらに穴が開いている。
いや、穴が開いているというか、これまでの酷使にいい加減ぼろぼろになってきたというのが正しいだろう。
ブースターを用いたとはいえ、瞬間的に距離というアドバンテージを捨てたからこそ、翔は飛翔装甲を広げたまま、少しずつ後退していく。
いつ敵に襲い掛かられるかわからない。
そして――――