どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
1.-2.
どこまでも俺様主義 Re-make
Episode.1:砂漠の国の紛争
最終章 「ミステル――The end, the beginning of the hell of new fight.」
1.
戦況報告書――第56号A作戦計画の現時点における評価。
おおむね予定道理に進行中。ただし、ゲノポス東部における作戦は危険な状況が俄然続いている模様。
短期間に2回のブレイク・ファイアが発令され、後方連絡線が細分化。再結合が必要であると判断せざる終えない。
ただし、敵の攻勢が俄然続いており、傭兵主体の最前線は持たないとみられる。
よって、選択肢は2つ。
死守の命令を出し、空挺戦力の結集による後方攻撃。ゲノポス周辺に絞った縦深攻撃。
あるいは、現時点をもって最前線を放棄。ゲノポス東部における作戦は防衛計画G13へ移行する。
どちらの選択肢においても、重要なのは敵大型戦術級ドローン3機。
データベース照合。名称『サンドクラーケン』。以下、この大型戦術級ドローンを仮称S1(シエラ・ワン) S2(シエラ・ツー) S3(シエラ・スリー)と呼称。
これらS1 S2 S3を撃破ないし、無力化は必須条件と推察。
理由として、上げられるのはこれらはFAAD(前線エリア防空システム)ように建造された大型ドローンであり、我が軍のCAS(近接航空支援)実施の著しい妨害要素として、存在している。
我が方の攻撃機並びにCASドローンは作戦の性質上、作戦機の数に対し現状広く担当区域を受け持っており、1機の撃墜が与える影響は広範囲に影響を与えるところがある。
よって、FAADドローンによる前線対空火力の強化は反乱軍のドクトリンとして非常に合理的であると我々としても判断せざる得ない。
S1 S2 S3の早期撃破を実行に移されたし。そのための配置転換を提言。実行に際して――――
2.
結論から言ってしまえば、今の状況はこっちが作った橋頭堡に敵が波状攻撃を実行したせいで、動きがとれなくなったと言うだけの話に過ぎない。
シリアスな調子になっているが、基本はこっちから侵攻して、自分たちにとって弱そうな部分に補強陣地を設営したが、敵はちゃんとそこに攻めてきたというだけの事柄に過ぎず、翔たちにとってどれほど危機的状況であっても現時点では政府軍の作戦の致命的な破綻には至っていない。
だからこそ、中隊長であるテミドールは知らず知らずのうちに手のひらから血が出るほどに拳を握りしめていた現実に気が付いて、思わず小さなため息を出す。
ため息の音は想像以上に鎧の内部に反響して大きな音になる。最もすぐに銃声にかき消されたが。
「せめて、あのクソたこ足をつぶせれば」
サンドクラーケンの猛威と思われる対空砲火の火線が大空へと次々と立ち上がっていく。
中隊長テミドールは3度目のブレイク・ファイアを要請するべきか、一瞬悩んで、無線機に怒鳴る。
「紅! 増援をくれ! 次は本当に持たない! 損害が多すぎる!」
『――次は何時始まる?』
司令部からの事務的な返事。
「しるか! あんたらが一番知ってるだろ!」
中隊長としては、上級指揮官たちの方ががより広範囲の情報を握っていると考える。当然だ。
『――空気で言い! 何時だ!』
事務的なハズの返答に力がこもっている。何かある。
「…………数分以内に始まる。いや、もう始まりつつあるかもしれない。ブレイク・ファイアで攪乱したはずの残存敵歩兵戦力に統制された再編成の動きあり」
中隊長に戦場を俯瞰する目は無い。でも、部下たちから聞く直接の言葉という形でかろうじて輪郭をうかがい知ることは出来る。
中隊無線では各所から粉砕したはずの敵部隊に再結集の動きがある。一見撤退しているように見えるが、厳密には後方への移動の動きでは無いととの声が多数。
『 中隊長! J小隊担当区画、防衛ラインの再構築に失敗! S2がこちらに向けて進撃している! S2の火力の傘に守られた敵に分隊砲兵どもが使えない! 』
J小隊S分隊の分隊砲兵だった。何が起きたか、翔は戦場にいない。1個小隊の6人の分隊砲兵いるはずだが、5人しかいない。残った5人の分隊砲兵のうち4人が戦闘に参加し、S2の進撃を阻むべくダイレクトサポート(直射支援)を行う。
叩き込まれるのは迫撃砲弾の雨あられ。120mmと60mmの迫撃榴散弾が空中で起爆して地上に地獄を作ろうと――――する前に吹き飛ばされる。
敵の大型戦術級防空ドローンのサンドクラーケンの1機、S2(シエラ・ツー)が対空火力として機能し、こちらの砲弾が敵の頭上に墜ちない。
「アイアンドームかよ! R小隊、そっちはどうだ!? Jの救援いけそうか!?」
中隊長、テミドールの叫び声。その叫び声に重なるように、その空に無数の亜音速親子型巡航ミサイル6発。
目標はサンドクラーケン。正直な所、当たるとは思っていない。あれらの足止めを目的とした6発。
空中で炸裂し、18発の短距離空対地ミサイルへと変貌。
それぞれ、6発ずつサンドクラーケンへ。
「誰だ!? あんなモノよこしたの!? やるんならもっとやりやがれ! 中途半端にもほどがある!」
中隊長テミドールは激怒の声を上げながらも、司令部との連絡を取る。
『――増援到着まで……あと300秒かかる。増援は混成歩兵戦車1個小隊』
「せっ、敵は鎧だ! 今すぐ鎧の兵隊をよこせ! 狙撃大隊から人員を供出させろ!!」
現在の主力は、第3軍団の打撃大隊。打撃大隊が進撃し、狙撃大隊が掃射し、整備大隊が占領し後方として整備すると言う学院傭兵軍の基本的なセグメンタタ部隊運用ドクトリンに沿った結果、打撃大隊が主力として、この場は奮闘している。
『――狙撃もすでに前に出てる!』 「なら、整備連中を出せ! あの連中だって戦える!」
整備大隊と言う名前が付いているが、要するに建設工兵と整備士を兼ねた歩兵どもだ。学生傭兵として、ナリウスも兼ねており、一応自分たち用のセグメンタタだって保持している。
だが、先駆けを行う前提の打撃大隊が厳しい状況下だと――
『――みんなを殺す気か!』 「そっちこそ、中隊に犬死しろと言ってんのか!! 人殺し!」
一息。その間にも轟音と黒煙が戦場を支配する。
「……あのミサイルはどこがよこした? やるなら全部今すぐS2に打ち込め。そうすりゃ、破壊できるだろ」
『――お前たちじゃないのか? 発射コードを確認したらうちの登録識別だったが……』 「は?」
次の瞬間再び中隊長テミドールの頭上を新たな亜音速巡航ミサイルが8発頭上を飛んでいき、その後方に奇妙な大型兵器がジェットの轟音とロケットモーターの噴煙をまき散らしながら最前線へと突入していった。
「一体」
中隊長テミドールはその何かを見る。ヘッドマウントディスプレイに小さな表示が出る。それはIFF(味方識別信号)シグナル。
森野・J・翔。学院傭兵軍第3軍団所属、打撃大隊テミドール中隊J小隊の分隊砲兵のIFF