どこまでも俺様主義 Episode.1:砂漠の国の紛争 作:ホエール
3.
ヴィンランド連邦における、セグメンタタの寡占企業、アルコールグループが手がける新型、アークラムの『内部装着装甲(ロリカ)』は廉価製品として大量に出回っているGN(ジン)シリーズとは違い、
ヴィンランド連邦が制式採用しているLM(リモンチーノ)シリーズを思わせる人間工学的に落ち着けるように設計され、かつ人体骨格系に負担がかからないように無数のジェルクッションによって保護された空間であった。
GN-11Bの少し堅いシートで囲まれた関節調整システムと違い、比較的ソフトな関節調整が体全身に軽い衝撃を与えていく。
翔は自分のスティックメモリを差し込んだとたん、容赦なく衝撃を与えていくくせに、ソフトな衝撃であることになんだコレという感想が脳内を駆け巡る。
GN-11BはOSが立ち上がって、メモリを読み込んでからメモリ内部情報通りに人間の関節が存在しているのか、確かめる意味も込めた、間接位置調整として全身を殴られるような衝撃が走るのに、そういう物なしに始まる上に全く痛くない。
(高級品だな……)
ナリウスの安全対策の為に衝撃吸収用のスプリングは通常、人間が着込むようにその人体に直接接する『内部装着装甲(ロリカ)』には使用しないのが正規軍運用セグメンタタの鉄則であるが、GN-11Bは非正規パーツではあるものの、ロリカに使用される衝撃吸収用スプリングが出回っていたりする。
そして、学院傭兵軍大3軍団では、戦場のど真ん中で、必要とあらば、そういうパーツを使った強引な整備をするときがある。
出来れば、純正パーツのみを使いたいが、そう言っていられない時というのがある。その上で、今回のコレは高級品の純正パーツだけを使っている事が分かる。
非公式な非正規パーツによく見られる、どこぞの工房の工業用ロボットで簡単に形を整えた感丸出しの荒さが感じられない。
そして、アルコール・グループが提供しているセグメンタタ共通OSの『OH(ヒドロキシ)』の起動画面が消えると次に現れる。
次に現れた表記は『Areus-System』と言う謎のソフトウェアの起動画面。
『――対象、身分マーセナリソルジャー、ホプリテスSAWアーチャー。認証しました。戦闘戦術最適支援ネットワークAIアレスは稼働状態に移行。本機アレスによる戦闘戦術最適支援ネットワークサポートを開始します。
ソルジャー。そちらのネットワークへのアクセス及び、あなたの勝利への道案内の許可を』
「は?」
それが、その謎のなんたらを見たときに出てきた第一声であった。
そして、次の段階へ。アークラムが収められたコンテナはどうやらアークラムの専用の設備コンテナであり、その中身いっぱい色々な機械設備が詰まっている。
その中の一つ、ロボットアームが動き出す。その数、4つ。アークラムは身長3.5メートルの大きさを持った巨人だ。肩幅は120メートルほど。
そのアークラムの各所に色々な何かが取り付けられていく。
『アークラム・出撃時戦況対応選択モードAA:識別名称「アサルトロケット・アーセナル」』
人型の形をしていたはずのものが弾丸のような形になる。肩幅は2メートルに達し、身長は4メートルへ。
何よりも、ただの人型であれば、存在しないハズの後尾部位によって、前後にふくれあがったそれ。
翔は、アレスとやらから説明を受ける。AIから機械音声(正確には人間の声を加工している)であれこれと説明されるのは、如何に最新技術とやらにふれる機会が多めの最新兵器てんこ盛りだったりする砲兵型乗りのナリウスといえど、あまり多い方では無い。
『――本機のシステムは、来る第4世代に向けての技術実証を実施するためのシステムです。そのためにこのアークラムとその支援システムであるアレスには現行の技術で実現可能と判断された様々な能力が予算の範囲内で実装されています。
故に、公式で3.5世代を自称しているアーマード・エクソスケルション……非ヴィンランド連邦正規軍では一般的にマニュピレート・セグメンタタと称される重装歩兵兵装となっています』
「……第3世代の次っていきなり言われても、具体的に」
『――各国で想定されてる第4世代コンセプトは一騎当千と圧倒的物量の両立です。1個中隊、最低でも1個分隊による戦域突撃、ソレによる機動力による攪乱と敵性の壊滅、そしてそれを実現するための高い戦闘力を持つ重装歩兵兵装とソレをサポートする数百の戦闘支援ドローン。
当然、確実なサポートの為にドローンは常に1人1人の兵士によってリアルタイムで管制されながらの運用となります。しかし、現実的に考えてそれでは兵士の作業量増大に対処能力は飽和するでしょう。
それをサポートするために検討、開発されているのが、「統合戦域勝利支援用群知性型ニューラルネット」、その試作システムの一つが本機アレスになります』
翔は、長い説明に唖然としながらも次第にどうでも良くなっていった。そりゃ、機械とおしゃべりしたところで、敵に勝てるわけでは無いのだ。
そして、今、戦況は危機的状況にある。このままでは皆が、敗北し、自分だってどうなるか分かったもんじゃない。政府軍全体では敗北とは呼べない小さな犠牲かもしれないが、自分たちの命がベットされていると考えたらクソッタレである。
「……どうでもいい。テメェを使えば、勝てるんだな?」 『――本機の役割は、勝利の道案内であり、歩くのはあなたの役割です。その上で……』
まるで人間がそこにいて、ほほえむように
『――死ぬな。それだけで勝利者です。私がそれを保障してみせましょう!』
機械音声に強い自信が秘められていた。